危機管理能力が支える大胆かつ繊細なアプローチ「いごっそう西村 好仁の磯のヒラスズキ攻略!」

写真/文 松井謙二

(松井)今回の取材日はあいにくの冬型 西高東低の気圧配置になり高知県西部はヒラスズキを磯で狙うには何処もベタ凪で、西村さんもポイントを探すのに大変苦労したと思いますが、波が無い中で昨日あのフィールドを選んだのは?

(西村)この状況だったら太平洋側は何処もベタ凪で、ヒラスズキを釣るなら潮流の早いポイントになるが、やはり僕はサラシでヒラスズキを釣りたいんで、今までヒラスズキを釣ってきた多くのポイントの中で沖磯で潮が引いたら少しでも波が立ってヒラスズキが釣れる可能性があるポイントを選んだ。昨日の磯は多分ヒラスズキをやる人は居ない。ただ、昨日は潮周りが悪くて渡船で行った時間が満潮いっぱいで波が無いから磯に上がれなくて、2時間ぐらい経ってから潮が引いてきて波気が出だしたので磯に上がって1時間が勝負と思い、少しでもサラシが出た時を狙って、なんとか1匹釣ることが出来て嬉しい!

(松井)潮が引いても磯はかなり低くノコギリのようでしたから、私はアユタイツを履いていたもののカメラバックも置くところが無いので、西村さんに言われて今回は船から撮影させて頂きました。西村さんはいつも通りウエットスーツにライフジャケットで磯に上がりポイントまで海に浸かりながら歩いて行きましたね。ポイントに着いて、まず考える事は?

(西村)磯のヒラスズキで釣るために1番大切な事はルアーを投げるタイミングやき!
うねりで入って来る波のタイミングをしっかりと計って、サラシが1番広がって水面が安定した時にポイントにしっかりとルアーを通す事!じゃ無いとミスバイトが多くなる。本当にバレ、バラすのが多いサカナやからしっかりとルアーを食わせて、しっかりフッキングしないとバレてしまう。

(松井)私は船から写真を撮っていましたが、西村さんは磯に上がってから1時間弱の間に波で洗われている磯の上を歩いて4箇所のポイントを叩きました。釣れたのは最初のポイントで1投目で魚のチェイスがあり2投目でしっかりとヒラスズキをキャッチしました。その時の状況を教えて下さい。

(西村)磯の少し高い所から磯の状況、浅い所、深い所、歩いて何処まで行けるか?とかを見て波の入り方、サラシの状態を10分位見て最初のポイントに入りました。波が入ってきても磯際しかサラシが出ないので1投目からビットストリームの90を選びました。もう少し波があって沖からサラシが広がるのであればK2を投げるけど。磯のヒラスズキをで使うルアーはほとんどがシャロー系で必ず初めから表層を狙う。どうしてもサラシが厚かったりしていかんかったらシンキングを使う事もあるが、めったに使わんね!昨日は一投目で2匹のヒラスズキがチェイスしてきた。でもヒットに至らなかったので素早くルアーを抜きあげて、次に投げるタイミングを取るために、しばらく波を見て待っていた。そして、小さなウネリが入ってきて磯際で波が砕けて広がったのでキャストしたら、先に出た小さい方のサカナが食ってきた。

(松井)一投目でサカナが出てきたからと言っても2投目をすぐに投げないんですね?

(西村)ケースバイケースやけどサカナがいるのがわかったら、波がもう少しあってサラシも大きかったらルアーのサイズを変えたり色を変えたりする事もあるけど、昨日はサラシが小さかったからビットストリーム90をそのまま使った。サカナのやる気もあるけど、大抵2投目はほとんどこん。一投目で確実に喰わさんとルアーをずーと見たサカナはほとんど喰わん。結局、昨日は2回しかサカナは来んかったけど、あの状態でもサカナの数がいたら餌を取り合いするから続いてルアーに当たって来るんよ!とにかく一投目で釣ることを心がけている。無駄に投げない事が大切やね。

(松井)西村さんがPEラインよりもナイロンラインを好んで使う訳は?

(西村)PEラインが磯に乗るわけよ!磯の向こう側を釣りたいわけ、そんな時にPEが磯にベターと付いて磯についている貝に引っ掛かって切れる。ナイロンの方が磯に絡んだ時に外しやすい。それとヒラスズキは早合わせが禁物なサカナなわけよ!サカナがルアーを咥えて反転した時の方がしっかりと2本のフックがヒラスズキの口のまわりを捉えている。PEは反応が見えてしまうからどうしても自分の身体が反応して早合わせになるんよ!PEも1〜2号ならナイロンよりも飛距離は出るけど3号になればナイロンと変わらん。磯でPEもかなり使ったけど磯に乗ったらささくれてくる。それは嫌じゃ!すぐに切れるやろ。僕はバリバスの色付きの磯釣りのラインの16Ibにリーダーは30lbを使っている。色付きやから視認性も強いしラインが見えたら操作性も上がって釣りがしやすい。また、ナイロンは伸びるからサカナがかかった時にPEより暴れん気がする。でも夜のサーフや河口での釣りではPEを使っている。底が砂地や玉石やからラインは痛む事が無いし、飛距離も出るし伸びないから情報は取りやすい。PEは1.5号で磯とサーフの使い分けやね!

(松井)トレースしている時のルアーが泳ぐ速さはほとんど変えない?

(西村)いゃ、ポイントを通過させる時は結構ゆっくり巻く。ポイントに入る前、出てからはバーと早く巻く。回収の時は早く巻いてなるべくサカナにルアーを見せない。足元までポイントが続く時は最後までしっかりとリトリーブして気を抜かない。いきなり足元でヒットしたらびっくりしてバレる事が多いからルアーを上げる時も考えて上げんと!。ミスバイトがない様にルアーを安定させてサカナが理想的なフッキングが出来る様に、波を見て、サラシを見てキャストするタイミングを選んでしっかりと喰わす。スズキはエサに噛み付くサカナじゃ無く飲み込む魚じゃ!

(松井)西村さんはルアーの色についてはどう考えますか?

(西村)磯のヒラスズキで日中にピーカンの天気やったら黒とか、朝イチとかはレッドヘッドとかサラシがきつかったらメチャ派手なやつ、ピンクとかイエロー、グローとか、自分が釣りやすい様に視認性が高いルアーを選ぶ。でも、何回もあるぞ、ルアーの色を変えて釣れた事は。磯のヒラスズキでナチュラルカラーでは全く釣れないで「見えてない事は無いよなー」と思ってピンクに変えてキャストしたら、途端にヒラスズキがあたり出してバンバン釣れた。サカナから見えない事もあるみたいやね!まぁそれはサラシの厚さや大きさによって変わって来るかもしれん。

(松井)真っ暗な夜の釣りなんかはサカナはルアーを見えているのかな?

(西村)サカナはルアーの波動を側線で感じてそこから目で見て食ってくると思う。川の増水ででの河口の釣りなんかはド茶濁りの中で真っ黒なルアーで食って来る。でも、そのド茶濁りの中ではナチュラル系のカラーのルアーは全く食わんのよ。白のルアーも当たったりする。でも、どう考えてもサカナにルアーは見えて無いと思う。でも色というのは凄くあると思うね! ただ、サカナがその色を何処まで認識しているのかはわからない。サカナの目は黒と白のノータンだけでは無いと思う。夜の釣りなんかは特に色の差が出る様なきがする。自分が好きな色のルアーは当然使う事が多いから当然ヒットの確率は上がる。それぐらいのもんじやと思う。

(松井)磯のヒラスズキでこれはやったら面白い!といったテクニックはありますか?

(西村)サカナとのやり取りの時リールをフリー、ニュートラルにして、右手の指の調整でラインの出す、止めるを調整する。レバーブレーキ付きのリールを使っている人も多いけどサカナをかけて走られた時にドラグの調整だけだとフッとサカナが外れる時がある。波が来たら当然自分は前に出れんし、後ろに下がらんといかん。これは磯もサーフも一緒やけどね。ドラグだけでは対応できない!そんな時にリールをニュートラルにして指でローターを押さえたら止まるし、指で押さえるのを緩めたらラインは出るやろ!。これがやれたらサーフでもデカいサカナが釣れた時引き波で持っていかれる。そんな時はニュートラルでラインを出してやったらかわすことが出来る。ドラグだけの対応ではどうしてもいかん!。ニュートラルと言っても指で押さえているからロッドにかかる力に応じて加減してやったらいい。磯ではサカナが掛かったら根や磯をかわさないといけないから、これを身につけたら片手で操作出来るから何処でも動いて行ける。YouTube見ててもこの釣り方は誰もやらんな!。これはリールを左手で巻く人しか出来んのよ!。右巻きの人はローターが当たる。ドラグ調整は片手ではできんし、これが出来たら釣りが本当に楽になる。

(松井)西村さんの磯のヒラスズキ釣りは何時もウエットスーツですね。かなり泳いで磯に渡るのですか?

(西村)釣りは何時も安全第一やし、こけて骨でも折ったら大変よ!でウエダーでもやる人はおるし、それは一長一短あるけどウエダーは破れるし、海に落ちたら足が浮くやろ!。僕がウエットでやるのは、磯のヒラスズキしとったら、ちょっとでもそこに渡りたい!というのがあるやろ!。皆んな僕のことを磯へ行くまで20メートルも30メートルも泳ぐと思っている人が多いけど、そうじゃ無い。(笑)  その前に深いスリットがあって、どうしても前に行けんとかで、当然ポイントはその向こうで行けんかったら悔しいやん。ウエットスーツやったら、そこに入って渡れる。それを考えたら絶対にウエット。それに冬は雨降りでもウエット着てたら暑いね。 今までに磯のヒラスズキで何度もヤバイ目に遭っているけど、一度、急な山道を下らんとあかん場所でロープが切れて滑り落ちた時もウエットスーツ着てたから怪我せんかったし、磯やゴロタ、山道で何度も転けているけど大きな怪我は一度も無い。そんな危ない事を経験して、たまに若い子をウエットスーツを着さして磯へ連れて行ったりする。そして、サラシの無いとこで後ろから押して海に落としたりするのよ!。
そしたらその子はバダバタしてパニックになるわけよ!それは私が助ける自信があるから落とすけど、それで私も海に入って、泳いでその子の後ろまで行って「バカー!」と言ってこっちが笑ったら、その子も笑いだすのよ、緊張が解けてね。それが大事で、磯の上と海の中では目線が低いから、小さい波でも前が見えなくなる事も教えんといかんし、海に落ちた時に自分がどれだけ冷静になってパニックにならずに入れるかを知って欲しい。泳げる子なら20メートルぐらい隣の磯に泳がせたり、そういう事になれる様にせんと。僕はわかっているからね! 海に落ちるのも怖いけど、波に叩きつけられるのも怖い。当然、ヘルメットもしてたら良いけど、最低でも指先までしっかりある手袋はしないとあかん!。海から磯に上がる時は手袋が無かったら磯に付いている貝で手がボロボロになってしまう。
波のある所では波の力で身体が流されるから磯をしっかりと掴まないと磯の上に上がれない。 安全第一の釣りやん。注意してやらんと!。

(松井)西村さんと私は同学年、同じ歳ですけど還暦も過ぎて釣りに対する姿勢や考え方が昔とは変わって来ると思いますが、これからどんな釣りをやっていきたいですか?

(西村)ハヤ釣ったり、アジ釣ったり、マグロ釣ったり、釣りはすべて一緒やきよ!。また、釣りの好みもあるき、その道その道で精通している人に話を聞いたら、やはり考える事が違うから面白い!防波堤でアジ釣りようおばさん達でも、上手な人はメチャクチャ上手い!。人以上釣ろうと思ったら考える事はいっぱいあるし、何の釣りでもそうやね。だいたい僕らは若い頃からルアーをやってきたけど、ルアーで釣れんかったら餌でやったりとかしょうけど、やっぱり歳もいってきてルア一本にこだわらんと視野を広げて色々な楽しい釣りをやって行きたいし、餌釣りも色々な魚種の釣り方があってゲーム性の高い釣りも多いから、つきんわ!。

これまでは釣れる時に行きたい、仕事より先に釣りたいが勝ってしまいよる。ヒラスズキなんかそうじゃ。でもその気持ちがだんだんと無くなってきて、楽しい釣りがしたいと思う様になってきた。それはそれなりに難しいけど、まぁ面白いわ!。65まで働いて年金もろて、「さぁ、これから何かはじめるぞ!」という人も多いと思うが、釣りも仕事もそうやけど、僕はやれる時にやっておかんと、今だから感じられる感覚が有るから、今だから出来る事をやって行こうと思っている。
いつ死ぬかわからんしな!。

(松井)西村さんは釣りをするには素晴らしい環境に住んでいるから羨ましい。来年、四万十川で一緒に鮎釣りするのが楽しみやね!

(西村)まぁ、釣りでもゴルフでも自分の子供と一緒に楽しめたらいいね!子供の世界は世界であるけど親と子は一生変わらん。子供との繋がりをいつまでも持っていたいし、子供が釣りをやるのなら楽しくさせてやらんとあかん。僕とこは長男 一也は小さい時から釣りに連れて行ったけど次男はあまり釣りが好きでは無かった。娘も帰ってきて、みんなで一緒に須崎に置いてあるボートに乗って釣ったサカナをここで食べて、また僕の友達や息子、娘の友達も来て、お酒飲んで楽しいし、なかなか会えない人も来て、また、それぞれの世界が広がって行く。
釣りをとうしての人の和と広がり、それが徐々にわかって来たかなぁ。

(松井)私も釣り雑誌の仕事から、今は釣りのフリーライターみたいな事をしていますが、釣りが好きだ!と言うだけで多くの仲間が出来て、歳をとっても一緒に釣りを楽しめて、一緒に楽しく酒が飲める!こんな、有り難い事は無いです。来年、一緒に四万十川でアユ釣りするのが本当に楽しみです。来年は西村さんのアユ釣りデビューです。アユ釣りだけは私の方が上手いですから!(笑)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加