3分14秒

 例えば波や天候のように、自分からはどうしようもなく、しかも悪意の無い大きな力に翻弄されることは、一種の快感でもあります。一部の釣りやサーフィンが息の長い趣味に成り得ている一因かと思われます。
 自然任せで釣れたり、釣れなかったり、その案配がとても心地良い。釣果までもが、まるで波の様です。
 
 以前はアブレを避けるために、日並みを選んで確率を上げていたようなところがありましたが、この頃は少し違います。若干怪しい日でも気が向けば釣行するようになりました。
 そして変わってきたことがもう一つ。目前の大きな波が怖くなってきました。あの波に飲まれたら、今の自分では耐えられないだろうと想像してしまうからです。
 
 私は過去に一度だけ溺れた事がありますが、その場所は海やプールではないのです。水泳をやっていたとき、当時の個人メドレー世界記録を持つ女性選手が、3分14秒間、息を止めていられると聞きました。そこで仲間と、女に負けられん、と大きな洗面器に顔を浸けて競ったときのことです。
 バカげていますが本気で超えるつもりでした。…で、3分越えの合図があり、気絶一歩手前で堪らず顔を上げようとしたのですが、その寸前で水を盛大に吸い込んでしまい、また洗面器中に突っ伏してしまったのです。人間は洗面器一杯の水があればシねます…。
 サーフィンをやる方だと解ると思いますが、大きな波に飲まれるとなかなか海面に上がれないときがあります。そこでやっと息継ぎしようとした瞬間に第二波を食らうとヤベェーとなるわけです。
 落ち着いていれば大抵の場合大丈夫ですが、それでも最低限の息止めが出来なければなりません。
 
 こうした経験があると自分の限界は見えてきます。新島の羽伏浦というところでは、申し分のない体力と3分の猶予がありながらギリギリだった事がありました。
 今の自分の能力は当時の三分の一ぐらいかもしれない。もう余裕はありません。
 
 実は先日、ルアーテスト中にチョット危ない目に遭いました。抵抗の軽い現行K2F142による釣行に慣れて油断していたようです。
 現行タイプは設定上、ピックアップし易くて、たとえ70メートル先からでも低抵抗故ルアーの回収は容易くなっています。
 テスト中の物は幾分潜り、ラインテンションもアップした物でした。
 遠方から怪しい波が来そうだったので、ルアーの回収を急ごうとしたら根掛かり、退避が遅れてしまったのです。充分過ぎる飛距離が仇となるときもあります。
 この場合、普通ならラインを解放してそのまま後退りし、ルアーは半分諦めるのが鉄則です。しかし、代えが無いものなので、つい踏ん張ることに。これは皆さんが高額のルアーを使う時と同じ気持ちなのかもしれません。危ないです。
 
 海面近くにある同じルアーの挙動は、50メートル先と70メートルでは異なります。ラインが風や流れに弄ばれ、BKF並のテンションのものを遙か遠方でコントロールするのは無理があるし、安全すら損なわれることがあります。
 
 おかげでまた課題が見えてきました。もう少し時間を頂いて、きっとクリアーしてみせましょう。安全に波や流れの中の住人と遊ぶために。 

Posted by nino