「ド派手ルアーで視認性を重視」

和歌山県太地の磯のヒラスズキ

写真/文 松井謙二

小雨に煙る岬に近い駐車場に車を止めてタックルを用意した中瀬氏について少し歩けば、芝生のじゅうたんが敷き詰められた美しい広場に出た。

海側には水平線をバックに白亜の灯台が立ち芝生の広場の周りにはいぶき(ビャクシン)と言う樹木が茂り美しい風景を生み出しているのが、ここ和歌山県太地町にある梶取岬(かんとりざき)である。

その梶取岬と言う地名は熊野灘を航行する船舶がこの岬を目標に進路をたて舵を取ることからついたと言われる。梶取岬からは東の燈明崎、西の串本大島の樫野崎を見渡す事ができ、その突端には古式捕鯨梶取岬狼煙場跡がある。

捕鯨で有名な太地は鯨の南下と北上の通路にあたり、沖を泳ぐ鯨を確認したらこの岬の先端で狼煙をあげて捕鯨船に知らせていたのだった。

日本捕鯨の発祥地の太地は1606年(江戸時代)に和田忠兵衛頼元が複数の突き取り船を組織化して森浦湾に鯨を追い込んで捕鯨を行っていた。その歴史からか明治32年に設置された梶取崎灯台の頂部には「風見クジラ」が設置されている。

日本中どこへ行っても岬の先端は潮通しが良く釣りの好ポイントが多い。ここ梶取崎も地磯ながら素晴らしい磯釣りポイントだ。実は今年の5月に私は中瀬氏とメバル釣りの取材でこの場所を訪れたのだった。その時は丁度、日の落ちる前であったが風景のあまりの美しさにもう一度来たいと思っていた。

磯場まで降りて行くと目の前に荒々しい大小の独立磯や沈み根が広がっていて中瀬氏に「ここは波が出たら最高のヒラスズキのポイントやな!次回はここでヒラスズキの取材をしような!」と言っていたのだった。

昨晩から串本のビジネスホテルに入り前泊していた私に中瀬氏から連絡が入った。

「水曜日から今年1番の寒波が来るので明日の夜のメバル釣りの取材はやめて、波の高さも丁度いい感じなのでヒラスズキを狙いましょう!」との事だった。天気予報では明日は昼ごろまで小雨が降るらしいが、磯のヒラスズキ狙いで磯を歩く爽快感がたまらなく好きな私は一つ返事でOKしたのだった。

岬の先端の狼煙場あとから二人でポイントを見渡す。雨も小降りになってきた。

「思っていたよりも波がありますね。でもヒラスズキにはいい感じです!」と中瀬氏は東側から入ってくるウネリの間隔とその波を受けて西に広がるサラシの広がりを観察する。そして、二人で磯場に降りる道に設置してあるロープを握りながら急な斜面を下った。前回も夕方にここに来たので、大体の磯の地形は把握している。ポイントは東側(左方向)の磯の突端から西(右側)の高場までかなり広い。まずは波飛沫のかからない高場にカメラバックを置いてズームレンズの付いたカメラを首に掛けて東側の磯際から攻める中瀬氏を追った。

波のセットが入ってくると大きなウネリが磯の真ん中の壁にぶち当たって3メートル位の高さの飛沫が上がる。その波は磯には駆け上がってこないがカメラが塩水を被ったら大変なので少し離れた場所から望遠レンズで中瀬氏を狙う。

中瀬氏のロッドはGo-Phish の13フィートの振出。基本11と13フィートをフィールドで使い分けている。「13フィートは足場の高いとこでも波で濡れない安全な場所から魚にアプローチ出来て、浅い場所ではロッド操作で磯をまたいでルアーを泳がす事ができ、ルアー操作がしやすく足元までルアーを引ける。短いロッドではラインの角度がつきすぎてルアーを早く回収しないといけない。安全性とルアーコントロールを考えればロッドの重さも気にならない13フィートが一番扱いやすい」と中瀬氏

ルアーは波が思ったより高く、セットの間隔が短いので、水面直下を安定して泳ぐ「ヒラフィードGP(フィードシャロー128プラス Go-Phishカスタムカラー)」の背中オレンジをセットした。

とにかく中瀬氏の磯のヒラスズキルアーはド派手なオレンジやピンク系がほとんどだ。それはヒラスズキやトラウトゲームこそサカナのチェイスやバイトが見られるサイトフィッシングで楽しみたい事とナチュラルカラーだと波やサラシでルアーを見失う事が多いからだ。サラシの中の流れの中や障害物の際などを流してルアーをコントロールするには視認性の高いルアーは不可欠で、ヒラスズキは水面や磯の際にベイトを追い込んで捕食するので、ルアーをわざと磯に当てる感じで操作する。そんな釣り方をするのでルアーを見失っては話にならない。また、視認性の高いルアーは見失なう事が無いので根掛かりやラインが磯に絡むトラブルも少ないのだ。だから、細かいラインワークもロッドの操作もしっかりとルアーが見えるからしやすいのだ。

「リアルカラーとド派手オレンジとどちらが良く釣れますか?」とたまに聞かれる事があります。ヒラスズキ釣りのような波やサラシのあるフィールドでルアーが見えなかったら、ただ巻くしかない。ルアーが見えるからルアーコントロールが出来るのであって、潮の流れもわかるんです。

3~4投 入ってくる波の様子をうかがいながら東側の磯際にルアーを通したが反応が無いので今度は波飛沫のかからない磯の西側に入った。ここは40〜50メートル沖に小さな磯が点在して、その内側にも多くの沈み根が入っていて足元の磯に当たった波が大きなサラシを沖へと広がりを見せている。ルアーを通すポイントもいちばん多い釣り座である。

「出るならここだ!ここしか無い!」

中瀬氏は1投目を手前のサラシが沖に広がり落ち着いた時にその奥にキャストしてゆっくりと足元までルアーを引いてきた。少し間を置いて2投目は東側からの波のセットが3本入ってきて、そのサラシが広がり落ち着いた時に沖にある磯と磯との間の少し奥にルアーをキャストした。そしてやや早いスピードで磯の間にルアーを通して、今度はロッドの角度を変えて少しラインを張ってサラシの押しでルアーを泳がせサラシの下のシモリにいるサカナに見せてやや早めにリールのハンドルを回した瞬間「ガバ!」とヒラスズキが飛び出してきた。13フィートのロッドが美しい曲がりを見せている。

「バレるな!バレるなよ!」とカメラのファインダーの中にいる中瀬氏のファイトを見守る。ルアーの3本のフックがヒラスズキの下顎をしっかりと捉えていると確信した彼は丁寧なロッドワークで自分が磯際にまで降りることのできる右側のサラシの中に魚を誘導した。そして、磯に駆け上がってきた波にサカナを乗せて素早く磯際まで降りて行きサカナの口にグリップの先を押し込み下顎をしっかりとホールドして安全な磯の上に上がってきた。

「やった〜 60センチ弱の美しいヒラスズキだ!」取材は5投で蹴りがついた。そして、私たちを祝福してか、そのサカナがヒットしてから太陽が覗き磯の上の世界が急に明るくなったのだ。上手く行く時はこんなもんだ!。

「良かったなぁ中瀬君!肩の荷が降りたやろ!今年の最後の取材が上手くいって本当にありがとう!」と私が言うと「前回のメバルが駄目だっただけに本当に嬉しいです!」と彼は言った。

「天気も良くなったし、もう1匹行こか!まだ叩いてないポイントもあるし。」と30分ほど休んでから彼はルアーを「TKLM120」に変えて釣りを始めた。このルアーはヒラフィードでサカナが出ない時やサラシが薄いポイントには効果があると言う。使うイメージは弱ったベイトをイメージして泳がす。それで魚が出ない時は「TKLM90」にサイズを落とすとサカナの出る確率がかなり上がると言う。それは磯でのベイトがキビナゴやカタクチイワシの小さいベイトが多い事とポイントに見切りをつける時に使うルアーだからだ。また、10~12月のシーズンは良型のヒラスズキがヒットする確率も高く「ヒラフィード128GP」は3本フックでフックの大きさは4番しか使えない。3番に上げたらフックが絡んでしまうのだ。だから、良型のヒラスズキ対策としてフックサイズが3番の「TKLM120」を使う。フックサイズを2番に変えても泳ぎに支障は無いのだ。また、向かい風で飛距離が欲しい時やサラシが厚くレンジに馴染ませにくい時は迷わずシンキングタイプを使う。

「TKLM120」でサカナの反応が無いので今度はルアーを「リップルポッパー90 シンキングワークス」にチェンジした。ロッドをタテ気味にして波の動きに合わせてロッドポジションを上げたり下げたりしてラインのテンションを緩めたり少し張り気味にしてゆっくりとルアーを泳がしサラシの下にいるサカナにアピールする。すると一投目から2度のバイトがあり2投目にはリップルポッパーの後ろにサカナ全体が見えるような派手なバイトがあった。

「今の見ました?ヤル気満々のバイトです!」と興奮気味の中瀬氏

そして、彼は今度は「TKLM 90 シンキングワークス」にルアーを変えてサラシの中でルアーを少し送り込んで、そのラインのフケを巻き取るぐらいの小さなアクションをルアーに入れて今度は小型のヒラスズキを確実にヒットさせたのだった。

ルアーチェンジが見事にハマった釣りだった。

ヒラスズキ釣りはおもしろい!

それはヒラスズキに精通しているアングラーの多くが自分自身が使うルアーに自信を持って、その日の自然条件を読み、釣りを組み立てて楽しんでいるからだ!。