光回線、開通…やっと!

 昨日、待望の光ケーブルが我が家にも施設されました。
 何をいまさら、と思われる方も多いでしょう。しかし、何年も前から光回線にするよう頼んでいたのですが、その度にこの地区には伸ばす予定は無い、と断れてきました。
 
 それというのも、今までの名ばかりのADSL12M回線は、中継局から5キロ離れているとかで減衰が酷く、実質はISDN並み、しかも安定しないから頻繁に通信エラーになりました。
 余りに酷いので、ADSLを勧めてくれた会社の人が自宅まで来てくれたぐらいなのです。
 最近のサイト、特に映像の絡むコンテンツがあるページは呼び出すことすら出来ないという有様でした。ネットサーフィンというイメージからはほど遠く、イカダで漂流というのが相応しい。
 
 それでもパソコンの設定を工夫したりして、せめて私の関わるページぐらいはスムーズに動くようにしてきたのです。
 
 待望の光回線を繋いでネットを開くと………我慢と諦めから解放されました。ページが一瞬で開きます。通信速度を測ってみると、いままでの50倍、最悪の状態からは100倍!になっています。
 これ、私が初めて作ったルアーから、いきなりK2Fになったようなもんです。
 
 すぐ慣れてしまうということも判っているのですが、クルシミが長かった分、ありがたさが身に染みます。
 やっとサーフィンができます。
 
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 写真は、電信柱を伝わってきた光ケーブル。細い光ファイバーを保護するため4本構成になっていました。 

QアンドA…フッキングのこと

 熊本のKさんからの質問です。
 …略…今回釣れた魚もそうですが、どうも口の中ではなく、口の下にフッキングしていることが多いです。ファイト中に位置替えするのか、喰い損ねてその位置でフッキングするのか、よくわかりませんが、K-TENに限らず、その位置にフッキングしていることが多々あります。この現象の解説を…略…とのことです。
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 Kさん、お待たせしました。
 考えてみると、我々がフッキングの状態を確かめられるのは、何とか無事に釣り上げるか、寄せることができ、魚を間近に見たときしかありません。
 だから結果として下口唇辺りへのフッキングが多くなることは、それ以外の所に掛かっていた場合は、寄せることすら出来なかった、つまりバラシ易かったとも言えるのです。
 これは長年明るい時間帯に釣りをしていないと実感しづらいと思います。
 
 理由を挙げれば、活性やルアーの長さ、フックの数、本人の引き癖等がありますが、他にスズキ特有の性質としてエラバライという行動と、口周りの構造にも原因がありそうです。
 スズキの上側口唇部には、肉質はあまり無く、硬骨、軟骨や薄い膜といった、針先が通りにくい箇所や、刺さりやすいが身切れで抜けやすい箇所があるとか、部位によって極端な差があります。
 一方で下口唇部は、ご存じのように厚めな肉質の部分がけっこうありますし、比較的均質ですから、ここに針先が掛かれば身切れも少なく外れ難いのでしょう。 もしも動物の口周りのように、ほぼ均質ならば、魚のような位置の違いでの差は少ないはずです。
 
 
 スズキは吸い込み型であっても、反転食いをするせいか、口の外側に掛かることが多いですが、青物系などは、口自体の径はスズキより小さいのに、後ろからルアー後部を飲んでいることが頻繁にあります。
 スズキも口の中にフッキングできれば申し分ないと思いがちですが、ズッポ抜けなんてこともよくあるから、油断はできませんね。
 
 ちなみに昔のように針先の甘いフックをそのまま使ったときと、現在のルアーに使われている鋭いフックになってからの違いは一考の余地ありです。
 針先が鋭くなると、甘い針先では滑っていたはずのところでも刺さりますから、当然それが薄皮一枚ということもありえます。大半はバレルので気になりますが、それは昔に比べチャンスが増えただけということなので、問題は無いと思います。
 やはり、針先は吸い付くごとく鋭いに越したことはありません。たまのバラシは向上心を刺激してくれるし、ドキドキの素でもあります。おおいに楽しみましょう
 
 
 最後に、右上のサイト内検索で「フッキング」と入れてみて下さい。関連した過去記事が一覧となります。
 元々このブログは、ご覧の通り、日記というより、そうした使い方を前提に組み立ててきました。そのための用語選びもしてきたつもりです。興味のある語句を入れて、気の向いたときにでも活用してみて下さい。
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写真上は、熊本のKさん、会心の一匹。ドラマあり。
下は、私のです。両方K2F142。 

博多より帰宅

 博多フィッシングワールドさんの催しも無事に終えて、帰ってきました。
 場所は博多でしたが、九州全県からご来場頂き、恐縮しました。こちらからすると、九月じゃないかと思える気温も、人も、暖かでした。
 時期的に忘年会シーズン真っ只中なので、お会いできなかった方も多かったのですが、またの機会を楽しみにしています。
 
 前回から、たった一年少々の間とはいえ、皆さんには様々なストーリーがあったのだと知りました。大学に合格して、それも海や環境に関係する学部を選んだことを報告してくれた方。遠路はるばる会いに来てくれたご家族。TKLMマスターになると言ってくれたお二人。自己記録を更新された方。そっと、ナイショポイントを教えてくれた方。…。…。そして、応援してくれる、いつもの仲間達。イベントの関係者の皆さん。ありがとうございました。
 またお会いしましょう。 

博多へ

 明日はタックルハウス、プロモーショントレイルということで、福岡県の「フィッシングワールド博多駅前店」さんに行ってきます。二度目になります。また皆さんとお会いできることを楽しみにしています。
 12月11日(金)…16:00~19:00
                
     12日(土)…13:00~18:00
 の間、お店にいます。(特に階下、灰皿前)気楽に声を掛けて下さいネ。

リスベットサランデル

 この一週間は、早い忘年会があった他は、ほぼ規則正しい毎日でした。
 晴れていれば122プロトを投げに海へ。主に変更箇所の確認といった地味な作業です。そして空がぐずついていれば、読書。いわゆる晴耕雨読というやつです。
 一見気ままなようですが、設計途中のルアーというのは次から次へとナヤミを発生させるものですから、バランス良く別の事をして頭をカラッポにすることも必要になります。
 
 そこで今回選んだ、別の事というのが、評判を知って買ってはあったものの、全六冊、しかも聞き慣れない固有名詞と登場人物の多さに怯んでしまい、しばらく放っておいた、スウェーデン発ミステリ、スティーグラーソン著、「ミレニアム」全編を読むことでした。
 
 一週間前に手を着けたときは、数十ページ読んでは閉じたりして、遅々として進まなかったのですが、リスベットサランデルという特異なキャラクターが登場するあたりから、物語も読むスピードも徐々に加速して行きました。進むほどに期待以上の展開が待っていて、飽きさせません。
 
 昨夜、最後の六冊目後半を残しておいたのは、そのまま深夜に終えることが惜しいような気持ちになったからです。出来れば今日のテスト釣行に持参して、残りを海で静かに読みたいと思いました。
 昼間中に122の課題をひとつ突破したので、そのまま海岸で、気兼ね無くゆっくりとページをめくることが出来ました。夕刻、読了。間違いなくメーター級です。
 いつのまにか目の前に、いつも朝陽が昇るところに、淡い満月がひとつ、遠慮がちに浮いていました。 

あの線について

右写真や現物をご覧頂くと判りますが、K2F142には、仕上げ後も頭部近辺に縦ラインが残っています。(特にT2) 見栄えしない線なので、これが気になる方もおられると思います。そこで、言い訳になりますが、説明させて下さい。

細かい格子状の線の中に、頭部に一カ所、強めの線があり、それは金型を分断した痕跡なのです。
始めから二種のリップを設定し、頭部諸共交換する方式を採用した結果とも言えます。

リップだけ替える方法は色々あり、昔からポピュラーなのは、予めボディ側に取り付け穴を開けておくことでした。
そのほうが圧倒的に簡単で安くリップ交換が出来ます。部品としてのリップ片を接着剤で固定するだけで、幾つものバリエーションを持つルアーになります。

しかし、よく検討してみると、その方法だと組み立て後にK2Fが要求する絶対的な精度を確保出来そうにありませんでした。
そこで頭部ごと大きな塊として交換する方法にしたわけです。

しかし、いったん金型を分離するので、若干その跡が残ってしまいました。
ここで普通のルアーなら、仕上げの紙ヤスリ一発で跡ぐらい消せるのですが、K2FはPSTボディという表面の細工を施してあるため、削れず、誤魔化しがききません。利点を失うより、そのままのほうが良いと判断しました。
どうかご理解下さい。

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最近の私は、大きめのルアーが効果的な季節ゆえ、開発中の122は当然としても、再びT1、T2、それぞれのK2F142を交互に投げ続けています。
知り抜いて作ったつもりのルアーでしたが、使用時間が伸びてゆくと、何と未だに新しい発見や疑問、それと確信があったりして驚きます。それがやたらと楽しいのです。
そういうときは釣果も自然に付いてくるものです。 

ヒラメの釣り方

 1996年、週間釣りニュースさんの発行した媒体(業界向け)に掲載されたものです。
 ルアーによるヒラメ釣りも定着した昨今、あえて古い記事を載せてみます。
 途中、〔20分云々~〕とか、決め付けに近い、今なら避ける表現もあります。それは、書いた内容にいたるまで、毎日のようにサーフを2キロ、6キロ、時には24キロも釣り歩いてきた自信がそうさせたのでしょう。今の私にはとても真似できません。
 現在の雑誌のヒラメ関連の記事と比較して、それぞれの良い所を参考にして下さい。では。
 
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   ヒラメの釣り方
 
 晴天の下、のんびりとナギの海にルアーを投げるのは気持ちの良いものだ。スズキには不適の静かな海のほうがヒラメは釣りやすい。
 天候に合わせて、ヒラメ、スズキどちらを選べばせっかくの休日を有意義に過ごせるか考えて出掛けよう。
 
 ヒラメ釣りには、他の魚種相手の釣りとは違う点があって、それがそのまま釣果を左右するコツを示している。
 まず、当たり前だが、よほど活性が高くならない限り、砂地に張り付いている。 ただし、常に動いてはいないが、イメージ以上に移動もする。沖合とは異なり、岸辺では(私の経験では)ほぼ20分以内に居場所を移動する。
 以前、3シーズンにわたって、(稚魚放流に向けての実地調査を兼ねて)月二十日以上のペースでヒラメ中心に狙ったことがある。同行者数人と同じポイントを何度もしつこく時間を空けてルアーを通してみると、初投者にヒットするとは限らなかった。
 数百の事例から、目的を持って接岸してきた一匹はだいたい二十分を限度に移動するが、それはつまり、固定された良いポイントは、粘って釣る方法もあるということだ。
 
 次に、その生態から視覚に頼って捕食していることは確実だが、他の魚とは違って、たいていの場合、ベイトフィッシュが頭上を通り掛かるまで砂に潜って待機していると思ってよい。
 ちなみにこの時、たとえ足下に50センチのヒラメがいようと我々には決して見えない。ルアーが通ると、まるで砂そのものがルアーを喰うような錯覚を起こすほどだ。
 特に遠浅の海岸では、不注意にウエーディングするとヒラメを追っ払ってしまいかねない。
 以上を念頭に、‘効率’中心にヒラメ釣りのコツを伝授しよう。
 
◇浜は千変万化
 ヒラメのポイントとしては各地の外洋や、それに近い砂浜、また根の点在する浜や、一見磯場でも海底で外部と通じている砂場があったり、地域によって様々だが、いずれもその茫漠とした海を前に、いったい何処に投げたらいいのか迷ってしまうだろう。
 浜は千変万化で、決まりきったポイントは根回りぐらいである。
 基本はあらゆる変化を捜すこと。浅くても周りより深くなっているところなら良い。ヒラメは、自分の体が出来るだけ斜めに立つようなところを好む。いわゆるヨブ周り、カケアガリなど。
 岩が海面上に顔を出しているところは、岩直下が深く掘れるので、岩周り全体を。岩上を海水が越えるようだと手前に砂が貯まるから、その両端を。干満でポイントが変わるということでもある。それと隠れ根周り。海岸の砂の粒の大きさや構成の違い。波の立ち方の違い。潮流のアタリ、払い出し。濁りと澄みの境。
 もちろん、ベイトフィッシュがいれば、その周りを中心に、釣り場が広ければ広いほど、その中で変化しているところを捜すのである。
 そして一匹釣れたら集中して投げ、その間に次回のため状況を記憶しよう。
 
◇ヒラメの視界
 問題は、これらのポイントを、どうやって釣り歩けば釣り漏らしなく、効率よく釣れるかである。
 一般の釣り人を見ていると、一ポイントを探るのに、浅い釣り場ほど、一投して、歩いてまた一投する間が広くなりがちだが、実はこれは全く逆で、水深の無い釣り場ほど、もっと間を詰めなくてはならない。図を見れば判るように、ヒラメの視界(ルアーを捕らえる行動範囲)を考察しないで、運任せでヒラメの活性に頼っていると効率の良い釣りは出来ない。
 実際は、これに潮の透明度を重ねると完璧だ。一瞬の遭遇になるヒラメには澄み潮有利だ。
 つまり、ヒラメの視界の端を想定して歩きながらルアーを投げ続ければ、無駄なく広範囲を探れると言うわけだ。
 
◇ルアーチョイス
 使用するルアーも、これをイメージすれば、何をチョイスすればよいか判ってくる。
 スズキほど目が良くないから、明るい時間帯でも、ミノー、バイブ、ジグ、ワーム系と様々なルアーを選べるだろう。(私はプラグオンリー派だが)
 水深が深ければ、ヒラメの視界の届く範囲をトレースできるルアーを選べば良いし、何も底に触れるルアーが常に良いとは限らない。
 泳ぎやボリュームにアッピール力のあるルアーなら、一投一投の間がその分拡げられるし、喰い優先の細身で小さなルアーなら、もっと小刻みに探るのが正解になる。
 また、リトリーブスピードが速ければ間を詰め、スローなら拡げるといった具合だ。
 全てはルアーが、ヒラメの視界にどう捉えられればよいのかを想像することに集約される。
 
 写真は友人MK氏。接岸を常とする典型的な魚体。

大アブレ…自選エッセイ集【35】―S

1996年6月に(株)週間釣りニュースさんの発行した媒体に掲載されたものです。

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◇大アブレ
海のルアーフィッシングを続けている限り、餌釣り以上にアブレは付き物。懲りもせず、日々その数を積み重ねている。

ルアー釣りを知らない人は、膨大なエネルギーの浪費と言うが、本当の浪費は私のタバコのようなものについて言えることだ。この20年で既にベンツ一台ぐらいの金額を空気中に吐いている。

幾つものアブレの中でも記憶に残る大アブレは、なまじ少々釣れるより、遙かに人生に彩りを与えてくれるものだ。
宮古島では、三日間荒天で、大酒を喰らい、ボーリングだけして帰ったことがある。ボールの指穴が異常に大きく開いていて、ガタガタ転がっていくのが可笑しかった。
また、大マグロを夢見て四日もかけて行ったメキシコの遙か沖から、これも荒天で、ロッドを持つこと無く引き上げたこともある。
関東近海では、シイラはいつ来るのかと、バカな興味で早過ぎる季節に二日も海上を彷徨った。
そしてヒラスズキでは、ニューポイントを捜そうとして四ヶ月もアブレたことがある。

最近では、ゴールデンウィーク直前に四国一周を試みて、四日間で三千キロ走って一匹も釣れなかった。
四国の名誉のためにアブレの内容を話すと、まずルアーのフィールドテストと、テスターである友人達に会うことが第一の目的であったことに加えて、四日間、春うららかな日並みが続き、サラシひとつ無い海を前にして為す術が無かったのだ。
数年前、同所をやはり二週間掛けて釣行したときは、各サラシに居付きのヒラスズキがいて、一回もアブレが無かった。昼間、ヒラスズキと会うには天候次第だということを今更だが痛感した。
というわけで、ひたすら四日間ポイントを見て回ることに徹してきた。魚は岸に居なかったが、四国の海の豊かさが身体に染みいるようだった。

記憶に残る大アブレには共通した点があって、いずれも距離とか、疲労とか、あらゆる分量がヘビーである。そうしたアブレは案外強烈な充実感があり、それ自体で目的に足るものがあった。
現に、四国から単調な高速道路をノンストップで帰るとき、眠くなるどころか、無性にハイな気分になって、東京を越えてこのまま何処までも行けるような気がしていたぐらいである。

アブレも大アブレなら大いに結構だ。
終。
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この原稿をテキスト化している今早朝、近所の若手から、この数日、三十分で三十バイト以上あるポイントを見付けたという誘惑のメールが!やっぱりそっちもイイな。

海岸線の話

また以前書いた記事を、自分への反省を込めて載せておきます。(どこに寄稿したのか失念してしまったので出版社さんゴメンナサイ)
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海岸線の話

諸外国と海岸線の長さを比べれば、日本の総延長距離は、意外にもトップクラスだという。しかも、地理や気候的に恵まれて、人跡未踏の海岸線はない。人間が利用可能な、つまり、我々海の釣り人が入れる場所の長さは、実質、世界一かもしれない。
ただし、周知の通り、この数十年で、埋め立てや護岸工事によって、自然のままの海岸線は激減した。
都市の近辺は、コンクリートで埋め尽くされている。何かしらの所有権の付いた海岸線もその長さに含まれているのである。訳も分からないうちに、子供の頃の記憶の中にある海は一変していた。

さすがに最近では、環境保護の世論に押されて、一部の利権の横暴は許されなくなってきた。
例えば、命豊かな東京湾の三番瀬という干潟、浅場の埋め立て計画も大幅に縮小されるという。干潟というのは、生物はもちろん漁師にとっても、釣り人にとっても、聖域のような所だから、こういったことは歓迎できる。しかし、埋め立て計画は縮小であって、中止ではない。ジワリジワリ自然の海岸線は失われていくのは変わりない。(注、その後、幾つもの自然保護団体や、その活動に賛同した粘り強い人々の声が行政を動かし、埋め立て計画は中止となった。)
問題はこの一連の、計画の立案から、その縮小まで、ほとんどの釣り人にとっては、決定後に知らされるか、納得するしかないということのほうだ。出来上がってから反対することの困難さは、過去幾つもの例がある。

海そのものは日本国民どころか、人類全体のものという理念はあるだろうが、実際のところは、主に各国の企業体や漁師、そして我々レジャー派の三者が利用している。それも交差してだ。
例えば、湾内のシーバスポイントは正式には企業の敷地内ということで、立入禁止である場所が多数ある。
今は遠慮しつつ入っているのが現状だろう。釣り人の事故やマナー違反が続けば、より強力に排斥されてしまう。
また、職漁師は生活の場である海を釣り人に荒らされない限り、黙認してくれているといったところだ。
以前、ヒラメの放流に関わったときに一部の漁師達の本音に触れて、戸惑ったことがある。要は自分たちの海に勝手なことをするな、ということだった。
いかに大多数にとって良いと思われることでも、全く別の立場のものもいる。放流するということに、ヒラメ漁師は喜んでくれたが、ボラ漁師はヒラメを釣りにくる者が増えれば、車のライトで海を照らすことも多くなり、ボラが網に入らなくなるから放流すらダメだという。  ずっと連なる均一の海岸でも、所有権の存在もあるし、各漁協の管轄が区分けされているので、交渉は一カ所ではすまない。この時は、よく話し合い、挨拶にまわり、ようやく理解を得たが、権利が云々というよりも、人として向かい合うほうが解決が早かった。……
このように、我々の釣りは法的に、より優位な者の厚意か黙認というかたちの上に成り立っている場合が多いのだ。せっかくの厚意と黙認を今は大事にするしかないのだろう。
当面は、法の整備を待っても三者に都合のよい法令はなかなかできそうにない。
だから、せめて、それぞれの地元の海岸線の権利などがどうなっているのか、調べてみてほしい。何気なく入っていたポイントの問題を知っておくべきだと思う。そして、仲間にもそれを伝え、我々が海でどうすればよいか考え、三者が共存するためのマナーを身につけておく必要がある。
自然はみんなのものだからと、ノーテンキに構えていると、いつのまにかコンクリートの壁ができたり、正式な立ち入り禁止場所になっていたりする。

私の地元の九十九里浜では、昨年(注、平成十年四月)から、車両乗り入れが規制された。ハマヒルガオやコアジサシなど動植物を守るためだという。自由が失われるのは残念だが、こうマナーの悪い車が増えては仕方がないことだ。賢明な措置だろう。
そして、駐車場として、乗り入れ可能な区域も四十七カ所指定された。

私個人は、十年前から車で海岸に入ることはしなくなった。それまでは、海岸線最強の車、四駆で、軽く、タイヤの大きいジムニーに乗っていたのだ。
それが、海岸線のことを調べるにつれて、首都圏には正式に大手を振って車で入れる海岸など、ほとんどないことを知り、その車を処分した。
その後は、スポーツカーに切り替え、釣りの便利だけを追うことより、釣行全体を楽しむことにした。今はS2000。駐車場がないと、どうにもならない車に乗っている。
これ以上、自由な釣り場を失いたくないものだ。各地の釣り場がいつまでも保全されることを願う。終。

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これを書いてから今日までに、私自身が案件について何か出来たのかと考えると心許なく、多忙にかまけてささやかな事しか出来ませんでした。
その後、大阪湾の釣り禁止問題が起きたり、東京湾の海苔棚等でのボート禁止区域が拡がったり、堤防等の立ち入り禁止場所が増えたりしましたが、ほとんど傍観者になっていました。

今の私に出来ることは、このまま海のルアーフィッシングが存続するために、どのようなルアーを作っておけば良いのか、またどのような釣りならば事が起きたときに許されるのか、考え続けること。
正直に言うと迷うことは多いです。

昨日は十数年前Sパーティでお会いした船長と仲間で東京湾某所に行ってきました。海苔棚もあるけど、まだ禁止区域になっていない所です。
干潟もそうですが、古くからある海苔棚は、餌場として適度な水深と産卵場所に近いこと、巻き網漁が不可能等、好条件に恵まれた東京湾スズキの豊かさの核となる場所です。
例年この時期は最も簡単にランカーを釣ることが出来るので、ボートが集結するのは当然です。ただし、相当の自制心を持たないと、ここもそう遠からず禁止海域に入るかもしれません。(掲載の数年後に釣り禁止になりました)

私たちは、海苔棚ロープには間違っても引っ掛けないように沈む系のルアーは使わず、K2FとBKF175で通してみました。魚探でベイトを探ることで、海苔棚に近づかなくても、オープンなところでもヒットします。Sさんの175にはワラサも。
何度も50~60サイズがボート際で引き返すのを見ましたが、ルアーを換えずに続行していると、たまに掛かるのは全て80オーバーなので皆満足していました。ランカーが全員に行き渡ったところで帰港。

相変わらず素晴らしい場所ですが、ここで良い思いをした方々や業者は、これまでの過程と現状を心に留めておいて欲しいのです。次に行動すべき事は何なのかを考え、伝えるために。

QアンドA…底物の扱い。参考。

 静岡のSさんからの質問です。
 
 …略…沖釣りはスローピッチなる釣り(根魚釣り)が流行ってきております。
確かに釣れるので楽しいですが、回遊魚と違って定着性のある根魚が簡単に釣れてしまいます。
放流してる魚なら未来があると思いますが、引き算で少なくなる魚を釣れる・美味しいからと言って、制限も無く捕獲してしまうと結局は自分達が楽しめなくなるはずなんですが、…略…
(◇◇で根魚の釣りが流行ってるんですが、釣り続けると魚がいなくなってしまい釣り人が釣り人の首を絞めかねないと危惧してるので、何とかルール作りみたいなモノが出来ないかと思案してます。
それには、釣れる魚の生態を知らないと話しにならないと思って調査してるのですが、何分分らなくて困ってるのが実情です)
◆マハタ・ホウキハタ・ウッカリカサゴ・アヤメカサゴ・クエの生態が詳しく判る資料・HP等はありますか?
体長と年齢が判るもの等定着性のある魚の行動範囲ってどれ位なものでしょうか? 成長表は?…略…
◆また、リリース・魚のエアー抜きに関する詳しい文献等参考資料等はありますか?
カサゴやハタ等を釣り揚げてくると口の中から胃袋が出てたり目が飛び出ていたりしますが、そういう魚でもリリースして生存可能なのでしょうか?(胃袋が出てても大丈夫と言う人もいるようで、何が本当なのか不明です)
文献や詳しく調査している研究機関・大学等があったら教えて頂けると嬉しいです。…略……
 
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 ではお答えします。長文になりそうです。
 始めに、質問を頂いた当初、例えばエアー抜きの方法などは一言、こうしてああすれば良い、また、ハタ類の成長具合は文献を調べたことを羅列するつもりでした。
 しかし、ここはラボ。引用だけで済ませるわけにはいかないでしょう。それに私は今回の魚種や現状について、Sさんが期待するほどの知識は持っていません。一緒に調べ、考えてみるという立場を取らせて頂きます。
 
 Sさんもオフショアー経験が長いですから、特に底物といわれる魚種の行く末を心配するのはよくわかります。
 以前のルアーフィッシングは上物が中心で、根掛かりや底物回避のため、いかに素早く着底したジグを上げるかを競うかのようでした。たまに掛かってしまう底物は、その海域の豊かさの象徴でした。 それが最近では漁と見紛う方法で、底物専門に狙うことも増えてきたとの事。予想できた流れとはいえ、回遊魚よりは生息場所が狭いので、長く釣りをしていれば個体数の減少を実感し易いでしょう。 反面、その実感こそが保護への気持ちを芽生えさせるのですから、嘆いてばかりではいられません。
 
 そこで様々な工夫を施すことになります。底物をリリースしたいと思っても、避けられない問題は、深場から上げてくる時の水圧の急変です。出来るだけユックリ上げてくれば良いといっても限度があります。
 浮き袋のエアー抜きは、専門具が市販され、説明書も付いていますが、けっこう難しいです。ネットで「魚のエアー抜き」で検索してみると、一般の釣りに加え、バストーナメントや活魚で必要な技術として紹介されています。
 ネットを巡回してみると、やはり活魚専門漁師の技術が高いようです。シメ魚に比べて2倍の高値になり、日常で処理して結果を見ているわけですから。
 直接教えを請うのなら、そうした漁師の何人かに会うとよいでしょう。
 私も別の問題を確認しようとしたときに、漁師にはお世話になりました。
 そして、出来るだけたくさんの人から聞くことで、総合的に判断するのです。
 
 ただ、リリースに通ずる、活魚の扱いや輸送関係のようなことは、しっかりした業者ほど口渋るか適当にあしらわれるかもしれません。業者にとっては他と差別化でき、お金の絡むノウハウなので、一見ぐらいでは教えてくれない場合がありました。彼等にとっての常識ですら、ネット上では散見できるだけなのです。
 質問にある、マハタ、ホウキハタ、ウッカリカサゴ、アヤメカサゴ、クエについては調べてみましたが、いずれもネット上で「マハタの生態」というぐあいに各魚別々に検索を掛けた記事を上回るようなものは見つかりませんでした。
 各研究期間が公開している資料は、養殖や資源としての視点からのものが多く、需要が少ない魚種の自然条件下での生態を知りたいという方には物足りないかもしれません。 
 立場的にSさんの質問に答えられそうな分野だと「水族館の飼育係」それも採集まで行う方々になると思います。彼等は採取してから生かすことに全力をあげるので参考になります。(記事例、美ら海日記 http://www.gakusosha.com/colum_main.php?colno=22&PHPSESSID=3b7f76d91d4bf6872e79f48eff02d7d9
 また、魚関連のリンクが一ページ内に収まっているページ http://www.mpstpc.pref.mie.jp/SUI/link.htm
をあげておきますので巡回してみて下さい。
 それと、Sさんの静岡県には、水産学部のある大学や教育センターがあります。(東海大学社会教育センター内、記事例  http://www.muse-tokai.jp/publish/umihaku/2004/v34n6p2.html
 ネット以上の知識を得るには、こうしたところで調べたり、聞いたりすることも役に立ちそうです。
 
 ただし、研究者なら全て答えてくれるはず、と過度な期待をするのは無理があります。専門分野以外は詳しくないのが普通です。むしろ思い出して欲しいのですが、漁師や我々釣り人のほうが、自然条件下の魚に直に接している時間が長いとも言えるのです。この場合、釣れない事も知識のひとつと言えるからです。
 産卵場所や生態について等、文献から知識を得るしかないものもありますが、海の中のこと、しかも深海、いずれも証明が困難な上、中には釣り人の目からすると?マークの付く資料もあります。
 だから、研究者や文献、またネットから得られるものと、釣り人が実践的に得たものとから類推することが肝心なのだと思います。
 
 そして、質問に成長表があれば、とありましたが、これは「魚類成長表」をキーワードに検索することで調べられます。 しかしこれも養殖関係の資料は正確ですが、自然では生息海域によって違いがあります。全般に暖かい海域のほうが成長が早いのは知られています。
 需要の少ない底物については、最大サイズに至る成長曲線は、どの魚も似ているので、おおよその事は判るはずです。
 
 Sさん、今回は具体的な数値を明示出来ないで、すみません。
 調べれば調べるほど、今の段階で、何年で何センチ、移動範囲は何キロとか、見てきたように書くのは出来ないと思いました。今後も信頼できる資料を捜していきますので、よろしくお願いします。