信頼できるタックルでルアーを操作する楽しさと定番P-Boy Jigの新たな可能性

写真/文 松井謙二

私の親友である永井誠一氏の釣りに対する姿勢は20代の頃から現在の60代半ばにしてまったくブレが無い。

若い頃に夢中になっていた離島の磯でのスタンディングファイトの大物釣りは、本業(八百屋さん)の仕事が忙しく長期休暇が取る事ができないので断念したが、主力の釣りがオフショアのジギング&キャスティングに変わってからも週末や市場が休みの水曜日には元気な若手を連れて4~5人のメンバーでハイエースに乗り込み未だに片道500キロ以上の片道6時間の日帰り釣行をこなしている。
今回はそんな永井誠一氏の日帰り遠征、山口県「景漁丸」(野口 TEL.090-2110-1768)のツアーに参加して永井氏の弟子の本間 啓嗣氏のジギング&キャスティングの取材をさせて頂いた。

京都市内から4人を乗せて出発したハイエースは、私を拾うために新名神宝塚北インターに3月28日 PM10時30分に到着した。「松井さんは永井さんと一緒に車の後部で横になって寝ていて下さい!運転は私達が交互にやりますから。」と本間氏。 そして、私たちを乗せたハイエースは中国自動車道の神戸北区から山陽道に入り岡山、広島県を経由して約5時間で山口県の美称インターに到着。そこから国道435号に入り約1時間かけて「景漁丸」が出船する下関市豊北町の特牛港(こっといこう)に到着した。

港に着いて約15分で「景漁丸」の野口船長の軽トラが氷でいっぱいにした大型クーラーを積んでやって来た。実は野口船長も永井氏の弟子にあたり、ここにくる前は京都中央卸売市場でミカン担当のサラリーマンをやっていた。釣りが大好きで山口県が行なっている漁業研修を2年間受けて、船を買って漁師になり結婚して、今は遊漁船もやっているのだ。

5人のタックルを積み込み「景漁丸」はまだ陽が上らないうちに出港した。
特牛港は山口県の観光名所の「角島」の南東方向に位置する。角島は2000年に開通した1780メートルの角島大橋が有名でコバルトブルーの美しい海に伸びる橋はフォトジェニックで車のCMやドラマなどにもよく使われ、島には「瀬崎陽の公園」「大浜海水浴場」「角島灯台」などがあり観光客で賑わっている。
島周りはショアからアオリイカやヒラマサ、ブリも狙える。
その角島沖には15分ほどで着いた。島のバックにシルエットで見える東側の長門川尻岬から陽が登り始めた。今日は好天で風も無く暖かくなりそうだ。

「今日の潮は満潮が午後2時ですからサカナが喰ってくるのは1時〜3時の間です!」と野口船長。本間氏を含む3人がキャスティングの用意をする。
船長の話では今のベイトは10センチ前後のイワシで、イワシの数も例年よりもかなり多く、それを食べている青物は丸々と肥えて脂が乗って美味しいらしい。
しかし、船長の言葉とは逆に海原には鳥がまったくいない。
「ベイトは潜っているのだろうか?」

本間氏のキャスティングタックルはロッドがリップルフィッシャー アクイラ85 リールはSWステラ18000HG メインラインがPE7号に180ポンドのナイロンリーダーをとり、その間にスクラム16を50センチとりシステムを組んでいる。スクラム16を本線とリーダーとの間に入れる事でガイド絡みなどのトラブルを防ぎ、キャストする時指先をかける位置をスクラムに持って行きPE本線のダメージや毛羽立ちも防いでいるのだ。
ルアーはコンタクトブリット170フローティングに前のフックに3/0 後方に4/0を付けて水面ギリギリを引けるように調整している。ロッドも大型魚のロッドの中ではティップも柔らかくルアーを水面に絡ませやすく泳がせやすいとの事だ。
「景漁丸」は角島の沖を通過して本命の汐巻のポイントに着いた。
本間氏のキャスティングは持ち前のパワーと使い慣れているバランスタックルで飛距離は申し分ない。丁寧にゆっくりとしたリズムでコンタクトブリットを泳がせている。
しかし、3人が投げているトップウォータープラグにまったく反応は無い。
しばらくして船長は角島グリ周辺にポイントを変えた。
本間氏はルアーをフィードポッパー175に変えてキャストする。ロッドアクションでラインスラッグを出してスプラッシュをたて、深場にいる青物にアピールを繰り返すがヒラマサやブリの反応は無い。
そんな中で右舷のトモでジギングをやっていた永井氏に青物がヒット! 中々のファイトを見せて丸々と肥えたブリが船長の出すタモに入った
それから、野口船長は再び汐巻に戻り、午前11時頃から全員でジギングを開始した。

早朝はまったくいなかった鳥が少しずつ増えてきて潮目の上を飛んでいる。グライダーのように羽根を広げて滑空して海面近くのブリやヒラマサを探しているのだ。その鳥がドンドンと増えて来ているのだ。鳥も青物が出てくる時合いを知っているのだ。行き当たる鳥の数で海域のサカナの量がわかると言われる。鳥の群が小さければサカナは散ってバラバラで、鳥の数が多ければサカナも多くいるのだ。
とすると、鳥が増えてきたと言う事は野口船長が言っていた1番サカナの食う時間帯、1時~3時は当たっている。そして、「潮が緩む瞬間が、その中でも1番食ってくる!」と。
これは、今からのジギング、そして夕方のキャスティングは期待が持てそうだ。

本間氏のジギングタックルはロッドが がまかつジグレヴォS62ULF とLF リールがステラ20000番 PEライン2号にフロロカーボンのリーダー40ポンドを4ヒロ取っている。
ロッドは永井氏がプロデュースしたものだ。
ジグはP-Boy Jigバーチカルの150グラム 125グラムを潮の速さと水深で使い分けている。
どんな釣りでも使うタックルのバランスが大切だ。
オフショアのジギングとキャスティングはロッドの調子、リールのラインキャパとハンドル一回転の巻量、ラインそれらのタックルバランスによってルアーの動きを最大限に引き出しサカナにアピールできるのだ。
でも、最近ではある意味で情報が氾濫していて「あのジグはよく釣れる!」「このラインは低伸度だからヒット率が高い!」「あのメーカーのロッドは人気がある!」と言うような1つのパーツだけでタックルの判断する傾向が強い!と永井さんは指摘する。
道具は使い込んでこそ、その性能を引き出せるし、タックル全体のバランスを操作するアングラーの技量がともわなければ100%以上の性能は発揮できないと。
リール、ロッド、ライン、フック、ジグ、プラグとそれぞれクセがあるので、その辺りを理解するまで、とことん使い込むことだと。 

そんな永井さんを師事する本間氏はとことんそれらのタックルを使い込んでいる。潮を読んでルアーを入れる投入点。ボトムからジグを引き上げる時に伝わってくる潮の重さ。潮が変わる水深。サカナが食ってくるだろう水深など。サカナをかけるヒントは自分が使いこなして使い慣れたバランスタックルから指先に伝わり次々と自分の頭に飛び込んでくるのだ。 

そして本間氏は船のミヨシでサカナをヒットに導いた。
「ブリ? ヒラマサ?」と尋ねると「青物では無いですね。たぶん底物かなぁ!」と彼は決して慌てる事はなくサカナをゆっくりと水面に導いていく。皆んなの視線がミヨシに集まる中、水面にに浮いてきたサカナを見てびっくり!。
船長の差し出すタモに入ったのは座布団ヒラメ。それも93センチ 6.5キロの大物だ。

そのヒラメをきっかけに時間が経つに釣れサカナの食いが立ってきた。永井さんもブリやメジロを連続でヒットさせて、他の二人もタングステンのジグを使い電動リールのジギングでタイやブリを釣り上げていく。本間氏はP-Boy Jigバーチカルでブリやメジロ、大型ガシラを釣り上げた。私もP-BOYバーチカルでる乗っ込みのの美しいタイを釣り上げた。

それにしてもP-Boy Jigバーチカルは、流石に西日本のブリ系青物の定番と言われてきただけにイワシがベイトの時の威力は凄まじいパワーを見せつける。30年前からのジギングの広がりはこのジグと共に広がった!と言っていいだろう。
当時のジグの中ではフォーリングスピードは1番。さらにボディには強烈にリフレクトアピールするプリズムシートに加えて、暗い水中でも目立つ夜光アイがある。そして、独自の薄み設計が切れ味鋭いジャークを可能にして、キャスティングではズバ抜けた遠投性を生みだした。考えてみれば現在は狙うサカナやフィードによってジグの細分化が進んでいるが、こんなに幅広い使い方が出来るジグは少ないのだ。また、青物だけでは無く多くの魚種が釣れるのもP-Boy Jigバーチカルの特長だ。

ラスト1時間、汐巻のポイントにいる鳥の数は無数になり、あちらこちらでブリがイワシを押し上げるナブラが起こった。
本間氏はジギングを十分に楽しんだのち再びキャスティングロッドを握った。ベイトとなるイワシが小さいのでコンタクトブリットのサイズを170から145に落とした。
早朝のキャスティングでは鳥やナブラのない中で、いかに中層やボトムにいるサカナにアピールできるように飛距離を稼いでブリットやフィードポッパーを丁寧に操作したが、今は小さなナブラが随所に見られるので、彼はミヨシに立ちナブラが十分に射程距離に入るのをリールのベイルを起こし指にラインを掛けてその時を待った。
しばらくしてミヨシから10時の方向にナブラがたった。
「ヒット!」一発だった。ナブラのど真ん中に入ったコンタクトブリット145のファーストアクションにスーパーストライク!
射程距離に入ったサカナを銃砲で弾丸を発射して水面が爆発するナブラ撃ちはまるでハンティングだ。

今回の山口県 角島沖の汐巻での釣りはキャスティングとジギングの本間氏の釣りを取材させて頂いたが、自分が使い込んだ信頼できるタックルで思い通りにルアーを操作する楽しさと、定番と言われていたP-Boy Jigバーチカルの多様性に新たな可能性を再確認できた釣行であった。

                       

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