パチンコとウチュウ論…自選エッセイ集【25】(2001)

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 陽気が悪く、釣りは断念。矢口氏の漫画をモチーフにした新台「釣りキチ三平」が導入されたと聞き、急遽予定変更して釣り仲間とワイワイと打つことに。
 投資上限を決め、いざ勝負。
 この台、スペックは普通ですが、かなり過激。20連中の台もあれば、4分の1の台が1500ハマリ中。
 それでもルアーマンは強かった。激熱四万十川アカメリーチ(写真、体長2メートルだそうです。)がサクッと当たって連チャン、終わってみれば二人ともプラスしました。
 これで、お客様用の酒代は確保。どうぞ、遠慮無く飲みに来て下さい。
 
 …ついでにパチンコ関連のエッセイを載せておきます。では。
 
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◆パチンコとウチュウ論(2001)
 我が家に訪れる友人達の半数以上は、釣り人である。世間では今頃になって、リストラだとか失業率5%突破とか言われているが、私の会う人達の失業率は、ずっーと昔からもっと高かった。ただ、生活はたいへんなはずなのに、どこか楽しそうに見える。
 ある日、釣り好きなパチンコのプロやセミプロが集まっていた。元サラリーマンもいれば、元経営者もいる。酒席の話題は当然のごとくパチンコ必勝法から始まった。
 パチンコなど、やったことのない人もいるだろうから、簡単に最近のパチンコを説明してみよう。〔注、現時点では台の法規制が変わり少々複雑になっているが、基本は同様〕
 今の主要機種はCR機と呼ばれ、液晶画面の凝った演出に特徴がある。外見は様々だが、中身はどれも三百十五分の一で大当たりを引ける電気的なルーレットのようなものだ。当たるとさらに二分の一の確率で約六十分の一の確率変動モードに移行する。
 玉が入賞する度に三百十五分の一の抽選を繰り返すから、理論的には抽選回数が多いほど有利になる。だから、釘が開いていて、たくさんの玉が入賞する台を選ぶことが基本となる。営業形態にもよるが、客側が勝つには千円で三十回程度抽選が行われる必要がある。
 丸一日にすると、三千回抽選があったとしても、確率のバラツキにより、大当たりは、0~三十数回の差が結果として生ずる。そこに泣き笑いがあるわけだ。プロは毎日長時間打つ事で、そのバラツキを確率の収束という形で採算をとっている。
 また、規制上三百十五分の一であっても、内部では、六百三十分の二とかにして、その当たり位置を偏らせてあるから、ますますバラツキは拡大している。闇雲に打っても、プロでさえ苦戦必至なわけだ。
 そこで、必勝法だが、そんなものはないというのが普通この手の文章の帰結なのだろうが、ここは期待に答えて最後に書くつもりだ。ただし、彼らプロの方法ではない。
 
   ヒラスズキ?
 彼らとの酒席の中で、全員一致した意見があったのだが、少々複雑な気持ちである。パチンコの大当たり状況が、ヒラスズキの釣れ具合に似ているというのだ。 どんなにガンバッテもいっこうにヒットしない大ハマリがあったり、確変モードに入ったような爆釣もある。
 大当たり確率八十%のスーパーリーチが外れたときなんか、磯際で痛恨のバラシといったところだ。
 また、パチンコにも季節に相当する、釘の締められる時期と開けられる時期がある。朝早く行って、台確保するほうが有利なところも似ている。
 そして、研究を重ねる程、結果の向上が得られること、何よりパチプロの中でヒラスズキをコンスタントに釣る人が、本業のパチンコの収支も安定しているのだ。彼は粘り時、諦め時を知っている。 すると、河口や内湾の釣りは、より手軽で確実な夕方パチンコといったところか。
 …まてよ、それなら私はパチンコに勝てるのではないか。(単純です)そこでやってみた。最初はともかく惨敗が続いた。…
   宇宙論?
 元々、私は親のせいで賭事が嫌いなのだ。生まれ育ったところが新宿の繁華街近くという、教育上よろしくないところだったので、親が一計を案じたらしい。ものごころつく前の小学生から麻雀とパチンコをやらせたのだ。親の目論見どおり、負けたときの悲しさだけが印象深く、私は賭事を受け付けなくなった。
 そんな私でも、ヒラスズキと同じと聞いてはおさまらず、悪友の誘いに乗ることになったわけだが、やがて、プロと同じ方法では、時間の制約上、勝ち目の無いことは解りかけてきた。
 そこで、彼らの話を謙虚に聞いているとあることに気付く。店の選び方、経営側の都合、客の心理、確率と割り数…。言葉は違っても、その解釈の仕方や関係性は何処かで聞いたことがある。
 
 それは、飛躍してしまうようだが、一種の宇宙論であった。それも、人間原理派の説に触れるものがある。
 古来より科学者は、宇宙を説明しようと、その知性を競って、ようやく現代になって、宇宙年齢とか大規模構造とか物質密度とか、全容の解明に近づきつつあった。
 ところが、何かが解ってくると、より鮮明に新しく説明のつかないことが見えてくる。ビックバンから百六十億年たって、ここに人類が生まれたというが、それが成立するためには、とんでもない、を百重ねても足りないほどの偶然が重ならないとならないことも解ってしまったらしい。
 普通は、時を経て何々が生まれたとか、原因から結果が生まれると言いたいところだが、それでは人間が何故現宇宙に居られるのか、説明出来ないそうだ。
 重力や核力等の物理条件や定数が極僅かでも今と違えば宇宙すら別の形を取らざるを得ない。どの力にも、炭素型知的生命体の存在にとってあまりに都合の良い数値や偶然の一致があり、それは確率的にはあり得ない奇跡的な均衡だという。
 そしてついには、人類が存在するためには、宇宙は百六十億年以外の数値はとれないというところまできてしまった。つまり、原因と結果が逆なのだ。
 
   必勝法?
 宇宙の解釈は、たぶん文化や芸術には影響を及ぼすけれども、実生活には応用できないと思っていた。何故なら、世界が海ごと巨大な四本足の動物に支えられているとした太古の時代から、それぞれの時代のテストで百点取るには、その時点の真実が正解であって何の問題もなかったからだ。
 ところが、パチンコ(確率の悪魔)は別だった。少なくとも、原因と結果の解釈の仕方からは攻略のヒントを得た。まともに一つの台の三百十五正面体?のサイコロ?なんぞを当てようとすると、ブラックホール行きである。
 
 あの宇宙論にあてはめてみると、ある地域のパチンコ店の群が宇宙となる。(結局、大きさが違うだけ)店舗の数、及び台数は、その地域の客の資金力、及びバカサカゲンに比例する。当然、店の数が上回れば何処かが倒産してバランスする。
 物質密度には必ず偏在があるから、活性の高い(客の入りの良い)島宇宙を見つける。(これは魚と同じ)その中では、何の工夫もせずにランダムに台を選んでも、次のことを守れば理論的に投資額に対してプラスする。
 例えば十台あったとして、その日調子良く勝てるのは、平均二~三台がいいところだ。これは、宇宙の基本定数のようなものだ。それ以上では店側の経営を圧迫するし、それ以下では客が来なくなる。双方の存在にとっての根底なのだ。
 つまり、誰でも十回の内、二~三回は勝てるのが今のパチンコだ。反対に七~八回は負けて当然ということ。三百十五分の一なんて意味はないのだ。これがもしも百分の一抽選になっても、当日勝てる台数が三倍になるわけではない。十分の二~三こそが重要である。
 そこで、勝った時二~三回の分が、負けた時七~八回分を上まわれば良いわけだ。(実際は台を研究し、店と、良く回る台を厳選することで、勝率は半々程度に向上する)計算式はあるが、店の営業形態によって異なる。より具体的には、一台に一箱分相当の☆円が投資額の上限になる。思ったより少額であるが、これによって好調台にしか座らずにすむ。勝った時を思い出して欲しい、案外お金は使っていないものだ。
 我々普通の人が、パチンコで負けるということは、目前の不確実な一台に固執し☆円以上入れたときに、確率的にはすでに発生している。何万円も使って取り戻したとかの話を聞くが、偶然勝ったにすぎぬ。いつか確率は収束してマイナスする。三百十五分の一という確率上の収束は、プロでないと難しい。十分の幾つなら、遙かに早く収束するはずだ。
  
   証明?
 この方法は意志が強固であることが必要だ。勝っているからもう少し打ちたいとか、暇だからやるとか、負けをその日の内に取り返したいとかは許されない。感情に惑わされず理論通りに立ち回らなくてはならない。
 この証明のため、ひと月プロと張り合ったことがあるが、宇宙論の応用で、時間効率としては肉薄するところまでいった。そうしたら、気が済んでしまった。この点もヒラスズキと同じだ。私は解ってしまったポイントには、通わない癖がある。
 思えば、ヒラスズキを何十年もやっていると、三回に一匹ぐらいのヒットになっている。双方が存在するために、自然に場所選びや釣り方を調節してきたのかもしれない。終。
 
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 それにしても最近の台はタイアップ物が多いです。釣りキチ三平、仮面ライダー、幸田来未、相川七瀬等々。
 スポンサー不足に悩むTVにもパチンコメーカーのCMが盛んに流れています。伊☆☆咲の恋人とかいう人もメーカー御曹司。神☆☆のの夫も業界人。業界内には警察OBもいて、これではパチンコに対して批判的な意見など黙殺される雰囲気があります。
 最近の台は、突確とか潜確とか、昔を知るものには冗談としか思えない、〔出玉の無い、名ばかりの大当たり〕があり、故意に止め時を引き延ばす、店側に有利過ぎる仕様になっています。私はこれは悪質だと思います。上記宇宙論からすれば均衡の破綻となり、一時的には店が潤いますが、必ず客の減少を招きます。
 パチンコは程々に。 

イイダコ

 連休中は何処もいっぱいなようなので、東京湾で友人達とイイダコ釣り。ついでにイナダ君も(ツバス、ハマチ)。
 イイダコは昔から確立されている釣りなので、専用のテンヤ仕掛けが一般的。また、小型のイカスッテを着底出来るようにすれば、それでも充分釣れます。
 
 しかし、そこはせっかくのルアーマンの集い。もう少しルアーらしくできないものかとあれこれ試してみました。
 今のところ、専門仕掛けやイカスッテ改に対抗して互角か、それ以上と言えるかもしれないプラグ改造仕掛けが写真のものです。
 小さめの、丸っこく白っぽいフローティングプラグなら、何でもいけますが、特に調子が良かったのが、適度にリップカットしてイカ針を装着したラージシケイダー改でした。
 
 使い方は簡単。着底させて(もちろんイイダコのいるところで)、ラインを軽く張って、イイダコのノリを待つだけです。あとは活性に応じて適当に小移動を兼ねたカラアワセをすればいいのです。 錘の上でプラグが勝手に踊り、誘ってくれるので何もしなくてもノッテくれます。絡み等のトラブルも少ないです。またプラグが若干浮いている状態なので、ノリの感知能力が他の仕掛けより優れています。
 もう少し研究すれば、もっとイイダコに相応しいルアーが出来ると思います。
 
 
 そして、イイダコ釣りの合間にやったイナダ。この頃の東京湾イナダは、ジグやバイブ、ミノーにスレ気味なせいか、ポッパー系の反応がすこぶる良いです。
 ほぼTKRPの早引きで事足りますが、できればM・サウンドがあると心強いです。このルアーは小魚のシルエットを保った、珍しいサイドカップを持つポッパーでもあるので、これの早引きによる適度なスプラッシュが効いてくれます。 

実は…

 まあ、過ぎ去った事なので笑い話としてお読み下さい。
 2008年に開催された横浜でのフィッシングショー当日の、朝の出来事です。
 
 前夜までに、初出品となるK2F142プロト及びディスプレイ用品を車に積み終え、あとは渋滞に巻き込まれないように早起きするだけでした。
 目を醒ましてからコーヒーを煎れ、新聞を拡げたたとき、いきなり咳き込みました。その時、新聞が真っ赤になったのです。それも一瞬、綺麗だなと思った程の鮮血でした。尋常ではありません。
 次に様々なことが頭の中を駆け巡りました。ついに来たか(ヘビースモーカー故の覚悟)、それにしても何という悪いタイミング。
 何しろ肝心の展示物を持っているのは私なのです。こんな状態では横浜まで(一時間半かかる)行けないし、担当が取りに来るには遠すぎる。夜の会合もキャンセルしなければならない。
 
 救急車を呼ぶことを考えましたが、このまま直ぐに死ぬとは思えなかったのと、近所を騒がせたくありません。それに横浜に行けなくなってしまいます。
 そこで、まずインターネットで症状を調べてみました。すると、症状をチェックしていくと対処方法が判るというサイトを見付けたので、指示通りにやってみました。
 チェックをクリックしていって、最後に血を吐きながらエンターキーをポン。目の前に、「早急に気道を確保すること、致死率50パーセント」なんて表示が!お先真っ暗、落ち込みます。見なきゃよかったと思いました。
 
 そして、直ぐさま社のショー担当へ、遅れるかもしれないと連絡して病院に急ぎました。テッシュBOXを抱えながら…。ここで正直に言うと、タバコを一服したのです。(イヤ正確には三服ぐらいか。しばらくは吸えそうにないのと、ヤケクソで。) そしたら、アラッ、血が止まったではありませんか。
 タバコが血管を収縮させるというのは本当なのだな、と妙なところで感心しました。……
 そこから横浜へ向かう道中にある病院に駆け込むことになるのですが、その大病院は、かつて私が大病を患った時に誤診があったところなのです。
 当然思い出しましたが、診療代も高めなせいか、空いているし、緊急なので仕方がありません。
 
 そして受付で一悶着。救急車に頼らず自車で来たせいか、急いでくれと言っても動いてくれないのです。これじゃ間に合わないと判断し、私がしたことは…。
 わざと咳き込み、受付カウンターの上に鮮血を吐いてやりました。(スミマセン)これで眠たげな受付嬢の態度が一変。にわかに院内に活気が出て来ました。アッという間に車椅子が用意され、医者や看護婦さんに囲まれました。
 ここでまた一悶着。
 ある程度ネットで調べていたので、私が先生に、血は黒くないので胃じゃなさそう、鮮血なので肺周辺を調べてみて、とにかく血を止めて欲しい、本治療は明日以降でいいと言ったら、どうも先生のご機嫌を損ねてしまったらしいのです。
 レントゲンはともかくとして、そこじゃないと言っているのに胃カメラまで飲まされるし、組織検査、血液検査と、直接関係の無いようなことが続くので、何かおかしいと思いました。
 後に聞いたら、何と早朝なので胃の専門医しかいなかったのだそうです。最初に言ってくれっ、てなもんです。
 検査結果が出るまで安静にしていればよいと言うだけなので、見切りをつけました。やはり病院を変えようと。
 幸い、検査室をハシゴしている間に吐血が落ち着いてきたので、安静にしつつ逃げ出すように横浜に向かうことにしたのです。高速を飛ばしながら灰皿のタバコを見ると、吸い口に口紅が付いているみたいです。これは誤解されるな、などと要らぬ心配をしながらもFショーの開場ギリギリに間に合ったのでした。
 
 あの時、タックルハウスブースに来場頂いた皆さん、実はこういう事があったのです。私はバックルームに隠れることが多く、恒例の関係者との夜の会合にもほとんど合流できませんでした。
 検査結果は?ご心配掛けてすみません。精密検査の末、判った事は、胃に異常は無く(アタリマエ)、血の数値はどれも正常で、エイズでもありませんでした。一週間ほどで症状は消えてくれました。
 本当の原因はお笑いです。年齢を無視して急に始めた過激な運動により気道内の血管が切れたのでした。
 思い当たるのは、K2Fを作り、使用するにあたって、もう一度若かりし頃の体力を取り戻そうと、直前まで走ったり、器具を使ったりと、相当の無理をしていたことです。それで身体が悲鳴を上げたというわけです。
 意志に身体が付いてこないのは情けないのですが、まあそんなものなのだと納得するしかありません。
 
 教訓…病院の選択は慎重に。またある程度の年齢に達したら身体を鍛えるのは徐々に、ということでしょうか。
 それと、たまにこんな事でもないと、人生が一度だけという大切なことを忘れがちになります。怪我や病気からしばらく遠ざかっていたので、私にとっては良いお灸になりました。

不思議

K-TENセカンドジェネレーションの第一弾、K2F142の発表時、本発売前に先行して限定モニター販売という方法を採用してみました。
今思い返すと、全て順調だったわけではなく、不慣れなこともあり、ご迷惑をお掛けしたりもしましたが、いつもモニターさんの暖かい応援に助けられました。
何より、普段はお会いできない皆さんとメールやTELでお話できたことは、非常に貴重な経験でした。

最近は大型ルアーのシーズンに入ったらしく、また当時のモニターさんからの釣果報告が増えて来ました。とても励みになります。

そして、ますます思いを新たにしたことがあります。
モニターさんやユーザーさんから、かつて何かしらのご報告を受けている場合、どうやってその一匹に辿り着いたのか、身近な仲間内同様に、ある程度わかるので、とても不思議な気持ちになるのです。

先日もモニター期間中には釣れなかったけれども、ついに142で自己記録を更新したという詳しい内容のメールが届いた時、私も思わず机をコブシで叩いていました。彼の長かったそこに至る過程が想像できるからでした。

ルアーフィッシングを続けていると、必ずいつか特別の一匹にめぐり逢います。 先に不思議だと言ったのは、その一匹から時間をさかのぼってみると判ります。 選んだルアーと対象魚が遭遇した座標はただの一点。しかも当然、何月の何日、何時、何分、何秒ピッタリにです。この瞬間までは魚も人も互いに動いているわけですから、そこにジャスト双方が、居た、ということは、かなりの部分で偶然の重なりによるものです。
狙って戦略的に選んだ場所にルアーを流したからといえばそれまでですが、そもそもその日に釣行できた理由は?
それに車で信号に何度も捕まり、着いてから友人と話したり、一服したり、ため息を漏らしたりして時間はズレていきます。絶対のタイミングなんてありません。
また、先週バラシたから意地で来た、それではそのバラシが無かったら?
また、やっと取れた休みだから、たまたまというのもあるでしょう…。

一匹が釣れた結果から見れば必然ですが、それは別名、奇跡、とも言えるのです。
皆さんからメール等を頂くようになってからは、それが平等に、多くの場合で突然に、誰にでも起こり得るということが実感できるようになりました。

いずれK2F122でも、また皆さんのモニタリングに頼ることになるでしょう。そこでの出会いや再会を楽しみにしつつ、今秋冬シーズンの皆さんのキセキを願っています。

掛け声

 とある島への遠征中、ごついロッドででかいルアーを投げ続ける友人達。
 
 思うようにはなかなかヒットしてくれません。しばらくすると、ルアーを投げる度に小さな掛け声が上がり始めました。  
 
 ウォリャー、とか、イッタレーとか。
 
 ポッピングする度に
 
 トリャ、とか、ソリャとか。
 
 コイッとかキテェーッとかもありますが、こういうときの掛け声は、語尾に小さい〔ヤ行〕の音声が付くことが多いようです。
 ウォリャー、トリャ、ソリャー、ウリャ、気合いが入りまくり。
 
 そんなことに感心していると、やっと大声で、
 
 ヨッシャャー、
 
 明らかに意味のある掛け声が上がりました。
 アッ、これも〔ヤ行〕だと思って視線を掛け声のほうへ向けると、真っ直ぐになったロッドティップを見上げた彼のつぶやきが聞こえてきました。
 
 アリャ……。
 
 
 以上、実は今朝見た夢の中の一シーンなのですが、ほぼノンフィクションでもあります。実際、パラオで同じような出来事がありました。
 このおかげで珍しくも笑いながら目が覚めました。前にもこんなことあったっけ、と記憶を辿ってみても憶えがないです。シアワセなことなのでしょうが、笑いながら起きると、疲れます。
 

ハンドメイド等

秋の連休が終わっちゃいましたね。
私はプライベートなイベントが重なって、各地を動き回って来ました。試作無塗装目無しK2F122も期待以上の働きを見せてくれたので気分は上々でした。 普段は平日に動くことが多いので、初めて高速1000円の恩恵にあずかれたのですが、海山何処へ行っても大渋滞に巻き込まれました。オートマではなく、重いクラッチを延々踏み続けて、左足が痙攣しかけ、もう少しで必殺右足クラッチになるところでした。

そして渋滞中の有り余る時間、今の車では滅多に音楽は聴きません。エンジン音だけのほうが落ち着きます。そんな中、グッドアイデアが降って来たのは、きっと、数十年ぶりに会った友人達、冗談のような渋滞、いつもとは違う幾つかの魚から刺激を受けたからでしょう。残った左足の痛みですらイイもんです。

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さて、話題を変えてハンドメイドのことを少し。
よくルアー作りに関する質問があります(中にはプロ?と思われる方もいる)が、さすがにメーカー内からお答え出来ることには範囲があります。
それでも可能な限りお答えしてきたのは、どうもルアーを自分で作れるぐらい、または作らなくてもそれぐらいの知識がある方のほうが、タックルハウス製品を高評価して頂いていることに気付いたからです。これは素直に嬉しいものです。

そこで、プチ・サービスです。製作現場の了解を得て、写真を数点載せてみます。
元々ハンドメイドに興味が無い方や、この段階を既に通過している方から見れば地味なものです。しかしルアー作りで試行錯誤をしたことがある方が、よ~く見て考えれば、お宝な知識が隠れていますヨ。 

磯スズキ攻略、6カ条

 Kさんからリクエストを頂きました。
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 ……略……ところで、以前、アングリング誌に掲載された「仕事は激務または不調、できれば失業中」の文章はラボに掲載できないでしょうか?あの文章、一番自分の心に残っています。……略……
 
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 Kさん、お待たせしました。以前書いた文章を覚えていて頂いて恐縮です。今読み返すと、口述が元になっているせいか、また若かったせいなのか、間違いは無いものの断言が目立ちます。其処の所、割り引いて参考にして下さい。(廣済堂出版1994年10月号より)
 では…
 
   ◆磯スズキ攻略、6カ条
 アングリング誌を読むシーバスアングラーなら、磯スズキを狙う時、サラシや風、潮位、イワシの追い込み等の自然条件がいかに重要なことか、もうご存じだろう。
 磯のスズキ釣りは、船や泳いで沖根に渡らない限り、他のどんな魚種や釣法にもまして、自然条件に左右される釣りである。
 居付きの黒いヒラスズキが釣り尽くされてから、外房では月にいったい何日、ルアーの射程範囲に彼等が来るのか?
 ここ10年を平均すれば、月の内10日もあれば良いほうだ。つまり、彼等との出会いは日並み次第とも言える。
 言い換えれば、法律だのを作らなくても、自然の禁漁日があるということだ。実は、私は、案外これが気に入っているのだ。ちなみに、船から沖根のヒラスズキを狙う方法は、日並みに幅が出来るが、その筋の知識を蓄えたルアーマン、たった一人でその周辺のヒラスズキを全滅できることを知ってから、私は止めた。
 
 怒られそうな例えだが、100万円あれば初心者でも、海外で3回位はガイドを雇って、カジキでも、ヒラアジでも小さなものなら釣れるだろう。
 ところが、屈強な男が、昼間のヒラスズキを100万円で50回トライしてアブレたケースだってある。些細な勘違いでの10回以上のアブレはざら。つまりお金の力だけでは釣れないのである。実はこれも気に入っている点の一つだ。
 さらに釣れる時には、これ以上無いぐらい、どんな魚より簡単なのである。身近でありながら遠い魚、それがヒラスズキである。この振幅の度合いにこの釣りの要旨がある。
 コンスタントに釣る方法、それは、かつて誌上に書いたように、あるにはあるが、日を選ぶことになり、実生活上のリスクを負うことになる。
 そこで今回は、基本的な釣法は入門書に譲って、日頃、よく質問を受ける釣るための攻略、注意点について語ろう。
 
◇磯の構造を知る
 どうしても釣果が上がらない時は、ワンパターンに陥っているので、深追いせず、次回にダメージが残らないように諦め時を心得ること。(いきなり、ここから始まるとは!)
 釣りを中止して、磯の構造を知ることに全力を尽くす。特に、4、5、6月の大潮の干潮時はチャンス。歩き回れば、スズキの道が見えるはずだ。これを徹底的に記憶する。そうすれば、自分だけのルアーの引き方が出来るようになる。
 こうして次回に釣ったスズキは、漫然として釣れたスズキより数倍の知識と快感を与えてくれる。そして、釣れた場所を再度、干潮時にチェックすれば、また意外な発見があるはずだ。面倒だとは思うが、あれだけの大きさの魚が、こちらから船で近寄ることなく、コマセも打たず、足下まで来てくれるのだから。もちろん管理釣り場ではないのだから。
 
◇ルアーを見る
 これは、シイラでも青物でも同じことなのだが、初心者がベテランの手許を見て、リールを巻くスピードや、ロッドの煽り方を見て真似てみても、ルアーそのものは、全く別の動きをしている場合が多い。
 ジギングであれば、ベールをオープンにしつつロッドを煽って糸フケを作り、ジグを落とし込むこともあり、見た目とは真逆になる。スウーッと軽く煽っているだけに見えても、実は、同時にリールを回転させて高速でルアーを動かしている場合もある。
 ジグの落とし込みでは、僅かな糸フケを利用して、ルアーに命を与えることがコツであるように、ロッドの動きだけでは判らない。いかにハイスピードでシャクッても、段差でジグが死んでいる場合も多い。ミノーでも同様で、手許に気を取られると、ルアーの動きが死んでしまう。
 ロッドが違い、リールのスプール径やギヤ比も違うのに、人間側の動作だけ同じにしても、ルアーそのものは全く別の動きをする。
 
 磯スズキでアブレやバラシが続いたら、具体的には、次のようにすれば良い。サラシの中では、ルアーが泳ぐ限りゆっくりと、そしてサラシの切れ目からは高速で回収するごとくリトリーブ。そのまま足下でロッドの先から1メートル残したラインで丁寧に、横にルアーを走らせる。こうすると、サラシの中の複雑な流れの中で、実際の小魚の動きに近くなるし、スレにくい。
 サラシの中を始めから高速で引いても、ヒットはするが、喰い損ねが多くなる。こうなると、「スズキは喰い方が下手だ」となる。ここ2~3年はシイラ経験者にこうしたケースが多いようだ。
 ただし、遅く引くから喰いやすいのではない。スズキの反転食いは、彼等の長い経験から、小魚が複雑な流れに玩ばれても、確実に喰えるように、微妙に先回りしているものなのだ。それは、例え5センチでも、口一つ分でもズレていたら小魚を捕らえられない、波や流れを本能的に計算していないと喰えない喰い方なのである。
 それなのに、強く巻かれるルアーは、流れなどお構いなしに、ポイントを弾丸のように突っ切ってしまう。だから、小魚本来の動きを考えた引き方が必要となる。
 ちなみに、食い込みといったことだけを取り上げてみると、5、4メートル2号の磯竿のようなペナペナのロッドを使えば、スズキは遙かに高確率で食い込む。これは、ルアーが海水と共に動くからであり、ロッドの抵抗が掛からず、食い込む間を与えるからだ。
 また、異常にスズキの活性が高く、何尾もヒットする時に、バラシも非常に多くなりがちなのは、魚側の都合を別にすれば、全ての動作が速く、固くなっているからである。
 硬調ロッドを使用する場合では、波に押されるようなら速く、波に引かれるようならゆっくりと、生きた小魚がそう動くように柔らかく使うと良い。
 中途半端なベテランにバラシが多く、根掛かりかヒットか判らないような初心者のほうに、ルアーが飲み込まれる程ガッチリ掛かるのも、心許ないリトリーブが、かえって高度なリトリーブに近づいたためである。……
◇不用意なアプローチ
 各地域の磯スズキの寄り場は、ほとんど一定しているので、一度でも釣れた所を含めて、昔からの実績ポイントをできるだけ数多く覚えておくこと。ただし、大多数のポイントは、想像以上にピンスポットである。それぞれのポイントで、餌ッ気がないと、次のポイントに移動する。この時、どちらからスズキが来るのか掴んでおくと、次のポイントへ、歩行で追いつけることもある。
 ちなみに、サラシからサラシへの移動中のヒラスズキは、餌を探しているはずなのに、初めから諦めているのか、途中でルアーに遭遇しても、あまり食い気を起こさない。明るい時間帯はサラシというテーブルがないと駄目なようである。 問題は、ポイントに入りながら、わざわざヒラスズキを追い払っている人がいることだ。
 ヒラスズキは、磯際に居るのが常で、たまたま我々には足場である岩の根元も、ヒラスズキにとって、沖根と同じ餌場となっているのだ。だから、不用意に足場にヌッと立っただけで、ヒットの確率を半分に下げることになる。人が見下ろしても平気な魚は滅多にいない。常にサラシのベールに覆われていれば別だが、たった一つの行動が、致命的な確率ダウンを起こすことになる。
 匍匐前進とまではいかないにしろ、初めの一投は、磯際から間合いを取って投げる癖を付けると、今まで釣れなかった魚に会えるようになる。
 
◇五感のアップ
 せっかく海に行ったのなら、時折、海水に素手を浸け、足場の岩肌の日向と日陰に触れ、目をつむり、匂いを嗅ぎ、耳を澄ますこと。特に釣れたときに念入りにする。これを幾シーズンも繰り返し続けること。
 例えば、海水温でも、経験上、水温計で絶対温度を知るよりも、体温、外気温、体調、風向きに左右される相対温度を感じたほうが後々の釣果に繋がる。
 匂いでは、陸からの草と土の匂いよりも、磯の香りに混じって、打ち上げられたばかりの新鮮なイワシの匂いでもあれば、必釣間違いなしといった具合に、車から降りた瞬間に判る時もある。気付きさえすれば、人間の五感もなかなかのものだ。
 これらを日頃から心掛けておけば、今の風が何時間前から吹いているのかとか、スズキのいる海が何かいつもとは違うといったことが解ってくるものだ。とにかく、こうした生きた情報は多いに越したことはない。
 3シーズンも過ぎれば、今とは別の海の姿が見えてくる。その時は、既に幾つか海からのプレゼントを手にしていることだろう。
 
◇集中力
 ヒンシュクを買うのを覚悟で言うと、例えば、既婚者よりも独身者、恋人無し、できれば失恋中で未回復、仕事は順調より不調あるいは激務、できれば失業中、管理された釣りには興味が湧かず、コテンパンにアブレて、かえって海が美しく見えたりしてという、どちらかといえば、不幸な状態の人々にヒラスズキは優しい。 
 既に数十尾を釣ったベテランでスランプに陥ったアングラーを例にとってみよう。彼の場合は精神面での幸福状態に原因があった。つまり、あれもこれもと集中力に欠け、鈍感になったことにある。失恋中のナイーブな状態なら、夜明け前に起きるのも厭わず、風の気配や潮の動きといった、全ての自然の流れに同調していけるからである。
 集中力を持って、磯のスズキに挑んでみてはどうだろう。荒磯を風に向かって歩けば、自然とスズキの元へと近づいて行くはずだ。夜明けの海を見るだけでも良いではないか。年に一度ある海と太陽が溶け合う完璧な夜明けにも、いずれ会えることだろう。
 
◇安全面
 磯のスズキで先ず忘れてならないのが安全。これは各自が気を付け、責任を持つしかないが、参考までに私の失敗例を上げておこう。
 波による経験では、一昨年の11月、ベタ凪で夕マズメしか釣りにならず、平床という平らな岩棚で釣りを初めて1時間後、突然ヨタ波を受け、ウエイダーで浮力があったせいか、身体全体がサーフボードのようになってしまい、50メートル後方の大きな岩まで流されたことがある。
 大きな波の来る直前には、海の水が無くなるように引くので、判ってはいても対処出来ない波だった。そこは地形的に、陸に上がった波が拡散するので大事には至らなかったが、上がった波がそのまま海に戻るようなところは絶対に立ってはならない。
 とにかく、初めてのポイントでは、磯に立つ前に、5分は波を見ていること。もちろん、潮位によって波の立ち方が変わることも念頭に置くこと。
 また、昼間はサラシを必要とする釣りなので、大抵の場合、荒天の中での釣りとなる。そうした所では風、波とも周期的に大きいのが来る。ヒット中は特に注意したい。

K2F142 T:2(別リップタイプ)の発売について 

K2F142開発当初から予告していた別リップタイプ(通称T:2)の出荷開始が15日頃となりました。出荷を開始しました。

以前、当ブログK2F開発記に記したように、Tの意味はテンション(リトリーブ中の引き抵抗)です。先行タイプをT:1とすると、T:2はテンションを少々アップしてあります。  

T:2の性質はBKF140程ではありませんが、現K2F(T:1)より潜行し易く、泳層のコントロール幅が拡がっています。従って足場の高めな所でも使いやすくなりました。そして、ウォブリングの要素が強まり、低速からの泳ぎ出しは向上しているので、スローでの表層引きでも充分なアッピール力を発揮します。

泳層を変えずにテンションだけ上げる方法(TKF130リップタイプ)もありましたが、リサーチの結果、より使用範囲の拡がるほう(スタンダードリップタイプ)を採用しました。

ただし、向上することばかりではありません。これによって性能面で低下するところもあります。まず強い逆風下になると現タイプ(T:1)と比較して若干、飛距離が伸びなくなります。

リップ自体は主な使用フィールドを考慮して、角度を立てたことによる強度面の不安を解消するために、かなり厚めのリップになっています。厳密に言うと、リップを厚くすると振動数(キレ)は低下しますが、目立たないぐらいにはしました。

以上、簡単に言えば旧BKF140に近づいているのですが、実際は深度だけではなく、海中の三次元でルアーのトレースコースが旧BKF、現K2F(T:1)、新T:2、三者それぞれに異なります。使い分けを試してみて下さい。

なお、このモデルのリップ裏面には「T:2」と浮き彫りしてありますので、夜間手探りでも識別出来るようになっています。

そして、テンションが及ぼす効果について、さらに詳しい説明は、当ブログ内の「テンションコンセプト」を御覧下さい。

もしも使えそうだナ、とご判断頂けましたら、無駄足を防ぐためにも、お店に問い合わせしてからのほうが確実です。よろしくお願いします。
これから多くのポイントでビッグミノーが活躍する季節になります。フィールドに応じて二種類のリップを持つK2F142が、皆さんの良き相棒となりますように願っています。

諸刃の剣…自選エッセイ集【24】

  ◇前置き
 次回の記事はお知らせとして既に用意してあるのですが、それまでちょっと間があるので、また古いエッセイをひとつ挟んでおきます。
 ブログ内に載せてあるエッセイの大半は“かなり以前に書いたもの”なのですが、私なりの理由があります。
 経験上、十年を経て今だに読むことが出来れば、その先十年経っても読めるはずだからです。私の書いたものの内、流行の時事ネタや自身にも理解の浅い事等が入ったものだと、当時の受けは良くても時代の流れは速く、今読むとピンとこないものもあります。
 だから時のフルイにかけて耐えたものを順不同でここに載せることにしているのです。
 釣りの世界に限らず、たぶん最近の自民、民主関係の喧噪も、十年も経ってから振り返ってみると、今の感想とは相当違うはずです。世の中、移ろいやすいです。また、だからこそ二度と無い現在の経験がとっても貴重なものだとも言えるのですが。
 
 前置きが長くなりましたが、以下のエッセイは、私がMシリーズを手掛けていた2001年に書いたものです。
 何から学び、何をしたかったのか、よく判ります。参考にして下さい。
 
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   ◇諸刃の剣
 
 一時期、海のフライフィッシングに凝ったことがある。もう、かれこれ十年になる。内湾のような静水域のフッコを釣るのは、スタンダードな方法と道具で、そう苦労はしなかった。船上からの目前にいる小型のシイラなどは、むしろルアーより釣り易かった。 
 予想以上に手こずったのは、得意なはずの外洋のヒラスズキのほうだった。なにしろ、風波のある足場の悪い所である。初めてフライをリトリーブしたときは、寄せ波のほうが早くて、デシーバータイプのフライが押されて開いてしまい、小魚のシルエットを保つのも難しかった。
 また、サラシの中では、根本的にアッピール力が足らず、ピンポイントを直撃しないと気付かれもしない。そんなときは、友人が隣でルアーを一投すると、簡単にヒットしたものだ。。
 そして、風波に踊るラインの扱いに手間取っていると、磯場に付いた貝やカニが、ちゃっかり蛍光色のラインを挟んで離さない。彼らは、適度な柔らかさとコシがあるフライラインがお気に入りなのだった。
 
 やがて、四苦八苦しているうちに研究も進み、意地もあり、どうにか何匹かのヒラスズキをサラシの中から引きだすことができた。
 結局、ロッドはシングルからダブルハンドへ、フライは、柔らかいながら、いかなる時もシルエットを保つタイプになり、よりアッピールさせるためサイズは十六㎝まで巨大化した。それを、あまりキャスティングしないで、ロッドの長さを利用して次々とポイントを叩いてゆく。それが一番反応が良かったのだ。
 ようやく見つけた、快適な方法のはずだった。はて、しかし、何か引っかかる。
これはどうも大昔からあるスズキの伝統釣法のようではないか。それに気付いたとき、熱が少し醒めたような気がした。
 ここまでに、私の背中に、どれくらいの数のフライフックが刺さったことだろう。今は、ルアーのほうが楽しい場合はルアーで(ほとんどだが)、フライのほうが楽しそうな場合はフライでと、こだわりはない。
 
 フライのヒラスズキについては、たった数年の経験ではあった。しかし、サラシから飛び出た三十回程のチャンスと、やっとランディングできた三匹からは、多くの事を教えられた。それは、現在のルアー作りにも生かされていると思う。 まず、三十回もフライに食い付いたのを見ているのに、釣れたのは、その十分の一。ラインが弛んでいたり、フックの位置や機能のせいもあるが、もしもルアーなら半数バラシたとしても十五匹は捕れた…。そう考えたくなるが、たぶん違うだろう。何故なら、フライには、どう見ても同じ魚が何度もアタックしていたからだ。ルアーなら、一度口を使った同じ魚が三度出ることは滅多にない。これに気付くまで、一見フライでの釣行日のほうが、運悪く魚がたくさんいると勘違いしていたものである。
 同じ魚が何度もアタックする理由は、単純だ。アッピール力が弱い分、スレにくいし、素材が柔らかく、口に当たっただけなら、餌かどうかの判断を保留している状態が続く。また、ピンポイントを直撃したときの着水音で、驚かせていないからだろう。
 これは、ヒラスズキだけに言えることではない。ポイント位置が正確なほど、着水には気をつかったほうがよい。バスで使うノーシンカーワームの効力も、まず警戒心を刺激しないからだ。また、マグロでも、ナブラの中に重いジグをズボッとさせた一瞬で、ナブラ自体を沈めさせてしまうときがある。クロマグロが、特に軽いミノーに反応が良い(釣り上げられるかは別として〉のも、こんなところに理由のひとつがある。
 よほど何かに狂っていないかぎり、頭の上に石を投げ入れられて、逃げない魚はいない。 …
 
 反面、注意しなければならないのは、魚との距離が離れている場合、例えば、三十㍍の深場からトレバリーをトップウォーターに誘い出すのは、それなりの方法があるということだ。それに、タイの漁法のひとつに、ヒモで繋いだ金属のカップを振り回して、カポーンと水面に叩きつけて呼び寄せるといったものもある。これとて、至近距離でやっているはずはないが。
 
 夜間の釣り中心だと目撃できるチャンスは少ないだろうが、投入したルアーが、いきなり魚の頭上近くに派手に着水すると、逃げてしまうことがある。それなら、どれくらいの間があれば食う可能性があったのか。また、どれくらい離れていたのなら気付かれもしなかったのか。
 当然、その分岐点の数字は相手にする魚やルアーの種類、濁り、サラシ、投入の仕方で変動するだろう。シイラなどは着水したルアーに、何十㍍先からブッ飛んでくるときがあるし、スズキはといえば、十㍍を越えることは稀で、ほんの数㍍までが普通だろう。
 一匹が釣れた結果には、極めて具体的な数字が隠れているように思う。それはリトリーブ中でも同様だ。海の釣りだと広いものだから、つい投げるのもいいかげんになりがちだ。魚との適正な間合いは、やはり、ある。少し注意するだけで、きっと今までなら釣れなかった魚に会えるようになる。
 
 着水音を含めたルアーの形態やアクションによるアッピール度というのは、諸刃の剣かもしれない。それが弱すぎると気付かれないおそれがあり、強すぎればワンチャンスをものにしないと後が続かない。
 それぞれを相応しい場所で使いたい。弱いならポイント直撃か、探る間隔を狭く連投する。強いなら、なるべく一投に気を使い、間隔は広めで、潔い釣りになる。魚に合わせて効率で選ぶも良し、好みの釣りスタイルに合わせるのも良し。そこにルアーの妙味もあるわけだ。
 
 ここからは、宣伝になってしまうかもしれないが、今シリーズ化しているMというルアーでは、アバウトに投げても魚を驚かせないように、またポイント直撃ができるように不自然な着水音をとことん抑えてある。
 水面でのインパクトという点では、わずか数ミリのカット面があると、かなりの衝撃を生ずる。それは着水した部分と反対側にあっても沈み込むときに発生する。だから、全体はもちろん、アイ取り付け部の形状にも留意した。リップ角度においては、サイズの大きいもの程、抵抗のないよう寝かせてある。シャロータイプでありながら、セオリーとは逆の角度にしてあるわけだ。
 これは、TPOによって、有利にも不利にも働く性質なのだ。望む結果は、我々のルアーチョイスと投入の方法にかかっている。

改造…センシング(感知)ワイヤー?

 今回ご紹介する改造は、特定の釣り方(スローが主)で、根掛かりしやすい海底を小突くようにタイトに攻めないと魚の反応が無いというような場合、またそうした状況の釣りを好まれる方へのひとつの提案です。
 先日テスターさんと話していたところ、根掛かりが特に多い所では、お渡ししているルアー群では使いづらいので、根掛かり回避性のあるロングリップ気味のバス用ルアーを使用することがあると聞きました。
 しかし、元々はバス用、やはり海には向かないところがあります。そこで簡単な細工で、手持ちのルアーに根掛かり回避性を与えるための方法を紹介します。
 
 そもそも根掛かりを回避し易いルアーは、フック自体にガードが付いたものを別にして、根掛かり直前にリップに当たって都合良く障害物を避けるようにヒラを打つか、当たった瞬間を感じて巻く手をストップすることが出来るものです。
 従って、そうしたロングリップに代わるものを邪魔にならない程度に付けてやればよいのです。
 
 写真のように、ルアーの頭部、またはリップに、復元力に優れた極細のバネ鋼線(フロッグのフックに付いているウィードガードのようなワイヤー)を取り付けます。穴開けしてから固定したほうがしっかりしますが、プライマーを併用すれば瞬間接着剤のみでも何とかなります。
 タイプは一本、二本でも出来ますが、形状は使用場所での根掛かりの原因になるものの性質次第で幾つものバリエーションが考えられます。
 慣れないうちはリップや水受け面の角度の延長に伸ばしたほうが判りやすく、着底した瞬間にテコ作用でフックが持ち上がってくれます。その際、当然海底に刺さりやすくなるので先端に工夫が必要になります。
 根掛かり回避に特化するので、中途半端にリップ形状に頼るものより、その点についてだけは優れています…。
 ただし、もちろんデメリットがあります。投入時に飛行姿勢の良いルアーでないと、ライン絡みが発生しやすくなりますし、長く太いワイヤーなど付ければ泳ぎのバランスと飛距離が失われます。それに、数回なら直せますが、魚が掛かったりするとワイヤーが曲がってしまうことも多くなります。また小型ルアー用の、適切なワイヤーが手に入り難いでしょう。
 
 
 だから、全ては程度問題だと思って下さい。PEライン等を使用し、釣り人側もセンシング能力の高い方ならば、僅か5ミリのワイヤーでも効果を感じられますが、3センチ以上の長いワイヤーを付けても回避出来ない方もいるわけです。 たぶん、同じ目的でもルアーマンの数と、ポイントである底の状態の数だけのバリエーションになるはずです。
 
 より簡単な方法は、始めに長目のワイヤーを付けておき、現場で自分の能力を計りながら徐々に短くしたり角度を調整していくことです。(こうすると根掛かるまでやってしまうので注意して下さい)
 
 そして、ワイヤー形状はスムースに着底だけ感知するものもあれば、先端を僅かに折り曲げて抵抗とする方法もあります。砂泥に近い海底だと、こうしないと手許に情報が伝わって来ません。
 
 巧く調整が出来れば、根掛かりしやすい海底を小突くようにタイトに攻めることが手持ちの好みのルアーで可能になります。あくまで特殊な方法なので、参考までに。