ロディ・スプリンター480(1969年製)

昔、渋谷のサンスイさんで、お年玉を貯めて買った物です。この頃のリールで残ったのは、これとアブ製品しかありません。ほとんどの国産リールは、メンテナンスが悪かったせいか、いつのまにか海水に浸食されて使用に耐えなくなり処分してしまいました。
ロディも同様の扱いをしてきたはずですが、パーツそれぞれの耐久性への気配りが、あの頃の有名他社のものより上だったようです。
例えば、真っ先に浸食されるダイキャスト製のスプールのエッジがステンレスリングで保護されているのです。今でこそ、この部分は高価格帯のリールに特殊なリングが採用されているのは、あたりまえですが、当時は珍しいものでした。 ドラグも単純な割に実用的です。ラインローラーも付いているし、壊れそうな所は、今の物より太目のビスが使われています。ハンドルの注油部は、バネ付きボールのニップルです。ローターと本体のスキマも海水に強い構造です。
そして、主要部に三つの大きなボールベアリング。小さなベアリングのものは耐荷重性がない。要するに、壊れるところが少ないリールだったのです。

私は、K-TEN誕生の少し前まで、たまに使っていました。組み合わせていたロッドは振り出し石鯛竿、怒濤18号。先と根元を詰めて、シーバスロッドに改造したものでした。
ロディというメーカーは、無くなりましたが、その後の話をちらりと聞くと、なかなかの物語があったようです。ネットで、「稲村製作所 ハイネスエンジン」と検索するとその一部が解ります。

私が見つけたのは、こちらのページです。(別ウインドウで開きます。)

余談になりますが、最近、トラックの車輪が取れたとかのニュースがたまにあります。昔のトラックのほうが車体は丈夫だったような気がします。
積載重量の規制が緩かったせいで、積めるだけ積む慣習があり、当然メーカーも現状に沿って、表示より丈夫なシャシーを作らざるを得なかったようです。夏のアスファルト道路に、一台で轍を残すような積載過多の大型トラックを見かけたこともありました。
しかし、耐久性抜群であること、このことが、メーカーを苦しめたと聞きました。何しろ、普通に使っていれば、平気で百万キロメートルとか走ってしまい、代替需要が無くなって、トラックが売れなくなってしまったようです。
適当に壊れてくれないと、メーカーが成り立たない。現在は積載重量の厳しい規制があり、過積載のおそれが無いため必要分の強度があれば充分というシャシーなのでしょう。部品の経年劣化による破損で車輪脱落事故が今頃起きるのは、こんなことも原因になっているような気がします。
トラック業界だけではありませんね…。家電、コンピュータ、釣具、程よく壊れる業界は賑やかです。昔、ステンレスで車体を作ってしまったデローリアンはすぐ倒産です。(ちょっと別な理由もあったようですが)映画、バックトゥザフィーチャーではタイムマシーンになっていましたね。

プラ製K-TENを売り出して、間もなくの頃、釣具屋さんに妙なアドバイスを受けたことがあります。K-TENは丈夫過ぎる、○○のようにしないと、すぐ売れなくなるよ、と。私は、これには反発しました。
先のロディを見る度に、思いを新たにします。物として今でも大事に出来る事がすばらしい。世の道理は判っていても、やはり私は釣り人です。作るルアーは出来るだけ丈夫にしたいと思います。 

Posted by nino