百円ライター

 先日、若手から「これ何ですか?」と自室の傍らにあった、フックと太いラインの妙な仕掛けのことを聞かれました。私、「それ、何でもルアーにする奴」A君、「?」時間が無かったので説明不足だったようです。
 
 これ(写真)確か20年近く前に、シイラの講習会で使ったものです。
 その頃、まだ発展途上にあったソルトルアー業界の中堅メーカー数社の協力により、毎夏、紀州のヤマハリゾートでシイラ釣り大会をやっていました。
 参加者を全国から募集し、リゾートらしい食事と宿泊がセットされ、夜には講習会がありました。講師にはKさん、Hさん他先達の方々にお願いして、私もルアーの作り手として、お話させて頂きました。
 講習会といっても、当時遠くからオフショアを求めて集まる皆さんですから、聞き手もほとんどベテラン揃いでした。私もまだ三十代。回数は多くても経験年数はたいして変わりがありません。
 そこで、タクティクスではなく、ルアー論のようなことを話しました。内容は、生餌と空き缶という両極の間で、ルアーはどの位置にあるのか?またそれがルアーの有利、不利にどう繋がるのかといったことだったと思います。自分はそのド真ん中を狙っているとも言いました。
 
 その教材として使ったのが、あの仕掛けでした。これを身近にある百円ライターとか調味料の小瓶に、テープや糸で固定するだけで、即席ルアーの出来上がりです。これで海面をスプラッシュしてくれば、活性の高いシイラなら充分釣れると。希望する方に試して貰いました。
 
 けっしてシイラをバカにしているわけではありません。どんな優秀なルアーを使ったところで、使い手によって、釣る人もいれば、駄目な人もいます。また活性次第で様々な反応を見せてくれるのがシイラの素晴らしいところでもあります。シイラにおいて、その理由を実地で経験して欲しかったのです。
 それは、どのルアーが釣れるの?とか最強は?とかの質問を度々聞いていたので、ちょっと荒療治ですが、実は経験を一挙に倍増させる方法を示したつもりでした。
 状況的に、シイラは目で見て釣ることができる貴重な魚です。しかし、それ故にせっかく追ってきたシイラを見ると、親切にも喰い易いようにリールを巻く手を緩めてしまう方が多いものです。見切られたとルアーのせいにしがちです。
 
 即席瓶ルアーでは、追わせることすら気を遣い、考えなくてはなりません。しかし、これで追わせ、釣れるようになったとき、当然、まともなルアーに替えてみると、それまでより楽に釣れることになります。
 講師のKさんはさすがでした。それ貸してと一言。赤唐辛子の瓶ルアーを持って行き、さっそく釣ってきました。それを見た方は、目が覚めたと言ってくれました。
 さらにハードルを上げた190ミリリットルのコーヒー缶ルアーを欲しい人と挙手をお願いしたところ、7~8名いたので、翌年お渡ししたことを覚えています。 …
 この経緯に、ルアーメーカー側が勧めることではないのでは、という批判もありました。表面だけを聞けばルアーなんて何でもいいことになりますから。しかし、物体なら何でも良いというわけではありません。私なりに厳選していました。 
 百円ライターの比重は、一般に出回っているFプラグと、ほぼ同じです。水への絡みが良く、ガス分量で微調整もできるし、カバーはメッキ、透明部分のカラーは選び放題です。何より、小さく細身と、ほとんどルアーの要素を満たしています。
 小瓶も水で調整できるし、しかもそれは液体重心移動システムでもあります。空き缶は鉛を必要量、流し込んだりしましたが、ニンジン、ジャガイモ、ゴボウ、大根等の野菜は、いずれも元々比重がルアー向きなので、形を整えれば簡単です。 つまり水への絡み方という、ルアーの本質にも繋がることなので、それを理解して貰うために選んだ物体でした。難しいのは長さと幅が、2:1以下で軽い物、例えば茶碗やタバコの箱等です。ピンポン球も困難です。
 
 最後に誤解のないように念を押しますが、もちろんルアーを軽く見ているわけではありません。
 敗北の記憶として思い出すのですが、海外遠征中、誰もルアーを投げていないような好場所では、驚くべきことに空き缶ルアーと我がK-TENを同時に投げると、最初に追うのはより違和感のある缶のほうということがありました。最初の一撃に限ってですが、魚形のいかにも釣れそうなルアーが負けることもあるのです。
 ルアーは、まだまだ可能性に溢れています。
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写真はインパクトがあったせいか、人手に渡り、今あるのはライターで釣れたシイラだけ。
仕掛けもボロボロなので組み直しました。
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東京のTさんからホットな写真、頂きました。↓記念に。
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 土曜の夜に、◇◇の河口で86cm釣れました。
K2Fのパールレインボウで始めたけれど、なぜか絶好調
のさらしホワイトで食いました。
写真送ります。
 東京内湾の河口に立ち込んでいろいろ歩いていると、
ぼらの群れがたまっているところに遭遇しました。
上げ潮で回ってきそうな感じもしたし、イナッコでは
なく、もろにぼらだったので強気になってK2Fでたらたら
流していた所、水面炸裂でヒット。
 久しぶりの堂々たる80オーバーでうれしいです。
 こんな時だから?デジカメ不携帯で、電話のカメラ
で撮影しました。かなり見苦しいけど、送ります。
 

手作り穴開け道具

ウッドK-TENが廃番になって五年近くが経ちました。そのまた一年ぐらい前までは数あるシリーズ全部の穴開けという行程だけは、直接私が作業していました。
四十行程以上ある作業のうち、重心移動システムの要である穴開けだけをするために、成形したルアーを自宅まで送って貰っていました。
組み上げると外からは見えないため、人任せに出来ない箇所だったからです。

今のABS製ミノーには、当然のごとく組み込まれているシステムでも、相変わらずウッド製量産品では見かけません。とても採算が取れないからでしょう。
たまにハンドメイドを楽しむ方がトライしていますが、多くは木を二枚貼り合わせる方式のせいか量産には苦労しているようです。
私も個人的に作っていたときは、二枚の板それぞれに球が移動する部分を、あらかじめ掘っておき、貼り合わせる方法でした。
しかし、この方式は左右のズレが生じやすく、満足のいく精度で量産するには相当の機械設備を用意する必要があります。そこで、考えた結果、成形したルアーの頭部と胴体をいったん二分して、胴体に縦方向の長い穴を開けることにしました。
これなら設備にお金を掛けなくても、工夫と技術とアイジョウがあれば可能な作業です。

しかし、始めた当時、ミノーは元々細いうえ、尾に行くに従って更に細くなるのですから、そこにドリルの長さいっぱいまで縦穴を開けることは非常に難しく、笑えない数の不良品が出ました。
せっかく成形したウッドを壊しての失敗ですから二重のロスになります。ウッド本体が設計より僅かでも細いと、最大で50パーセントの廃棄率が出たときもありました。

写真の装置は、これらの失敗をクリアーするために、ありとあらゆる工夫をして出来上がったものです。
機械精度そのものは最初に使っていたもののほうが高く大柄で、カッチリ固定ができ、ドリルもブレず、完璧に近いものでした。ただし、削る相手が細くはなく、木目の無い均質な材料に、短い穴を開けるだけならば、です。
実際は、細くて均質でもなく、手作業で成形したウッドのサイズ自体が厳密にはバラバラなうえ、木目があるので深い穴の途中でドリルがたわみ、逃げてしまうのです。一瞬で横からドリルが飛び出しオジャンです。…
これを解決するために、全角度方向に可動可能で完全固定ができる受けジグであることはもちろん、必要に応じて1ミリ程度任意に回転中のドリルを横移動できる装置にしました。
ドリルの先が思わぬ方向に逃げようとしたとき、エイヤッと力を込めると、あら不思議、ドリル先が方向を変えるのです。こうして開けた穴を光にかざして見ると、尾に近い穴の奥はうっすらと明るくなっているほどギリギリなのです。

そして、運良くシステムを組み込むことが出来た胴体と、頭部をエポキシ接着剤で元に戻します。これは本社での行程になります。斜めカットなのは接着面積を確保するためです。(ラスト一年間は機械で成形したものがあり、そのカット面は垂直です。)
木を分断してあると、強度的に不安になりますが、実験をしてみるとメリットのほうが多いのです。
木は木目に沿って微細な穴がたくさん開いていますから、ルアー前後の間に一枚の防水壁がないと、使用時の僅かな亀裂から水分が浸入して、移動鉄球が早めに錆びてしまうのです。
他に錆び対策としては、穴開け後に135サイズで100本あたり、アロンアルファ20CCを注入してあり、乾いた後、再度穴をドリルで磨いていました。 今だから笑えるのですが、水分と反応して硬化するタイプのアロンを大量に使うと、その白いガスで飛んでいるハエさえ落ちてくるほど強烈な刺激臭があります。誰もがやりたがらない作業でした。

初稼働から二十四年。埃を被ってからは六年経った装置…。邪魔なのに未だ片付ける気にならないのは、時々昔の自分に会えるからです。歳と時間を経て、全てが向上したわけではないのです。どう見ても衰え、失いかけていることもあります。そういうことを他人は教えてくれません。だから昔の自分に今の自分を見張らせて、ときに叱って貰っているというわけです。

また何処かのメーカーがウッドのハンドメイドで重心移動ミノーを作ることはあるのでしょうか?ざっと見回すと当分は無いような気がします。まともな物を作ろうとすると高コスト、非効率、反量産性の塊だからです。

それどころか、ウッドハンドメイド全般、高効率と品質の安定を目指しているせいか、旋盤で加工できる形、つまり材料を回転させて削れ、成形ができ、机の丸い足の一部のような形のものが増えているようにも見えます。
ヘタをするとK2F一本組み上げるよりも速く成形できそうなハンドメイドもあります。
ウッドハンドメイドには、それにしか出来ないことがあるはずです。
私はつい作り手のほうから見てしまうので塗りの美しさだけではなく、もっと手が掛かっているようなハンドメイドを見てみたいと思っています。

これから

 K2F142。品番は、KがK-TEN系の略。2が次世代シリーズの略。Fはフローティングということです。
 142はサイズですが、金具を含まない本体サイズです。リップやアイを含めた全長だと、157ミリあります。数字だけ見るとビビル大きさかもしれませんが、これで30センチ台のフッコやコチも釣れています。
 
 現在は皆さんの支持のおかげでK2Fの次作に取り掛かっています。
 さらにデカイ奴を、というご要望も頂いていますが、ご意見の多数はダウンサイズを望まれています。したがって、進行中なのはK2F1◇◇。
 全容をお見せできるのは、まだ先になります。今度のFショーにも発表はしません。142と同様に、ある程度完成の目途が立ってから、真っ先にここで発表したいと思います。ノンビリ待ってやって下さい。
 
 また、同時進行して現K2F142のリップを変えたタイプとRユニットの質量を変えたタイプも引き続き実験中です。 最終的には魚に聞かなくてはならないので、これも数タイプできてはいるものの、まだ発表するわけにはいかないのです。
 
 それに、好評を頂いたMNカラーについても、青物シーズンに入りましたら、それに特化したカラーリングを用意するつもりです。
 よろしければ、青物用カラーについてのご意見、ご要望を今のうちに頂ければありがたいです。個別に反映するには無理がありますが、出来るだけのことはしたいと思います。
 
 全国的にはオフシーズンに入った所も多いですが、雪などに邪魔されない地域では、釣り場が空いてきたとばかりに活発に動き回っているルアーマンもいます。 今日も未だに下がらない水温を求めた熱いアングラーからメールが届きました。 このページの写真は隠れテスターのMさんから。
 連日の強風と今冬一番の冷え込みに耐えて、今朝、カゼ変わりのワンチャンスで6、5キロのヒラスズキ。ST56が伸びています。まさに引きづり出した感じです。コノシロカラーで。
 前回、最大サイズをバラシしていたので、いつもより嬉しそう。おめでとう。 

灰皿

 スモーカーには生きづらい世の中になりました。各交通機関での禁煙はまだしも、都市部では外でも吸えない所が増えてきました。
 百害あって一利無しとか、副流煙の被害などマイナス要因をさんざん聞かされてきたので、マナーには留意していても肩身は狭くなる一方です。
 
 喫煙歴三十余年。軽く見積もっても50万本以上。一千万円を煙にしていることになります。その内、税金は六割だから六百万円。これから先のある若い人に戒めとして、この数字を残しておきます。 
 以前は部屋の壁にベンツ一台がヤニになって張り付いていると思うと気が遠くなったものですが、一方で、一生掛かってもフェラーリ一台、煙に出来ないとはクヤシイ気持ちも涌いてきます。
 
 我が家の仕事部屋の西側の、元、白い壁には、全面にルアーを掛けているのですが、当然のごとく全部ヤニまみれです。
 先日地震があった時に、ルアーがガサガサと揺れていたのですが、その光景に妙に感心してしまいました。ルアーの影になる部分にはヤニが付いていないので、壁の未だ白い部分が揺れで覗き、一斉に明滅しているのでした。綺麗。
 
 そんな我が家ですから、タバコを吸わない人にとっては不要品が山と在ります。 百円ライターはワンカートン(12箱)買うとオマケにくれるので、もしも火事になったら家が爆発しそうです。
 灰皿だって、携帯用も数えれば50個はあるはずです。写真は、その中でも愛用の四点。流紋焼き二種、片方は茶器を改造したもので大容量が気に入っています。
 真鍮と木で造られた灰皿はインドで買った物。辺地でタバコを捜すと、たいていハッシッシを勧めてくるので困ったものです。
 
 信楽焼の茶器は立派な箱付きの銘入りながら、飾るより実用とばかりに思い切って灰皿として使っています。以前、酔った友人の奥様が落としてバラバラになり、私だけが茫然としたことがありましたが、今は復活しています。落とした本人はただの脆い安物灰皿と思っています。
 復活できたのは、破片を捨てようとゴミの日を待っていたとき、偶然、チャンツィイー主演の映画、「初恋のきた道」を見たからです。その中で、壊れた陶食器を金具を使って器用に直すシーンがありました。そのエピソードからはチャンイーモウ監督(北京五輪開会、閉会式を演出した人)がわざわざ入れただけあって、とても心地良い感じを受けました。
 
 そこで私もバラバラになった器を直すことにしたのです。ただしアロンアルファで。
 オークション的な価値はゼロになりましたが、釣り仲間との語らいを数百も共にした思い出いっぱいの品物です。

Rユニット…TKR130Mについて

 今回は、アベシゲルさんからのリクエストでTKR130Mについて、です。
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 このルアーは、2002年5月、チューンドK-TENとして2番目にリリースしました。一番目がTKLM90ですから、このシリーズのコンセプト、オンリーワンに、いかに忠実であったのか解って頂けると思います。
 市場に当時としては斬新なTKLM90が、そこそこ受け入れられたおかげで、長年暖めていたアイデアを実現できることになりました。今、振り返っても、そのサイズ、姿、動き、高コストからして、あの時しか出来なかったルアーだと思います。
 
 このルアーの目的は、ウォブリングとかローリングとか、いわゆるルアーの動きを根本的に変えることでした。
 それまでのリップ付きのミノーは全て、ルアーを強く引くと必ず動きが大きくなります。早く引けばウォブンロールの振動は速まり、やがて暴れます。私は長年これをコントロールすることを考えていました。
 実際の小魚を観察すると、身体をくねらせて尾を振り、推進力がつくと後はスーッと惰性で流すように移動しています。 ルアーのようにスピードを上げる毎に派手になるのとは真逆と言ってもいいぐらいです。(注、それでも釣れているのはルアーの違和感こそ武器に成り得ているからですが)
 この性質はルアー形状を工夫することとテクニックで、ある程度の再現は可能ですが、目指すものにはほど遠いものでした。
 
 そこで、自然観察で得た魚の動きを再現するために、まず一度、ルアーの見掛けは勿論、大きさや釣るという事まで忘れることにして、唯のひとつの物体として研究してみたわけです。速く引けば引くほど動きが止まる物体のことを。
 それにはジャイロが有効だということが解りました。古くは地球ゴマというオモチャ、外郭は静止していても内部が高速回転しているので倒れないコマがありました。要は安定を図るための機構で、二本足ロボット、二輪車など様々な分野で応用されています。
 問題は、ルアーにはそれらにはあるモーターとかの動力が無いことでした。ジャイロを動かすにはウォブリングなどのエネルギーを使うしかないことになります。そうすると、引き始めのウォブリングを巧く回転力に換えて、ルアーの動きを中和出来るとしても、その後はどうなるんだ?と次から次へと疑問が湧いてきます。
 この辺の説明は実験とか計算式とか面白くないものが多いので割愛しますが、どうにかルアーの動きの中心位置から、どれくらいの距離に装置があれば、またどの角度であればジャイロが働くのか解りました。超デカイ、妙な物体の完成です。とても小魚には見えないけれども、少なくともその動きには満足しました。
 しかし、これを魚形に近づけるのが厄介でした。また、ルアーの前部に重量物を置くので、飛びには最悪の配置です。しかも、ルアーの重心位置を中心として、ジャイロと反対側、つまり尾の側に重量物が対置されるとジャイロが働かないのです。
 それ故に苦肉の策として、飛ばすためというよりバランス取りのために球一個だけの重心移動システムになっています。もしもシステムが無かったら、非常に投げづらい実用に耐えないルアーになっていたでしょう。…
 そして実釣試験を経て出来上がったのがTKR130M。昔ウッドで一個だけ作った試作機から何年を経たのか記憶が霞んでいますが、ようやく形になったのです。私にとっては、動きの両極を手にしたことの意味は大きく、それは今後、両極の間を必要に応じて自由に行き来できる、ということなのです。
 Rはロータリーユニット(ジャイロ)の略。Mはミノーの略。Hはハイファイリップレスの略です。姉妹品の130Hとはユニットの重量、形態とも異なり、見掛けは似ていても性質は全く別物です。
 
 引き始め、ゆっくり動かすとウォブンロールですが、徐々にスピードをあげてゆくとRユニットが作動してS字状にスーッと流れるような動きに変化します。動から静へ、普通のルアーとは逆です。
 使い方は、この変化ポイントを把握するのがコツなのですが、ある程度見晴らしの良い足場で自分のリトリーブとルアーの動きを感覚的にリンクさせておかないと能力を充分引き出せないので練習が必要なルアーなのかもしれません。
 このルアーを使うと、魚の反応がちょっと変です。本当は、釣れない魚が釣れて、釣れていた魚には見向きもされないというぐらいの劇的な効果を期待していたのですが、其処までの差はありませんでした。
 ただ、このルアー故なのか、あるいはいつもの自分の引き方とは変わらざるを得ないためなのかヘンなことが度々起こるのが面白いです。それは、このサイズと潜行深度を使える状況下で、いつものポイントで釣れると判ります。
 
 現在このルアーは、その格好、サイズ、マニアック度、操作方法等、ハードルの高いルアーなので、各地で少人数のファンに支えられているルアーとなりました。
 小型化を求められてもいますが、精度やコスト的に無理があり、当分実現しそうにありません。でも、これで得たノウハウは以後私の設計したルアーに生きています。例えばK2Fにも簡易型のRユニットを採用してありますが、現行の回転体の質量を上げると130Mの性質が垣間見れます。
 今後の実験で、青物にベストなものがあれば発表の機会もあると思います。
 
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 中写真は、小型化を模索してあちこちから手に入れた携帯電話用振動装置に使うオモリ数種。
 130M、H用Rユニット部品。受けボディ本体とオモリ、ベアリングの代用としてのパイプ3個と心棒の6部構成。これで数万回転の動作確認をしました。
 中下写真は、付属のスローブースターリップ。よりスローで使いたい場合と、プラス20センチの深度を。
 下写真は、タトゥーカラーの模様の図案に書いてある文字です。よく見ると対称的に二つのRユニットという文字を図案化して丸く囲んであります。適当に付けたわけではないですヨ。
 

理系のライン切れ

本日から仕事始めの方が多かったと思います。正月中、我が家を訪れてくれた仲間も連休疲れのせいか、なかなかエンジン全開とはいかないようです。
社長さんから、フリーター、リストラ組まで、相変わらず釣り仲間は、社会に文句を言いつつも明るいし、それぞれの立場も釣りに関しては逆転していたりするので平和なものです。
それに初釣りにトライしていたユーザーさんからのメールには、早くもデカデカとした羨ましいスズキのことが…。
初物ゲット、おめでとうございます。
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新年始めの記事は、宴会中に話題になったことからラインのことを少々。

ラインシステムについて語るには、もう私は相応しくないでしょう。36まで2,0だった眼は、今や老眼。遠くしか見えません。
だから現場では複雑なシステムを組むより、80パーセント強度ぐらいしかなくても確実で慣れた方法を採用しています。結束は、漁師結びアルファです。

また、ちょっと弱めのノットに切り替えてからは、完璧なシステムを組んでPEラインの途中から切れるということが無くなり、切れて欲しい部分から切れるので良い面もあるのです。海の中に長いラインを残したくはないですから。
老眼万歳です。(んっ、まだアルコールが切れていないかも)…
こんな私にでも、ユーザーさんからラインの事について質問されるのですが、その中に、原因がよく判らないのだけど、システムのちょっと上辺りで、いつも切れる、というのがありました。
話をよく聞いてみると、その話しぶりでもう判りました。
毎回一定のところで切れるのは、頭脳が理系の方に多い現象です。文系の方だと、色々な所で切れるものです。
何故か?
理系構造の頭の方だと、自分がこうと決めたタラシの長さを、いつも厳格に守ろうとする傾向があるのです。だから毎回、ロッドの各ガイドリングにラインが触れる位置、投げるときに必ず擦れる指に掛かる位置が、信じられないぐらい一定です。 これでは、ラインのトラブル箇所や、擦れ箇所が集中してしまいます。
特に毛羽立つPEは、これに弱いです。冬で乾燥ぎみの指先なら尚更です。

以前のK2Fアンケートのときもタラシの長さを聞きましたが、アバウトな方、正確にいつも◇センチと答える方とまちまちでした。
だから、自分が理系と自覚している方、あるいは釣りの時だけでも理系の方は、意識してたまにタラシの長さを変えないと、ラインが一様に消耗していきません。

また、磯なら根擦れと判りやすいですが、サーフだと砂質によって微細な砂粒がPEに絡んで弱いヤスリ状になることがあります。
砂粒の粒子径が大きく、鋭くなく、ラインに優しいサーフと、海水に浮遊した刺々しく小さな砂粒が悪さをする、ラインに過酷なサーフがあります。
これらを注意すれば、原因不明で高切れすることは多少なり減ると思います。

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写真は、正月中送って頂いたもの。上は千葉のKさん、三日にヒット。K2Fが丸飲みとは!年末から絶好調。
下は東京のTさん、数匹の内の一匹。理系。最も使い込んだK2F。おめでとうございます。 

新年

 あけまして おめでとうございます。
 我々のフィールドが、いつまでも美しいままでありますように。
 今年こそ、夢の一匹にめぐり逢いますように。

K2F,MNカラー発送状況

 昨日はタックルハウスの忘年会でした。
 同じ顔ぶれで宴会が出来たことが良かったです。
 これも応援して頂いた皆様のおかげです。ありがとうございました。
 ところで、K2F、MNカラーの発送のことですが、本日、明日と休日返上で作業していますので、明日(28日)には全部発送出来る見込みです。
 現在、タックルハウスは休日に入って、問い合わせが出来ませんが、このページ左下にあるアドレスは(正月中でも)開けておきますので、何かありましたら連絡下さい。
 今年もあと少し、釣り納め、釣り始め、皆様にとって良い魚にめぐり逢いますように。それではまた。
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 お届けした翌日すぐ、千葉のKさんから写真付き報告頂きました。
「略…早速届いたK2FのM.Ninoカラー MN1 で今朝、釣果が出ました。
このカラーは自分には合っているようです(^^)
今日も大ウネリの中で、前回89cm7.2kgが出た同じポイント・トレースラインで出ました。今回は小さい86cm5.7kgでした。…略」
 けっして小さくありませんヨ。立派な魚体です。ちょっと早いけど、おめでとうございます。

質問…プラグの調整他

 お待たせしました。OMさんからの質問、「略…このルアーに限らず、一般的に左右のバランスを調整する方法を教えて…略」
 
 お答えします。
 ルアーのリップやアイでの調整については、雑誌等に時々思い出したように説明が載ります。しかし、課題とする内容から、どうしても対処療法として、これは右とかの表記になりがちで記憶を要求されます。だから、しばらくするとどっちだっけ?と迷う人がいます。
 
 そこでラボでは、どちら側に調整するのか、理屈から説明します。そうすれば記憶に頼らないので、何年経っても現場で調整が出来るはずです。
 
 要はルアーの前面に水が当たり、その水が左右のどちらに多く逃げるか、です。(図)左右等しく水が逃げるのなら、そのルアーにとってバランスが取れたということになります。
 どちらかに水が多く逃げ、流れれば、それによってルアーが押されるわけですから、反対側に向かおうとします。
 
 この左右に水の流れる方向を調整できるところが、ルアーには、アイと、リップと、本体頭部前面の形にあります。これはそのまま簡単に出来る順になります。
 
 現場で道具が無いとき、負荷が掛かってアイが見た目にも曲がれば、元に戻すことになります。たいていこれで直りますが、それでも直らない理由としては、始めからルアー本体のバランスが取れていないか、不適切なスナップ類で、入力位置がルアーの中心にいかないとか、フックリングが大きすぎてフックがフリーになっていないとか、またフック自体が装着したときに非対称であるとかがあります。
 
 だから、時間や道具があるときは、まずルアー全体に問題がないか確認して、アイは中央に固定します。(注…ハンドメイド等では、アイの曲げで泳ぎを調整してあるものがあり、直すと返って傾くことがあります。)
 そして、先程の水の流れを想像しながら、水を受ける部分、つまりリップ上面を斜めに削ります。(図)ルアーをどちらに向かわせたいのか考え、その反対側に水を逃がしてやれば良いのです。
 余程酷い狂いでもない限り、リップ中央の接着面から半面を削るだけで充分です。
 
 これらの理屈は、リップレス等リップがないプラグの場合も同様です。頭部に受けた水をどちらに流すかで、ルアーの方向が決まります。
 
 ここからは以上の基礎知識を生かしての応用編です。
 テクニックとしては昔から故意にルアーを片側に向かうようにして、岸壁に平行引きがしやすい、左右どちらかの専用ミノーにする方法がありました。
 また、元々安定の良いルアーを、好みのスピード域になったらヒラウチさせるようにすることも出来ます。…
 また、ルアー作りにおいては、この水の流れを制御することが、各ビルダーの苦心するところなのです。
 私はかつて、リップレスやリップルを設計するとき、能う限り様々な頭部の形状を考え、実際に作り、実験しました。(図)
水受け面を細分化して、入力位置から近いところ、離れたところの役割を解析して納得したものです。
 こういう全体として頭部が斜めカットされたルアーは、基本的には古くからバスルアーにもあった形なので、大まかには想像しやすい動きになります。
 
 ところでルアーの水を逃がす方向の制御は、調整としては左右バランスになりますが、ここから一歩進んで、では上下では?ということに思いが至ります。
 実は私の設計したルアーは、BKFの頃から積極的にこれを意識して作ってきました。リップ以外に頭部形状でもリップを補助する広い面を設けて、高い浮力と潜ろうとする力を拮抗させてあるのです。こうすると、上下に向かおうとする別々の力がぶつかり、震え易くなるのです。
 また、こうした観点からすると、私の設計したものの中で、上下拮抗する力を利用して、ほぼそれだけで望んだ動きを実現しているのはTKR130Hということになります。
 頭部はリップル風ですが、これは水から出ません。潜ろうとする力をギリギリの調整で制御してあり、水面直下をスライドしながら進みます。ボディは私から見ても最も無骨。でもその能力のエキスはたぶん一番繊細です。
 
 最新のK2Fに至っては、左右上下という考えから、さらに一歩進み、安定要素と不安定要素そのものを互いにぶつけてバランスさせています。
 これはリップが寝ていることもあり、他のルアーより調整が難しく、もしもやるときは少しずつにして下さい。基本的にアイを曲げることは、強度確保のためにも御法度です。 

ボタン(イノシシ)鍋

 来客の多い週末でした。前々から予定を入れていたので釣りは無し。ひたすら飲み食い、談笑です。
 釣り人同士の集まりというのは、職種様々。この不況と言われる世の中で、全く影響を受けない人もいれば、リストラに怯える人もいます。でも、いつでもなんとかなるという雰囲気があるのはいいもんです。
 
 主役の食材は、高知の長野さんに送って頂いたもので、イノシシ。
 野生らしく、変な脂が無くて胃に貯めてももたれないし、処理が良いので臭いが0。大好評でした。特に年長組は、身体が温まってビンビン、と喜んでいました。
 長野さん、おかげさまで盛り上がった忘年会となりました。ミカン共々、ありがとうございました。
 
 
 そんな中、頭の中のアルコールを早く切らないとなりません。例のヘプタモンドをやって頭の調子をみると、大丈夫そう。
 あのMNカラー出荷に同封する、オウギショを書き上げ、今一息ついているところです。
 今日は休肝日としましょう。