「和歌山県日高川上流(龍神地区)の低活性のアマゴ攻略」

写真/文 松井謙二

「暑い!3月の上旬というのに、いったいこの暑さ何だ!」

前日の天気予報では今日の昼には今年1番の暖かさになる!と言っていたが、標高約600メートルの龍神村の山間でこんなに暑くなるとは思わなかった。

朝から着ていたゴアテックスのジャケットも、その下に着ていたセーターも脱いでウエーダーと長袖のTシャツ一枚。そんな真夏のような格好で釣り上がる吹田氏の写真を撮りながら上流へと歩いていく。

ここ日高川上流部の和歌山県日高郡龍神村は高野竜神国定公園にある。「龍神温泉」は島根県「湯の川温泉」群馬県「川中温泉」と並び日本三美人の湯として有名である。

また、山を超えて流れている県内の有田川と同じく、ここ日高川のアユ釣り解禁日は例年5月1日と日本で1番早く、全国から多くのアユ釣りファンが訪れる。私も昨年のゴールデンウィークはアユ釣り仲間6人で3泊4日でアユ釣りを楽しんだ。その解禁日にアユのオトリのカケバリに何匹かのアマゴが掛かってきたのだった。それから、かなり前になるが餌釣りの取材で上流部の小森谷に入り美しいアマゴを何匹か釣り上げた事もあり一度ルアーで龍神の本流を攻めみたいと考えていた。
「サカナも多いので、そこそこ釣れるだろう。しかし、私の考えはまったくもって甘かったのだった。

午前8時過ぎから椿山ダム上流、龍神地区では本流の下流部にあたる場所に入川して堰堤からの流れ込みや岩盤周りの淵を吹田氏は丁寧に攻めたが小型のアマゴが2度ルアーを追ってきただけであった。

魚の活性は低い。その要因は雨が降らず川は渇水である事、季節外れの暖かさで好天だが、その割には水温が8度と低いことか?とにかく釣れないので上流に入ろうと20分ほど車で川沿いを走り10時すぎに「龍神小学校」の前の入川道から河原に降りた。下流を見るとエサ釣りの人がいるので私達は上流に釣り上がることに決めた。

河原の砂地には釣り人の足跡がかなり残っている。ここに来る前も川沿いの道の駐車スペースのあるところには渓流釣り師の車が数台停められていた。今日は3月11日の土曜日で解禁日から11日経っていて、かなり釣り師が入っているのだ。釣れない要因は解禁日から水量が大きく増えるような事も無く、釣り師が多く川に入っているので釣れるサカナは当然釣られていき、残ったサカナはスレているのだ。
厳しい釣りになりそうだ。

「とにかく1匹の天然の美しい魚が欲しい!」今回はマクロレンズを持ってきているので美しいアマゴのアップの写真を撮ってみたい。

吹田氏とは昨年の5月に紀ノ川にサツキマスを釣りに行って、見事に彼は2度目の釣行でサツキマスをヒットに導いてくれた。渓流のルアーも彼と一緒に兵庫県の揖保川や鳥取県の千代川、奈良の天川など釣行しているが、何時も川には上流、下流と分かれて入るのでじっくりと彼の釣りを見るのは初めてだ。

最初のポイントは広い河原を流れる上流の瀬から流れが落ち込み広がって水深のあるトロ場である。吹田氏は河原に立ち、川から5〜6メートル離れた位置からやや上流の対岸の側にルアーをキャストした。                                    そして2〜3度トゥイッチを入れダウンクロス気味にトレースした。すると一投目からバイトがあったがフッキングに至らず。そして2投目はキャスティング位置を少し変えてキャストした。サカナは反応して再びルアーについてきたが流れの中に消えてしまった。そして立ち位置を変えて4~5回キャストしたが、反応が無いのでそのポイントを見切って上流へと移動した。

吹田氏も釣り人が多いのでサカナがスレているのは分かっている。あれだけ離れたとこからキャスティングしないと人の出入りが多いポイントではサカナは出てこないのだ。私もついつい釣り急いでポイントに近づきすぎてしまう事が多い。
これはビギナーやエサ釣りの人に多い行動だが、渓流釣りではポイントに近づき過ぎない事は基本中の基本で1番大切な事かもしれない。
川魚は特に外敵の鳥には大変臆病で、川を歩く釣り人の姿が水面に映れば警戒心を持ちエサやルアーに反応しなくなるのだ。

ルアーフィッシングはポイントに遠方からルアーをキャスティングして釣りが出来ることが利点だ。だからこそルアーをトレイスさせるポイントには出来るだけ近づかず回り込んでキャストする。そして、1投目でサカナがヒットする様にキャストする立ち位置を決めるのが大切だ。

解禁当初はまだ水温が低く魚の動きも活発では無いので、浅くて早い流れの中にはサカナは少ない。川底に大きな石が入っていて水深があり流れが広がっているとこがポイントになる。

しかし、エサ釣りの人が叩いた後のポイントではサカナの出るのが少ない。
吹田氏はエサ釣りの人がサオの出せないブッシュの下や仕掛けが届かない遠いポイントにもルアーを打ち込み通していく。

吹田氏のタックルはロッドがUFM バックウォーター6F、リールはダイワ2000番、ラインはナイロンラインの4ポンドでリーダの代わりにダブルラインを30センチ取りヨリをかけてスナップを付けている。                                     ルアーは基本ショートリップのバフェット43のフローティング、シンキング、バフェット ドラス43(シンキング)をポイントによって使い分けている。
今回はバフェットのディープでヒットさせた場面もあったが、確実にサカナが深いレンジにいる時しか使わない。
ショートリップでもシンキングルアーならポイントへのルアーの入れ方を変えたら十分釣りは成り立つ
。ルアーを流れの芯にキャストしたら当然流れが早いからルアーは沈まない。芯から外れた流れの緩いところにルアーをキャストしてある程度沈めてから流れの芯にルアーをクロス気味に入れるとある程度の水深は攻める事が出来るのだ。

ポイントを変えながらテンポ良く釣り上がってきたが魚の出かたを見て今回は盛期のように芯にはサカナがいないと確信した彼はアップストリームの釣り方よりもダウンクロス気味にルアーをキャストしてゆっくりとルアーを引くことを心がけた。                  どうしても盛期の釣り方の下流から上流の流れキャストするアップストリームの釣り方はルアーの泳ぎが早くなってしまい、サカナがルアーを追いかけてきても捉えられないのだ。     とにかくサカナが出てくるだろうポイントに長くルアーを引いていたい。

狭くて早い流れの瀬の落ち込みから繋がる深い流れのポイントに吹田氏はポイントからかなり離れてその上流の絞り込みに立ち位置を決めた。ややダウンクロス気味に流れの芯を外して上手くキャストした。小さなトゥイッチを2回入れてバフェット シンキングをゆっくりとポイントに通した。「ヒット!」

20センチほどの美しいアマゴだ。浅瀬の脇に石でプールを作りしっかりマクロレンズでシャッターを切った。シルバーの鱗の反射がとても眩しくて美しい。

そして再び釣り上がり小型のアマゴを流れの落ち込みからヒットさせたのだった。

翌日は私も昼からロッドを握った。今回はポイントも比較的流れが穏やかなところでルアーを見せる時間と食わすタイミングを多くとったダウンキャストでのヒットが多かった。

吹田氏曰く「やっぱり1番いいサカナを釣りたい!1番いいサカナは1番多く餌が取れる1番いい場所をテリトリーとしている。もし、ポイントの手前で他の魚を釣ったとしても自分が狙っている1番いいサカナに警戒心を与えたらそいつは釣れない。いつも立ち位置を考えて1番いいポイントに信頼できるルアーをキャストしてトレースできるように一投で食わせたい!」と。

まさに、「一投一魂 !」の釣りだ。    

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