【Field report】激変した根魚事情

〜 特にアカハタとオオモンハタについて 〜

写真/松井謙二 文/宇井晋介

ここ数年ショアジギングの流行やタイラバ、インチク、SLJの流行などで根魚ゲームの楽しさがクローズアップされている。その主役となっているのが、キジハタ、アカハタそしてオオモンハタだ。特に最近急速にメジャーデビューしてきたのが、アカハタとオオモンハタである。ショアからのジギングでも簡単に釣れ、オオモンハタはサイズも大きいので大人気となっている。

ところで、少し前からジギングを楽しんでいる人にとっては、この人気に少し違和感を覚える人がいると思う。私もその一人である。私は、ここ串本で30年近くルアーの釣り大会を主催しているが、簡単に言うと以前はそんなに高確率でアカハタやオオモンハタは釣れなかった。特にオオモンハタは、ここ数年一気に沢山釣れだした魚だと思う。最近はジギングやタイラバでのゲームをやると、十中八九この2種が釣れる。特にアカハタは異常とも言えるくらい高確率で釣れる。数年前からアカハタやオオモンハタの稚魚が異常に多いなと思える事が多かったのだが、その子供たちが成長して今の釣果を支えている。この原因として考えられるのが、海の温暖化と黒潮の流路。海の温暖化については今更話すこともない位あちこちで話題になっているが、ここ串本でも10~20年位前から目に見える形で生物相の変化が顕著になってきた。海の底ではサンゴの種類が変化して以前は見られなかった熱帯性のサンゴが今はごく普通に見られる。また、元々海藻が茂っていた海域ではウニやアイゴといった海藻を食べる生き物が急増して海藻を食べつくし、高水温の影響で海藻自身が枯れるところも少なくない。こうした所では、キジハタに代わってアカハタやオオモンハタが進出してきている。

ここで少しこれらメジャー級のハタについて見てみよう。実は、この3種のハタはそれぞれ生態が異なる。まず高水温への適応から言うと、キジハタが最も適応性が低く(冷たい水を好む)、アカハタやオオモンハタは適応性が高い(高水温を好む)。ハタの類は元々熱帯性のものが多く、沖縄や奄美などへ行くと、実に様々な種類が存在するが、北に行くほどその種数は減っていき、瀬戸内海や日本海等ではほぼキジハタ一色になる。カジメやアラメ等のコンブの仲間が生えるような海藻の森はキジハタの好む環境である。

一方アカハタやオオモンハタは暖かい海を好む種であり、サンゴの生えるような温かい海が彼らの好みの海である。主に太平洋沿岸の南の方が彼らの主な生息域で、数は少ないが日本海側でも富山湾辺りまで生息する。

ところが、近年この勢力圏がどんどん変化してきた。南方種であるアカハタやオオモンハタが北に勢力を広げ初め、キジハタもまたさらに北に勢力を広げている。だから今のアカハタやオオモンハタの生息域は、比較的近年になって拡大してきたものなのだ。キジハタの生息域も従来の北限域を超えて北海道にまで達している。最近ブリの生息域がどんどん北に広がり、かつてはサケがとれていた網がブリで一杯になるという事が普通になっているが、ハタの仲間でも同じことが起きている訳だ。

アカハタとオオモンハタの生態の違い

アカハタとオオモンハタは色彩を除く姿形は似ているが、その生活スタイルは全く異なる。それは尾びれの形を見れば分かる。アカハタの尾びれは先端が丸くなってうちわの様な形をしている。一方、オオモンハタのそれは三角形で尾びれの上下端が長くなっている。中央が丸くなっている尾びれは一瞬のダッシュ力はあるが長時間の遊泳には適さない。一方、両サイドが伸びた尾びれは遊泳力が強く長距離の移動にも向いた形である。

アカハタは海底近くにホバリングするか海底に着底している事が多いが、オオモンハタは絶えず泳ぎ泳ぎ回り、小魚の群れを追い回している。必然的に獲る餌も異なり、海底付近を主な狩場とするアカハタはカニやエビ、タコ、ゴカイ類などを主な餌とし、遊泳性のオオモンハタは小魚やイカなどを主な餌とする。私がつい先日釣った50オーバーのオオモンハタは、なんと水面を飛ぶことで有名なトビウオを口から吐き出した。かつて、水面を泳ぐトップルアーでも釣ったことがある。これらの習性の違いから見ると、その狙い方もおのずと見えてくる。アカハタは海底付近を泳ぐエビや小魚に似せたタイラバやインチク、ワームなどが効果的で、ヒラヒラと落ちるようなセンターバランスのジグなども効果的である。一方、遊泳性のオオモンハタではこれらのルアーに加えて、中層を泳ぐミノーやジグヘッド+ワーム、バイブレーション等のルアーでも狙う事が出来るという訳である。