能登半島 輪島沖のクロマグロキャスティングゲーム

写真/文 松井謙二

石川県能登半島の輪島沖には二つの島がある。一つは無人の島「七ツ島」輪島海士町の海女の漁場である。そして、その沖に輪島から50キロ沖合に浮かぶ島が「舳倉島」である。周囲約5キロ、最高標高12.4メートルの小さな島ではあるが対馬暖流と大陸棚の影響で好漁場となっており、島回りではアワビ、サザエ、ワカメ、テングサなどが採集され、「海女の島」として名高い。波止からは良型のヒラマサやイシダイなども釣れる。その「舳倉島」の近海で近年クロマグロの回遊が多く見られるようになった。

今回はその「舳倉島」沖で本間 啓嗣氏にクロマグロ釣りにおけるノウハウを語って頂いた。

(松井)ーはじめにキャスティングの注意点を教えてください。マグロのナブラを見つけたら何処に投げるのですか?

(本間)船長もソナーでマグロの位置を見ているので投げる方向は言ってくれますがナブラの移動も早いので、私は鳥の飛ぶ方向をしっかりと見ています。意外にナブラの真ん中に投げても食わないことが多いです。それはキハダも同じです。何年かに一度船の周りに凄い渦を巻くような大きなナブラにで合わす事があります。そんな時は何処に投げても喰いますが、そんなナブラは本当にまれです。自分がマグロを見つけてそこにキャストした段階で、もうそこにはマグロはいないんです。やはり、鳥の進行方向をしっかりと落ち着いて見ることです。一本釣りの漁師さんの話でも群れの1番前を泳いでいるマグロにエサを落としてやると食ってくる確率は高い!と聞きました。マグロの群れの進行方向の先にキャストするのが1番ですね。

(松井)ーベイトの種類や大きさでルアーも変えるのですか?

(本間)ヒラマサはベイトがトビウオでしたら直進するルアーでしか食ってこなかったりする事があります。水面下ギリギリのところで真っ直ぐに走ってくるルアーが良かったりするんですがマグロの場合はそんなに気にする事はありません。この間も小型のトビウオがベイトでしたが水面に落ちたルアーをすぐに食って来たり、2〜3度アクションを入れて止めていると食って来たりするので、ベイトがトビウオとかイワシ、サバなのでベイトが違ってもルアーや動かし方を変える事はマグロの場合はあまり気にする事はありません。ただ、ベイトがシイラとかサンマの大きなものの場合はやはり220〜230とかの大きなルアーを使います。マグロの場合はルアーの大きさで見切る事が多いです。小さいベイトで大きなルアーに反応する事は多々あっても、小さいルアーをキャストしないと反応しない時もあります。シラスナブラとかは140のルアーでやっと反応があるか?という感じです。ルアーも小さいながら貫通ワイヤーが入っているルアー(コンタクトブリット)などでないとマグロのパワーでルアーがつぶれてしまいます。

(松井)ーキャストしたルアーにマグロがヒット!しっかり合わせを入れて!そこからのマグロとのファイトする注意点を教えてください。

(本間)マグロは100メートル走っても疲れませんよね!獲る方はリールからでたラインを100メートル回収しないといけません。それを考えるとファーストランでどんだけマグロを走らせないか!という事になるんです。10〜12キロのドラグテンションはマグロも当然しんどいですし、人間も当然長時間ファイトになると筋肉に乳酸も溜まるし疲労も出てくるので、いかに短期決戦にもっていくしかないんです。ファーストランはまだ、人も力があるので、そこでなるべくマグロの体力を奪い、なおかつ、回収するラインの量もできるだけ少なくするんです。魚がファーストランの段階では50キロなのか60キロなのか100キロなのか?わからないです。もし、100〜150キロのマグロがヒットして300メートルもラインを出されたらラインを回収するのが大変で、それこそ早い潮にマグロが乗ればもう寄せてくるのは困難です。アングラー自身の体力や体重にもよりますが10〜12キロのドラグテンションはかけた方がいいでしょう。マグロがずーと同じ強さでファイトしてくれたら良いのですが、時に猛ダッシュしたり止まったりする事があるし船が揺れたり、潮が早い場合もあるので体重が少なく体力のない人は12キロのドラグテンションは身体が持たないし海に引きづられる事もあります。その様な人には常に身体につけているライフジャケットを後ろから引っ張ってサポートする人がいないと大きなマグロを獲るのは難しいですね。私もマグロ釣りを始めた頃はそうでしたが誰もが腕力でサカナを獲ろうとしてしまいます。上腕筋だけでは50〜70キロのマグロは獲れないんです。脚力や背筋、肩の力、身体全体を使ってファイトしないといけません。とにかく、身体全体を使って体力が無くなる前にマグロを船の下に持って行き取り込みに入れば50キロのマグロは獲れると思います。70キロ以上のマグロがかかった時は、いかにファイト中に体力を奪われないかを考えて集中してファイトする事です。

(本間)前回、永井さんはスレでマグロがヒットしたのですが、強烈な引きに耐えるためロッドを手で握らずに抱え込んでロッドを立ててしばらく耐えてました。それは最後に船の下に入ったサカナを上げてくるために手の握力を使わない様にしてました。船の下にマグロが入ってマグロが見えてラインが20〜30メートルは体力、とくに握力がないとサカナは取れません。それまでに体力を温存しておくファイトができるようになる事です。

(松井)イヤーこれは慣れしかないですね!私は昔30キロ弱のGTでファイト中に酸欠になってサカナは止まっているのにリフトアップ出来ませんでした。本間さんの様にジムで身体を鍛えないとね!

(本間)今はYouTubeでマグロ釣りの上手い人たちの動画が結構あるので、それらを見てイメージトレーニングをするのもいいですね!

(松井)ーナブラ撃ちでダブルヒットやトリプルヒットがある時のメンバーで決めているラインが交差した時の対処などあるのですか?永井さん、本間さんもダブルヒットでしたね!

(本間)乗合船ではキャスティングやヒットしたときに他の人とラインが絡まってサカナをバラす事は結構あるのですが、私たちは仲間で船をチャーターして釣りをしているのでお互いに、そのあたりは気を使って釣りをしています。今回も永井さんと私が50キロクラスのマグロをほぼ同時にかけて永井さんはトモから船の上を半周してミヨシの私とラインが交差しましたが永井さんの方がラインが出ていたので私は永井さんのラインの下にタックルを潜らせて対処しました。ヒラマサとは違いマグロは意外とラインテンションをフックが外れない様なぐらいのニュートラルに近い状態にしたら走らないんです。私たちはそれを「マグロを怒らせない」といいますが、その状態にしてラインの交差や絡みを対処します。私は船べりにマグロをその状態で止めていて、永井さんのマグロが右舷側にそれて行ってくれたので、うまく交わせてその後は2人共にやり取りが出来ました。ラインが交差してる時にむやみに引っ張ったりしているとマグロが暴れてラインが余計に絡まって切れる事もあります。

(松井)何時も冷静さを保って釣りをしないと行けませんね!PE10号で10キロのドラグテンションで50キロのマグロをヒットさせたらマグロはファーストランでどのぐらい走るのですか?

(本間)たぶん20メートルも出てないと思います。ドラグ音は結構鳴りますが!回収したラインの色を見ていたら分かるんですが、キャストしてルアーが着水同時にヒットさせたのでラインの色を見て50メートルでルアーが着水、ヒットして20メートルラインが出たから50+20=70メートルの距離を回収するんです。

マグロは水温によって同じ大きさでも引きがまったく違ってきます。クロマグロはキハダよりも低水温を好み、キハダは高水温を好みます。3~4月の三重県沖のキハダはファイトが楽ですんなりと上がってきますが、それが7~10月になれば同サイズで凄くラインを出して走ります。クロマグロは船の下に入ってから時計回りで上がって来ますがそんなにラインを出して走りません。キハダは船の下に入ってからが何度もラインを出して結構キツイです。大間や竜飛岬で80〜100キロのクロマグロを釣り上げてる人が6~7月に遠州灘で40〜50キロのキハダを掛けてクロマグロよりキツイ!と言っていますね。

(松井)ー取り込みの時の注意点は?

(本間)マグロは時計回りで船の底に入って来ます。船のキールやサイドにラインが当たらない様に細心のの注意をはらって耐えること。船の底から抜け出した時にロッドのパワーと本人の脚力と体力を使って上げる。そこでマグロが走ったら走らせます。頭がコチラに向いたら半回転でも良いから合間を詰めていきます。これが大事です。ここで残りの体力が持たない人は下に突っ込まれるとキールにラインが当たるからとロッドを海面に出してやり取りする人がいますがコントロール出来ずに獲れない人もいます。そんな時はリールを船と反対方向にしてロッドの背でキールを叩く様にしますが中々そこまで出来る人は少ないです。それから、船はドテラ流しで潮の流れていく方向、風を受けて流れて行くので船の流されていく方向で取り込みに入らないとマグロは船の下に下に入って行きキールにラインが当たりやすい。最後にダブルヒットでの取り込みは順番ですから船長や他の人の動きを把握しておきます。決して焦らず海面に出たら思いっきり空気を吸わせて弱らせます。100キロ以上の大物なら船長も操船で助けてくれます。

(本間) それからクロマグロ釣りには多くの規制があります。

「遊漁者のクロマグロ釣りは1日1匹まで30キロ以上の魚をキープ出来るが30キロ以下の魚はリリースすること。」

次に「キープしたマグロは5日以内に水産庁に氏名、住所、魚の大きさ、釣り上げた場所を報告しなければなりません」。私が今回「舳倉島」沖で釣り上げたマグロも50キロ(鰓や内臓の重さが全体の重さの5%)で計算して提出しました。遊漁で釣り上げて良い枠が決まっているので、その枠を超えると再び禁漁になります。詳しくは水産庁ホームページ「クロマグロを対象とする遊漁者、遊漁船の皆様へ」をご覧ください。

(松井)ー最後に釣り上げたマグロを美味しく食べるための処理を教えて下さい。

(本間)マグロが船上で暴れたら口に咥えたルアーが飛んできたり、ラインが何かに絡まったりと危険なのでスポンジシートがあればその上にサカナを置いて最初に脳天締めをして動きが止まった事を確認してからワイヤーを通して神経締めをします。次に鰓を切って鰓膜の心臓に繋がっている血管を切ってポンプで血と血のかたまりを出して行きます。血が抜けたあと肛門のところを10センチ位切り手で探って腸を出します。その腸の先端を切り、鰓膜から内臓につながっている奥にある膜を切って内臓を抜きます。美味しく食べるには腹を大きく切ったら切り口から水が入るのでいけません。特に真水はダメで塩氷でなるべく水が少ない状態にして大型クーラーにサカナを立てて保存します。水が増えたら抜いて氷を継ぎ足し4〜5日置いて熟成させます。なるべく包丁を入れるところを少なくして処理するのが大切です。

(松井)全身の力を出して取り込んだマグロ、その命をいただくわけですから美味しく食べたいですよね。お裾分け待っていますね。

本間氏のタックルデータ

ルアー CONTACT FEED POPPER 175

ロッド RippleFisher BIG TUNA 710 JAPAN Special BIG TUNA 83 JAPAN Special

リール SHIMANO STELLA 20000PG

ライン PE XBRAIDロンフォートオッズポート 10号  リーダー VARIVASオーシャンレコード180lb XBRAID スクラム16 50センチ

フィードポッパーのセッティングはフック前4/0 後3/0です。(推奨のST66等)海面の状況とコントロール(ラインスラッグのハリ具合)次第でしっかりと飛沫とカップ音も出せますし、ダイビングウォブラーの様に意識的に水面下を泳がせる事もできるので非常に使いやすいです。

ナローリフレクトのシリーズは、澄み潮などの透明度が高い状況で大いに活躍します。できれば、この形でのサイズアップした(200ミリオーバのサイズ)が欲しいところです。

前回6月11日の釣行でラインに関する問題点があったので今回はそれを改善しました。飛距離と操作性が特に問題で16ノットでリーダーをスプールに一回転半巻いた状態でキャストしていましたが、ライン放出時に障害となるバットガイドとの緩衝が激しく、数度のライントラブル(ガイドの巻き付けや、エアノット)にみまわれたので、今回はリーダーを200lbから180lbに変更して、スクラム16を50センチほど組みました。これで問題点はほぼ解消できましたが、今回のアベレージサイズであれば150lbでも問題は無いと思いますが、巨大サイズが来た時が問題で悩ましいところです。

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