【Field report】「タイジグ タイジグスリムでのスローピッチジャーク ロングフォールジャーク」

写真/文 松井謙二

昨年の8月4日に、このField report「本林将彦の夏磯 青物のライトパターン攻略」の取材で兵庫県南あわじ市の沼島の磯を訪れた。

今回は、その沼島への定期船が出る淡路島 灘の土生(はぶ)で定置網漁を営む山本船長の「清祥丸」で野田信也氏のタイ釣りの取材を行った。

去る8月23日 午前5時過ぎに土生港に到着した。
その時刻が大潮の満潮時と重なって潮は目一杯上げていて、港の岸壁に横付けされた「清祥丸」にタックルを積み込むのは容易かった。

「今は満潮時の潮止まりでこれから引きに入り潮が動き出すから、初めに鳴門海峡の南東側のポイントから攻めて、その後に沼島の周りのポイントや灘の漁礁に行きたいと思います!」と山本船長

山本船長とは野田氏も私も年齢も近く30年近い付き合いで、何時も「あきちゃん!」と呼んで釣りでの無理を聞いてもらっている。

土生港を出港して「清祥丸」は20分位で最初の鳴門海峡の南東側のポイントに着いた。昨年の春から続いて3度目の「タイジグ」でのタイ狙いの釣行だ。野田氏は今回は狙うポイント(南あわじの灘沖)は水深が40メートルまでと浅いので、PE0.6号にリーダー5号を3ヒロのスピニングタックルを2本(タイジグスリム30グラム タイジグ40グラム専用)PE0.8号にリーダー5号を3ヒロのスピニングタックルを1本(タイジグ60グラム専用)の計3本のタックルを用意した。

水深が浅くポイントの上をドテラで流す場合はジグを斜めに引いてくるのでスピニングタックルが扱いやすい。リーダー5号を3ヒロ取るのは、根がかりや魚とのやりとでリーダーにキズを見つけたら傷んだ部分を少しずつカットしてリーダーを短くしていく。船上でシステムを組む手間をなるべく避けるためである。

操船している船長の横で魚探を見ると根の上にかなりのベイトの群れが集まっている。

「このベイトがもっと魚に追いかけられてバラバラに写っていたらすぐにタイや青物は釣れるけどなぁー」とあきちゃん。

分厚い雲で、いままで隠されていた朝日がその雲の切れ目から顔を出した。海上では視野を遮るものは無いので、素晴らしいロケーションの中で朝日も夕日も見ることができる。今日もこの大自然の懐の中で、自分の釣りが始まると思うと期待で胸がいっぱいになる。

淡路島の福良港から4~5隻の遊魚船もこのポイントに集まって来た。それらの船のほとんどが、今、流行りの「落とし込み釣り」の遊魚船だ。「落とし込み釣り」はイワシやアジ、小サバなどのベイトの群れが集まっているポイントに落とし込み専用仕掛け(仕掛けの1番下がオモリでその上に4~5本のサビキが付いている。そのハリはベイトを釣るために小さいながらも太軸のしっかりしたブリやヒラマサなども漁れるハリで、平打ちでキラキラ光るもの、フラッシャーやバケなど付いている物があり、そのハリにイワシやアジのベイトが食いつき、それを狙っている魚の層まで落とし込んで青物やタイ、底物などを釣る。そのハリに食いついて泳いでるベイトが急に暴れ出すと穂先にその動きが伝わり大型魚にベイトが狙われてるのが分かる。それが前アタリで食いつけばドカーンと一気にサオ先が入る。

青物やタイを狙うのにエサが要らないので人気の釣りだ。

ただし、今、私たちの船の側にいる遊魚船を見ていると、時折りサオが大きく曲がって電動リールの「ウィーン」と言う音と一緒に上がって来てタモに入るサカナはツバスサイズからメジロサイズの青物ばかりである。

タイの気配はあまり無さそうだ。

野田氏も一度バイトはあったが鯛ではなく青物かも知れない!と言っている。

ここで野田氏には申し訳ないが本命のタイを狙うのは彼に任せて、私は一度やってみたかった「タイジグ」「タイジグスリム」を使ってスローピッチジャークとロングフォールで青物を専門に狙ってみる事にした。

7月には和歌山県の串本で宇井氏の船に乗せて頂き「タイジグ」「タイジグスリム」でアカハタやオウモンハタをかなり釣らせていただいた。とくにアカハタはボトムにジグが着くとすぐに2~3メートルジャークして小刻みにフォールを入れてかなりヒットさせたのだった。あのスローピッチジャークの生みの親の佐藤統洋氏が言うように多くの魚の7割がフォールで食ってくる。

「タイジグ」は蛇行しながらヒラヒラと水平フォールで落ちていく。

「タイジグスリム」はそれよりも早く水平フォールで落ちていく。

両ジグ共にロングフォールで青物を釣るのにはピッタリのジグだと私は想像していたのだ。

それを今回、実証してみたいと思った。

早速、PE1.2号 リーダー6号のベイトタックルで「タイジグ」ブルーピンクの60グラムにアシストとテールにフックを一本づつ取り付けて青物を狙う。

スローピッチジャークは出来るだけジグを横に飛ばしてジグザグに動かす。そして、下から上への鉛直移動を抑える事で魚にジグを見つけてもらいやすくする釣り方である。そして、魚にジグの存在を知らせるには、魚に対してジグを大きく見せてやる。そのためには魚のいる方向に対してジグを水平にする必要があるのだ。

ハタ類やヒラメなどの底物は、いつも上から落ちてくるものを見ているので「タイジグ」「タイジグスリム」はフォールで食わせやすいので底から10メートまで上げて、また落とす釣り方で。

青物の狙い方としてはジグが着底するとなるべく早いスピードでジグを数メートル跳ね上げては一瞬止めたり、少しフォールを入れながらジグを水面まで切れのあるジャークで上げていく。

すると、一度、水面までメジロサイズの青物がついてきた。

潮は緩く流れている。

ジグを投入して底を取り、なるべくラインスラックの出ないキレのあるジャークを入れながら15メートルほど上げて2秒ほどのフォールを入れた瞬間、ジグを引ったくって行ったのはよく肥えたハマチだった。

その後、船長はポイントを鳴門海峡の南側に移した。

水深は30メートル、潮は少し早くなったが60グラムの「タイジグ」で底はしっかりとれる。

ラインは斜めに入るがジグの着底から早いジャークを繰り返していると30センチに満たないシオ(カンパチの子)がヒットした。

潮止まりになったので、弁当を食べてから今度は沼島の南側のポイントに入る。

潮がまだ緩いので、今度はPE0.8号 リーダー5号のバス釣りのスピニングタックルで「タイジグスリム」の40グラム ピンクフルグローでやはり底から早いテンポのジャークで途中に止めを入れながら巻き上げていく。

すると底から7~8メートル上げたところでガッン!とヒット。

「多分、シオだと思うけどー。」と言って水面に現れたのは35センチほどのヒラメだった。

そして、船長はポイントを沼島の東側に移した。

そこで私は、ジグが着底すると大きなジャークでロッドをゆっくりと突き上げて、ラインを水面から2メートルぐらい出してフリーフォールで「タイジグスリム」を落としてロングフォールジャークを繰り返した。

すると水面から水中に入っていく白いラインがピタッ!と止まった。

これこそ、青物の食い上げが、自分の目で追いかけているラインに出たアタリ。

大きく合わすと、バスロッドを限界まで曲げてラインを何度も引き出して良型のハマチが船長の差し出すタモに入った。

今回、「タイジグ」「タイジグスリム」で青物を狙うなら「タイジグスリム」の方がフックがリーダーをひろうことは少なく、早いジャークからのフォールでも操作しやすいと思った。

水平フォールのスピードが「タイジグ」よりも早いのも、フォールで食わせやすいように感じた。

あまりに「タイジグスリム」でのロングフォールジャークが楽しかった(水面でラインの動きでアタリを取ることができる)ので100グラム、120グラムを作ってもらい明石のような深くて潮が早いところでメジロやブリ狙いで使ってみたい。もちろん「タイジグ」「タイジグスリム」はタイ狙いのために開発されたジグであるが、青物や底物をフォールで誘い食わせるのにも、持ってこいのジグだと思う。

タイジグのコンセプトに外れるかな?

長年の経験から1つだけ言える事は、魚は人が考える以上に大胆不敵でエサを食ってくる。そうなると釣り人の奇想天外な発想が必要になる。

釣りに絶対は無いし、完璧は無い。

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