オランダのシーバス

 日本にいる間は、社のテスターをしてくれている、みっちーさんからお便りいただきました。K-TENと暦を共にする古くからの仲間です。
 今はオランダに単身赴任中。奥様が寂しがっているかな、とダンナの留守中、TELしたら・たまにはいい・と一言。奥様自身Mオーバーのシーバスを釣ったりしていて、釣り好きのダンナに理解がある。イイ感じのカップル。
 以前話したとき、赴任先の近くにルアーの対象魚がいるのかもハッキリしないと聞いていたのですが、送られてきた写真には小さいながらもルアーをくわえたシーバスが!おめでとう。休日が充実しそう。
 いるんだか、いないんだか、判らないところから始める釣りって、この時代、なかなか経験できない楽しみです。私はその過程を知っているだけに、今のみっちーがうらやましい。
 ちなみにオランダ語で「Zeebaars」だそうです。イシモチ風の雰囲気がある魚みたいです。大きいのもいるらしいので、釣れたら、また写真見たいものです。
 

ネット回線なんとか復旧しました。

 毎度、ご来室、ありがとうございます。
 実は、数日前から突然インターネットに接続できなくなり、苦戦しておりました。プロバイダーのお姉さんのおかげで、なんとか復旧できたのですが、まだ起動の度に接続設定が変わってしまい、その都度、設定し直さなければならない状態です。
 回線不通の間、メール等を送っていただいた皆さん、返事できなくてすみません。
 早く原因を究明して、快適なネット環境に戻りたいのですが、それまで毎回時間を掛ければ繋がるので、明日からアップを再開します。よろしく。
 ウインドウズ95時代の起動の遅さを思い出せば、それほど面倒ではありません。そう思うことにします。半世紀、生きてきた知恵ってやつです。
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その後の顛末、6月7日…↓
 数名の友人からアドバイス貰って、9割がた解決しました。
 あのプログラムやこのプログラム、どこそこのビューアがいたずらしているのでは?皆詳しいナ。
 結局、私のコンピュー太、98の遺産をそのままケーブルで受け継いだXPなので、見かけ上もクラッシックな98画面。余計なものがいっぱい。思い切って純XPにして上手くいきました。
 今更、ビスタの時にXPの画面を目の前にして、キレイだななんて感心しています。
 回線そのものも、光ケーブルの無い地域なので、ADSL。しかも中継基地から限度という距離があり、実測8分の1程度の、しかも不安定な速度しかありません。速度アップを図るため、以前プロバイダーから来た専門家が私のコンピュータをいじり倒して壊されたエピソードもあります。大きなファイルのダウンロード中に止まることもしばしば。業者に聞くと当分このままだそうです。
 こんな言い訳、読んでくれた、あなたのためにjunjunの撮った綺麗な写真を貼っておきます。飛行機を4回も乗り継いで、行くだけで二日半かかるインドの最果ての島に我々だけ。

クニペックス・ペンチ

 皮のケースの裏に1991・6と書いてあります。このペンチはKさんから戴いたもので、長年の愛用品になりました。 Kさんは当時、何処の海に行ってもよくお会いするので、本当は同じ顔の人が三人ぐらいいるんじゃないか、と思っていました。私と同年代なら、Kさんが誰だか判りますネ。見習うべき事の多い人です。 
 クニペックスのペンチを手にするまで、国産のステンレス製のペンチを使っていたのですが、サビなければずっと使えるはずのものも、過酷な使用方法だと、早々とガタがきました。
 しかし、これはバナジューム綱にクロームメッキながら、今でも現役です。さすがに幾多の遠征も共にして、リーダーカット、魚のシメ、ナイフやトンカチ、バールの代用、何千という魚からハリをはずし、サメにも何度もカミカミされて、カット部の刃は潰れ、掴む部分のギザギザもツルツルになりました。
 海に落としてしまい、干潮になるまで待って回収したこともあります。そこで、穴を開けて、ロープを付けられるようにしてあります。
 予備として、新しいものも持っているのですが、どうも手にシックリこないし、ケースに収まりづらい。少し手作業でグリップの加工をする必要があります。(あくまで釣り用として。ペンチ本来としては現在のグリップ形状のほうが出来が良い)
 ペンチはロッドやリールよりも、常に同じ物を持ち歩くことが多いから、一緒に過ごす釣行時間が最も長い釣り道具といえます。ルアーと供に直接、魚に、つまり思い出に触れる物です。少々、機能的に劣化しても、出来れば同じものを使い続けたいと思っています。
 
 写真の傍らにある黒いペンチは、ジュラルミンのエーベル製。凄まじく加工精度が高く、軽い。これは、Mさんから戴きました。
 やはり、相当の年代物ですが、なかなか海用に使うのは気が引けて、もっぱら室内作業用に使っていました。この頃になって、シメる用途としては使わないヒラ釣りなどに、お供するようになりました。
 このふたつが、私が動けなくなるまで保てばいいのだけれど…。 

OTHER…アオダイショウ

 一昨日は暖かくて、今年始めて夕方までTシャツで磯にいられました。波を被るとちょっと冷たいけど気持ちいい。
 出掛けに毎年決まって、一度は目にするアオダイショウが、自宅の桜の木の上で日向ボッコ。大きくなってる。2メートルはありそう。おNEWの防水デジカメの試写。パチリ。
 何年か前、こいつを見付けて、追い出そうとしたら、その様子を見ていた近所のお婆さんが、家の守り神だから、放っておけと一言。
 それまで私、ヘビ、苦手でした。言われてみれば、何も悪さをしたことがないので、以来そのままです。だから近寄っても逃げる気配すらない。猫並です。
 睡蓮鉢が増えてから、この時期、餌のカエルが多くなって、居心地が良いのでしょう。
 友人が来るときは、驚くから、出ないでネ。 

ロディ・スプリンター480(1969年製)

昔、渋谷のサンスイさんで、お年玉を貯めて買った物です。この頃のリールで残ったのは、これとアブ製品しかありません。ほとんどの国産リールは、メンテナンスが悪かったせいか、いつのまにか海水に浸食されて使用に耐えなくなり処分してしまいました。
ロディも同様の扱いをしてきたはずですが、パーツそれぞれの耐久性への気配りが、あの頃の有名他社のものより上だったようです。
例えば、真っ先に浸食されるダイキャスト製のスプールのエッジがステンレスリングで保護されているのです。今でこそ、この部分は高価格帯のリールに特殊なリングが採用されているのは、あたりまえですが、当時は珍しいものでした。 ドラグも単純な割に実用的です。ラインローラーも付いているし、壊れそうな所は、今の物より太目のビスが使われています。ハンドルの注油部は、バネ付きボールのニップルです。ローターと本体のスキマも海水に強い構造です。
そして、主要部に三つの大きなボールベアリング。小さなベアリングのものは耐荷重性がない。要するに、壊れるところが少ないリールだったのです。

私は、K-TEN誕生の少し前まで、たまに使っていました。組み合わせていたロッドは振り出し石鯛竿、怒濤18号。先と根元を詰めて、シーバスロッドに改造したものでした。
ロディというメーカーは、無くなりましたが、その後の話をちらりと聞くと、なかなかの物語があったようです。ネットで、「稲村製作所 ハイネスエンジン」と検索するとその一部が解ります。

私が見つけたのは、こちらのページです。(別ウインドウで開きます。)

余談になりますが、最近、トラックの車輪が取れたとかのニュースがたまにあります。昔のトラックのほうが車体は丈夫だったような気がします。
積載重量の規制が緩かったせいで、積めるだけ積む慣習があり、当然メーカーも現状に沿って、表示より丈夫なシャシーを作らざるを得なかったようです。夏のアスファルト道路に、一台で轍を残すような積載過多の大型トラックを見かけたこともありました。
しかし、耐久性抜群であること、このことが、メーカーを苦しめたと聞きました。何しろ、普通に使っていれば、平気で百万キロメートルとか走ってしまい、代替需要が無くなって、トラックが売れなくなってしまったようです。
適当に壊れてくれないと、メーカーが成り立たない。現在は積載重量の厳しい規制があり、過積載のおそれが無いため必要分の強度があれば充分というシャシーなのでしょう。部品の経年劣化による破損で車輪脱落事故が今頃起きるのは、こんなことも原因になっているような気がします。
トラック業界だけではありませんね…。家電、コンピュータ、釣具、程よく壊れる業界は賑やかです。昔、ステンレスで車体を作ってしまったデローリアンはすぐ倒産です。(ちょっと別な理由もあったようですが)映画、バックトゥザフィーチャーではタイムマシーンになっていましたね。

プラ製K-TENを売り出して、間もなくの頃、釣具屋さんに妙なアドバイスを受けたことがあります。K-TENは丈夫過ぎる、○○のようにしないと、すぐ売れなくなるよ、と。私は、これには反発しました。
先のロディを見る度に、思いを新たにします。物として今でも大事に出来る事がすばらしい。世の道理は判っていても、やはり私は釣り人です。作るルアーは出来るだけ丈夫にしたいと思います。 

バキュームキッス…自選エッセイ集より【20】

 ルアーマンは、フッキングの瞬間に声をあげるときがある。思いつく所では、ヒットォー、ヨシッ、クッタァーとか、人それぞれだ。バス釣り育ちだと、フィーッシュとかフィッシュオンとかも加わる。
 中には、いきなりバレナイデーと叫んだりする人もいる。私だと、ほとんど無言だが、餌釣り出身のせいか、たまにノッターというときがある。
 昔、TVで若いバスプロが、フィッシュ、フィッシュと連呼していたのを初めて見たときは、あまりの違和感に目が丸くなったものだ。訳すと、魚、魚と叫んでいるのだから、聞き慣れるのには時間がかかった。
 フィッシュオンというほうは、万国共通で魚が乗るという感覚があるらしく感心した。
    ◇問題
 魚がルアーを食おうとして、フッキングする、ごくわずかの時間にラインから伝わる情報は、分析を拒む程の量がある。 熟練するのに従って、一瞬にして本物か根がかりかを判断できるし、感覚の研ぎ澄まされたときなどは、サイズすら判ってしまう。
 そして、相手の魚もまた一瞬のうちにシマッタコレハホンモノデハナイと察しているはずだ。問題は、これの少し前、魚がルアーを食おうとするところだ。 
   ◇吸い込み型
 我々はよく、魚のバイト、つまりルアーを噛むといったりするが、これは正確さに欠ける。ルアーのターゲットのほとんどは、餌を噛んで補食しているわけではない。カミカミ型ではなく、吸い込み型なのだ。
 口から餌を海水ごと飲み込んで、うまい具合に大きく開いたエラ蓋から海水のみを排出する。だから、まれに、勢い余ってルアーがエラ蓋から出てしまうことがある。魚にソバを与えれば、外国人よりは器用に食えるはずだ。
 サメのようなエラの形をしたものは、若干このときの負圧は低いので、これは噛んでいるという表現がしっくりくる。もっともサメは、二重に並んだ歯で噛んだ後、ついでにノコギリのように横方向に歯ぎしりする。カワイクナイ。
   ◇負圧とロッド
 魚は吸い込み型の食い方をしていると納得すれば、釣技も変わってくるし、幾つかの疑問も解けてくる。
 まず、何故ロッドティップが柔らかいほうが確率的に食い込みが良いのか解るだろう。正確には、各魚種の負圧力、つまりバキューム力より強い力が、反力としてルアーにかかっていては口の中に吸い込めないのだ。(実際は、フリーのフックだけが吸い込まれることもあるからフッキングすることはある。)ティップの硬いロッドを使うときは、持ち手を軽く握っているほうが、吸い込まれやすいといえる。
 こんな事を言うと、強くて早いリトリーブでは釣れないの?と思われるだろう。この場合は、ルアーと魚の動きの軌跡が交差したときに、引っかかるようにフッキングしていることになる。当然スレが多くなるし、弾かれたと感じる場面が増える。
   ◇ラインテンションとルアー
 そして、竿だけではなく、ルアー、フック、ラインといったものも魚の口の負圧発生時点の様子に深く関わっている。しかも、互いに影響しあっているのだ。
 たとえば、伸びのあるナイロンと伸びの少ないPEとを比較すれば、一見ナイロンの方が吸い込まれやすいようだが、事はそう単純なものではない。
 ルアーをリトリーブするとき、ラインには常にテンションがかかっている。引いたときルアーを重いと感じていれば、ラインテンションは強く張られていて、引き重りしなければラインは弛んでいる。 テンションが強ければ、それはロッドティップが硬い場合に似てくる。
 したがって、あくまでも全般的にではあるが、ラインテンションが強まるルアー、つまり抵抗の大きなものは、ルアーの動きがよく伝わり、当たりが取りやすい反面、飲まれにくく、アワセにコツがいる。対して、抵抗の少ないルアーは動きがつかみづらく、当たりはとりにくいが飲み込まれやすく、自動的に針がかりしやすいということになる。
 どちらが自分の釣りに相応しいかは好みだし、どちらが有利なのかはTPOにもよるが、これを意識すると道具の選択にも幅ができるだろう。
 この数年でルアーシーンに定着してきたリップレスタイプのミノーというのは、泳層や泳ぎの他にも幾つか特徴があり、同型同サイズなら通常のリップ付きミノーよりラインテンションを低く保ったままでいられるため、幾分食い込みそのものには有利なわけだ。以前試作した小型リップレスミノーだと、飲み込まれることが頻繁におこった。
 もっとも、リップレスといっても中には頭部の水受け面積の大きいものもあり、それは通常のミノーと変わらない釣れ方をする。
 また、ピンポン球のような大きな浮力を持つルアーが水面上にあるとすれば、魚の負圧力を越えてしまうので、フッキングに至る確率は減ってくる。
 ジグで使うアシストフックも、負圧力で、たとえジグそのものが吸い込まれなくても、フリーに動くフックのみが吸い込まれて、具合良くフッキングしているわけだ。
   ◇ふたつのタイプ
 ルアーを設計する上で、魚の口で発生する負圧の事を積極的に考え始めたのは、リプルポッパーを改良した頃からだ。魚は出ても乗らないといった、ポッパー特有の欠点を、負圧をキーワードに設計変更してみた。
 実験釣行でフッキングミスが減ったことを確認できたことから、高抵抗タイプのK―TEN(リップレスを除く)とは、別の一群のルアーの構想が生まれた。
 ユーザーの要望を元に作り上げた、Mに固有の性質を与えるため、すべて低抵抗タイプとしたのは、そういう経過があってのことである。
 そして、ふたつを使い比べると、面白い現象がおこる。高抵抗タイプでよくフッキングミスする人(場合)は低抵抗タイプを使うとバラシが減る。そして、その全く逆の事もあるのだ。
 ルアーの個性以上に、ルアーマンには引きぐせ、あわせぐせ、つまりは個性があるのだった。
 現在、ショップには溢れんばかりにソルトプラグが並んでいる。質、量とも世界一だ。その中から、魚に対してだけではなく、自分と相性の良いルアーに巡り会うには釣行を繰り返し、試すしかない。
 それにしても、ヒットの第一声が、スッタァーとか、バキューム、バキュームとなることは、当分ないであろう。
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2001年の1月に岳洋社さんの「SW」に掲載されたものです。先日、TELで、TKLMが何故飲まれ易いのか?質問を受けました。その答えを補うものとして、これを載せておきます。また、ラインテンションの事は、今度のK2Fに積極的に応用していきます。 

開発状況…ウエイトルーム等

   ◇メインウエイトルーム
 現在、K2FのABS成形品を待っているところですが、それが最終形態ではないのです。一旦、リップを取り除いた状態に戻して、フィールドで再度リップを付け直して、動きの微調整をすることになります。
 プロトとは、図面上は全く同じでも、僅かに材質の違いによる重量差があり、メインウエイトやRユニットとの相性の確認が必要となります。
 全てのウエイト類を微妙にブレさせる仕様なので、本体の動きとウエイトの動きは同調したり破調したりします。望むところに収まるまで、また海で地道な作業を一週間程、行います。その時点で設計完了となるわけです。
 写真はメインウエイトルームの決定図案です。以前、お見せした図とは少し変わりました。
   ◇映り込み
 私はルアー作りを、もちろんハンドメイドから始めていますが、量産品と関わるようになってから、常に心掛けていることがあります。
 それは、せっかくこのような立場にいるからには、ウッドのハンドメイドでは出来ないことをやってみよう、ということです。
 重心移動システムそのものは、前にウッドで量産出来たことから、今となってはハンドメイドでも難しいことはないのです。しかし、K2Fの内部構造とかはウッドの手作りでは、とても再現出来ません。
 それに、一見、単純な外見ですが、機能を含めて今は詳しく書けない特殊な形状をしていて、これも手で作ることは困難です。例えば、表面にメッキを掛けたとき、辺りの風景が映り込みますが、このルアーは、その映り方まで気を使って曲面を構成しました。(自己満足かもしれませんが)
 完成の暁には、まさに暁の風景をルアーの側面に映した写真を、このHP上にアップしたいと思います。魚と共に見ることになる景観が映っているはずです。
 コンピューター上の想像図は、このページの右上のサイト内検索に―仮発表した―と入れると、2段目で見られます。 

開かずの引き出しを開けたら…自選エッセイ集より【25】

必要あって、家具の配置換えをすることになった。タンスがヤケに重く、ひさしぶりに開けた引き出しの中から、なつかしい釣り雑誌が出てきた。
何でタンスの中に、と思われるかもしれないが、それは、頻繁に引越していた時期があり、面倒なので、家具のあらゆる余分な空間に、目の前の物を押し込んでいたのである。
引越も慣れすぎると、一々梱包して運ぶことなどしない。今の家に引越て来たときなど、机の上の物を片づけずに(飲み終えたコーヒーカップでさえ)ガムテープで止めて、大型トラックにそのまま積んだぐらいなのだ。
だから、引越した当日から馴染んだ空間になる。新鮮な気分は味わえないものの、すぐに日常生活を取り戻せる。

すっかり忘れていたおかげで、普通なら、とっくに処分していたはずの古い雑誌を見ることができた。60年代のものが何冊かあり、70年代、80年代と、今となっては手に入れようのないものばかりだ。紙質の悪い物は、開こうとすると、背表紙が壊れてバラバラになった。 考えてみれば、単行本や文庫本といったものは、それが時代を超えて読み継がれるものであるなら、いつでも新しい装丁のものが買える。シェイクスピアやウォルトンの本なら、200年後でも本屋にあるだろう。
そこへいくと、雑誌というものは、余程意志を持って保管しないと、いつしか失われてゆく。かえって貴重なのだ。さらに雑誌は、それぞれの時代の雰囲気を反映しているから、時々の影響力という点では、普遍的な本と同様の力がある。
古ぼけた釣り雑誌の記事に目をやると、中学生の自分が、何故、金華山まで釣りに行ったのか、今更ながら解った。今読めば、子供ゆえの信じ易さから、夢を膨らませ過ぎたようだ。
60年代の雑誌は、海関係だと、ほとんど餌釣りの記事だが、時折、ドジョウやバケの代わりにルアーを使った方法が紹介されている。今は無き竿メーカーの社主自らルアーでヒラメを釣る苦闘が綴ってある釣行記もある。ちなみに、この時のアブキラー(プラスチックミノー) は、750円であった。今の感覚だとハンドメイド並みの価格だったことになる。 それと、アブの5000Cが、一万六千円ぐらいの時に米国製の六万円のスピニングリールがあった。知人に買った人がいて、まずそんな値段で買えること自体、驚いたものだ。それは、なんと電動で巻けるのだが、パワーがすぐに無くなり、錘を引きずってくるのにも苦労して、もしも魚が掛かったらどうするんだと真剣に悩んだというから笑える。

71年の雑誌には、海でルアーを引こう、と題した一文があったので、よく見ると書いたのはあの西山徹氏。あらためて、氏から学んだことも大きかったのだと気付かされる。また、同じ号には、餌釣りだが、詩人の関沢氏の利根本流のスズキ釣りという記述がある。つい先日、釣友のIさんの呼びかけで、本流筋のシーバス調査というイベントを終えたばかりだが、これを読んでから参加すれば良かった。30年前に今の我々より、よく川スズキを理解していた人々が居たのである。
その他にも、電気ウキの夜釣りではあるが、房総のスズキポイントを網羅した記事がある。ほとんどの場所が、すでに明らかにされていたわけで、私のオリジナルポイントなんて、いかに少ないことか。
80年代に入ると定期のルアー専門誌が発刊されたり、海のルアーが急速に広がった。そう昔のことではないから、この頃の雑誌を持っている方も多いだろう。掲載されている写真には、今も活躍中の方々の若々しい顔が並ぶ。
自分の書いた記事を今読み返してみると、専門誌のほうは、そこそこルアーフィッシングが解ってから書いたもので、訂正したくなる箇所は少ない。しかし、その前に総合誌に書いたもののほうは、試行状態のせいか、今の自分だと批判したくなる部分がある。逆風有利説を確信する前だから、どんな自然条件下でもトライするとか、強気の言が目立つ。居着きの黒スズキが、まだ居たから、今ほど条件を選ばなかったからかもしれない。 それに、名作のレッドフィンやロングAをさらにリアルに加工しているとも言っている。私も、釣るためにリアル化に執着していた時期があったわけだ。また、リップレスを多用し、リングの代わりにケブラー線を使い、サイレントにしているとも書いてあった。全体に小技に走り過ぎていたように見える。

こうして、思わず目にした雑誌を、つい開いて、物思いに耽ってしまうから、肝心の家具の配置がいっこうに進まない。 釣り雑誌のほうは、何でその号だけ捨てなかったのか、中を開けば、その理由をすぐに思い出せる。しかし、ついでに他分野の雑誌もゴロゴロ出てきて、これらの捨てずにいた理由が解らず、気になって、すべて読み返すはめになった。
70年代の釣り雑誌に挟まって、日本版の月刊プレイボーイが一冊出てきた。さては気に入ったヌードでもあったのかいなと、探したがたいしたものはない。ようやく解ったときは、もう今日は家具の配置換えを諦める時刻になっていた。
そこには、先日、数十年ぶりに帰国してマスコミを賑わせた、赤軍派の女性リーダーS・Fの明大時代の詩が載っていたのだった。こんなに痛々しいほど優しい詩を書く人間が、後にあんなこともできるのかと、切なくなった記憶が蘇る。だから捨てなかったのだ。
そして今は、帰国の際、TVで見せた姿がそこに重なる。私は女性の笑顔は好きだが、この時のF・Sのパフォーマンスとしての笑顔だけは見たくなかった。

F・Sの話は、一見、釣りとは全く関係ない。しかし、それゆえに、あえて付け加えてみようと思った。
偶然、タンスの中に居合わせた、プレイボーイ誌と釣り雑誌のように、我々は全く異質な事が、当たり前のように共存する世界に住んでいる。
かの、ウォルトン卿が、三百五十年前、古典「釣魚大全」を執筆していたときは、まさに革命の最中と聞いた。戦時中に書かれたものとは、とても思えない。戦争行為そのものに対する、軽蔑と悲しみが、行間に滲んで見えるのは、後に時代背景を知ってからである。
そして、現在も世間のテロの心配をよそに、コンビナートのそばに行ってまで魚釣りをやろうとしている自分達がいる…。
今宵は、古い雑誌を肴にして、バーボンウイスキーをロックでやろうかと思う。
いや、もうやっているか。
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2002年1月の岳洋社さんの「SW」に掲載されたものです。写真はみな「つり人」のものです。ルアー黎明期には、他の雑誌より、その手の記事が多かったです。

開発状況…Rユニット簡易型

 始めに載せてある写真のクランクベイトは、K-TENが生まれる同時期だから、二十五年程前のものです。ふたつだけ残っていました。
 これで何をしたかったかというと、ルアーの動きで中の球が回転するかどうかを試してみるためでした。透明の窓があり中の状態が見えます。ひとつは失敗、もうひとつは成功しました。
 単純なクランクベイトの動きにプラスアルファを加えたかったのですが、これはハンドメイドで精度が無く、成功例の再現性に乏しいものでした。丁度その頃、K-TENの製作で多忙になったこともあり、放置してしまいました。
 ただ、ウッドのK-TENにも、実はRユニットの考え方を応用していました。穴を縦に開ける製作方法もそれに都合良く、入れる鉄球より大きめの穴を開けて、磁石に仮固定されながらも二個目の鉄球は振り子運動させていたわけです。
 これによって魚に効くかは別としても、確実に泳ぎ出しが良くなりました。完全固定するよりも、泳ぎ出しの超初期にオモリの入っていない軽いルアーが始動するがごとく、きっかけを得やすかったということです。それと定期的なスライドという性質も確認できました。
 
 以来、私は一種を除いて、ウエイト球の完全固定方式は採用せずに、すべて横ブレを利用する設計をしてきました。新たな可能性が沢山あるからです。
 例外の一種というのは、TKF130です。あの特殊なリップの純粋性を保ちたかったので、球は横ブレさせていません。また、前後してTKR130というRユニットそのもののルアーを製作しました。より違いを際立たせるつもりでもありました。
 それぞれ、魚を誘惑するという同じ目的を持ち、同じ長さ表示でありながら、お互いの機能を追うばかりに、全く異なる姿と性質を持つに至りました。
 
 それから早五年。簡易型ではありますが、K2F142に再びRユニットを入れます。さすがに始めてから二十五年も経てば、全部とは言わないまでも少しは解ったことがあります。
 写真の部屋の中に、様々な質量の球体を入れ、実釣して試してみます。タングステン、鉄、真鍮、アルミ、木、ゴム、ガラス等を一個から数個。
 最終プロトまで決めることが出来ないのは、ウォブンロールの周期がプロトの材質によって異なるからです。今のプロトだと何故かアルミ◇個の時、魚の反応が一番良いようです。理由はまだ解りません。タングステンを入れるとTKRの性質が垣間見られます。
 また、小さな音量ですが、音質もそれぞれ入れたもので変わります。これらは実際、魚に聞いてみるつもりです。
 
 
 ちなみに、半分冗談ですが、その気になれば、強大なリトリーブエネルギーを回転力にできるわけですから、Rユニットに発電させることもできますし、球に触れる外周部分に非等長のギザミを入れれば、短いメロディを奏でることだってできるでしょう(^o^)
 それとK2Fの安定した飛行姿勢を見ていると、ルアーに笛状の形態を与えれば、飛んでいる時、ヒューって音がするようにできそうです。夜釣りにイイかも。 

あなたの思い出の一匹…テスター編

 タックルハウスの初期からのテスター、高知の名人、大坪さんから写真借りてきました。
80~90年代の釣り雑誌に、アカメやヒラで、よく登場していた方です。高名な鮎師でもあります。今は、本人は゛殿堂入り゜。直弟子の小田さんが後を継いでいます。
 写真は、元気いっぱいで、よく跳ねた魚を、カメラ片手に、すべて本人が撮ったそうです。外洋のヒラスズキらしく、尾が見事に張っていますね
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 ヒラスズキ 80cm / 5.5kg
 日時:1991.12.08 昼14:00 (平成3年)
 場所:土佐清水 
 Rod : ダイワ パシフィックファントム 13 f(振出仕様)
 Reel : ダイワ SS1000LB (レバーブレーキ)
 Line :エムズクエスト 20Lb
 Luer : BKF140 #2(マリンブルー)
 Camera : フジカ HDM(タフガイ防水)
 コメント:この日、周辺で
     8発出て、3本取る!
 フォト&演出&出演 by 大坪保成
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