コラム…間合い、のこと【1】

 Gトレバリー狙いでは、使用ルアーが以前より全般的に重くなりました。100g以上のルアーがよく使われています。フルスイングしての遠投性や、アッピール力を求めて、タックルの強化を伴って定着しました。
 大きな魚を数多く釣りたい、道具の精鋭化は当然の要求でしょう。
 しかし、ごくたまに釣れる大型魚はランディングしやすくなった反面、多数のレギュラーサイズには、いささかオーバースペックである場合が目立ちます。
 かつて、GTやマグロなど大型魚狙いに遠征を供にした仲間達も、体力面の心配から次第にそうした釣りから足が遠のくようになってしまいました。最近のヘビータックルで投げ続けるのは勘弁してと言います。
 数投に一匹ヒットするようなパラダイスなら良いのですが、そういう所に行くには日数が要ります。若さと金と暇を同時に得るのは難しい。
 
 大物狙いを謳うソルティアシリーズにも130gまでのラインナップがありますが、今の私だと、このポッパーを丸一日フルスイングするとなると、楽しみより苦痛が上回るかもしれない。ここ一発、必要なとき数投ならば良いのですが。
 元々、純粋に私の設計したソルティアポッパーは170ミリ、80gだけなのです。これを作るとき、GTを釣るという主目的はもちろんのこととして、一日中投げられる重さは?、引き抵抗は?と常に自問しながら数値を割り出したことを覚えています。
 先の遠征から遠のいた人達もこれくらいのルアーに合わせたタックルだったら、また気楽に出来るだろうし、10kgに充たないGTでも充分楽しめます。それにはボートの操船も、同船者で打ち合わせして、無理なく届くところまで近づけばいいのです。
 理想の専用タックルも行き過ぎると、元気な盛りの、競争大好きな、体力上等の者しか出来ないハードルの高い釣りに成りかねないということです。本来、その気になりさえすれば誰でも出来る釣りでした。
 以上の事は、GTに限らず、マグロや最近のジギングにもいえるのではないでしょうか。ある船長から、ジギングルアー船の客足が落ちた、リピートが少なくなったと聞けば、理由のひとつにジグが段々重くなって、単純に釣りがキツクなったこともあるのではないかと思います。 かつて60gで釣っていた場所も、今は二倍以上のジグが普通に使われています。確かに船をポイント上に付けた直後が最大のチャンスで、最初に着底させた者が有利であり、重いジグが初見の魚を拾い易いのは事実です。乗り合い船で重いジグが流行るのは必然でした。ジグの善し悪しなどあまり影響しない一撃だからです。一人だけ軽いジグでは不利なばかりか他と絡んでしまうでしょう。
 でも、仲間内である程度統一すれば、もう少し軽くしても釣果にそれほど差があるようには思えませんし、魚のサイズに合わせたタックルが使えるようになります。
 
 昔、これと似た状況が、別のジャンルの餌釣りにありました。
 磯からコマセをカゴに詰めて、大型浮子共々遠投し、ヒラマサ、ワラサ、ハマチ、メジナ等を狙う釣りが流行りました。
 メーカーから挙って磯遠投専用タックルが発表されて、私も一式買ってみました。最新の遠投タックルには、すぐ結果がでました。従来品を使用している釣り人の更に沖合で、コマセをばら撒くので我々にしか釣れません。
 しかし、シーズン中にも皆が似たような道具を使い出すと、遠投合戦が始まったのです。また、それに抜け駆けするような投げ専タックル組も現れました。魚を抜き上げて曲がりもしない竿。引かないとか言ってぼやいていました。
 で、どうなったか?次第にコマセを追う魚は遠ざかって、終いに誰も届かなくなりました。当初から、磯際のフカセ釣り派からは批判を浴びた釣法でした。
 現在は必要なときの一釣法として落ち着いたようです。
 餌釣りには相変わらず学ぶことがあります。何故、鮎の友釣りはリールを使わないのか、号数で分けた磯竿の調子の必然は?一言でいえば、釣趣を求めて長い間に洗練されたのです。
 また別の言い方をすれば、「間合い」です。ルアーFは魚との間合いを計る釣りです。対象との適切な距離感を保つということなので、魚との、というだけではなく、ルアー選びも含め、それぞれの道具や釣法やアプローチについても言えることです。
 ルアータックルには、この辺りに気を使った製品はまだ少ないように思います。よく見渡せばあるのですが、人気が無かったりします。間合い、を無視して手っ取り早く魚を取り込むことに熱心なのはトーナメント用だけで充分です。
 何が、自分の釣りに合うのか、見付けるのは時間が掛かりますが、見付かればもっと釣りが楽しくなるはずです。

Posted by nino