タックルハウステスターの皆さんによる釣行レポートを、新カテゴリー「Field report」としてお送りします。釣行エリア、時期、シチュエーション、タックル、使用ルアーやチョイスの理由、使いかた等、皆様のご参考になれば幸いです。第一回は、吉田裕彦さんの青物釣行です。
写真/文 松井謙二
以前、沖縄県八重山諸島で漁師をやっていたジギングのパイオニア 佐藤統洋氏に鳥の話を聞きました。
鳥は漁師から言わせれば魚の位置を教えてくれる見えるレーダーで、鳥がどこを見ているかはクチバシの動きでわかる。クチバシの向いている方向が魚の位置で、魚の泳いでいる水深は鳥の高さで判断し、魚の遊泳層が浅ければ鳥は低く飛び、深ければ高く飛ぶ。鳥の高度と魚のいる水深はほぼ一致して、鳥が水面から20メートル上空に飛んでいたら魚は水深20メートルぐらいにいる。また、鳥の高度は魚の大きさにも関係して、魚が小さければ低く、大きければ高く飛ぶ。それに加えて、鳥の数でその海域の魚の量が判る。
鳥が少なければ魚は散ってバラバラで、数が多いとそれだけ魚は多いと。鳥は私達アングラーにとって魚のいる場所を教えてくれる強い味方なのだ。
今回はその一羽の鳥の動きを見逃す事無くポイントを選択して、見事に朝まずめに青物を釣り上げた吉田裕彦さんの釣りをレポートしました。(この取材は4月中旬の緊急事態宣言発令前のものです。)
紀伊半島を大きく分けると紀淡海峡の海岸線、大川峠から南に下り有田港までを紀北、有田川河口から田辺までを中紀、白浜から熊野川河口までを南紀、熊野川を越えて東側(三重県)を紀東と呼ばれる。
今回、取材に訪れたのは中紀の湯浅から煙樹ヶ浜のリアス式海岸で磯や砂浜、漁港が点在して連続的に形成された美しい海岸線が続いている。北からの冷たい潮と南からの暖かい潮が交差して、魚にとっては餌が豊富な海域で魚影は濃い。
同行する大阪在住の吉田裕彦さんは、大阪湾、和歌山の釣り場をホームに青物、磯のヒラスズキ、川のスズキ釣を季節毎に楽しんでいる。今回訪れた中紀のフィールドは比較的家からも近くて釣行回数も多くヒラスズキや青物が狙える地磯にはかなり精通している。大阪南部の駐車場でAM3時30分に待ち合わせて、吉田裕彦さんの車にカメラとタックルを詰め込み、阪和道路に入り「湯浅インター」を降りて海岸線に入る。
「昨日の日曜日は結構青物が釣れたらしいです。先週、松井さんに電話をもらった時も来ていて、ヒラスズキを釣った後で良いサイズのメジロが釣れました!」と吉田さん。
夜が明けるまでの薄暗い海岸線をポイントに鳥がいないか?チェックしながら車を走らせる。「駄目ですね!鳥がいないですね!昨日は鳥が結構いてポイントを絞り込みやすかったみたいです。」と吉田さん。
昨日は北の風も強く鳥もかなりいて海も賑やかだったのだ。たった1日で風も穏やかになり海も静まりかえっている。以前、このフィールドでヒラスズキが好調と聞いて友人と訪れた時は、とにかく波も高くて鳥も多くあちらこちらでナブラが立っていたのを思い出した。
大量のイワシが接岸して小引〜阿尾までの海岸線のいたるところで鳥山がたっていた。
私も友人も興奮して磯に上がり、我先にとキャストすれば小型のヒラスズキがかなり釣れた。それに加えて50センチ前後の大きなチヌ(クロダイ)もかなりの数が釣れた。ショアでもオフショアでもナブラが大きいほど釣り師としての血が騒ぐ。
「だってそこには魚がいるのだから!」
しかし、今日は青物狙いなのに肝心のナブラは無く鳥はいない。
漁港から近い海岸線の高台に車を止めて薄暗い海を見ていると北側の磯の沖の上空を一羽の鳥が大きく回転しながら上昇、降下を繰り返して同じ場所をかなりしつこく飛んでいる。「あの飛び方は魚についていますね!そこの磯に降りましょう!」と吉田さん。
急いで用意して崖の上の駐車場スペースのある道路の脇から山道を足元に注意しながら降りていく。
このエリアでのメインターゲットは関西で言うメジロ、5キロクラスのブリの若魚がメイン。タックルは、40グラムのルアーがフルキャストできる10〜11フィートのロッドにラインがPE2号、リーダー30~40lb。青物狙いとしては比較的ライトな部類となるが、吉田さんはこのタックルで多くのメジロ〜ブリ、サワラを仕留めている。ライトタックルだからこそ表現できる繊細なアクションが魚に口を使わせる鍵になる事も多い。また小型軽量プラグも多用できるため小型ベイトへの対応や、食い渋る状況下でも有利に働くことが多い。根の荒いポイントで魚を走らせ過ぎたり、無茶なやり取りをしない限りラインブレイクはほとんど無いという。
「ここでやりましょう!鳥がしつこく飛んでいたから魚の気配はあります。」と吉田さんは30lbのリーダーにスナップを取り付け「CONTACT BEZEL JERK」コンタクト ベゼルジャークのクリアカラーをセットした。コンタクト・ベゼル ジャーク製品ページはこちら
90mmで40グラムの重さがあり、とにかくよく飛ぶ!吉田さん一押しの青物狙いのルアーだ。本来、ナブラ打ちやベイトが多い時の使い方はキャストしてラインスラッグをとり少し沈めてスローなロングジャークを入れて、ベイトフィッシュが水面に追い詰められる様な演出をして青物を誘発するのだが、今回はベイトが少なく、大きさもシラスやカタクチイワシの小型のと判断した吉田さんはベゼルジャークをフルキャストして沖への距離を稼ぎタダ巻きして水面直下を引くのを何度か繰り返した。
すると、沖から追尾してきた青物が吉田さんの10メートルぐらい沖にあるハエ根の手前でルアーをひったくり一気にロッドを絞りこんだ。
吉田さんはまったく慌てる事もなく魚の走りをあしらい根を上手くかわして、沖から入ってくる波のタイミングを見て磯のスリットに魚を誘導して一気に波が砕けたスープに魚体を乗せて磯の上に引きずり上げた。
流石に見ていて安心する取り込みだった。フックは外れる心配は無く、釣り上げたメジロはベゼルジャークを丸呑みしていた。磯で青物やスズキを釣る場合には、釣りの前にどの場所でどう取り込むかをシミュレーションしておかないといけない。
多分、吉田さんはこの磯に何度も上がっていて多くの青物をこのスリットに誘導して波に乗せて取り込んでいるのだろう。打ち寄せるうねりが少ない中で絶妙なタイミングの取込みだった。
魚の撮影の後にルアーをリップルポッパーやコンタクトベゼルに替えたりして1時間弱粘ったが魚の気配が無いので車に戻り海岸線を南に下りながら大引〜阿尾までのポイントをチェックするが魚を追う鳥の姿は無かった。
「昼から潮が引くので日ノ岬まわりのヒラスズキのポイントをチェックして帰りますか?それまで、日高川の鮎の遡上を見に行きましょう!」と吉田さん。車は煙樹ヶ浜を通り抜けて日高川に出た。少し上流に走り車を川の横に止めた。
「ここが私が日高川でスズキを狙うポイントです。川に降りやすいから少し投げてみますか!」と吉田さんと一緒にロッドを持って川に降りた。
足元を小さな鮎が上流に向かって登っている。
2人で数回キャストするが魚からの反応は無く、「最後の一投です!」とK2S122(WORKS)を下流にフルキャストした。すると「ガッガッ〜ギューン!」とゆったりとした流れの中で銀鱗が躍った。
大切に足元まで魚を寄せると、春の日差しを浴びて美しく輝くグットプロポーションのスズキだった。
「磯でヒラスズキや青物に振られても川スズキも狙えるんですよ!」と吉田さん。
やはり紀伊半島は素晴らしいSWフィールドだ。
当日のルアー
リップルポッパーBKRP140R3
吉田さん「名前の通り、引き波を立てながらのスローなアプローチや、ロッドを立ててスキッピングしたりと多彩な使い方が出来るお気に入りのポッパー。」K-TEN BLUEOCEAN リップルポッパー製品ページはこちら
CONTACT CANARY
吉田さん「スローリトリーブでのスラロームアクション、ファーストリトリーブでのスキッピングなどロッドワークで色々なアクションをたのしめるペンシルベイト。」<コンタクト・カナリー>製品ページ、アクション動画はこちら
CONTACT BEZEL
吉田さん「ベイトが上ずっているときやシラスパターンにも有効」CONTACT BEZEL.製品ページはこちら
CONTACT BRITT
吉田さん「飛魚やカマスなどベイトフィッシュが大き目のときに。リーダーが太くてもアクションは安定している。」CONTACT BRITT製品ページはこちら
「以上、ベゼルジャークを含めた5種が中紀の青物ゲームで良く使うルアーです。小さいもので全長90mm〜と一見シーバスルアーを思わせるスペックですが、いずれも貫通ワイヤー構造を採用。そして大型フックを標準搭載しているため、安心して青物狙いに投入できます。この他にもPE2〜3号クラスのタックルで青物を狙う際に最適なアイテムが主にコンタクトシリーズやK-TENシリーズに豊富にラインナップされています。」