小さな効果を積み重ねると…

K2F142

ルアーを扱うとき、一連のピックアップから投入、飛行、着水、リトリーブと流れる動作のそれぞれの一瞬間を、どうすればより良くなるのか?長年培った理論には本当に効果があるのか?それを試してみたのがK2Fです。
今回は、その一端を記してみます。

まず、ルアーを振りかぶったとき、意識しないとルアーは揺れています。大きくはロッドティップを軸とした揺れです。これが振り切る方向とずれていると、ポイントへのコントロールが悪化します。 そのこと自体はルアー側で出来ることは少ないのですが、よく見るとそれとは別にルアーも別個に小さく揺れていることが判ります。
揺れの頂点で投げるとルアーが前後回転してしまう一原因となります。それを強引に解消するために重心移動システムが出来たようなものです。しかし、今回はもう一歩先まで踏み込むことにしました。
実のところルアーが泳ぎやすい重心位置は最もブレ易いということでもありますから、ウエイトが尾部に移動した瞬間もブレが残っていると、ラインからの力が一直線に伝わらないことがあります。
K2Fは構えたときには二つのウエイトが頭部側と尾部側とに分かれているため、この微細なブレを抑えることが出来ます。(最も泳ぎにくいウエイト配置になっているから①)投げる瞬間に静止し、その後ルアーが反転するまでの軌道を安定させることになります。
当初、耐久性のために採用した機構ですが、僅かながらこんな効果も確認されました。
次に、投入動作に移行すると、ルアーには瞬間大きな力が加わり、ウエイトは慣性で尾部へ。ラインに引かれた本体には強大な遠心力が働きます。その0、0何秒の間に頭部と尾部が反転します②~⑥。
この時、リップ付きの泳ぎやすいルアーは、空気中でもその極端な速度のために泳ごうとしています。(ほとんど重心移動システムが打ち消しますが②~③)圧力の加わった空気には水と同様の物理作用があるからです。
この瞬間に注目すると、リップの形状、取り付け位置によってはルアーのスムースな反転を助けることが出来ます。この瞬間、ルアーはリップ角度の延長上へ頭を振ろうとします②~④。水中で潜ろうとすることと一緒です。ラインと遠心力に阻まれるため、動きとしては僅かなものですが、あの強大な遠心力に打ち勝ち、反転のキッカケになります。
K2Fのリップは水中のアクションと飛行中の抵抗減だけを目的に現在の姿になったわけではないのです。
また、リップは常に振り切る回転の内側にあるとは限りません。外側になった場合でも遠心力から逃げようとして身を捩ろうとする力も働きます②。これは都合が良い。 ルアーの上下(背腹)からすると、反転後、水中時と同じ正位置を取ろうとしますから(重心は下だから)、ある程度捻れ方向の回転力は残しておいたほうが、いち早く安定を図れます。
ただ、この際、捻れ回転軸がブレると、せっかく慣性で尾部に仮固定されたウエイトが転がり、戻り易くなってしまいます。K2Fのウエイトルームの後部を横から見たとき(写真)、微妙にカーブしているのはこの点を解析して、飛行中、背腹が回転しても飛行軌道線から重心が離れないような位置にウエイトをセットするためのものです。
注―重心移動システムを使ったルアーは、飛行中、段付きが起きるようなサミング(ラインの引っ掛かり等)をすると、ショックでウエイトが戻ってしまい失速してしまう場合があります。

また、ルアーが反転するとき、フックも反転しています。K2Fは独特のワイヤー形状と微妙な位置によって、一連の流れの中のフックの挙動もコントロールしています。
投入直後はフックより本体が先行しています⑥。そしてボディに張り付いていますが、張り付き方にもノウハウがあります。着水近く、失速してくるとフックが先行し⑦、着水後は水中なので、再度フックがボディに遅れます⑧。(この時、例のフックマークが付いてしまいます。K2Fは泳いでいる間は針先はボディに触れません。ルアーによってはフックの重さで飛ばしているタイプもあり、フックの挙動は様々です。)

そして、着水後のショックか、浮き上がりの惰性とリトリーブで、ウエイトはほぼ戻りますが、近距離とかラインの張り具合によっては若干遅れます。
ウエイトが戻る瞬間も、ルアーの捻れ方向の動きも考慮して⑨、ウエイトルームの絶妙なスロープがスムースな移動を促しています。ナナメ保持のマグネットは一個目のウエイトの戻りのショックを逃がし、磁石の割れに対処するためでもあります。

このようにK2Fは、ルアーマンの投入動作を再考し、吟味して、大きな仕様変更の他に小さな工夫も重ねました。それぞれの効果は無いよりマシ程度のものかもしれません。しかし、徹底して幾つも重ねた結果、貴重なものを手に入れました。
それは、飛ばすための特別な格好をさせなくても、魚形のままで得た、比類のない対逆風性能と、作動の確実性です。
一オンスに充たないフローティングミノーをストレス無く風に向かって投げられる気持ちよさは、私がかって初めて重心移動システムを組み込んだルアーを投げた時の感動を思い出させてくれました。

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一人のテスターさんの質問に答えた内容を、取り出してまとめてみました。
この連休中、暑かったけど皆さんはイイ釣りできたのかしら、それとも家族サービス?私は足の日焼けがイタイです。

Posted by nino