エルフィンからのヒント
K2F142のボディ表面には、PSTと銘打った物理的な加工を施してあります。塗装の密着を少しでも良くしようとした工夫です。(カテゴリー~開発状況~塗装強化他。またはサイト内検索、「塗装強化他」で。)
今回は、これに至った裏話を少々。
タックルハウスにはエルフィンシリーズという、主に管理釣場用のルアー群があります。最近では海水仕様でメバル等に対応するモデルも追加しました。
設計者はN君。十八年前入社して、現在三十八歳。一言でいえばユニーク。本人は嫌がりますが、まだ秋葉系という言葉すらない時代に、先駆けてその典型的なファッションで登場。実力を蓄えた後、エルフィンシリーズの設計担当になりました。
やがて、フィッシュという4センチ余りの小さなミノーを作ります。
普段から丁寧な仕事ぶりなので、コンピュータのCAD画面の前で、何日も固まっているのを誰も気にしなかったのだと思います。
何故、時間が掛かっているのか…。
普通、ルアーに鱗模様を付ける場合、複雑そうに見えますが、実は簡略化してナナメ線の彫り込みを入れてあるだけなのです。
彼は、余程思いを込めたかったのでしょう。稀なる努力で極小の鱗を一枚一枚3Dで造形していたのです。気付いたときには後戻り出来ないところまで来ていました。やり遂げるしかない。…
その結果、僅か4センチのフィッシュのCAD上のデータ容量は、K-TEN175を凌ぐ程になっていました。
そして、ここで本人も問題に気付きました。何と、あまりに細かいため塗装すると溝が埋まってしまい、ルーペで拡大して見ても造形の名残しか見えなくなっていたのです。普通の線だけのものと見掛け上、変わらなくなってしまいました。
膨大な努力に対して、全くの無駄というには酷すぎます。当然、隠れた利点もありました。吹き付けた塗装が垂れ難く、密着率が上がって塗装が強かったのです。
企業的なコストで考えると厳しいのですが、私はこれを気に入りました。それもスゴク。見えないけど、まさに入魂。
K-TEN系ボディには鱗を付けないことがアイデンティティーのひとつですが、それ故に塗装に相当の気を使わないと、重く鋭いフックの傷から広がる剥がれが心配されます。
これを少しでも改善したかった。塗装したら殆ど埋まり、鱗としては見えないが確実な強化が出来る。K2Fには打って付けの方法でした。
K2Fの表面に採用したのは、さすがに3D鱗ではなく、単純化されたものです。10センチも長いので無理でした。そして、全く名残が見えなくなると、説明が難しいので、絶妙な深さの彫り込みをして、あえて僅かに見える、無機質な縦横線にしました。
N君の努力は八年を経て、K2Fに生かされたということです。
エルフィン、フィッシュ。私の家にはルアーを置かない部屋が一室あるのですが、これだけは飾ってあるのです。
(下写真、若手?設計担当三人。左がN君。)
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K2F142モニターさんへ…アンケートの貴重なご意見、ありがとうございます。秋の深まりと共に釣果報告も増えてきました。
現在、ショアーからだけでも、スズキ、ヒラスズキ、マゴチ、尺メバル、磯マグロ、ヒラマサ、イナダ、ギンガメ等の写真をお預かりしてあります。
お渡しした一本だけで、しかも季節を考えると、予想を上回ります。
今月下旬にはもう一本お送りできると思いますので、いましばらく不自由お掛けします。お気を付けて、モニタリング、よろしくお願いします。
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