「魚にルアーをロックオンさせるように、朝マズメは大きなルアーでその存在をしっかりと見せる!」

「吉田裕彦のベイエリア青物ゲーム」

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写真/文 松井謙二

「本当に時代と共に変わりましたね!今、うちのお客さんもチヌ釣り、ハネ釣り、他の小物釣りのお客さんが減ってしまって、沖堤で若い子がやるルアーフィッシングばかりが増えてね。今、ブリやハマチが釣れてるでしょ!ショアジギって言うの?そのお客さんが多くて昨日は2番船まで出したのよ!」と久しぶりに会った、昔からなじみのヤザワ渡船の奥さんが私に言った。

そんな青物狙いの若いアングラーで満員、熱気ムンムンの渡船の中に私と吉田氏の姿があった。
「家から1時間あれば余裕で来れる場所なのに、4時からの受付で1番船に乗らないといけないので2時30分に出て来たからね、波止に上がるまでの時間が長いですね」と私が言うと
「私も家から30分かからないのに渡船乗り場へ着いて竿を出すまで3時間やからね。その時間があれば南紀まで走れそうやね!」と吉田氏は笑いながら言った。
実は私達2人は先週もこの渡船に乗って、ブリの回遊で賑わっている波止に渡り動画の撮影をしていたのだった。
吉田氏はその前週にもこの沖波止に上がってメーターオーバーのブリを釣り上げたのだった。
この写真はすでに、この「PROTTYPE_FILE」に上がっているが、今回は吉田氏の港湾の青物の釣り方を掘り下げてレポートしたい。

前週の動画撮影時は吉田氏は、夜が明けてから魚のボイルが多く見られる中で「ファルケ9.5センチ30グラム」を遠投してハイスピードで巻いて、キレのいい左右のウォブリンクアクションでメジロサイズをヒットに持ち込んだ。
港湾での青物釣りをしっかりと自分のものにしている吉田氏だ。



でも、よくよく考えてみると、昔からロケーションが素晴らしい南紀や中紀を軸として四国や紀東にも釣行し、人のいないところ、人と会わない釣り場に行ってヒラスズキや青物狙いのポイントを開拓してきた吉田氏が今、どうして、こんなに人の多い激戦区、それも大阪湾のど真ん中の沖堤で釣りをするようになったのか?
興味が湧いたので吉田氏に聞いてみた。
「そうですね!昔から人の多い釣り場は嫌いだったんですが、南紀や中紀を中心に関西各地に釣りに行って、新しいポイントを開拓していくのが私の釣りだったんですが、それが何年も釣りをしてるうちにその考えも一周、2周と周って人と横並びで釣るような港湾の釣りも自分の釣りのジャンルに入ってきた感じです。
以前から泉南方面や明石方面の波止には青物が回遊してきたらサワラ釣りも含めてちょくちょく行っていたんです。
一言で大阪湾と言っても場所によって水の色も違うし、潮の流れ方、ベイトも違ったりするので、波止の釣りと言っても、その日の状況の見極めが本当に難しい。
そして、ここ数年ぐらい前から大阪湾の湾奥にあたる南港の沖堤にまでブリが回遊するようになり、大型青物とのゲームが楽しめるようになった。
ここの沖堤も3週間連続で来ているのですが、まったく同じパターンで釣れると言う事はありません。
自分が信頼のできるルアーを使って、新しい食わせのパターンを見つけることが面白くてね。
人も多いので人的プレッシャーもありますが、人が多くて横並びの時は、釣り負けしないように!と、凄く負けん気が出ます。」と吉田氏

そんな吉田氏に話を聞いているうちに目的の波止の先端にある船着きに到着した。
多くのルアーマン達が我先にと人気のポイントに向かって行く。
私と吉田氏は人の多いところは避けて先週釣りをしたポイントまでタックルとカメラ機材、クーラーを持って船着場から200メートル以上歩いた。
50人近くの釣り人はいるのに、ここまで来れば私たちの周りには釣り人は1人もいない。
「青物は、波止の沖や足元を幅広く回遊するのでどこでもヒットするチャンスはあるのですが、先端付近の100メートルに人が集中しますね!釣れない人も多いですよ、魚は水面を意識していて上ずっているのに、ジグやバイブレーションを投げている。状況判断ができていないアングラーも多いですよ!」と吉田氏。

まだ日は明けていない。
吉田氏はリップを折り、フックも推奨フックより軽いST-46の#2/0をセットして、あまり潜りすぎないようにチューニングした大型ミノー BKF175を取り出した。このルアーは先々週に吉田さんがメーターオーバーのブリをキャッチしたルアーだ。
まだ薄暗くナブラやボイルも出てない中で、ビッグミノーを沖にキャストしてスピードを少し殺しながら表層をゆっくりテロテロと泳がせている。
手前にルアーが来るとロッドを少し倒して、ルアーの泳ぐレンジをキープしながら、最後はゆっくりと浮き上がらせ水面を引く。
2投目、「ガバガバ!」と薄暗い水面を破る大きな音と共に吉田氏のロッドが絞り込まれた。
始めはドラグ音と共にラインを引き出すやり取りが続いたが、吉田氏のファイトは何度も見ているので、タモ入れの手伝いも無く安心してカメラのシャッターを切った。
やがて、吉田氏の差し出す大型ネットに入ったのは、よく肥えたメジロサイズだった。


吉田氏に何故にこのルアーを選んだのか聞いてみた。
和歌山県の南紀の磯に何度も青物を狙いに通っている時に、夜明け前からベイトもいて魚の気配を感じるのに、中々チャンスをものにできない日が続いた。
通常、青物狙いではリアクションや見切られないようにルアーを早く動かすのが定番だと思っていたが、逆に朝まずめの薄暗い中でのほんのワンチャンスのとき、ベイトが逃げるような速巻きのアクションでは無くて、逆にルアーとしての存在を魚にしっかりと見せてやった方が良いのでは?とBKF175を大きな魚がフラフラと泳いでいるように演出すると見事にヒットに導いた。
その後、薄暗いまずめどきにはこのパターンで、何度もチャンスをものにした。
そして、吉田氏の朝まずめ青物狙いの定番のテクニックになった。
魚は大きくなるために多くのエサを捕食しなければならない。
そして、大きくなった魚は小さなエサを多く獲るよりも大きなエサを獲る方が効率がいいのだ。
そこで、大きな魚には大きなルアーと言う考え方。
これは、外洋に面した磯でも大阪湾の波止でも一緒で、朝まずめは魚にルアーの存在をしっかりと見せてやるのが大事。だから、大きなルアーを選ぶ。

日が明けてからのボイルやナブラは先週に比べて大変少なかったが、潮が再び動き始めた9時30分頃に射程圏内で単発のボイルか始まった。
吉田氏は先程釣ったBFK-175から少し小さい、といっても16.2センチの大型ミノーのK2F162T3にルアーをチェンジしてボイルの起こった近くにキャストした。
今度はスローではなく、比較的早いスピードで表層を引いて2匹目のメジロをヒットに導いた。


ナブラやボイルが少ない中で確実にヒットに導く吉田氏に、ショアからのナブラやボイルの攻め方を聞いてみた。
「ベイトが多い時のナブラは、そのナブラの進行方向や真ん中にルアーをキャストしますが、今回のような単発のボイルが1番釣りにくいのです。単発ボイルの時はタイムリーにその場所に投げても遅いことが多いです。先程、沖で1匹のベイトフィッシュを1匹のブリが追いまわしていたでしょ。だから、そのブリが餌を獲ったらボイルは終わりです。
だから、一度落ち着いてからそのボイルの近くでまだ餌を獲っていない他のブリがエサを探していると仮定してその近くに投げます。
そして投げたルアーに単発ボイルをさせる。魚をルアーにロックオンさせる事を意識してルアーを動かします。
そんなときの魚はボイルの後、潜ったとしても上を見ていてベイトを見つけたら即座に水面にベイトを追い込みます。
単発ボイルは大きなルアーで大きくアピールした方がヒットの確率は高いし、表層のレンジをキープしているミノーは食わせやすいんです。」と吉田氏

エサ釣りは魚の食いが渋い時にはハリを小さくしたり、エサを小さくする傾向が強い。
最近の海のルアーフィッシングにも似たような傾向が見られるようにも思う。
それとは逆に、大きなルアーで大きな魚を釣るのがルアーフィッシングの醍醐味。
そこに夢があるのではないか!。


TKLM140Gも吉田氏の青物釣りに欠かせないルアーだ!