実は…

まあ、過ぎ去った事なので笑い話としてお読み下さい。
 2008年に開催された横浜でのフィッシングショー当日の、朝の出来事です。

 前夜までに、初出品となるK2F142プロト及びディスプレイ用品を車に積み終え、あとは渋滞に巻き込まれないように早起きするだけでした。
 目を醒ましてからコーヒーを煎れ、新聞を拡げたたとき、いきなり咳き込みました。その時、新聞が真っ赤になったのです。それも一瞬、綺麗だなと思った程の鮮血でした。尋常ではありません。
 次に様々なことが頭の中を駆け巡りました。ついに来たか(ヘビースモーカー故の覚悟)、それにしても何という悪いタイミング。
 何しろ肝心の展示物を持っているのは私なのです。こんな状態では横浜まで(一時間半かかる)行けないし、担当が取りに来るには遠すぎる。夜の会合もキャンセルしなければならない。

 救急車を呼ぶことを考えましたが、このまま直ぐに死ぬとは思えなかったのと、近所を騒がせたくありません。それに横浜に行けなくなってしまいます。
 そこで、まずインターネットで症状を調べてみました。すると、症状をチェックしていくと対処方法が判るというサイトを見付けたので、指示通りにやってみました。
 チェックをクリックしていって、最後に血を吐きながらエンターキーをポン。目の前に、「早急に気道を確保すること、致死率50パーセント」なんて表示が!お先真っ暗、落ち込みます。見なきゃよかったと思いました。

 そして、直ぐさま社のショー担当へ、遅れるかもしれないと連絡して病院に急ぎました。テッシュBOXを抱えながら…。ここで正直に言うと、タバコを一服したのです。(イヤ正確には三服ぐらいか。しばらくは吸えそうにないのと、ヤケクソで。) そしたら、アラッ、血が止まったではありませんか。
 タバコが血管を収縮させるというのは本当なのだな、と妙なところで感心しました。……
 そこから横浜へ向かう道中にある病院に駆け込むことになるのですが、その大病院は、かつて私が大病を患った時に誤診があったところなのです。
 当然思い出しましたが、診療代も高めなせいか、空いているし、緊急なので仕方がありません。

 そして受付で一悶着。救急車に頼らず自車で来たせいか、急いでくれと言っても動いてくれないのです。これじゃ間に合わないと判断し、私がしたことは…。
 わざと咳き込み、受付カウンターの上に鮮血を吐いてやりました。(スミマセン)これで眠たげな受付嬢の態度が一変。にわかに院内に活気が出て来ました。アッという間に車椅子が用意され、医者や看護婦さんに囲まれました。
 ここでまた一悶着。
 ある程度ネットで調べていたので、私が先生に、血は黒くないので胃じゃなさそう、鮮血なので肺周辺を調べてみて、とにかく血を止めて欲しい、本治療は明日以降でいいと言ったら、どうも先生のご機嫌を損ねてしまったらしいのです。
 レントゲンはともかくとして、そこじゃないと言っているのに胃カメラまで飲まされるし、組織検査、血液検査と、直接関係の無いようなことが続くので、何かおかしいと思いました。
 後に聞いたら、何と早朝なので胃の専門医しかいなかったのだそうです。最初に言ってくれっ、てなもんです。
 検査結果が出るまで安静にしていればよいと言うだけなので、見切りをつけました。やはり病院を変えようと。
 幸い、検査室をハシゴしている間に吐血が落ち着いてきたので、安静にしつつ逃げ出すように横浜に向かうことにしたのです。高速を飛ばしながら灰皿のタバコを見ると、吸い口に口紅が付いているみたいです。これは誤解されるな、などと要らぬ心配をしながらもFショーの開場ギリギリに間に合ったのでした。

 あの時、タックルハウスブースに来場頂いた皆さん、実はこういう事があったのです。私はバックルームに隠れることが多く、恒例の関係者との夜の会合にもほとんど合流できませんでした。
 検査結果は?ご心配掛けてすみません。精密検査の末、判った事は、胃に異常は無く(アタリマエ)、血の数値はどれも正常で、エイズでもありませんでした。一週間ほどで症状は消えてくれました。
 本当の原因はお笑いです。年齢を無視して急に始めた過激な運動により気道内の血管が切れたのでした。
 思い当たるのは、K2Fを作り、使用するにあたって、もう一度若かりし頃の体力を取り戻そうと、直前まで走ったり、器具を使ったりと、相当の無理をしていたことです。それで身体が悲鳴を上げたというわけです。
 意志に身体が付いてこないのは情けないのですが、まあそんなものなのだと納得するしかありません。

 教訓…病院の選択は慎重に。またある程度の年齢に達したら身体を鍛えるのは徐々に、ということでしょうか。
 それと、たまにこんな事でもないと、人生が一度だけという大切なことを忘れがちになります。怪我や病気からしばらく遠ざかっていたので、私にとっては良いお灸になりました。

Posted by nino