TKLM120【12/18】…錯覚

 小粒でヤンチャな弟、TKLM90の兄貴120。兄らしく90ミリに比べて、アクションのDNAは同じでも、全て控えめな設定にしました。
 このサイズで90のように動かすと、アッピール過大な局面が多々あったからです。浮力を抑え、同一水深にある時間を増やし、スライドの幅を狭め、ラトル音を消しました。
 ただ抑えるばかりだと、必要な初期レスポンスや望む動きが弱まってしまいます。そこで、リップレスシリーズの特徴であるオムスビ形断面を再考、さらに不安定にして、また2球をR曲面で支持することで、僅かな外力に反応するようにしました。
 
 しかし、これはこれでやりすぎると回転してしまうので、尾部を下げてフックの重みの助けで必要な安定度を確保してあるのです。
 極端に尾部を下げると空力的には不利になりますが、もう一つの利点を考えて採用しました。それは、スローリトリーブのときにローリング方向の動きでも尾を振るからです。錯覚に近いのですがウォブリングで尾が振れるのとは違います。  tklm1218
 元々、私の設計によるリップレスは動きの支点が普通のミノーとは異なります。通常のミノーのウォブリング支点は胴体の中心寄りにあります。尾を振ると同じく頭も振ります。だから、太いリーダーを使うと頭部の動きが阻害され、振幅が狭まるのです。
 対して、リップレスのウォブリング支点は頭部付近にあり、頭を降りづらいのです。エッ!でもスライドやダートするじゃない?それはボディが傾いたときに力を加えると、頭部の水受け面角度やボディの曲面によって、潜ろうとする方向の力を横に向けているからです。
 ボディの傾きは、ほぼランダムだからトリッキーなアクションとして現れます。したがって、静止状態からのトゥイッチよりも、リトリーブしながらのトゥイッチのほうがスライド、ダートさせやすくなります。(注!このルアーはこればかりが目的ではなく、必要とするときだけにしたほうが無難です。スズキに多用するスローリトリーブ中にも控えめに前記の性質が現れるので、普段は穏やかに使うことをお勧めします。)
 当然、リップレスに太いリーダーを使うと、リーダーごとズレなくてはならず、その抵抗が邪魔してスライド幅は減ります。反面、頭を中心に暴れることもできるのです。(リーダー太さで簡単チューニングも出来るということ)ややこしい話ですが、それがリップレスの性質なのです。(リップレスと名が付いていても頭下部にリップ状の突起があるものは通常ミノーとの中間的な性質を持ちます。)
 
 実際の魚はリップレスのようには泳がず、むしろ普通のミノーのほうが小魚らしく見えるときもありますが、ジックリ観察すると本当の魚の頭はあまり動きません。方向舵のような働きをしています。ルアーみたいに振動したら彼等も目眩がするでしょう。動きの本質から言えば、リップレスのほうがイイ線行っていると思うのはそういう理由からです。(それならジグヘッドにワームならもっと近いじゃないか?そのとおりですが、理由はともかく私はヤワラカイものには全く興味が湧きません。ワガママごめんなさい)
 
 ハードプラグルアーは制約だらけですが、そこが面白く、研究しがいがあります。実際の小魚は純粋なローリングやウォブリングなんてしないのに、それでも釣れてくれますね。
 魚にも、人間にも五感はあり、第六感、第七感ですら想像は出来ます。(知覚、味覚、臭覚、痛覚、音感、気配…)
 でも、一番大事なのは、もしかしたら―錯覚―なのかもしれません。しかも、お互いに……。
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Mさんからメール、戴きました。昨日6月30日、房総地磯、朝マズメ、TKLM120赤金で81センチのヒラスズキ。この頃行く度に釣ってます。決まっている休みなのにサスガです。

Posted by nino