帰ってきたバスタックル

 写真のタックルは、S社製バスロッド。グリップ部分はコルク屑をエポキシで固めた自作です。
 元々はボートシーバスの時、フル遠投することもあるので、手からスッポ抜けないようにしたつもりでした。
 金色のリールはD社製。プレートにトーナメントEX20と書いてあります。投げるときレベルワインド部が、パカッと左右に開きます。ハンドルはネジ部の規格が同じなので他社の好みの形状のものに付け替えてあります。
 
 バス釣りは年に1~2度、楽しむ程度なのですが、数十年も経つとタックルの殆どは失われたり、劣化したり、貸したまま誰に貸したか判らなくなっていたりします。現存しているものは僅かです。 
 そんな中、このタックルセットは何度か紛失したことがあるのですが、最後には必ず私の手許に帰って来ているのです。
 例えば、富士五湖のひとつ西湖では、溶岩の上に置いて、目を離した隙に消えてしまったことがありました。付けたルアーが水面近かったからバス?かもしれないと、その時は諦めました。
 ところが後日、再び車で近くを通り掛かると、遠くで金色に光る道具を持って、バス釣りに興じている人が見えました。 その時の私の目は、老眼になる前なので視力は2・0以上です。近づくまでもなく例のタックルだと確信しました。ゴールドのリールはともかく、グリップだけは見間違いはありません。
 当人に事情を説明すると、ビックリして?すぐ返してくれました。彼が言うには岩の上に置いてあったそうです。証明は簡単、私の手は薬指が中指と同じ長さがあり、親指は細く、このグリップにぴったりだったからです。成形したとき、エポキシが固まるまで手で持ったままでした。(まあ、それ故に使いづらいときもあるのですが)
 
 また海では、ボート上からのキス釣り使用の時、海中に落としてしまったこともあります。時間経過の末、諦め掛けたその時、同船者が十メートル底から釣り上げてくれたのでした。
 
 そんなこんなの紛失劇が、また何回かありながら今もココに在る。余り大きな魚とは縁が無かったタックルですが、年々愛着が湧いてきました。もう無くしません。 

魚に聞きながら

 雑誌類には殆ど紹介されたことのないK2Fですが、お店やネット、また現場での口コミ等により、おかげさまで徐々に認知されてきました。これも発売以来、皆さんの応援があってのことです。ありがとうございます。
 
 現在は予定通り142の引き抵抗、及びRユニットの質量を変えたものと、それに平行して一回り小さいK2Fの開発中です。
 世の中のスピードに合わせて展開を早めてという意見もあるのですが、ここは昔のように魚に聞きながらジックリと進んでいきたいと思います。機嫌の良い魚もいれば悪いのもいるので、やはり時間が必要です。
 
 次作の仕様はほぼ決定しているのですが、全容はまだお見せできないことを御理解下さい。いずれにせよ、ここが一番早い発表の場です。
 
 それと、以前お約束していた青物カラーについて……現行K2F142が先シーズン、青物の成績が良かったので、それ向きのカラーを追加の予定です。今は提案カラーをフルイに掛けているところです。(6月)
 
 陸上よりも遅れがちな海の中も、日一日と温み始めてきました。お互い、機嫌の良い魚にめぐり逢いますように…。 

TKLMのラインアイ

 東京のSさんから、TKLMのラインアイが小さくてスナップを通しにくいので、もう少し径を広げてくれ、という御意見を頂きました。
 
 お答えします。
 TKLMに限らず、私の設計によるものは最近のものも含めて、幾分小さめにしてあります。理由はK2Fの時にも書いたのですが、動きのための入力位置を厳密にするため、また、曲がり強度を確保するのが主な目的です。
 
 しかし、スナップ類を通す場合、TKLMはボディ本体の溝にめり込んでいるので、特に入れづらいのは確かなことです。
 申し訳ないのですが、これは多くの実験を繰り返した末に決定したことなので、御理解を頂きたいのです。
 これから書くことは、出来ればこのままナイショにしたかったのですが、いわゆるTKLMタイプというようなルアーも、ほぼ出切った感じなので、一部お話しようと思います。
 
 外見ではなく、ルアーのシルエットでなら、現在TKLMに似たルアーは結構あります。見たところ、解って作っているところもあれば、無知のまま形だけリップレスというのもあります。
 皆、普通のラインアイが付いているので、スナップはそちらの方が付けやすいでしょう。
 欠点を承知でTKLMにアイを奥に引っ込ませたのは、入力支点(リトリーブの力が直接掛かるところ)が先に出ると、望んだ動きが得られなかったためです。
 
 これ以上詳しくは説明できませんが、想像してみて下さい。平たい水受け面に、ほぼ直に支点があるものと、水受け面から(極端に)一センチぐらいアイを離してみた場合のことを。そして、リーダーが太く、ラインの抵抗があるとき、どうなるかを。
 TKLMはラインアイを単なる上下位置のみで定めた訳ではありません。いわば必然という位置にしてあります。
 こうしたリップレスタイプにおいて、この辺りの事まで詰めて設計しているルアーは未だ少ないのです。
 
 Sさんを始め、各地からTKLMファンの声を頂いています。本当にありがとうございます。どうぞこれからも可愛がってやって下さい。きっと期待に応えます。ちょっとスナップ類は付けづらいですが…よろしくお願いします。

車と房総小旅行

 先週、普段は三カ所に別々に暮らしている母と姉と小旅行に行って来ました。 とは言え、場所はいつも釣りやルアーテストで通い慣れた所に近く、目新しいことは何も無い筈なのですが、意外にも驚くことが多くて楽しめました。
 房総勝浦の雛祭りなんて、見る気もないときは国道が渋滞するだけで、釣りの往復には障害とすら思っていたのですが、女性陣の希望で初めて中心地を歩いてみることになりました。男一人、ドサッとお土産を持たされるのは覚悟の上です。
 
 祭り会場の駐車場へ行くにも私の車では人数が乗れないので、レンタカーです。それもハイブリットカーのプリウス。
 この車、低速で人混みをかき分けるとき、ほとんどエンジン音がしないようで、人が気付かず避けてくれません。不意の飛び出しもあります。クラクションは鳴らしたくないし、危ないです。
 こうゆう場合、私の車のエンジン音なら避けまくってくれる?ので、えらい違いです。
 
 プリウス自体は思いのほかトルクがあって、扱いやすく、燃費は謳い文句通り、私の車の二倍は走りました。
 これで、通い慣れたいつもの道を走ると、目線の高さや、尻に感じる路面の感触が全く違うので、何処か遠くの初めて通る道のように思えました。
 
 宿泊は、これまた自宅から真夜中に飛ばせば四十分ぐらいの所にあり、小さな半島の根元に一軒だけ、戦前からある由緒ある旅館です。
 この辺一帯の海は常時禁漁区なので、あまり縁がなく、以前から興味がありました。今回のようにロッドを持たないときにこそ相応しい、と選びました。
 旅館のサービス内容も料金からすれば満点です。食事時まで広い和室からゆったりと穏やかな海を、陽が沈むまで眺めることが出来ました。
 
 旅中、海沿いの国道を走っていると、いつも自分が如何に海側ばかり見ていたのか気付かされます。山側一面には春を告げる花畑が連なっているというのに。
これも飛ばす気になれないプリウスのおかげでしょう。八日ぶりの雲一つ無い晴天の下、たっぷりと水を吸った花々が嬉しそうでした。  
 
 私の車、車高を下げた十年前の超初期型S2000は、現行のマイナーチェンジ後のマイルドさも、トラクションコントロールの類も付いていないので、未だに緊張を強いられるのです。
 家族を最寄りの駅まで送り、再びレンタカーから自分の車に乗り換えると、尻から四十センチぐらいしか離れていない駆動輪から伝わる振動が、私の日常は、此方にあるのだと容赦なく語り掛けてくるのでした。

歴戦の痕

友人のTさんに、昨年9月に渡してあったテストカラーのK2Fが帰って来ました。(ついでにその日に風邪も貰ってしまいましたが…)
本発売前からフルに5ヶ月間、使い倒して貰った一本です。実地における耐久性の確認には最適のサンプルになります。 Tさんのテリトリーは、内湾の磯周りや河川が主。ルアーは全身歯形だらけで釣果報告も申し分ありません。まさに使い込んだという感じ。
見ると着水時の衝撃で付くフックマークによって、塗装どころかプラを削り始めていますが、箔は何とか持ち堪えています。
フルスイング前提、重量級フック採用ということで条件的に厳しく、着水ショックには今まで以上に気を使ったルアーですが、これを見るとまだまだ工夫の余地はあるようです。

例えば強度的に一番問題がありそうな、尾側のフックマークですが、深くなってくると、いずれ折れるでしょう。(そこまで使う人はほとんどいないのですが。)
ある程度予想はしていたので、K2Fではフックの当たる箇所だけ肉厚を、他箇所より20パーセント厚くしてあります。そうした小さな工夫を気付かせてくれるのが写真のような使い込んだルアーなのです。
こうしたルアー達が、続々手許に集まってきたので分析中です。きっと次作のK2Fに生かされると思います。
(Tさん、ありがとう、思い出がいっぱい詰まっているということなので、後でルアーはお返しします。)

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明日から養生を兼ねて、二日ほど海の側の旅館の予約を取ってあります。ロッドを持たずに海に小旅行するのは五年ぶりぐらいです。

ザイル

 写真は高校生の時に買った、ドイツ製の11ミリ径ナイロンザイルです。
 一般ロープ類より厳しい規準に則って製造される登山用は、ザイルと称され、けっこう値が張ります。
 アルバイト一ヶ月分をかけて購入したとき、嬉しくて校舎の三階から滑車を使って滑り降りたりしていました。ほとんど落下という、その様子が8ミリフィルムに撮ってあり、我ながらムチャするなぁと、今頃になって反省しています。
 
 あれから……。何度も引っ越しがあり、嵩張って邪魔なので、その度に処分するか悩んだのですが、結局未だ捨てておりません。
 40メートルのはずのザイルは、数メートル伸びています。この場合、増えたと喜んではいけません。衝撃を吸収した名残なので、とうに本来の性能は失われている証だからです。
 
 釣りのナイロンラインで、魚と一時間以上、ドラグが効きまくりのファイトをすると、特にスピニングではチリチリになって、見た目も二度と使う気にはなれないものです。
 しかし、ザイルは表面がいくら綺麗でも、内部にダメージが残っていれば、魚が逃げるのとは訳の違う結果をもたらします。
 
 このザイルは、その能力のありったけを発揮して、まだ未熟な二人の命を救ってくれました。後年、その内の一人は約束通り医者になり、たくさんの人を助けることになります。そして、もう一人のほうは、何故かたくさんの魚を釣ることになりました。
 
 登山用ザイルは、強いに越したことはないのに、PE製品は使われず、相変わらずナイロンです。理由は幾つかあるのですが主に衝撃を吸収する必要があるからです。
 登山のエキスパートからは、これでお互いを繋いだとき、慣れてくると相手の心の動きまで解るようになると言われましたが、残念なことに私は其処まで達することなく、これをフルに必要とする登山からは身を引きました。
 その代わり、長い年月をかけて今はルアーラインの先から、手許にビンビン伝わる何かに感じ入っています。確かに繋がっている先にはイノチがいます。
 それは魚に過ぎませんが、それだけではないことも薄々気付いてはいるのです。もしかしたら、自分が引いて釣っているというのは錯覚で、引かれているのは自分のほうなのかもしれません。 

ウエットスーツ

 友人の薦めに従って、ヒラ専用のオーダーウエットに替えてから暫く経ちました。それまでダイビング用の堅い古いタイプを着用していたので、羽が生えたかのように動きが軽くなりました。
 それに裏が起毛してあり、快適な暖かさに包まれて、冬でも苦になりません。
 
 ウエットと聞くと、泳いで沖根に渡るというイメージがありますが、房総ではそんな使い方をしている方は少ないです。それに、大抵の好ポイントといわれる沖根は渡船業者が権利を持ち、立ち入ることは問題になります。
 元々、平均的に磯が低いので、たまに石鯛師も着用しています。
 ウエーダーだと180センチ足長の方だと余裕で渡れ、背の低い方だと無理というような微妙な所がけっこうあります。不公平ですよね。
 私も10年ぐらい前までは、気楽にウエーダーで渡れる所を好んでいたのですが、さすがにこの頃ではルアーマンが増え、ポイントの選択幅が狭くなってしまうので、ウエットの比率が増えました。 全員ウエーダーだとポイント渋滞が起きそうなところがあり、多くの釣り人を分散させる意味でも役立っています。
 
 だから、今後必要なのは、相互のマナーでしょう。ウエットはウエーダーに比べて有利な分、ウエーダー組に気を使わなければなりません。彼等のルアーや仕掛の前方射程範囲にドカドカ入ることは避けるべきだし、挨拶し合うことも大切になってきます。
 
 そして勿論、しっかりベストを併用してのウエットのメリットは安全面にあります。
 ウエーダーでギリギリ耐えられる、足下を洗う波は、身体にフィットしたウエットやタイツだと余裕です。ただし、その余裕は限界値を上げることになり、ウエットでさえ耐えられない波を食らえば、取り返しのつかないことに繋がります。油断は禁物です。
 
 また、私が各地へ出掛けて、周りが全員ウエーダーのときでもウエットを着用することがあります。磯の高さは充分あっても、大荒れの中で万一誰かが落ちても救助出来るようにするためです。
 ウエーダーで海に飛び込むのは自殺行為ですが、泳力のある人のウエットなら何とかなる場合があります。
 
 それなら荒れているときは、やらなきゃいいじゃないの、という声が聞こえてきそうです。一般常識で言えばその通りです。
 この辺は趣味の領域になるのです。危険全てを取り払うことは可能かもしれませんが、幸いまだ法律で縛られてはおりません。(ローカルルールがあれば尊重しなくてはなりませんが)
 海では荒れたら禁止、山では岩登りは禁止、スキーでは急斜面は禁止、サーフィンでは大きい波は禁止。そうなったら安全この上ないですが、少なくとも私みたいな人間は、人生を謳歌できなくなります。そして、ルアーを作ることも…。 

二月七日夜

 帰ってきました。久しぶりに会えたヒラ仲間や友人も多かったので、とても楽しい会合でした。すぐ仕事なのに珍しく深酒してしまいました。
 
 其処で、大型のヒラをタグリリースした友人と、後日同魚を再捕した方に会えました。特に大型の、貴重な再捕例の現場の状況と方法を、直接本人達から聞けることは参考になります。
 二人ともお互い喜んでいました。生きていたことを確認できたこと、可能性、知り合いが釣るということが意味するところ、など諸々の事を含んで興味深い話でした。
 特に大型は、普通、つい撮影などが長引いたりするものですが、今回は、ベテランで慣れているので、触らず、極めて速やかに放したそうです。再捕された方も私も感心しました。
 年月が重なり熟練してくると、多少の困難な方法も、釣りの一つの技能や作法としても楽しめるようになるのではないか、そう思いました。
 
 また、初顔合わせの若手とお話しできたこと、幹事さんに感謝します。まだ一匹も上げたことのない方もいましたが、今年の状況からすると心配はいりません。必ずや近く釣れることを約束します。諦めなければですが。
 
 そして、こうしたヒラ好き、海好きの仲間、サーファー、初心者、ベテラン、リリース派、たまにイート派、(いなかったのは女性だけ)様々な方々が一堂に会して和やかなのは気持ちの良いものです。少々の二日酔いはヨシとしましよう。
 
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写真はこの日の海。全員アブレ。それもまたヨシ。 

感想と返答

 前記事「続リリ…」について、たくさんのご意見メールを頂きました。昨日で全てお返事できたはずですが、稀に、写真以外の添付ファイルや特殊な文字列があると、別ボックスに隔離されるメールがあり、見落としてしまう場合がありました。
 もしも、メールを発信したのに、まだ返事が無い場合、お手数ですが、もう一度発信してみて下さい。
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 コメント欄にチラッと書きましたが、全く同じ文章を発表した9~14年前とは、比較できないほど好意的なご意見が多かったです。勿論書ききれないこともありますし、疑問や矛盾を指摘された方もいます。でも、ホッとしました。この先もガンバレます。
 
 その中で気になったことが幾つかあります。
 「~ではないから、あるいは何々だから言えるんだ」という話があったので、もう少し、私の立ち位置について明示しておきます。
 このブログがメーカー内にあるように、私は業界サイドにいます。でも、その前に釣り好きで何とか息子に、自分と同じ楽しみを味わって欲しい(子供はいませんが)と願う者です。
 また、JGFAの会員です。会員NO二桁台だから相当古くからそうです。ただ、個人会員(今年からクラブ会員)で、最近は若い会員とお会いする機会を逃していたと反省しています。
 
 大人なら判って頂けると思いますが、組織というのは会社であれ何であれ多少の矛盾は抱えているものです。私は会社や所属する内部から、制約やリスクがあることを承知で意見を発信することを選びました。
 当時の状況を放っては於けませんでした。すぐには無理でも、やがて真意は伝わると信じることにしました。
 今だから話せますが、あれを発表して会社にも迷惑を掛けました。嘘つき呼ばわりには我慢しましたが、K-TENは二度と買わないという人まで現れたのです。売り上げを落としてでも語るべきことでした。
 直接私に会いに来た方々には、充分な説明と実証をお見せして、全員に納得して貰いましたが、お会いできない方の頑なな心を融かすことは難しいのです。
 
 完全な証拠を見せろ、という言葉を何度も聞きました。そこで何人かには手伝ってもらいました。外洋の荒磯から酸素入り大型クーラーを運んでいるうちに頑なな心は融けていきます。体力不足の方は参加すら困難な作業でした。完璧な水槽まで運び終え、数週間後の結果を知り、あのことを疑う人はひとりもいませんでした。
 
 水槽は何処にある?見せて。これは勝手ながら熱意ある方に限り、ご一緒しました。誰でも自由に出入り出来るところではなかったからです。雑誌の取材も一度だけ入りましたが、地味で小さい扱いでした。
 水槽の使用は、たまたま知人の研究者の興味と目的が、私のそれと被る部分があったからできたのです。数年に渡って、沖合の海水を常時引いて、殺菌循環させ、水温管理できる設備なんて、最近の水族館でも恵まれた立地でないと出来ません。そういう水槽を作るには億単位の金が掛かります。 個人どころかメーカー数社ぐらいでは出来る話ではないので、大きなところへ協力を仰ぐことになりました。
 だから、今同じことをやろうとするなら、海岸沿いにある設備の整った水族館の自然環境を再現できる水槽を長期間、借り切るぐらいの覚悟が必要です。
 同じ実験を潮通しの良い生け簀で試す事も出来ますが、問題が多すぎて、望んだ観察が困難でした。たまに涼しい季節での数日の実験で結論を出す方がいますが、その判断を誤らないように願うばかりです。… 
 これらについての私の活動が、尻つぼみになったのは、ブッチャケタ話、個人的な資金不足とギックリ腰でしょう。
 何年もの間シェアトップを走ったK-TENも、世の道理、落ちました。資金に不足がなければ、幾つかの恩返しとしての活動を続けることに、ためらいはなかったのですが、さすがに尽きました。(笑)計画はあったのですが頓挫です。
 今は調子の良いところに後を頼みたいというのが本音です。宣伝資金の一部でも使えれば相当のことが出来そうです。 人間、イケイケドンドンのときは周りが見えず、志と資金はなかなか両立しません。だからと言って余裕が出たらとかいったら、いつまでも何も出来ません。また将来を見据えた活動を業界内からも発信したいですね。
 
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 ここで、いったん区切ります。実は書いている間にも質問があって、まだ書き足らないところがあるみたいです。あれもこれもだと、文章がグチャグチャになりそうなので。
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 現雑誌やTV等を見て、相変わらずのように見えるというご意見もありましたが、全体的には当時より確実に、手で触れている時間が大幅に短くなっています。 ただこの数年で急速にブログ等のための写真取りが、私も含めて多くなっているので、あのことを確認しておくことは良い機会だと思っています。
 こういうと、持論を持った私の目前で釣りをして、リリースする方がプレッシャーを感じてしまうようです。どうか、気楽にやって下さい。でないと私もツライです。
 
 メディアが見栄えを重視するのは当然ですが、度々話し合ってはいるのです。しかし十五年、同じ編集者ということはほとんどなく、私はこの頃、雑誌とは遠ざかっていました。
 それではいかん、というご意見はもっともです。また機会を見付けて確認をお願いすることにします。
 
 
 この数日、色々ネットを検索したり、再び文献を漁ってみました。情報そのものはいっぱいありますね。ありすぎです。 でもピンポイントズバリ、つまりリリースのその後や、自然魚の扱い方というのが案外少ないです。
 かつての私は、自分の意見を裏付けるための都合の良い引用は避けてきたのですが、もうネット時代、各自調べようと思えば出来ますね。
 今、有用な情報は、主に水族館の魚の搬入方法や、鮮魚を扱う業者、釣りでは発展している管理釣り場などがあります。 いずれも年間日常を通して生きた魚に関わり、良い意味で金銭が絡むので、真剣だからだと思います。
 
 魚が消耗しては死活問題の管理釣り場では、ご存じの通り既にほとんどのところで魚に触れないことがルールなっています。
 水族館では、生きた魚を美しいまま運び、展示するために、どれだけ苦労するのか飼育係の記録からよくわかります。基本は触らず海水ごと運び、仕方のない場合でも一秒を争う努力をしています。
 マグロや鰹、養殖業者、アジ等の活け魚業者もこの点は徹底しています。触ることはないし、私が数日と表現したところを、翌日そうなるとまで書いてあるところもあります。
 
 注意すべき点は、あまりにも情報が多すぎて、ガセもあります。有用な情報は、〔漁獲してから触った後のことまで全体を通して見ている人達の話〕です。それは多くはありません。それ以外の人達、それは業者であろうと、学者であろうとこの件については役不足です。
 
 スズキ、ヒラスズキの例はまだ少ないです。でも、自分が釣った魚だけが例外だと思うには厳しい話ばかりです。
 一方で、巧くリリースされた魚が元気で、再び釣れることも、JGFAや漁協、魚類生態学の調査で多数証明されています。
 難しく、少し面倒ですが、やり方は判っているのです。あとは創意工夫の問題です。
 見ないふりしても進めますが、知った上で進むほうをお勧めします。
 
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写真は、千葉のHさんから。寄り添うヒラ二匹。ありがとうございます。
下の写真は、ヒラメの稚魚放流のときのもの。ヒラの捕獲もこんな感じで荒磯上を運びました。
 明日より泊まりでヒラスズキ好き仲間の飲み会に誘われているので、留守します。よろしく。

リクエスト…続リリース方法の確立を願って

静岡県の玉手箱さんからのリクエストです。
はじめに。
2000年の夏に、(株)岳洋社さんから、シーバステクニカルノートテイク2という別冊が発刊されました。
その中に、題の内容の記事を発表させて頂きました。実は96年に旧アングリング誌の記事へのアンサーという形にもなっています。
どちらも古い記事ですが、内容は今でも充分通用します。
昨今は、◇◇グリップ等、道具の普及や、多くの方々の努力で、当時より確実に良い方向へ向かっていると感じています。そのかわり、急激なソルトルアー界の変化もあり、この件について、各世代間や経験度合いを越えて落ちついた意見交換ができる場が、案外少ないようにも思えます。
ちょうどよい機会ですので、ベテランの方には確認をお願いして、そして、これから長くソルトルアーを楽しむ若手には、ここに至った経緯を知って欲しいと思います。
これらの知識と意見を得るには、志ある者が、労力と金と熱意をもって、何年もかかりました。私でも、証拠が足りないからもっと、と言われても、そう簡単には繰り返せないのです。
しかし、ただの一意見としても我々だけの知識にするのは、もったいないので、批判なり、反論なりを含めて、皆さんの考察の一助になればと思います。
では下に、訂正無しで、全文掲載します。(長い文章なので覚悟してネ。)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
☆続リリース方法の確立を願って
リリース全般についての私の考えは、以前SW誌の方で話したとおり(エッセイ3の【23】リリースと食べること)なので、ここでは確実に生かすための魚の扱い方を考えてみたい。
先日、インターネット上で魚の低温火傷(?)について話題が上がり、若いルアーマンに魚の扱いに迷いがあることを知った。中には勘違いの意見もあったが、それぞれが心優しいルアーマンであることは疑いようがなかった。
話題の発端は、どうも私が某A誌96年10月号に書いた「リリース方法…」の一文にあるらしく、それが4年半を経て一人歩きして様々な曲解を生んでいるようだ。責任を感じると共に、そのことを真剣に考える人が増えたことは嬉しくもある。
甘いと言われようと、私には当時よりは現場での魚の扱い方は改善方向にあるように見える。できることなら、現在も続行中の研究が目標とした成果を得てから発表したかったのだが、5年たってもまだ試行錯誤の状態である。せめて、この間に解った事だけでも参考になればと思う。
◇要約
まず、あの記事を読んだ事のある人はもうベテランと呼ばれる年齢であろう。一応次ぎに要約してみるが、この話題が初めてという方は、できれば先輩に頼むなどして、なんとかあの雑誌のバックナンバーを読んでみて欲しい。(なんと別会社の本を読んでというわけだが、本誌の編集長は太っ腹だから大丈夫だろう)
5ページ分を要約すると、こうなる。
ヒラスズキの生態を知るために、仲間や専門研究者と共に、魚の捕獲から始まった。準備に数年かけ、方々で釣った魚を無傷で研究所の水槽に移した。
ところが、安心したのもつかの間、傷ひとつない魚体に翌日から数日後に、捕獲時に触った手の跡が浮かび上がり、日にちがたつにつれウロコがとれ、血がにじみ、やがて一月もすると皮まで溶けて無惨な状態になってしまった。生態研究以前の問題である。
また、腹部分を持ったり、押さえたりした魚体は当日元気でも、その後急速に弱る。解剖すると内蔵に出血が見られた。 問題は主に触った手の温度と魚との温度差にあるらしく、春から初夏とはいえほんの一秒程で影響の現れたものもいた。捕獲後しばらくは綺麗なので、当事者も信じたくない結果であった。今までの自分のリリース方法を省みて愕然とした。 そこで、全く触らずに、口の薄皮に大型ストリンガーで穴を開けて捕獲してみるとダメージが少なかった。
それらの結果を写真数点と共に、生かそうとリリースするなら、各自再考し、方法を確立しなければならない、と書いた。
◇反響、その後
発売日になると、早速、質問と反論が相次いだ。匿名の者からは夜中の2時まで電話が鳴り続いた。
実は、発表前に、せっかく定着してきたタグアンドリリース活動に、水を差すことになりはしないか心配し、有識者と相談していた。それで行き過ぎのないように内容をヒラスズキに限定し、まだ少ないデータと寄生虫の話は誤解をまねきそうなので伏せた。生々しいカラー写真は白黒にして発表したのだった。
それでも反論は続いた。ある程度予想はしていた。なにしろ、あの結果に最初にショックを受けたのは、私や関わった仲間なのである。自分たちの今までのリリース方法を否定されたような気がして、魚を大事に扱ってきたと思っていた人ほど認めたがらなかったのである。
仲間の内の一人は本気で悩んでしまい、何時間もありのままを知ることの大事さを話し合った。
応援してくれる方々も多かったが、反論は私の筆力不足ということで、できるだけ答えてきた。幾つか例をあげると、 たまたま釣った魚がそうなったからといって、全部がそうなるとは限らない。 自然環境と水槽とは違う。そのまま放していれば生きているかもしれない。
理由はともかく、とにかく放していればよいのだ。少なくとも生きる可能性はある。
データが少ない。もっと証拠を見せて。といったものがあった。
これらの疑問は研究初期に私も感じていたことなので気持ちは解る。もう一度、又聞きではなく、私の書いたものを落ち着いて読んでくれとお願いして、真意を理解してもらった。リリースすることが無駄なんて、けっして言っていないのだ。 また、実際に見てみようと、手伝ってくれた人の中では、優しく取り込んだつもりのヒラスズキが数日後死んでしまい、自分で納得するために、数ヶ月後再び重いクーラーを1㎞も運んで捕獲してきた。触らずに水槽に運ぶことの大変さを知るだけに、この人には頭が下がった。
このヒラスズキは捕獲時52㎝1.57㎏で、現在は65㎝3.48㎏になって今も元気に生きている。体型も申し分ない。自然海水を循環させている水槽は完璧に働いている。…
◇追加報告
あれから5年近くたつ。かって、私の書いたことに訂正するところは特になく、追加するのみである。
捕獲時にダメージの少なかったものは、研究者の根気と努力の治療で今も生きている。雌も雄も数匹ずついる。43㎝921gだったものは、59㎝2.24㎏になった。ただし、この成長は参考にしないほうがよい。その体型から水槽内の環境は良かったとするだけで、自然環境下ではもっと早い。
理由は、外洋で捕ったヒラスズキは、他魚並みに人前で規定量の餌をとるまでに、なんと2、3年かかったのである。性質が極端にナイーブで、タイやヒラメ、マルスズキが数週間で遠慮なく餌をとるのに対して、この魚だけが拒み続けた。
絶食が一月も続くと致命的だから、その間隠れて、最低限の餌だけをとっていたようだ。自然界と同じように物陰から反転するように食う。
南日本の河口で捕れたヒラスズキはいくぶん慣れが早かった。捕った場所で性質が異なるところもおもしろい。
不断の観察を続けてきた研究者の報告では、たまに少量の麻酔を海水に溶かして、魚体を調べたところ、程度によるが指一本分の溶けた皮は、いずれ治りウロコが再生してくる。ただし5年近くたっても、ウロコが小さく不揃いで、跡はよくわかるという。
実釣でも外洋では極めてまれであるが、傷の治った跡のある魚を見ることが出来た。それにしても、治った跡がわかるとすれば、釣った魚の中にその数があまりに少ないのは何故か。
◇寄生虫 (及び海生甲殻類等)
我々の海の中のイメージといえば、テレビや写真の影響からか、透明な海水の中で魚が悠々と泳いでいるといったものだ。たまに、死にかかった海のヘドロなども映すが、誰も好んで濁った海には潜らない。数m先が見えない海中は映像になりにくい。
私は大部分をしめる、もう一方の海の中をあのときまで見ていなかった。本当の自然環境下を知ろうと努めて、あちこちを訪ねた。漁師が地方名でイヨという寄生虫の話をしてくれたので、春から初夏に外洋の職漁船のタイとヒラメの網上げに同船してみた。はたして、体表の傷ついた魚は実際どうなるのか、その一例をこの目で見てみようということだ。
現場について、網上げされた魚の体表には網にかかってからの時間が長いほど、マッチ棒の頭ぐらいの寄生虫がビッシリと取り付いていた。売り物になるものを手際よく分けながら、季節と海域によってはいつものこと、と漁師がいった。
よく見ると、体表の傷ついたところ、肛門、エラといったあらゆる穴から入り込んでいる。網に絡まって身動きできない魚などはピクピクしているのにすでに内臓が食われて無い。一日で白骨化しているものもある。タイ、ヒラメと食いついて、エイ、鮫は後回しのようだ。
研究者の言葉で、この水槽内は寄生虫と雑菌がいない分、自然環境下よりずっと優しいと言っていたことを思い出す。
その後、浜でもウェーディングして確認してみたが、特に外洋にいるものが素早く取り付いてきた。健康な魚ならこの寄生虫も反対に餌にするはずだ。
豊かな漁場というのは、すべてを含めて活性が高いということだった。これらを見て、魚の粘膜がいかに重要かをあらためて思い知らされた。
◇確認
私は低温火傷とか尾が腐るとかの不確実な表現を使った覚えはないのだが、いつのまにか言葉が一人歩きしてしまった。 実際のところ、まず温度差と体表に触れている時間が問題であり、手や触れるものの温度と、水温の差が開けば開くほどダメージの現れるのが早いし、深部に及ぶ。
たとえば、初夏の磯で温度差が20度以上あったときのものは一秒触れていただけで翌日から影響が出始めた。写真撮影などで10秒持ち続ければ、一ヶ月以内に皮まで溶けるといったところが実感だ。先ほど書いたように、肉の露出は海の中では致命的な場合がある。
ただし、これは外洋のヒラスズキについてである。マルスズキはもう少し強い。
私の責任において魚の温度差に対する体表の強さに順番を付けると、弱い順に、アジ類、メッキ「ロウニンよりカスミが弱い」ヒラスズキ、マルスズキ、タイ、ヒラメ、ハタ、イワナ、コイといったところか。ウロコの大きさは関係ない。底物は案外強いが、それでも淡水魚より外洋魚のほうが弱い。パワーとか見かけではない。コイはともかく、実験してみるとイワナはけっこう強かった。
たぶん、淡水などの閉鎖された環境では、短時間での水温の上下が海水より遙かに大きく、少々の水温変化では他に逃げるわけにもいかないので、元々適応力があるのだと思う。
対して、特に外洋系の魚は、わずかの水温差で移動してしまうし、また逃げられる場所でもあるわけだ。わざわざ適応する必要がないからかもしれない。
◇具体的方法
温度差が問題なら対処方法も見えてくる。確実に生かしてリリースしたいと思うなら、海水中でペンチ一発で外すことが一番だが、写真を撮ったりするために持つ必要がある場合は、下あごを持つか、下あごの薄皮にギャフを通す。(もちろん、その後普及した◇◇グリップ類でもOKです。)
口周りの傷は治りも早いし、寄生虫の心配も少ない。
体を持ちたい場合は、濡れた手袋でヌメリを取らないように、口と、肛門より尾側に手を添えるぐらいにする。タグを打つ場合は、海水上か、温度差を考えた滑らかな物の上で素早く、しっかりと打つ。
それと、腹に手をあてて、内蔵部分を凹ませてはならない。地上の動物とは違って、元々均等の水圧下でしか生きていけない体の構造なので、一部分の圧迫は想像以上にダメージが大きい。大型程、自重で内臓がやられる。
また、バス持ちといわれる口の持ち方も同様で、後々まで口をアグアグして回復が遅れてしまう。
反対に思ったより強いと感じられる報告もあった。小型で釣ってすぐ濡れた新聞紙にくるんで海水のないまま手早く水槽に移したものは生き抜いたと聞いた。
季節でいえば冬前後はあらゆるものの温度差と寄生虫の観点から、スズキのリリースには都合がよい。もっともリリース後の生存効率がよいと思われるときに、産卵期というわけだから複雑な気持ちも残る。
厳しいのは細菌のこともあり、やはり夏前後だ。かといって、夏場のリリースが無駄といっているわけではない。方法が解った今、ますますトライしてみようという気持ちがある。 それには、暖かい季節ほど濡れた手袋をするなど、いっそうの配慮がいる。
ちなみに、低温側には魚の体表は耐性があるらしく研究現場ではしばしば冷やした海水で麻酔の代わりをするそうだ。
◇イメージの修正
セラピーの中には動物に触れて、心を癒すとかいうのがあって、テレビではイルカセラピーというのも見た。イルカはなで回しても平気なのであろうが、あれを見た子供が、かわいいからといって普通の魚をなでたらどうなるか。子供に罪はないが勘違いはいずれ正さねばならない。
あと、魚は死ねば沈んでゆく。この事実は案外重要である。私たちが海を美しいと感じるのもそのおかげだ。しかし、勘違いも助長しているのだ。たまに、死んだ魚が浮いているが、それは、2週間ほどでガスが溜まって浮くまで、カニやエビや寄生虫から逃れられた個体である。または、急な酸欠などによって、海そのものが死んでいるときだ。その場合は食らうほうにも活性はない。たいていの魚は死んだら我々の目に触れることはない。
◇まとめ
以前は現象そのままを書いて、判断は読む人に任せる方法をとったが、あまりにも質問が多かったので、今回は立ち入ったことまで書かせてもらう。
実際の海の中のすべてを見ることは誰にも出来ないので、様々な意見があるのは当然だが、唯一断言できることがある。 それは、死ぬか生きるかの分岐点があるのは確実ということである。
私の見てきたことが、たまたまそうであっただけという判断をされてもかまわない。一例でよいのだ。
重要なのは、生かそうと魚を放すのなら、なるたけ手で触る時間を一秒でも短くすることによって、必ず、分岐点が生きる側に近づいていくことである。
かつて私も今までやってきたことを省みて、途方に暮れたものだ。でも今はむしろ晴れやかな気分である。この5年の間、いつも完璧にリリースできたわけではないが、かなりの魚は確実に生きていると信じられるようになった。以前は信じたいという気持ちはあったが、どこかあやふやだったのだ。
間違ったイメージに囚われた希望的、楽観的な考えだけでは魚にとっては迷惑というものだ。前進するためには見たくも聞きたくもない事もそれが本当なら消化していくしかない。
◇最後にお願い
こんな事を書いてきた本人もほんの5年前までけっこういい加減なリリースをしていたことになる。書いてきたことをすすめはするが強要するたぐいのものではない。そして、安全上の事もあるからあまり無理しないで、できるだけでヨシとしようではないか。
また、余計なことかもしれないが、他人や雑誌などの写真の魚の持ち方を高圧的に非難し合ったりするのは短絡的に過ぎる。ルアーマン全体はどんな持ち方をしていようと、気持ちの上では他の分野よりよほど優しい仲間なのだ。まずは、身近な仲間にすすめてみてほしい。
魚に優しく接するぐらい、人間や仲間にも優しく、といきたいものだ。
日本は釣りのルールという点では欧米を参考にしているが、世界を回って見てみると、放すにせよ、食べるにせよ、国民全体としては、この国ほど魚そのものに対する思いの深い国は少ない。その思いが良い方向に向かっていくことを信じてみたい。
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長文、読了ありがとうございました。
今日ではネットもあり、様々な専門家の意見を調べられると思います。至らないところがあれば、ご指摘よろしくお願いします。
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ひとつ訂正しておきます。文中、寄生虫とありますが、正確さに欠けるようです。それだけではなく、海生甲殻類、例えばスナホリムシ等も含まれます。調べてみると、けっこうポピュラーです。

 

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