磯スズキ攻略、6カ条

 Kさんからリクエストを頂きました。
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 ……略……ところで、以前、アングリング誌に掲載された「仕事は激務または不調、できれば失業中」の文章はラボに掲載できないでしょうか?あの文章、一番自分の心に残っています。……略……
 
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 Kさん、お待たせしました。以前書いた文章を覚えていて頂いて恐縮です。今読み返すと、口述が元になっているせいか、また若かったせいなのか、間違いは無いものの断言が目立ちます。其処の所、割り引いて参考にして下さい。(廣済堂出版1994年10月号より)
 では…
 
   ◆磯スズキ攻略、6カ条
 アングリング誌を読むシーバスアングラーなら、磯スズキを狙う時、サラシや風、潮位、イワシの追い込み等の自然条件がいかに重要なことか、もうご存じだろう。
 磯のスズキ釣りは、船や泳いで沖根に渡らない限り、他のどんな魚種や釣法にもまして、自然条件に左右される釣りである。
 居付きの黒いヒラスズキが釣り尽くされてから、外房では月にいったい何日、ルアーの射程範囲に彼等が来るのか?
 ここ10年を平均すれば、月の内10日もあれば良いほうだ。つまり、彼等との出会いは日並み次第とも言える。
 言い換えれば、法律だのを作らなくても、自然の禁漁日があるということだ。実は、私は、案外これが気に入っているのだ。ちなみに、船から沖根のヒラスズキを狙う方法は、日並みに幅が出来るが、その筋の知識を蓄えたルアーマン、たった一人でその周辺のヒラスズキを全滅できることを知ってから、私は止めた。
 
 怒られそうな例えだが、100万円あれば初心者でも、海外で3回位はガイドを雇って、カジキでも、ヒラアジでも小さなものなら釣れるだろう。
 ところが、屈強な男が、昼間のヒラスズキを100万円で50回トライしてアブレたケースだってある。些細な勘違いでの10回以上のアブレはざら。つまりお金の力だけでは釣れないのである。実はこれも気に入っている点の一つだ。
 さらに釣れる時には、これ以上無いぐらい、どんな魚より簡単なのである。身近でありながら遠い魚、それがヒラスズキである。この振幅の度合いにこの釣りの要旨がある。
 コンスタントに釣る方法、それは、かつて誌上に書いたように、あるにはあるが、日を選ぶことになり、実生活上のリスクを負うことになる。
 そこで今回は、基本的な釣法は入門書に譲って、日頃、よく質問を受ける釣るための攻略、注意点について語ろう。
 
◇磯の構造を知る
 どうしても釣果が上がらない時は、ワンパターンに陥っているので、深追いせず、次回にダメージが残らないように諦め時を心得ること。(いきなり、ここから始まるとは!)
 釣りを中止して、磯の構造を知ることに全力を尽くす。特に、4、5、6月の大潮の干潮時はチャンス。歩き回れば、スズキの道が見えるはずだ。これを徹底的に記憶する。そうすれば、自分だけのルアーの引き方が出来るようになる。
 こうして次回に釣ったスズキは、漫然として釣れたスズキより数倍の知識と快感を与えてくれる。そして、釣れた場所を再度、干潮時にチェックすれば、また意外な発見があるはずだ。面倒だとは思うが、あれだけの大きさの魚が、こちらから船で近寄ることなく、コマセも打たず、足下まで来てくれるのだから。もちろん管理釣り場ではないのだから。
 
◇ルアーを見る
 これは、シイラでも青物でも同じことなのだが、初心者がベテランの手許を見て、リールを巻くスピードや、ロッドの煽り方を見て真似てみても、ルアーそのものは、全く別の動きをしている場合が多い。
 ジギングであれば、ベールをオープンにしつつロッドを煽って糸フケを作り、ジグを落とし込むこともあり、見た目とは真逆になる。スウーッと軽く煽っているだけに見えても、実は、同時にリールを回転させて高速でルアーを動かしている場合もある。
 ジグの落とし込みでは、僅かな糸フケを利用して、ルアーに命を与えることがコツであるように、ロッドの動きだけでは判らない。いかにハイスピードでシャクッても、段差でジグが死んでいる場合も多い。ミノーでも同様で、手許に気を取られると、ルアーの動きが死んでしまう。
 ロッドが違い、リールのスプール径やギヤ比も違うのに、人間側の動作だけ同じにしても、ルアーそのものは全く別の動きをする。
 
 磯スズキでアブレやバラシが続いたら、具体的には、次のようにすれば良い。サラシの中では、ルアーが泳ぐ限りゆっくりと、そしてサラシの切れ目からは高速で回収するごとくリトリーブ。そのまま足下でロッドの先から1メートル残したラインで丁寧に、横にルアーを走らせる。こうすると、サラシの中の複雑な流れの中で、実際の小魚の動きに近くなるし、スレにくい。
 サラシの中を始めから高速で引いても、ヒットはするが、喰い損ねが多くなる。こうなると、「スズキは喰い方が下手だ」となる。ここ2~3年はシイラ経験者にこうしたケースが多いようだ。
 ただし、遅く引くから喰いやすいのではない。スズキの反転食いは、彼等の長い経験から、小魚が複雑な流れに玩ばれても、確実に喰えるように、微妙に先回りしているものなのだ。それは、例え5センチでも、口一つ分でもズレていたら小魚を捕らえられない、波や流れを本能的に計算していないと喰えない喰い方なのである。
 それなのに、強く巻かれるルアーは、流れなどお構いなしに、ポイントを弾丸のように突っ切ってしまう。だから、小魚本来の動きを考えた引き方が必要となる。
 ちなみに、食い込みといったことだけを取り上げてみると、5、4メートル2号の磯竿のようなペナペナのロッドを使えば、スズキは遙かに高確率で食い込む。これは、ルアーが海水と共に動くからであり、ロッドの抵抗が掛からず、食い込む間を与えるからだ。
 また、異常にスズキの活性が高く、何尾もヒットする時に、バラシも非常に多くなりがちなのは、魚側の都合を別にすれば、全ての動作が速く、固くなっているからである。
 硬調ロッドを使用する場合では、波に押されるようなら速く、波に引かれるようならゆっくりと、生きた小魚がそう動くように柔らかく使うと良い。
 中途半端なベテランにバラシが多く、根掛かりかヒットか判らないような初心者のほうに、ルアーが飲み込まれる程ガッチリ掛かるのも、心許ないリトリーブが、かえって高度なリトリーブに近づいたためである。……
◇不用意なアプローチ
 各地域の磯スズキの寄り場は、ほとんど一定しているので、一度でも釣れた所を含めて、昔からの実績ポイントをできるだけ数多く覚えておくこと。ただし、大多数のポイントは、想像以上にピンスポットである。それぞれのポイントで、餌ッ気がないと、次のポイントに移動する。この時、どちらからスズキが来るのか掴んでおくと、次のポイントへ、歩行で追いつけることもある。
 ちなみに、サラシからサラシへの移動中のヒラスズキは、餌を探しているはずなのに、初めから諦めているのか、途中でルアーに遭遇しても、あまり食い気を起こさない。明るい時間帯はサラシというテーブルがないと駄目なようである。 問題は、ポイントに入りながら、わざわざヒラスズキを追い払っている人がいることだ。
 ヒラスズキは、磯際に居るのが常で、たまたま我々には足場である岩の根元も、ヒラスズキにとって、沖根と同じ餌場となっているのだ。だから、不用意に足場にヌッと立っただけで、ヒットの確率を半分に下げることになる。人が見下ろしても平気な魚は滅多にいない。常にサラシのベールに覆われていれば別だが、たった一つの行動が、致命的な確率ダウンを起こすことになる。
 匍匐前進とまではいかないにしろ、初めの一投は、磯際から間合いを取って投げる癖を付けると、今まで釣れなかった魚に会えるようになる。
 
◇五感のアップ
 せっかく海に行ったのなら、時折、海水に素手を浸け、足場の岩肌の日向と日陰に触れ、目をつむり、匂いを嗅ぎ、耳を澄ますこと。特に釣れたときに念入りにする。これを幾シーズンも繰り返し続けること。
 例えば、海水温でも、経験上、水温計で絶対温度を知るよりも、体温、外気温、体調、風向きに左右される相対温度を感じたほうが後々の釣果に繋がる。
 匂いでは、陸からの草と土の匂いよりも、磯の香りに混じって、打ち上げられたばかりの新鮮なイワシの匂いでもあれば、必釣間違いなしといった具合に、車から降りた瞬間に判る時もある。気付きさえすれば、人間の五感もなかなかのものだ。
 これらを日頃から心掛けておけば、今の風が何時間前から吹いているのかとか、スズキのいる海が何かいつもとは違うといったことが解ってくるものだ。とにかく、こうした生きた情報は多いに越したことはない。
 3シーズンも過ぎれば、今とは別の海の姿が見えてくる。その時は、既に幾つか海からのプレゼントを手にしていることだろう。
 
◇集中力
 ヒンシュクを買うのを覚悟で言うと、例えば、既婚者よりも独身者、恋人無し、できれば失恋中で未回復、仕事は順調より不調あるいは激務、できれば失業中、管理された釣りには興味が湧かず、コテンパンにアブレて、かえって海が美しく見えたりしてという、どちらかといえば、不幸な状態の人々にヒラスズキは優しい。 
 既に数十尾を釣ったベテランでスランプに陥ったアングラーを例にとってみよう。彼の場合は精神面での幸福状態に原因があった。つまり、あれもこれもと集中力に欠け、鈍感になったことにある。失恋中のナイーブな状態なら、夜明け前に起きるのも厭わず、風の気配や潮の動きといった、全ての自然の流れに同調していけるからである。
 集中力を持って、磯のスズキに挑んでみてはどうだろう。荒磯を風に向かって歩けば、自然とスズキの元へと近づいて行くはずだ。夜明けの海を見るだけでも良いではないか。年に一度ある海と太陽が溶け合う完璧な夜明けにも、いずれ会えることだろう。
 
◇安全面
 磯のスズキで先ず忘れてならないのが安全。これは各自が気を付け、責任を持つしかないが、参考までに私の失敗例を上げておこう。
 波による経験では、一昨年の11月、ベタ凪で夕マズメしか釣りにならず、平床という平らな岩棚で釣りを初めて1時間後、突然ヨタ波を受け、ウエイダーで浮力があったせいか、身体全体がサーフボードのようになってしまい、50メートル後方の大きな岩まで流されたことがある。
 大きな波の来る直前には、海の水が無くなるように引くので、判ってはいても対処出来ない波だった。そこは地形的に、陸に上がった波が拡散するので大事には至らなかったが、上がった波がそのまま海に戻るようなところは絶対に立ってはならない。
 とにかく、初めてのポイントでは、磯に立つ前に、5分は波を見ていること。もちろん、潮位によって波の立ち方が変わることも念頭に置くこと。
 また、昼間はサラシを必要とする釣りなので、大抵の場合、荒天の中での釣りとなる。そうした所では風、波とも周期的に大きいのが来る。ヒット中は特に注意したい。

「磯スズキ攻略、6カ条」への2件の返信

  1. AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 5.1; Trident/4.0; GTB6)
     磯野ヒラ夫さん、とても丁寧なコメント、ありがとうございます。
     原文を捜して、テキスト化した甲斐がありました。
     …異性間のラインブレイク…のところ、共感する方も多いはずです。
     思えば、その世界にも、PEラインとナイロンラインが在りますネ。
     こちらこそ、これからもよろしくお願いします。
     

  2. AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 5.1; Trident/4.0; .NET CLR 1.1.4322; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.0.4506.2152; .NET CLR 3.5.30729)
    掲載ありがとうございました。
    釣法やポイント紹介がメインだった釣りの雑誌に、
    こんなことを書かれる方がいるのか、というのが衝撃であり、
    あの文章は強く記憶に残っていました。
    あの記事を読んだとき、僕はまだ内水面の釣人で、ヒラスズキは憧れの魚でした。
    それから数年後、ヒラスズキへの憧れ絶ち難く外洋へ足を運ぶようになりました。
    居る魚を如何に釣るか、という内水面での釣りとの違いに戸惑い、
    しばらく後に「振幅に要旨がある」ことを実感することになります。
    思えば、自分が一時期離れていた釣りに戻ったきっかけも
    異性間での大きなラインブレイクであり(笑)、
    あの時もよく釣っていたような覚えがあります。
    また、仕事が絶不調の時にも(実は今現在も…なんですが)、
    記憶に残る大魚を手にすることができました。
    その度に二宮さんの書かれた記事を思い出し、「やっぱりそうなのかなぁ」
    という思いに駆られずにはおれません。
    また、その向こう側に、釣りを愛した文豪の「何かを得たら何かを失う」
    という人生の力学が漂っているのを感じたりもします。
    これからも、また素晴らしいお話をお聞かせください。
    よろしくお願いします。

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