122β、フックとリングの換装について

 K2F122βのフックとリングの換装について記しますので参考にして下さい。
 
 122の純正フックはST46#2となっています。対ランカーを考慮して、設計当初から目標としていたサイズ(重量)でした。また、そのフックを背負ってもフローティングになることが条件だったので、必然的にボディ体積、使える重心移動ウエイト、各パーツ類の総重量がそれ以外あり得ないという数値になっています。
 
 フックの強度を決めると、それに相応しいリング、ワイヤー、ボディ強度が要求されるので累積して否応なく重量が増えていきます。そのため水に浮き、ボディ形状を太くしないままで目標を実現しようとすると、肝心の飛ばすために必要な搭載できる移動ウエイトが少なくなってしまう、というような事が起きます。
 さらに他ルアーより厳しく設定した重心移動システムの破損防止に関する安全係数が、残り少ない浮力を削ぎ落とそうとします。  
 私はこうした多くの矛盾に取り囲まれた難問は、ヘプタモンド‐パズルみたいなので好きなんです。
 そして難問の解決方法はあのパズルと同じ。譲れないそれぞれの条件が拮抗して、霞の掛かった全体像を、いささか強引に焦点を合わせて行くような感じで一挙に形態として固めることでした。その際、空力に優れたK2F特有の形状のおかげで、望む飛距離の確保を移動ウエイトの重量だけに頼らずに済んだので助かりました。
 
 こうして122は、この形とサイズ、この重量と性能で2番フックを背負ってなお浮くことが出来ますが、結果、使用にあたって、海水と淡水の比重の違いに留意して頂くことが必要になりました。
 
 純正#2フック装着時のK2F122は外洋の濃塩水で、フローティングらしい使い方が出来る設定になっています。淡水、汽水だと、かろうじて浮くぐらいなので、流れや引き方でサスペンド風になり、根掛かりの恐れがあります。モニターモデルに#3フックを同梱したのはこういう心配もあったからです。
 もちろん、河川でも水深に余裕があったり、攻略上、#2のままのほうが良い場合もあるので、適宜ご判断下さい。
 一方、外洋でも、もっとポコポコ浮いて欲しい場合や浅場での使用、超スローでのアクション向上、小型魚の針掛かりを狙って#3を使う場合もあるでしょう。
 ちなみに、K2Fに限りませんが、フルスイングが多いルアーは、フックが重いほど着水時に針先でボディを傷付け易くなります。
 
 以下、換装して動作確認したフックを挙げておきます。付けるフックの方向は純正と同じにして下さい。(重量は平均値)
 
 オーナー社製
◆ST46#2(1,2グラム)【純正】
 
◆STBL41TN#2(1,22グラム)バーブレス。
 
◆ST46#3(0,95グラム)【半純正】
 
◆ST46BL#3(0,95グラム)バーブレス。
 
 がまかつ社製
◆トレブルRBMH#2(1,28グラム)針先と取り付け部の間が広く、122だとルアーの背に掛かりやすいかも。バーブレス有り。
◆トレブルSPMH#2(1,20グラム)新作。上のRBより122に相性が良い。
 
◆トレブルRBMH#3(1,0グラム)バーブレス有り。
 
◆トレブル13#2(1,03グラム)#3は無い。
 
 以上は122の場合、組み合わせリング#4(一個0,18グラム)がお勧めです。
 
 
 次に青物等、更に大型魚を狙うという方のために強化型の組み合わせを挙げておきます。ただし、この方法をとると、貫通ワイヤーなので、大抵の魚は捕れますが、ルアー本体にダメージが残る場合があります。LC貫通ワイヤーは二度以上の曲げ直しは厳禁と思って下さい。自己責任でお願いします。
 
◆ST56#2(1,33グラム)兄貴142の純正フックをそのまま。
 
◆トレブルRBH#3(1,37グラム)
サイズ的に相性が良い。ほとんどサスペンドになります。
 
 リングは#5(0,29グラム)122の尾部アイに入る最大サイズです。
 
 注意としてリングを無理に開け過ぎ、伸びてバネに隙間が空いていると、アイに入っても可動域を確保できず、ルアーの動きを阻害します。
 また、このリング使用時に強大な力で捻られると122のアイ側が保たない場合があります。このサイズのフローティングルアーの中では、圧倒的に強い122ですが、その一匹を釣り上げた後、アイが変形していたら、思い出と共に引退させてあげて下さい。
 
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 【K2F122βアンケートフォーム】
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 熊本のYさんから、さっそく写真送って頂きました。(2枚共)ありがとうございます。

K2F122―β

 K2F122―βが皆さんのお手元に届く日も近くなりました。予定では幾分前後するかもしれませんが、来週初めぐらいには出荷できそうです。
 取扱店リストは月曜日のお昼に掲示します。

 …訂正……今日(17日午後)ほとんど全て、出荷できることになりました。配送状況で前後があると思われますが、18日か19日には取扱店様にお届けできる見込みです。
 すぐ下にリストのリンクを張りました。よろしくお願いします。
【K2F122β取扱店リスト】 
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 前記事の写真を目にされた方から、あの背中にあるデザイン線のことを聞かれましたので、説明します。
 
 私は昔からルアーをスイミングテストするときに、手書きで中心線を入れていました。こうすると泳ぎの質が解りやすいからです。
 また、今回122のA、Bタイプの違いは微小ですが、あのラインがあると浮き姿勢の差が上からでも良く見えるのです。(横からなら簡単に判りますが、水槽が無いのが普通。)
 
 泳ぎのほうも、当たり前ですが普段はルアーを引いている本人に向かって来る姿しか見えないはずです。両タイプは本質的な部分は同じですから、このアングルからの判別は難しいでしょう。
 制御型Rユニット(増幅型も有り)の質量を上げていくと、スピードアップするほどジャイロ効果が発生して、動きを抑えようとします。しかし、K2Fはメインウエイト二個目の球のブレとの相性で決めた質量なので、とても微妙です。
 
 強いて言えばリズムです。Rユニット無しならば、規則正しい周期でウォブンロールするだけです。タタタタタタ…という感じです。それが例えばタングステンボールのような高比重のものを使うと、タタ…タタタ……タタ…という感じでリズムに乱れが生じてきます。(最終的には大きなリップを付けても泳がなくすることも、反対に暴れさせることもできます)
 122は、タ・タ・タ‐タ・タ…と一見普通ですが、タとタの間、一振り毎に微かに変調する感じです。
 私はこれを喫水の低いボートを走らせ、顔を能う限り水面に近づけて、目前30センチ先の泳ぐ122を観察してチューニングしました。(写真上、これはクリアータイプ)
 
 それと、K2Fを適当に手に持って振ると、カタカタと大きな音が出ますが、これを(写真下)実際の水中にあるように重心位置で摘み、そこを中心としてウォブリングのように揺らしてみて下さい。
 そうすると、音は抑えられ、主にフックとリングが触れる音と、Rユニット作動音、メインのタングステン球2個目のブレ音しか聞こえなくなります。
 
 142のときからRユニットの材質の違いが、そのまま音質の違いになることから色々試してきました。また、音の発生そのものをスレるから嫌う方がいるのも承知しています。
 しかし、大半のルアーが発する音は、ラトル打音とリングフックの金属どうしの打音です。こうした形でルアー内部から発する回転音(正確にはこうゆう呼び名はない。)というのは、たぶん魚は聞いたことがないと思います。
 それがプラスに働くのか?と聞かれれば、私の実感として無いものより良かったから、とだけ答えられます。
 私にも本当はどんな音質が、より良いのか掴み切れていないのです。今回の122モニタリングは、その辺もちょっと楽しみなんです。大袈裟な宣伝を躊躇わないメーカーならば、集魚器効果があるとか、魚の好む音を解析したとか書くのかもしれませんが、私はそういうのはニガテです。
 
 アンケートでは、何となくでも良いので、好みのタイプを教えて頂ければ幸いです。
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下の写真、バックの壁紙はヒマラヤのK2。憧れ。 

K2F122β発売予定

 製作中のK2F122‐β、モニターモデルは、今月下旬までには取扱店様に発送できる予定です。(当日別ページにリスト)
 発送開始日にここでまたお知らせします。
 
 決定仕様は、
 
◆K2F122β タイプA/B(2本一組、Rユニットの材質ウエイト違い) 目に見える動きの差は極小ですが、回転音はかなり違います。
 
◆フローティング
 
◆カラー、シルバーホワイトベース(サラシホワイトに近い)背にテストラインの一色のみ
 
◆質量、20グラム。(0、2グラム単位の違いあり)
 
◆フック、ST46♯2(標準)ST46♯3(同梱、汽水、淡水等用)
 
◆特別価格、2本一組セット、2800円
 
 となりました。
 
 カラーは視認性重視であることと、色の差による影響を避けるため一色のみになりました。
 こうしたカラーに馴染みのない方もご安心下さい。昼間でも充分に実績を詰んでいます。
 なお前回142モニター販売の際、ご協力頂いた皆様には感謝を込めてメールを送信させて頂きました。ご確認よろしくお願いします。
 

質問…F、SP、Sについて

 浜松のTさんからの質問です。
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 …略…ルアーのフローティング、シンキング、またサスペンドの使い分けというか、ルアー自体の役割といいますか、ルアーの設計者としての考えを教えて下さい。
 私はルアーの泳層をしっかり引けているとは思いませんが、自分なりにイメージして釣りをしているつもりです。そのなかで、フローティング(K2F、BKF)で充分と思えるのです。
 単純にシンキングは深いレンジでサスペンドは中層?そういう説明のルアーパッケージも見たことがありますが、今ひとつピンときません。
 内湾やサーフでのルアーフィッシングにおいてのルアーの参考にさせて頂けたらと思います。よろしくお願いします。
 
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 Tさん、お待たせしました。
 察するところ、Tさんのフィールドは、要求されるルアーの泳層がフローティングで賄える範囲にあるのだと思われます。 そこで、質問文にある「ピンとこない」というところから解説してみます。
 
 フローティングは放っておくと浮いているルアーだから解りやすいですね。
 問題はサスペンドと、シンキングに分類されているルアーの明確な用途が解りづらいと言うことでしょう。
 サスペンドは淡、海水と比重がほぼ同じで、放っておくと水中に漂うはずです。つまり一定の泳層で演出を加えることができます。
 ただし注意しておきたいのは、これをリトリーブした時、サスペンド表示でも挙動が違うものがある、ということです。
 元々リップや頭部形状がシャロー用でセッティングされているものは、引いても潜らないので泳層は浅めになります。対して、元々が大きめのリップ等の作用で潜り易いものは、引くとそのルアーの持つ潜行能力に見合った泳層まで一気に達することになります。
 だから、サスペンドは中層用というより、自分がルアーを、ある一定泳層に長く留めておきたい場合に使うものです。それにも浅場用と、幾分深場用がある、ということです。
 
 次にシンキングについてです。
 放っておくと沈んでゆくという点では明確な分類になるのですが、これも大きくは沈下スピードの速いものと、遅いものとで分けて考えた方が間違わないと思います。
 シンキングのイメージ通りに作ってあるルアーは重めで、ラインを張っていても沈下スピードが速く、カウントダウンで目的の泳層へルアーを送ることができます。
 ただし、鉛の塊であるジグであっても、投げてから着水後すぐにリトリーブすれば、表層を引けるわけですから、当然シンキングプラグでも、リップ等の設定がシャロー向きならば、同じ方法で表層を引けます。
 もう一方の沈下スピードが遅いほうのシンキングですが、実釣ですとこれで深場を効率良く攻めることは難しいです。 ラインが張っていると抵抗のある太いリーダーを引き連れては、なかなか沈んでくれません。一定泳層に達するスピードでは、潜行能力のあるフローティングにも負けるかもしれません。
 だから、このタイプのほとんどは深場用というよりは、重さで飛距離を伸ばそうとしたり、横風対策であったり、またサスペンドの代用にしたりするものです。 この中で特に細身の3フックミノーには、飛ばすために少しの錘を追加しただけで沈んでしまうので、シンキングにならざるを得なかったものがあります。
 
 そして、これらの使い分けとなると、まず各ルアーの性質を知り、特にラインを張ったり、緩めたりしたときの挙動を把握し、その上で現場の状況と、自分のしたい釣りにマッチングさせれば良いのです。
 これらを意識することでTさんがこれまで、バス、渓流のフライなどで培った感覚や魚との間合いの詰め方が、そのまま生かされると思います。 

質問…バスルアー

 東京のSさんからの質問です。
……略…バス歴は長いのですがシーバスは初心者です。友人に「タックルハウスは以前ブラックバス用のルアーも売っていた」と聞いたのですが本当ですか?……略…もう作らないのですか?…略…二宮さんはバスフィッシングをやらないのですか?…略…。よろしくお願いします。
 
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 Sさん、弊社ルアーのご愛用、ありがとうございます。
 質問についてですが、ご友人の言われた通りです。タックルハウスは20年程前からチビリコ、ピーボーイ(プラグ)シリーズというバス用プラグを作っていました。1999年にトップウォーターのみの「アーリーバード」シリーズを最後に製造を止めました。
 もちろんバスが嫌いというわけではありません(笑)。製作を縮小していったのはブラックバス市場の全盛期で、外来魚問題が起こる前ですし、理由は色々でした。ソルトプラグやトラウトプラグの製造と、そのイベント活動で手一杯だったこと、海という得意分野に集中したかったこと、プロと契約して大会に参加するようなことが社風に合わなかったこと等が重なったためだと思います。
 
 タックルハウスでは当分バスプラグを作る予定はありませんが、個人的にはバスフィッシングの楽しさは良く知っているつもりです。今もたまにやりますし、海によく同行するバス釣り大好きな仲間も多いです。
 それにバス用ルアーが内湾のシーバスに流用可能なように、フックサイズを落としたTKLMとかにもバスは良く反応してくれます。
 また、アメリカのOldルアーの幾つかをずっと敬愛してきましたし、暖めているアイデアもあるので、いつの日かバス専用プラグも作ってみたいですね。
 
 Sさん、以上が回答になります。余計かもしれませんが、ご自身で言われるほど初心者ではないと感じたことと、バスの世界を見てきた方ということもあり、少し付け加えさせて頂きます。
 
 今はバスが不遇の時。嘆きは方々から聞こえてきます。でもバスを取り巻く環境が整い、管理が行き届く適正な規模であれば復活が可能だとも思っています。
 むしろソルトのほうが今やかつてのバスブームの有様に近づいているかのようで心配なくらいです。販促の方法も似てきたし、その先に何が来るのか一度見ているはずなのに留まる気配さえありません。
 
 広いはずの海は権利や利害関係が紆余曲折しており、何か事が起きると釣り場や魚種の規制等へ向かいやすいのです。動機や内容は違っても、バスの外来魚問題から発生した結果そのものは海でも有り得ます。
 変な法律や条令ができてしまう前に予め準備してそれを反証し成立を回避するには、日頃から自主的に節度を保っていること、が必要なのですが、(法律は行き過ぎたところからできる)それは釣り方、捕り方に留まらず、売り方、伝え方、買い方、作るものについて等、多岐に渡って言えることなので、欲深い我々人間には非常に難しい選択になります。
 ソルトの釣りも内水面の釣りも、いつまでも堂々とやりたいと願っています。
 
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 写真はアーリーバード、グリブ。うわっヤニカラーになってる…。
 シリーズには他にムック、スラッシュ(ジェルトン)。カナリー、ピーコック(バルサ)がありました。要求強度、浮力で素材を変えてあります。凝っているのは設計がチーフだから。
 この中で、カナリーとムックが形を変えてソルト専用化されました。
 下段写真はマーベリック、タイガーなど。それぞれ内湾で何匹か釣れた覚えがあります。 

質問…リップが無くても

 Nさんからの質問です。
…略…以前、雑誌か何かで「K-TENブルーオーシャンはリップが無くても泳ぐ」という記事を目にしたのですが、ブルーオーシャンの全てのタイプ(S/F/SP)がリップが無くても泳ぐということなのでしょうか?それから、どんなアクションで泳ぎ、どれくらいの深度まで潜るのか、教えていただけると有難いです。…略…
 
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 Nさん、お待たせしました。
 
 ブルーオーシャン(以下BO)の2本フックフローティングミノー、BKF175、140、115、90、75は、リップを完全に取り去ってもリトリーブで泳ぎます。しかし、シンキング系、ワークス等、重すぎるものは通常リトリーブでは動きづらくなります。(シンキングペンシルにはなりますが)全てのタイプが無条件で泳ぐというわけではないのです。
 細身の125、3本フックタイプだけは、フローティングであっても、リップを全て取り去ってしまうと、目立つアクションはしません。リップを少しだけ残しておけば、最近何処かで見たことのある動きになります。
 
 先に「泳ぐ」と書きましたが、その解釈となると使う人それぞれ、ある程度の開きがあると思います。ウォブリングで尾を振ることを指すのか、ローリングだけで泳ぐと言えるのか?定義は幅広いものです。
 大多数のミノーはリップ、あるいはリップに相当する水受け面が無いと通常のリトリーブではほとんど動きません。
 
 BKFは、リップ無しでトゥイッチ等の特別な働き掛けをしなくても比較的低速からウォブンロールします。ただし、その振動数(キビキビ感)はノーマルからするとかなり少なくなり、水面直下をフラフラ、ヨタヨタした感じで泳ぎます。引いて潜るということはなくなり、超シャロー専用ミノーに変身できます。
 欠点、あるいは制約があるとすれば、リップが無くなると当然、水に食い込む力が弱まり、素直に引いている方向に向かおうとします。だから、ロッドティップが水面から離れないように引くことが条件になります。また、高速で引くとバランスが破綻して水面から飛び出します。これでアッピールするのも一手ですが適正スピードがあるということです。
 これら基本的な性質はフローティング、サスペンド、シンキングと共通していますが重くなるにつれて要求スピードが上がり、更にキビキビ感を失っていきます。ある程度、ロッド操作でキッカケを与える必要があります。(それでもシンキングペンシルとしてはまだ敏感なほうです)
 
 以上は全くリップを取り去った場合のことです。
 実際は、ノーマルリップを2ミリづつ削っていっても10近くのバリエーションになるのです。(ノーマル深度からドシャロー専用まで)
 
 かつて今ほどルアーバリエーションが無かったとき、各地のアングラーにお会いして、実に様々なBOを見せて貰いました。彼等は独自の引き方や、リップ削り、フック換装によって、ほとんどのシチュエーションをフルカバーしていました。以来、私は、いくら自分が設計したルアーといえども、使い方まで指定するのは失礼にあたるのではないかと、聞かれない限りその手の情報は控えめにしてきました。
 
 そして、BOリップ削りでの注意点ですが、超シャロー専用以外はある程度残して、少しずつ現場合わせをすることをお勧めします。爪切りでカットした後、ヤスリで整えると簡単です。
 また、BO系だけではなく、私の設計によるものは、シンキングといってもフックを外せば水に浮くものばかりです(理由は以前書いた)。全般に軽い作りなので、特にシンキングペンシルとして使う場合は、重いペンシルより繊細な操作を要求されます。元々泳ぐ能力が残っているわけですから、その強みを生かしてみて下さい。最近のドリフト系の使い方には合っています。
 
 余談になりますが、現在のルアーは各シチュエーション毎に分派して、何々専用とか選びやすくなりました。しかし、メリットばかりではないと思います。各地の自然が都合良く同じであるという前提で~専用と言うのならば、そこには無理があります。
 リップもデザイン上、頭部と一体になっているものが多くなり、チューニングは返って難しくなっています。
 そこでBOの後継である最新のK2Fのリップは意識して独立したリップにしました。必要に応じて少しならチューニングが可能です。ただしK2Fのリップを完全に取り去ると、目に見える泳ぎは消えます。(Rユニットとムービングウエイトによって微妙に動いていますが。)BOとは異なる点です。
 
 Nさん、以上が回答になります。お手元にBOがありましたらぜひ遊んでやって下さい。 

K2F122、パーツ

 写真はようやくできた122ーA用構成パーツです。ウエイト類、マグネット、ワイヤー等は市販されていない別注品ばかり。各部品が必要数揃うには、もう少し時間が掛かるようです。
 
 一見すると、後はプラモデルのように組み立てるだけではないの?と思われるかもしれませんが、122はここからが大変なんです。左右を組み付ける際、強力なネオジュウム磁石が悪戯して、周りの部品にすぐくっつくのでコツがいります。レーザーカットワイヤーもひとつずつ微調整して組み込みます。
 それにプラモデルは優しい環境で飾られるだけですが、ルアーは最悪の環境で使われますから要求されるものが全く違うのです。
 
 そして、組み立て後はマル秘処理をしてから、全品、水槽で水漏れ検査をします。
 また、カラーリングはほぼハンドメイドと同じ行程になりますから、これも相応の日数を要します。今のところは予定通り進行していますが、製作時には予測不能のトラブルも付き物なので油断は出来ません。。
 
 142の時は、モニターモデルをネットのみで販売しましたが、今回の122は、お店売りで販売することになりました。
 全パーツの調達の目途が立ってから、主に142の取り扱い店に案内書(3月下旬予定)を送らせて頂きます。
 事故無くこのペースでいくと、4月下旬頃にはモニターモデルをお店にお送りできそうです。はっきりした日時が判り次第、ここラボでお知らせします。なお142モニタリングでお世話になった皆さんには、お知らせメールをお届けします。 
 予定仕様は、
◇K2F122モニターモデル、2本セット。A、Bタイプ。
◇純正ST46#2装着済み。#3フック2本も同梱します。
◇カラーは視認性に秀でる一色のみ、となります。
◇価格は未だ未定ですが、出来るだけ安価になるようガンバッテみます。
 
 そして、夏頃の本発売まで、このラボにて122の詳細を明らかにしていきます。AタイプBタイプの決着と、使用フィールドとの相性、タックルバランス、実地での数値的なこと等を、皆さんとご一緒に突き詰めていきたいと願っています。
 また期間中、アンケートや直メールで得られたルアーに役立つ情報を皆さんと共有して、より良いルアーに育てていこうと思います。
 よろしくお願いいたします。
 
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 近所のHさんからヒラフッコの写真です。天気の良い日に釣れると気持ちいいですよね。これは142で。 

ベイトリールについて

 熊本のMさんからのリクエストです。
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…略…僕はベイトリールが好きで不利な部分はわかっていますが、使用しております。…略…ラボにてベイトリールの見解を書いていただけると嬉しく思います。…略…
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 Mさん、お待たせしました。思い出たっぷりの写真数点もありがとうございました。
 始めにお断りしておかなければならないのですが、私はこの十年、ショアーからだとほとんどスピニングを使用しています。だから、最近のベイトリール事情には詳しくないのです。それでよろしければ、ということでお応えさせて頂きます。
 
 私が海でベイトリール(ABU等)を度々使用していたのはK-TEN誕生以前のことです。まだ外洋で使える専用のロッドも、満足できるドラグ性能をもつスピニングも無いに等しく、リーダーすら知りませんでした。
 愛機ロディの交換部品が尽き、やがてスピニングのペンや旧ダイワSSシリーズ等を手にしてからは徐々に使用頻度が減っていきました。
 大きな理由は外洋での風速十メートル以上の逆風を、当時の私の技術では克服できなかったことと、毎回の分解整備が面倒なためでした。それ以外は特に問題はなく、優れたスピニングがでるまで使っていました。
 そもそも、ベイトリール(以後ベイト)にしたのは、外洋の、あるヒラスズキポイントを攻略するためでした。其処では魚がヒットしたとしても手前にハエ根があるため、たまに根を覆う波に乗せて強引に取り込む必要がありました。5、4メートルの振り出し石鯛竿を使った事もあるぐらいのところでした。これは5キロのヒラを抜き上げたとき、釣趣に疑問を抱き一度で止めましたが。
 
 私にとってベイトのメリットは指ひとつでイザというときに瞬間フルロック、あるいは解放ができることだったのです。これは指で直にというところが重要で、鈍いロッドを介さないので魚の力をダイレクトに感じることが出来ます。スプールを手で押さえるとか、レバーブレーキでは味わえない感覚です。
 ときには強風下だと糸鳴りが凄いことも相まって、切れる寸前のラインの悲鳴まで指から聞こえてくるかのようでした

 また古いABUはドラグが作動すると、良質なクリック音が小気味良く響くので独特の使用感がありました。後年、予備として買った6500Cからこの音が消えていたので如何にガッカリしたことか。 あのような精度の裏付けがある音なら現在のスピニングにも欲しい機能だと思っています。中途半端なチリチリ音とか、節度のないズリーッとかより、もっと快感を増幅できて、夜間の釣技を補助できる程カッチリした音を発生できれば需要があるはずです。
 
 その他、両軸の特性として、コンパクトであること、ドラグ作動時に糸ヨレが出来にくいこと(絶対の優位性)、ライン径が太くなっても飛距離に影響が出づらいこと、ロッド側ではなくリール側で小技ができること等が挙げられます。それはそのままスピニングに足りないことでもあるわけです。
 
 このように、たった二つのデメリットを除けば、キャスティング用ベイトリールは充分に実用的だと思います。聞いたところでは、最近のリールは海水に強いものもあるし、古めのABUにも改造パーツがあるそうです。となると残る大きな課題は唯ひとつ。誰もが悩むバックラッシュです。 ……
 その対策は投げ方、ロッドとの相性、ライン特性、海況等により様々です。既に淡水のベイト使用には慣れているBバス経験者が多く、大抵の対策は周知されていると思いますので、ここでは、ルアー側、特に重心移動タイプのルアーの見地からバックラッシュ防止に役立つ注意点を挙げさせて貰います。
 
 ベイトリールは、ラインの放出具合をサミングによって微妙に調節できることにメリットがあります。しかしこの技術は固定重心ルアーの飛行姿勢を正すためには有効ですが、重心移動ルアーでは一層の注意を要することなのです。
 重心移動ルアーは、飛行中、慣性で錘が尾部に仮固定されている状態ですから、このとき、下手なサミング(段付き)をしたり、ラインに咬み込みがあったりすると、小さなショックが伝わって錘が頭部に戻ってしまい失速します。(スピニングでも同様の現象がある)サミングするときは放出中の全スピード域でソフトにスムースな操作を心掛けるようにして下さい。そして飛距離の調節は出来るだけ一回で済ませることです。(長い一回と短い一回があり)神経をサミングショックを消すことに集中するのです。
 仲間内のベイトに慣れたBバスのベテランでも、海特有のライナーキャストが難なく出来るまでは時間が掛かっています。あまり言いたくないのですが(笑)、K-TEN系のように着水後の戻りレスポンスまで配慮したルアーより、戻りの悪いルアーのほうが、この点では簡単だということになります。
 それでもK-TENを使って頂けるのなら、ある程度の慣れと練習が必要かと思われます。
 静かな内湾やボート、小河川なら操作を柔らかく、スムースに。繊細且つ大胆に。こうした気の使い方で充分かもしれませんが、外洋のショアーではここに、ベイト投法上では御法度の、力強くというのが加わり、少々厄介です。 
 しかし、簡単便利な釣りだけでは物足りないというアングラーも多いはずです。スピニングの性能が上限近くまで達し、改善の余地は少なくなりましたが、ソルトのキャスティングベイトリール関連の製品はまだ品数も少なく進歩の可能性があります。今後はショアーソルトでも道具の充実が伴えば使用者が増えるものと考えています。 
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 一番上の写真はMさんが、ベイトリールで釣った良型のスズキ。TKLM120。
 以下の写真は私の、ベイトリール用の新旧ロッド数点。7f~11f。自作や改造品、改悪品、オーダー品。試行錯誤の名残り。残骸。
 
 11fカスタム。変則的に石鯛投法で投げる。各ガイド中間点に着けたラインの竿触れ防止リング。テフロンパウダーをエポキシで固めた。
 
 最後の写真は、先月見た、最も穏やかだった午後の海。海と空の境界が融けていました。慰め。一服。 

質問…ゴールドカラー

 北陸のTさんからの質問です。
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…略…質問A(直メールにて回答)…略…北陸地方では陽が差してきたあたりからNO,7(旧ゴールド)の反応(ヒラメ)がいいように思います。また、ゴールド系のカラーは少しの違いで、釣れるゴールド、釣れないゴールドがあるような気がしています。…略…二宮さんのゴールド系カラーについて、過去のエピソードや意見をお聞かせ下さい。…略…
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 Tさんの質問には普遍的なところを含んでいますので、一部ラボで回答させて頂きます。
 
 ゴールドカラーというのは、ルアーによるシーバスフィッシング黎明期(80年代)から私にも馴染み深いものでした。 ルアー作りの参考にさせて頂いた当時のラパラのカラーバリエーションの中でも、シルバーベースに背がブルーと、ゴールドベースに背が濃いオレンジ、それとルアーらしいレッドヘッドをよく使っていました。
 朝、昼間はシルバー系。夕、夜間はゴールド系。気が向くとレッドヘッドというのが典型的な使い方でした。外洋ではゴールドプレートの入ったロングAも多用していました。
 カラー論議は釣り人特有の探求心のせいか、当時から賑やかだったのですが、シーバスルアーのカラーバリエーションは今とは比較にならないほど乏しく、しかもバスルアーのようにカラフルなものは少なく、背もブルーやブラックなどの単色がほとんどでした。
 湖のモンスターブラウン相手に、リアルカラーとは別に何故か黒金が持て囃されたのもこの頃のことでした。
 カラーだけについても、色々な場所で、色々なアングラーが、ああでもない、こうでもないと試していた時代だったのです。私もその中の一人でした。
 
 ゴールド系は、あの時から今に至るまで生き残って来たカラーです。その理由を述べることが今回の質問に答えることになるのですが、その前にもうひとつ。 私にとってのゴールドは、ある特殊な思い出があります。ルアーを作り始めたとき、ゴールドのアルミ箔を探したのですが、金紙しかありませんでした。結局、シルバーのアルミ箔にイエローを吹くとゴールド風になることが判り(現在も同じ方法)、そのことが量産型ルアーを作る際に重要な役割を果たすことになるのです。
 
 私は絵を描いていたせいか、当時のソルトルアーの単純な色使いが寂しく感じていました。生きている小魚は、見る角度や光の反射で、あんなにも多様な輝きを放っているというのに。
 だからK-TENを発売できるようになったとき、高コストを承知で透過光を利用した深みのある色合いにすることを希望しました。それは、シルバーにイエローを吹いてゴールドになったことをヒントに、ルアーの背にまず別色を淡く吹いた後に、別の色を上乗せすることで実現しました。
 そうすると、何も塗っていないサイドから背にかけて、例えば緑から紺(マリンブルー)、淡い紫から青(マリンバイオレット)というように、優しく色が移行して、2色の間に味わい深い色が現れます。
 この手法は現在多数のルアーに普通に使われています。このように、私にとってゴールドカラーから派生したことは大きいのです。……  
 さて、Tさんの報告を吟味すると、潮色や太陽の在処まで書いてあり、説得力がありました。その現場においてひとつの真実でしょう。Tさんが釣行したときの諸条件が特定のカラー、ゴールドにはまった結果なのだと思います。それが何故なのか?
 
 ここではゴールドの光の波長の性質とか科学的な根拠を書くつもりはないのです。(調べればネット内でも判ります。)私はもっと単純なものだと考えているからです。 
 濃いめのゴールド。これマズメの光の象徴みたいなものです。(プラス夕方のオレンジ、朝ピンクという解釈もあり。)
 それは多くの魚にとって捕食の時合いといわれるマズメの、彼等の視覚を使った、もっとも見慣れた色合い(波長)だということが想像できます。晴れたマズメには、波頭も白い岩も魚も銀のルアーも、ゴールドに輝こうとします。さらに同系の色が重なると、増幅して見えることもあります。
 たとえそれが時間のズレで昼間になったとしても、見慣れたものと、見慣れていないものとでは生物の反応に差があるというのが自然です。
 ただし、ルアーによる反応は相対的に働くことが常であり、その差は良い方にも悪い方にも作用します。それはカラーに限らず、ルアーの形、動きにも言えることで、どちらが有効なのかはその時次第です。差がある、ということだけが真実なのだと思います。
 
 例えば、絶対のカラーがあるとしても、ではそれを辺り一帯全てのアングラーが一斉に投げていたらどうなるのか?もしかすると、そのこと自体が原因となって、別の特定のカラーを投げている一人に反応が偏るかもしれません。その辺りは現場の魚に聞いてみるしかないのです。
 
 
 ゴールド系は今も需要が途切れず定番カラーです。Tさんにとって、特定のゴールドが必要であるように、私を含めて何処か遠くの誰かもゴールドに思い入れがあるからこそです。
 これからも納得のヒラメに出会えますように。
 それと、カラー全般について、以前QアンドAで書いたことがあります。(ルアーのカラー)併せて参考にしてみて下さい。 

K2F122テスト

  122のテストも佳境に入り、一昨日土曜の午後、南房総のSさんと現地で待ち合わせ。しかし、狙っていたポイント近くにはまだ数名の釣り人が…。さすがに週末です。
 これから風向きが変わるという予報と潮位を信じて、しばらく近くのサラシやサーフを巡って地味~なテストをすることにしました。次々と微妙に異なる122をSさんに投げて貰います。
 ピーカンの午後3時になると、にわかに例の風が吹き始め、先の釣り人達が撤収した模様です。支度を整え、いざ予定したポイントへ。
 
 ゆっくりと海の状況を確認して一投。直ぐさまフッコが応えてくれました。そして直後に隣のSさんのロッドが大きくカーブ。122プロトにいきなり7キロオーバーヒラスズキです。
 Sさんはベテランだから何の心配もありません。それからの一時間少々は至福のひとときでした。ヒラ、マルの、小さいのから大きいのまでが混成している群れの直中に二人も居るのです。
 
 辺りには我々だけ。焦ることもない。一匹釣る度に、波シブキを手の甲で避けつつ互いにタバコの火を着け合うシアワセ。
 スモーカーにとって、投げれば必ず釣れると確約されているときの、余裕の一服ほど贅沢なことはありません。
 
 そして早々と祝杯を上げることに同意して、陽が沈む前にポイントを後にしました。テスト結果は上々。Sさん、ありがとう。
 でも結果が出過ぎて、仕様が異なる最終候補が微妙な違いながら2つ残ってしまいました。どうしよう~。
 
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写真はSさんとヒラ達。それと122。