トラウトミノー、現在に至るまで。

今回は、創業時から製造を続けているツインクル以降、タックルハウスのトラウトミノーがどのような変遷を経て、現在のラインナップに至ってきたかをお届けします。

K-TEN の淡水仕様

以前お伝えした通り、ツインクルの飛距離の限界を感じていた頃、個人でルアーを製造していたルアーデザイナー、二宮正樹を社に迎え入れ、海で使えるよく飛ぶミノーを目指して製造、販売することを決めました。1987年のファーストモデルとして発売されたK-TENは、ウッド製。当時のルアー人口の比率を考慮し、海水域向けだけではなく、淡水トラウト向けとして小さめのサイズも作り販売しました。今ほど魚種別に特化したルアーというものは多くなく、ミノーといえばいわばフィッシュイーター全般に対応するルアーで、どちらかというと人間(製造側)の都合によるサイズ展開から、ターゲットのサイズやタックルの強さに応じて、小さいモデルはトラウトやブラックバス、大きなものは海で使うという認識でいた人が多かった頃でした。

タックルハウス初のプラスティック製トラウトミノー

その翌年、K-TENは念願のプラスティック化を果たし、いよいよタックルハウスもプラスティックルアーの製造に取り組み始めました。もちろんトラウトミノーにおいても開発をスタートし、1996年、プラスティック製トラウトミノーもデビューを果たしました。「ネクトン」と名付けられたこのミノーはK-TENシステムを搭載し、ツインクルで培ったリップ形状をベースにリップの造形を行い、ツインクルの泳ぎとK-TENの飛距離を目指したミノーでした。

ソルトウォーター向けのルアーに比べ、ボディは若干細身。泳ぎについては、ソルトウォーター向けのK-TENブルーオーシャンに比べウォブリングを抑え、おとなしめのアクションでした。サイズバリエーションは105mm、90mm、75mm、60mmと1.5cm刻みで、現在のトラウトミノーに比べると間隔が広いものでした。

ディープをミノーイング

釣り人口が多くなるにつれ、トラウトの釣りでも、様々なメソッドが開発されました。現在の本流トラウトやサクラマスに通ずるところのディープを狙う釣りもその一つです。しかし、ブラックバスを狙うディープダイバーでは、力不足。大きなリップでブリブリ泳ぎ急潜行させてボトムを叩くような釣りではなく、あくまでも潜行した先、狙った泳層で、ミノー同様に水平に近い姿勢での泳ぎが必要でした。これを実現するために、2000年、リップだけでなくボディ形状も新設計のネクトンフローティングディープダイブをリリースしました。

本流には本流の、ミノー

ネクトンまでのトラウトミノーは、基本設計が決まるとサイズバリエーションを作り、ターゲットのサイズに合わせ、大きめのサイズは湖や本流用として使われることが多く、小さめのサイズは渓流、源流域やでの使用が自然な流れでした。

しかし、トラウトのルアーフィッシングが広まるほどに、フィールドの違いにより求められる性能が違うことがわかってきます。ネクトンのディープダイバーをリリースしたのも、本流域でのディープエリアを攻める必要があったからです。

この考えを推し進めて行った場合、流れの速さ、水の抵抗、ポイントまでの距離、タックルの強度等の違いを考えると特に渓流と本流と同じ設計思想のルアーでは当然不都合が生じます。そこで混乱を避けるため、渓流域と本流域とで、別の名前のルアーを製作する流れとなりました。そこでまず生まれたのが、2003年のビットストリームです。

本流域の重厚な流れに対応するミノーとしての開発、またフィールドの広さや対象魚のサイズを考慮して、デビュー時のサイズは95mmと大きめのもののみでした。泳層のコントロールをそれまでのミノーのフローティング、シンキングという比重に任せるだけではなく、表層、中層以下、底層において水平に近い姿勢で泳がせるためリップ形状に違いを与えたバリエーションとする、タックルハウスでは初めての考え方を取り入れたモデルでもありました。以降、同ボディでフローティング、シンキングの両方を備えるもの以外に、シンキングのみ、フローティングのみといった設定のモデルが出現することになります。

ネクトンについてはデビュー時よりその繊細な泳ぎで、港湾シーバスで用いられることも多かったことから、ビットストリームそしてバフェットという新たな世代のトラウトミノーの登場後は、カラーリングを変更してシーバスカレッジと名付けて販売していました。

渓流には渓流のミノーを

本流向けミノー、ビットストリームデビューの翌年、今度は渓流、源流域向けのミノー「バフェット」がデビューします。川の多い日本では渓流での釣り人口も多く、ツインクルも特に小さいサイズにおいては渓流をメインのフィールドに改良を重ねて行きました。プラスティックミノーにおいてもその必要性は同じです。

特に捕食対象であるところの虫や小魚のサイズを考慮すると、渓流域ではこれまで以上に小さなものの方がより自然です。バフェットは、ツインクルの小さめのモデルの使い勝手をプラスティックボディで再現するというのが、最初期のコンセプト。ファーストモデルのボディ全長は43mmと、これまでのどのミノーよりも小さいものでした。

K-TENシステムについては、軽量モデルへの小型化の限界とそこから得られる効果とを天秤にかけてあえて採用を見送り、その代わり、タングステンウェイトによる固定重心そしてシンキング設定により、飛距離と泳ぎ出しの良さを実現し、スピーディーな渓流ミノーイングを可能にしました。その後のサイズバリエーションについては、ルアー本体のサイズが小さいほど、実寸の差がボリューム感に大きく影響を与えるため、55mm、65mmと、これまでのミノーに比べ小刻みな数値でのサイズアップとなりました。

メソッドの多様化とともに

タックルの進化、攻め方のバリエーションが増えるとともに、トラウトミノー、特に渓流域で使用されるモデルでは、多様な機能を持たせる必要が出てきました。バフェットにまず追加されたのは、ヘビーウェイトの「ミュート」でした。

速い流れ、複雑な流れにあってもスピーディーに攻略するためのファストシンキング仕様で、それまでのミノーやオリジナルモデルのバフェットでは攻めあぐねていた状況を打開するためにラインナップに加わりました。

川のトラウトの原点に戻ることも必要

ヘビーなシンキングミノーを用いて積極的にピンポイントを狙う攻めの釣りが広まるなか、効率ばかりでない釣りもあるのではないかとリリースしたのが、バフェットのフローティングモデルです。川の流れを生かしてポイントをつなぐようにルアーを流し、活性の高いトラウトを水面近くまで誘い出す釣りの楽しさのためにリリースしました。50mmモデルではフローティング専用のボディの設計まで果たしました。

さらなる細分化

渓流、源流域の釣りのために特化したモデルとして、バフェットドラスが誕生したのは、2014年のことです。ピンポイントキャスト、アップクロス、ダウンクロス、様々な制約の多い渓流、源流域に必要な性能を小さなボディに詰め込みました。

同様のフィールドで活躍するフローティングミノー、2016年発売の「リリィ」は、サイズ感こそドラスに似ているものの、単なる軽量化でのフローティングではなく、キャスティングのしやすいウェイトを持たせるためにボディを専用設計。捕食する昆虫や小魚の自然なサイズを考慮して、ウェイト調整をしてもボディのボリュームアップは最小限に抑えるというドラスの考えを踏襲しています。

サイズバリエーションを越えて

従来のミノーには、サイズバリエーションという枠組みがありましたが、最近はそこから飛び出したものを積極的にリリースしています。2017年にリリースした「FS38」は、アップストリームキャストとごく浅い泳層に対応するミノーとして開発しました。小さなミノーをアップストリームで使うための専用設計ボディは、リップ角度やボディのフォルムなどオリジナルのバフェットとは全く違う印象を与える1サイズ1アイテム的な製品です。

2019年には、ソルトウォーターで長年の経験を持つリップレスミノーの考えをトラウトに持ち込んだ「LM42」をリリースしました。この時は、リップ付きのミノーとは異なる質の泳ぎでルアーチョイスの幅を広げ、渓流での釣りの組み立ての楽しみも追い求めました。

温故知新

リップレスミノーと同年、ビットストリームにジョイントボディのアイテムを追加しました。ミノーとしては古くから存在する形態で、北海道では現在に至るまで根強い人気を誇るジョイントミノーです。必要性という意味では優先順位が高くなかったことに加え、可動部があることによる泳ぎのコントロール性、耐久性についての不安があったため、これまでは手をつけていなかったカテゴリーです。しかし、いざ製作に着手するとLM42同様に、また想定した以上にこれまでのミノーとは質の違う泳ぎを生み出すことができ、製作の精度をあげることにより決して古くはない現代的なミノーに仕上げることができました。

トラウトミノーのこれから

日本の現在のトラウトシーンを眺めると、依然として自然素材を用いたハンドメイドミノーの人気も高く、かと思えばベイトキャスティングリールを用いるアングラーが増えたりと、そのスタイルの多様性、趣味性の高さは他のジャンルに類を見ないほどに広がっています。

私たちがこれまでお届けしてきたトラウトミノーも、ワンアイテムのサイズバリエーションからはじまり、フィールドの違いやタックルの進化に応じて、似たサイズ感の中にも異なる機能を持たせるべく多様化してきました。それは、トラウトアングラーのスタイルの多様化に対応するだけではなく、魚を主役に据えながら、その出会いの形をアングラー側でイニシアチブを握るというトラウトゲームの醍醐味のためにも自然な変化だったと考えられます。

この広がりが今後もきっと続いて行くことに期待して、現在もミノーだけに限らずトラウトルアーを開発しています。来年はツインクルが誕生して40年目になります。次にお届けするルアーがどのようなものになるのか、お楽しみにしていてください。

■トラウトミノー現行製品

【ツインクル】

ツインクル

ツインクルレイク

スリック

【ビットストリーム】

ビットストリーム

ビットストリームヴァンテージ

ビットストリームジョインテッド

【バフェット】

バフェット

バフェットミュート

バフェットF

バフェットドラス

バフェットリリィ

FS38

LM42