激しぶの淡路島のタチウオゲーム、RBでなんとか一本!

写真/文 松井謙二

釣りには大きく分けて2つの楽しみ方がある。1つは良く釣れるポイントに行って狙いの魚を数釣る楽しみだ。具体的にはショア、オフショアに限らずサカナが群れで行動していて絶対数が多い場合。数を釣るためには釣りでのトラブルが無く手返しを早くしたい。そのためにはそのポイントの状況に合わせて仕掛けを選ばないといけないし、エサでもルアーでも1番ベストな物を選択する。そして釣り人はサカナの数を堪能すると、次はその中で大きなサカナへと欲が出るものである

もう一つの楽しみは条件が悪く釣れていない中で目標の魚が1匹でも釣れた時の喜びだ。数の釣れない大物釣狙いもこれにあたる。釣り人の多くはサカナの釣れている状況に合わせて釣行日程を組めない事が多い。したがって釣行日にポイントの潮回りが良く、天候も穏やかな日を選んで行くのは難しいし、条件が悪い日に当たることも多いのだ。だから魚が食いしぶる中で試行錯誤しながら自分の釣りを組み立てて、なんとか狙いのさかなを1匹釣り上げた喜びと言ったら当然数が釣れる時の1匹の重さが違ってくるものだ。

先の9月6日は「フィールドレポート」の取材において吉田裕彦氏と大阪湾の南端にある岬町海釣り公園「とっとパーク小島」において、タチウオの時合いが来るのが遅いながらもローリングベイトでいい取材が出来た。その後も吉田氏や武田氏のレポートを見ていると泉南方面のタチウオは、小島から岸和田にかけてもよく釣れていたので「次回の取材は他の場所へ?」と考えていると昔タチウオが良く釣れた淡路島の東側が頭をよぎった。取材をお願いするのは淡路島在住の瀧本博和氏だ。電話を入れると「松井さん、淡路も9月の上旬はかなり釣れてたみたいですが今は渋いらしいですよ!会社の若い子がタチウオ釣りに良く行っているので情報を入れときます。」との返事をもらい、あまり釣れていないと言う答えの中で取材日を10月14日の土曜日に決める。しかし、その日はあいにくの雨となったので、1日づらして15日の日曜日、午後3時に洲本の少し南にある古茂江のコンビニで待ち合わせた。古茂江の埋立地は昔からリゾート地として完成されていてホテルやリゾートマンションが立ち並ぶ。その東向きの海側には車がなんとか2台通れる道が続き、釣り場はテトラの上となるがポイントに車を横付けできるのだ。瀧本氏に案内されて車を停めると、瀧本氏の会社の若手の東原君と、その友達の山形君が釣りをしていて場所取りをしていてくれたのだった。古茂江は人気がある釣り場でタチウオがよく釣れればテトラの上は人で混み合う。

早速、4人集まってタチウオを釣るための作戦会議だ。実は瀧本氏は昨日の雨のなかで状況を得るために釣りをしてくれた。結局タチウオは釣れなかったので状況はかなり悪い。今から夕まずめに入るまではスチールミノーとP-Boy スタンダードで遠投して広範囲を探りタチウオを狙う。日が落ち始め夕まずめに入ったらリーダーの上部にケミホタルを付けてルアーをローリングベイトの88、77に変えて狙う作戦だ。

南側のテトラの上に山形君。中央に瀧本氏。北側に東原君が釣り座に入る。潮回りは新月の大潮で潮は南から北に流れている。5時までの約2時間の明るいうちにはタチウオは釣れず、北側でキャストを繰り返していた東原君がエソとフグを釣り上げた。彼は私が来る前にツバスを1匹釣ったと言うので、今日は3人の中で1番サカナっ気はありそうだ。

やがて陽はゆっくりと落ちて行きタチウオ釣りでは1番の好時合いの夕まずめを迎える。3人ともにルアーをローリングベイトに変えてキャストを繰り返すがアタリは遠い。それでもタチウオ狙いの釣り人が少しづつテトラの上に増えてきた。

淡路島でのタチウオ釣りは昔に志築の埋立地で数を釣った事があるが、それ以外はまだ明石海峡大橋も神戸淡路鳴門自動車道も無い30年以上前に淡路島にはフェリーで渡っていた頃の事だった。淡路島はその頃は大型シーバスの島だった。西高東低の真冬の気圧配置の西風ビュービューの中で淡路島の西側の漁港に真っ黒になるほどイワシの群れが入ってくる。当然イワシ付きの大型シーバスも入ってきて陽が登りだし夜明けを迎えるとイワシのすごい数の群れが漁港の外に出て行くのだ。そのシーバスを漁港の先端で待ち伏せしてルアーをキャストする。そんな時は決まってシーバスより早くヒットするのは指4本以上ある大型タチウオだったのだ。そして何故かタチウオのアタリが遠のくとシーバスが釣れるパターンだった。そんな昔の事を思い出しながらカメラを持って、キャストを休まずに繰り返している3人の後ろの堤防の上をゆっくりと彼らの釣りを見ながら歩く。確実に今、海峡を挟んで見えている泉南方面はタチウオがよく釣れているのに、何故に淡路島の東側は釣れないのか?  9月の上旬は東原君も山形君もクーラー満タンにした!と言っていた。やはり、ベイトが入ってないのか?  潮回りが大潮だからか? そんな事を考えて3人の釣りを見ながら堤防の上を行ったり来たりする。1人づつの釣り方をしっかりと見ていると、共にリーダーの上部にケミホタルをつけて、その下50~80センチにローリングベイトを取り付けているのだが、リーリングスピードとレンジの取り方に違いがあるのがはっきりとわかった。それは、彼らがキャストしたのちに沖に漂うケミホタルを見ていると確認できた。南側の山形君はキャストしてからルアーの引くスピードが速い。釣れない時は、とにかくキャストの回数を増やして1匹でも!と思うと何故かリーリングが速くなってくる。当然、レンジは浅くなる。中央にいる瀧本氏はそれよりもゆっくりのスピードで釣りを組み立てている。そして、北側の東原君のケミホタルを目で追っているとキャストしてラインスラッグを取り、出来るだけ仕掛けを潮に馴染ませて水中にあるケミホタルが見えなくなるまでローリングベイトを沈めて、超スローでリールのハンドルを回してかなりの深いレンジを探っているのだ。そして中層まで落としたルアーを再び水面下1メートルぐらいにレンジを上げて、再びルアーを中層まで送り込む。テトラ側にルアーが来るまでその繰り返しだ。潮はゆっくりと北に流れているのでラインさえ張っていればローリングベイトはゆっくりローリングしている。ハンドル一回転5〜10秒でリーリングする。人は早いリーリングは得意だが、超スローでルアーを泳がすのは難しいものだ。

そして、日没から2時間「やはり今日は厳しかったか?」と思い諦めかけた時に暗闇の中で彼の力強い声が聞こえた。「きました!タチウオです!」  「抜きあげたらテトラの間に落とさず大切にしてにここまで持ってきて!」と私。彼がタチウオをカメラの前で差し出すのを夢中でシャッターを切った。「よかった、釣れてくれて!」山形君も瀧本氏もテトラから上がってきて東原君に激励を飛ばした。「その前のキャストで一度ルアーに当たって、同じところにキャストして一緒のレンジでヒットしました!」と東原君。まさに9回裏のさよならホームランだった。