パチンコとウチュウ論…自選エッセイ集【25】(2001)

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 陽気が悪く、釣りは断念。矢口氏の漫画をモチーフにした新台「釣りキチ三平」が導入されたと聞き、急遽予定変更して釣り仲間とワイワイと打つことに。
 投資上限を決め、いざ勝負。
 この台、スペックは普通ですが、かなり過激。20連中の台もあれば、4分の1の台が1500ハマリ中。
 それでもルアーマンは強かった。激熱四万十川アカメリーチ(写真、体長2メートルだそうです。)がサクッと当たって連チャン、終わってみれば二人ともプラスしました。
 これで、お客様用の酒代は確保。どうぞ、遠慮無く飲みに来て下さい。
 
 …ついでにパチンコ関連のエッセイを載せておきます。では。
 
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
◆パチンコとウチュウ論(2001)
 我が家に訪れる友人達の半数以上は、釣り人である。世間では今頃になって、リストラだとか失業率5%突破とか言われているが、私の会う人達の失業率は、ずっーと昔からもっと高かった。ただ、生活はたいへんなはずなのに、どこか楽しそうに見える。
 ある日、釣り好きなパチンコのプロやセミプロが集まっていた。元サラリーマンもいれば、元経営者もいる。酒席の話題は当然のごとくパチンコ必勝法から始まった。
 パチンコなど、やったことのない人もいるだろうから、簡単に最近のパチンコを説明してみよう。〔注、現時点では台の法規制が変わり少々複雑になっているが、基本は同様〕
 今の主要機種はCR機と呼ばれ、液晶画面の凝った演出に特徴がある。外見は様々だが、中身はどれも三百十五分の一で大当たりを引ける電気的なルーレットのようなものだ。当たるとさらに二分の一の確率で約六十分の一の確率変動モードに移行する。
 玉が入賞する度に三百十五分の一の抽選を繰り返すから、理論的には抽選回数が多いほど有利になる。だから、釘が開いていて、たくさんの玉が入賞する台を選ぶことが基本となる。営業形態にもよるが、客側が勝つには千円で三十回程度抽選が行われる必要がある。
 丸一日にすると、三千回抽選があったとしても、確率のバラツキにより、大当たりは、0~三十数回の差が結果として生ずる。そこに泣き笑いがあるわけだ。プロは毎日長時間打つ事で、そのバラツキを確率の収束という形で採算をとっている。
 また、規制上三百十五分の一であっても、内部では、六百三十分の二とかにして、その当たり位置を偏らせてあるから、ますますバラツキは拡大している。闇雲に打っても、プロでさえ苦戦必至なわけだ。
 そこで、必勝法だが、そんなものはないというのが普通この手の文章の帰結なのだろうが、ここは期待に答えて最後に書くつもりだ。ただし、彼らプロの方法ではない。
 
   ヒラスズキ?
 彼らとの酒席の中で、全員一致した意見があったのだが、少々複雑な気持ちである。パチンコの大当たり状況が、ヒラスズキの釣れ具合に似ているというのだ。 どんなにガンバッテもいっこうにヒットしない大ハマリがあったり、確変モードに入ったような爆釣もある。
 大当たり確率八十%のスーパーリーチが外れたときなんか、磯際で痛恨のバラシといったところだ。
 また、パチンコにも季節に相当する、釘の締められる時期と開けられる時期がある。朝早く行って、台確保するほうが有利なところも似ている。
 そして、研究を重ねる程、結果の向上が得られること、何よりパチプロの中でヒラスズキをコンスタントに釣る人が、本業のパチンコの収支も安定しているのだ。彼は粘り時、諦め時を知っている。 すると、河口や内湾の釣りは、より手軽で確実な夕方パチンコといったところか。
 …まてよ、それなら私はパチンコに勝てるのではないか。(単純です)そこでやってみた。最初はともかく惨敗が続いた。…
   宇宙論?
 元々、私は親のせいで賭事が嫌いなのだ。生まれ育ったところが新宿の繁華街近くという、教育上よろしくないところだったので、親が一計を案じたらしい。ものごころつく前の小学生から麻雀とパチンコをやらせたのだ。親の目論見どおり、負けたときの悲しさだけが印象深く、私は賭事を受け付けなくなった。
 そんな私でも、ヒラスズキと同じと聞いてはおさまらず、悪友の誘いに乗ることになったわけだが、やがて、プロと同じ方法では、時間の制約上、勝ち目の無いことは解りかけてきた。
 そこで、彼らの話を謙虚に聞いているとあることに気付く。店の選び方、経営側の都合、客の心理、確率と割り数…。言葉は違っても、その解釈の仕方や関係性は何処かで聞いたことがある。
 
 それは、飛躍してしまうようだが、一種の宇宙論であった。それも、人間原理派の説に触れるものがある。
 古来より科学者は、宇宙を説明しようと、その知性を競って、ようやく現代になって、宇宙年齢とか大規模構造とか物質密度とか、全容の解明に近づきつつあった。
 ところが、何かが解ってくると、より鮮明に新しく説明のつかないことが見えてくる。ビックバンから百六十億年たって、ここに人類が生まれたというが、それが成立するためには、とんでもない、を百重ねても足りないほどの偶然が重ならないとならないことも解ってしまったらしい。
 普通は、時を経て何々が生まれたとか、原因から結果が生まれると言いたいところだが、それでは人間が何故現宇宙に居られるのか、説明出来ないそうだ。
 重力や核力等の物理条件や定数が極僅かでも今と違えば宇宙すら別の形を取らざるを得ない。どの力にも、炭素型知的生命体の存在にとってあまりに都合の良い数値や偶然の一致があり、それは確率的にはあり得ない奇跡的な均衡だという。
 そしてついには、人類が存在するためには、宇宙は百六十億年以外の数値はとれないというところまできてしまった。つまり、原因と結果が逆なのだ。
 
   必勝法?
 宇宙の解釈は、たぶん文化や芸術には影響を及ぼすけれども、実生活には応用できないと思っていた。何故なら、世界が海ごと巨大な四本足の動物に支えられているとした太古の時代から、それぞれの時代のテストで百点取るには、その時点の真実が正解であって何の問題もなかったからだ。
 ところが、パチンコ(確率の悪魔)は別だった。少なくとも、原因と結果の解釈の仕方からは攻略のヒントを得た。まともに一つの台の三百十五正面体?のサイコロ?なんぞを当てようとすると、ブラックホール行きである。
 
 あの宇宙論にあてはめてみると、ある地域のパチンコ店の群が宇宙となる。(結局、大きさが違うだけ)店舗の数、及び台数は、その地域の客の資金力、及びバカサカゲンに比例する。当然、店の数が上回れば何処かが倒産してバランスする。
 物質密度には必ず偏在があるから、活性の高い(客の入りの良い)島宇宙を見つける。(これは魚と同じ)その中では、何の工夫もせずにランダムに台を選んでも、次のことを守れば理論的に投資額に対してプラスする。
 例えば十台あったとして、その日調子良く勝てるのは、平均二~三台がいいところだ。これは、宇宙の基本定数のようなものだ。それ以上では店側の経営を圧迫するし、それ以下では客が来なくなる。双方の存在にとっての根底なのだ。
 つまり、誰でも十回の内、二~三回は勝てるのが今のパチンコだ。反対に七~八回は負けて当然ということ。三百十五分の一なんて意味はないのだ。これがもしも百分の一抽選になっても、当日勝てる台数が三倍になるわけではない。十分の二~三こそが重要である。
 そこで、勝った時二~三回の分が、負けた時七~八回分を上まわれば良いわけだ。(実際は台を研究し、店と、良く回る台を厳選することで、勝率は半々程度に向上する)計算式はあるが、店の営業形態によって異なる。より具体的には、一台に一箱分相当の☆円が投資額の上限になる。思ったより少額であるが、これによって好調台にしか座らずにすむ。勝った時を思い出して欲しい、案外お金は使っていないものだ。
 我々普通の人が、パチンコで負けるということは、目前の不確実な一台に固執し☆円以上入れたときに、確率的にはすでに発生している。何万円も使って取り戻したとかの話を聞くが、偶然勝ったにすぎぬ。いつか確率は収束してマイナスする。三百十五分の一という確率上の収束は、プロでないと難しい。十分の幾つなら、遙かに早く収束するはずだ。
  
   証明?
 この方法は意志が強固であることが必要だ。勝っているからもう少し打ちたいとか、暇だからやるとか、負けをその日の内に取り返したいとかは許されない。感情に惑わされず理論通りに立ち回らなくてはならない。
 この証明のため、ひと月プロと張り合ったことがあるが、宇宙論の応用で、時間効率としては肉薄するところまでいった。そうしたら、気が済んでしまった。この点もヒラスズキと同じだ。私は解ってしまったポイントには、通わない癖がある。
 思えば、ヒラスズキを何十年もやっていると、三回に一匹ぐらいのヒットになっている。双方が存在するために、自然に場所選びや釣り方を調節してきたのかもしれない。終。
 
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 それにしても最近の台はタイアップ物が多いです。釣りキチ三平、仮面ライダー、幸田来未、相川七瀬等々。
 スポンサー不足に悩むTVにもパチンコメーカーのCMが盛んに流れています。伊☆☆咲の恋人とかいう人もメーカー御曹司。神☆☆のの夫も業界人。業界内には警察OBもいて、これではパチンコに対して批判的な意見など黙殺される雰囲気があります。
 最近の台は、突確とか潜確とか、昔を知るものには冗談としか思えない、〔出玉の無い、名ばかりの大当たり〕があり、故意に止め時を引き延ばす、店側に有利過ぎる仕様になっています。私はこれは悪質だと思います。上記宇宙論からすれば均衡の破綻となり、一時的には店が潤いますが、必ず客の減少を招きます。
 パチンコは程々に。 

Posted by nino