テンションコンセプト

K2F142,TEST等

 K2Fのテスターさん達には、一通り説明してからルアーをお渡しした方と、ほとんど説明をせずにルアーを使って貰っている方がいます。まず、双方の率直な感想を聞きたかったからです。
 
 元来私は、雑誌等で、このルアーはこう使え、というような言い方は努めて避けてきました。聞かれれば自分はこう使うといった程度です。なるべく先入観を植え付けたくなかったことと、基本的にはルアーの使い方は自由という考えでした。付き合いのあるテスター、モニターさんはベテランなので、任せっきりが許されたということもあります。
 後で、使い方を聞くと、ユニークな使用法があったりして楽しみでもあります。
 
 しかし、K2Fのような見掛けはともかく中身を一新したルアーの性質についての説明は、余計なお世話と知りつつ、話しておくべきとも考えます。
 漸くスズキ(青物)の季節が巡ってきた昨今、K2F142のアクション面での主コンセプトを明らかにしておきます。
 
 既にテストでK2Fを投げた方は、リトリーブ抵抗が外観のイメージからすると異様に軽いことを感じられていることでしょう。集まりつつあるアンケートにもBKF115並みの抵抗感、リップ付きなのにリップレスを引いているみたい、慣れれば快適、とかの声があります。
 つまり、K2Fは意識してルアーのテンション(リトリーブ抵抗)を低く設定してあります。
 
 力学の法則から、ロッド即ち手元に感じる力と、ルアー自体に掛かる力は比例します。引いたとき重く感じるルアーは当然ラインが張ります。(図)反対に抵抗が軽いルアーはラインが緩んでいることになります。
 抵抗感が重いか軽いかは、ルアーの大小、太細、泳ぎの大小、表面デザイン、リップの角度、面積等(ひとつだけヒミツ)で決まってきます。だから、経験者はルアーを見ただけで大体は予想出来るはずです。
 K2Fはそのあたりを突き詰めた結果、ルアーが大きくリップ付きのメリットを持ちながら、辺りの水に与える影響は(側線刺激等に関わる)一回り小さいルアーと同じになったのです。
 大きくて小さい。これが何を求めてなのか、あるいは何が変わるのか?
 
 メリットとしては、例えば硬いロッドティップでもラインは緩んでいるのでPEでもナイロンでも食い込みが良い。性質として遠方での挙動が安定する。(意志に反して急潜行なんてことがない。)また、魚の死角からルアーが近づいても驚かせることが少ない。
 複雑な流れの中ではルアートレース(コース取り)が高抵抗タイプとは泳層を含めた三次元で変わる。今まで微妙に通っていなかったところを通る。
 デッドスローや、漂わせて探るときの挙動が変わる。
 着水させた瞬間に空中に残っているラインと風を利用して、コース取りを工夫出来る。(普段はサイドライナーキャストでその影響を最小限に留めるべき)
 長時間引いても疲れず、ラインの消耗が少ない。根掛かり回避性に優れる。などがあります。
 すべて、より積極的に、果敢に攻めることを可能にするための性質です。…
 そしてもちろん、ここは広告ではなくラボなので、デメリットも挙げておきましょう。
 まず、ラインが緩んでいるので魚のアタリが掴み難い。向こうアワセが多い。
 PEだと、その扱いに慣れているか、PE向きのリールを使わないと、巻きのテンションも緩いので次回投げる時、ナイロンよりトラブる心配がある。
 ルアーのブルブル感が薄く、夜のルアーの在処が掴みづらい。
 荒れたサーフでの寄せ波の扱いに慣れが必要。
 フローティングルアーだと、泳層の幅に限度がある。などがあります。(これらのデメリットは09年9月発売のT:2によってかなり解消されます。)
 
 実はこれらのデメリットは、二十年前、高抵抗タイプのBKFと交互に発表した低抵抗タイプのリップレスが、釣りのシーンに定着するまで五年も要した理由でもあります。 しかし、この十年で低抵抗タイプのリップレスやペンシル系のルアーはすっかりジャンルとして定位置をキープして、その使用感に慣れた方が多くなりました。それに最近はリップ付きミノーとリップレスの中間デザインもあります。だから特殊な使用感を持つK2Fが今なら受け入れて貰えると判断しました。それに、慣れれば解決出来るデメリットです。
 望んだのは、リップ付きのメリット(調整の自由度、海面への食い込み等)を守り、中途半端なことをせずにリップレスのメリットを融合することでした。(ボディ断面はK-TENリップレス伝統ともいえるオニギリ形状、浮力の集中帯をウエイト位置と重ねて、外力に対して敏感になっている。)
 
 これが出来れば、(デキタ(^o^))次の構想が可能になるのです。
 それは、ルアーの分類を別の視点から組み直すこと。現在、プラグルアーはサイズ別、泳層別、を主に対象魚別(強度含む)などで分類されています。
 これをテンション別で配置し直すとどうなるのか? 従来の逆ピラミッド型の配置が、実戦に則した有機的な形に変化します。
 例えばK2F142とBKF115は同じT1。TKLM90、M128ならT0.5。BKF175ならT3とかの記号を用いて表示すると、一見サイズが無視されて入り乱れるように感じますが、ルアーの性質の把握を助けてくれます。必要ならジグにでも重量込みで45グラム、T2とかいけそうです。
 何十年もテンションを意識してルアーを投げ続けてきた私ですが、実釣においてのルアーコントロール、釣れ方、アワセ方、使う者との相性、ロッド選択の目安等に関わることであり、機会あればシリーズに応用したい概念でした。
 
 この先順調にK2Fを展開出来れば、より正確なテンション計測をして、一目でルアーの使用感までもイメージ出来るようにします。
 計画では現在のK2F142にも別のタイプのリップが付けられるように設計に織り込み済みです。でも、それはまだ先の予定です。幾分尖った性質を持つ現行のT1タイプを充分味わって戴いた後、再度テスターさん、モニターさんと意見交換してから作りたいのです。
 それが、はたしてT1・5になるのか、T2になるのか、それともT3なのか、私も楽しみにしています。
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今回の内容の参考になるはずなので、バキュームキッス…自選エッセイ集より【26】を読んでみて下さい。
 それと、モニターさんへ…天候不順の地域もある様子、まだ締め切りまで余裕があるので無理をしないで気楽にお願いします。
既に回答戴いたアンケートには貴重なご意見が多く、大いに参考になります。ありがとうございます。

Posted by nino