「ローリングベイトシャッドで狙う吉野川のシーバス」

写真/文 松井謙二

「今、吉野川河口にベイトのイワシがかなり入っていて、ヒラメやマゴチが狙って釣れますから取材に来ませんか?」と昨年11月の第2週に徳島市在住の露口義司氏から電話を頂いた。
しかし、11月の取材は高知県須崎市の辻本隆氏の取材が決まっていたので、露口氏には「12月に入ってまだ釣れていたらお願いしたい!」と伝えた。
「プロトタイプファイル」の前回の取材記事のとうりに辻本氏は高知のサーフで良型のヒラメを2枚釣り上げたのだった。もしかしたら、高知も徳島もサーフでのヒラメ釣りの旬は11月なのだろうか?

12月に入ると日本海側には毎週、低気圧が入ってくる様になり本格的な冬を迎えた。
露口氏に連絡を入れると11月に絶好調だったヒラメやコチはベイトが吉野川河口から出て行ってしまい釣れなくなってしまったとの事だった。
「でも、吉野川のシーバスならなんとか釣れると思います!」と露口氏。2人の仕事のスケジュールを合わせて、バイオウェザーサービスの週間気圧配置図を見て、取材日を関西地方が高気圧のど真ん中に入る12月21日に決めて、露口氏の船を置いているマリーナ徳島に午前6時30分に待ち合わせた。

今日は取材の助っ人として中村氏と加地氏が参加してくれる!と露口氏が言っていた。
久々に「team Bee」の仲間に会えるのが楽しみだ。まだ日が明けていないマリーナの駐車場にメンバーの車が集まった。
陸上げしている露口氏の25フィートのフラットボートをキャリアで運び、クレーンのロープを船の中央前後に2本かけて海に降ろした。タックルを積み込んで吉野川河口を目指し、いざ出発だ!
「最高の天気ですね!風も無いし、今日を逃したらこんな日がいつ来るかわかりませんね!」と操船する露口氏が笑う。露口氏は以前、徳島市で「Bee」と言うSW Shopを経営していた。店長が今回来てくれた中村氏、常連のお客さんが加地氏だ。当時は取材で徳島県南部にヒラスズキを釣りに行ったり、吉野川でサツキマスを狙ったりと。
一度、露口氏のプレジャーボートで鳴門にジギングにも連れて行ってもらった。その時、露口氏が私にこんな事を語ってくれた。「鳴門のポイントも徳島からは近いし、船を持っていたら自分で操船して美味しいタイやブリ、サワラ、メバルが釣れると思って船を買ったんですが「teamBee」のメンバーさんやお客さんを乗せているうちに、自分が釣りをして魚を釣るよりも、人に釣ってもらうのが面白くなったんです!」

「例えばどんなところが面白いのですか?」と言う問いに露口氏は「ジギングでは操船する私が魚探を見ながら潮の流れや風向を読んで船を上手くポイントの上を流れるように船を立てるのですが、同時に、釣る人がジグを上手にそのポイントに入れてくれて初めてヒットするんです。
キャスティングの釣りも私が魚の動きや潮の流れ風を読み操船して、釣る人がナブラやストラクチャーに上手くキャストしてこそ釣れるんです。
だから自分が釣りをしなくても、自分が釣りをしているのとまったく同じです。それで、乗船者が魚を釣ってくれて喜んでくれたら自分が釣り上げた以上に嬉しいですよ!」と教えてくれたのだった。
その時に私は、遊漁船の腕の立つ船長に釣りが好きな人が多いのは、自分がお客さんに釣ってもらう事で自分自身が釣りをしている感覚を味わえるからだと言う事を知ったのだった。

朝日が東の水平線から登り出した。吉野川右岸の河口の州からヒラメや青物を狙っている人が所々に見える。
「先月はベイトが河口の奥まで入ってきたのでヒラメがよく釣れて、平日でもかなりの人でした!」と中村氏。
無風で暖かく釣り日和だが、ストラクチャーに着くシーバスを狙うには、もう少し風があって少し波気があったり、雨の後で川が少し濁っている方が魚の警戒心は無くなり食いは良さそうだ。
満潮の約1時間前に最初に狙うポイントの吉野川河口橋の橋脚に着いた。川は少し流れている。
露口氏は橋脚の下流方向から船をゆっくりと回して、中村、加地の両氏がキャストする「ローリングベイト シャッド」が橋脚のシーバスが着いてるであろうポイントにキャストして上手くルアーがトレイスしやすいように操船する。魚にルアーを見せて上流からルアーをドリフトさせて食わせたいところだが、船が流されてすぐにポイントに近づいてしまいルアーをトレイスする距離が短くなってしまう。
船はゆっくりと橋脚に近づきポイントの射程距離に入った。2人が交互に「ローリングベイト シャッド」を橋脚スレスレの上流部にキャストしていく。
こんなベタ凪で天気の良い日には橋脚から30センチルアーが離れてしまうと食ってこない事も多いのだ。それにしても、ベテランの2人のキャスティングコントロールは素晴らしい。露口氏の操船とも息が合っている。

それぞれに2回目のキャストが終わり、3投目をキャストした中村氏がしっかりとサカナを捕らえた。蛍光色の「ローリングベイト シャッド」にヒットしたシーバスが加地氏の差し出すネットに入った。60センチ級の美しいシーバスだ。操船に専念していた露口氏も狙いのサカナが釣れてホッとした様子だ。
「サカナはいる!」この1匹が3人の集中力を高めた。取材で狙ったサカナの写真をおさえた事の安心感と、まだ釣れそうだと言う期待感だ。露口氏は次の橋脚へとポイントを変える。すると今度は加地氏のナチュラルカラーの「ローリングベイト シャッド」に同型のシーバスがヒットしたのだった。
「水深が5~6メートルあるのでラインを少し張り気味にしてルアーのフォール中に食ってきました。」と加地氏サカナを捕らえたフックは2本共に唇の外側に掛かっていた。その後も何本かの河口橋の橋脚を回りキャストを続けたが反応がないので、今度は上流にある橋の橋脚を狙った。

そこで、再び加地氏がルアーをリフト&フォールさせてシルバーに輝く美しいシーバスをキャッチした。
同型のシーバスが3本釣れて、潮が引き出し川の流れも早くなってきたので、今度は河口の東側に出てサーフの沖でヒラメとコチを狙ったがベイトの気も無くノーヒット。そして、最後に今切川の河口に入ってコチを狙う。

すると、「ローリングベイト」でボトムの上をリトリーブさせていた加地氏がキビレチヌを連発でヒットさせた。露口氏に中村氏にもキビレチヌのアタリはあったがバレてしまった。釣りを終えてから加地氏は「ローリングベイトはファーストリトリーブでも泳ぎが崩れる事が無いのでリトリーブの強弱でチヌは食わせやすかった!」と言っていた。

河口のシーバスゲームに精通している露口氏も「河口でのシーバスゲームにはローリングベイトは不可欠なルアーで橋脚やテトラをスレスレに引くのも、常夜灯の光の影を引くのもスローからファーストリトリーブまで速さは思いのままで食わすことが出来て、リフト&フォールでは死にかけのイワシを演出して釣ることができるルアー」と語った。今回初めて使った「ローリングベイト シャッド」については「従来のローリングベイトよりもボリューム感がありリフト&フォールでサカナにしっかりと見せてスローリトリーブで食わすのに良さそうだ」と露口氏加地氏は「ファーストリトリーブだと泳ぎが崩れてSの字の軌道を描く。フォールの姿勢が良くて、それでシーバスを2本共に釣ったので、とことん使い込んでルアーの泳ぎや特徴を早くつかみたい!」と言っていた。今春、発売されるのが楽しみなルアーである。 

上段:今回、シーバスゲームで使用した今春発売される「ローリングベイト シャッド」
中段:露口氏が河口のシーバスゲームには欠かせない「ローリングベイト」
下段:ヒラメとコチを狙う時の必要アイテムの「スチールミノー」