質問…シングルフック

 
 Kさんからの質問です。
 
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 …略…現在、トレブルフックのバーブレスを使用していますが、鱸に対するダメージを考え、シングルフックで釣りを楽しみたいと考えています。
 
 二宮さんのブログにある、ワイロンを使ったシングルフックついてですが、それに使用するフックがどのような大きさや形状が良いのか、またワイロンはどのくらいの太さが良いのかご教授願えたら…略…
 
 釣りをするメインエリアは河口から三十キロ地点で、よく使用するルアーは、TKR130、KRP140、BKRP115、M148、BKF140になります。
 
 現在使用を考えているものはカルティバOH鯉スレです。
 
 …略…標準のフックサイズに合わせ、糸オモリで重量を調整することが重要だと思いますが、それぞれのルアーにフックサイズをどのように選択したら良いのか、そこが難しい部分になっています。
…略…
 
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 Kさん、お待たせしました。お答えします。
 
 まず、シングルフックに換装した場合の大きさと形状ですが、お察しの通り、標準フック重量に既製品のシングルフックの重量をそのまま合わせようとすると、恐ろしくデカイフックになり、頻繁にルアーの背に巻き付いたり、フック同士が絡んだりすることが多くなります。
 そのために適度な大きさのフックに糸オモリを巻くことをお勧めしてきました。
 
 ◇適度な大きさというのは、フック同士が絡まず、背に掛かることが無い範囲で、出来るだけ大きいもの、になります。
 
 形状は好みなので、例にある鯉スレ針でも、使用場所からするとサビの心配が少ないので使えると思います。
 欲を言えば、糸オモリを巻くことでフトコロが狭くなりがちなので、もう少し広いタイプのほうが作りやすいはずです。
 
 
 次にワイロンの太さですが、私ならばKさんがお使いのルアーでしたら、石鯛ハリス用を使います。
 品番は、手許にあるのが古いタイプで、間違いがあると困るので伏せさせて下さい。すみません。
 それより小さいルアーにはチヌ、グレ用を使っています。
 
 また、質問内容からすると、ルアーの浮きバランスに留意されている方なので、出来れば写真にあるような電子ハカリ(0、1グラム単位~50~100グラム程度)があると便利です。
 ネットで探せば数千円ぐらいのものが見つかります。
 
 
 そして私見になりますが、トレブルからシングルに換装すると、アタリ自体の頻度はそう変わりはありませんが、平均的にフックアップまでいく数が減るのは仕方ないことのようです。
 でもフックポイントが単純に三分の一になるからヒットも三分の一になるわけではありません。確実に減るのはスズキの頭周りに絡み付くようなヒット例です。
 つまり、大きめのルアーで数多く出回っているトレブル三本フック仕様のメリットを始めから諦めることになりますが、質問冒頭のKさんの意には添えるのではないかと思われます。
 
 追記…実はシングル仕様でもヒット率を下げない方法もあるのです。しかし、どう見ても品に欠けるためお勧めできません。
 もしもヒット率が激減するようならば、またメール下さい。 

アカメフォーラム

 19日~20日と高知、「アカメと自然を豊かにする会」主催のフォーラムと釣り大会に参加してきました。
 毎度ながら、関係者の皆さんの情熱と真摯な活動には頭が下がります。
 
 釣り大会のほうも、アカメが皆の思いに呼応して今年も姿を見せてくれました。
 
 詳しい内容は、ぜひ長野さんのHP「アカメの国」をご覧になって下さい。
 
 
 いわゆる自然保護ブームに乗った、~禁止すればよいという浅薄な考えとは一線を画して、絶え間のない実践を要しますが「アカメと自然を豊かにする会」の目指すところは希望に満ちています。
 釣り人が、良き監視者となることによって何ができるのか。その指針として今後も注目していきたいと思います。 

飛び魚の気持ち

晩夏の海。シイラ、マグロ狙いで、保険はカツオでいこうと、期待に胸を膨らませるのは毎度のこと。
存外な釣果に恵まれることもありますが、たいていは期待より下回ることが常でした。まあ、だからこそまた行こうとするのですが。
早朝、魚を探す我々の見開いていた目も、次第に眠気に押されてウツロになることもしばしば。

そんなとき、揺れる船首に陣取っていると、軽い浮遊感の中で様々な生き物を目にします。狙う魚以外の。
イルカに鯨、マンボウに鮫、等々。
ポピュラーなのは飛び魚でしょうか。この季節は成魚に混じって当歳魚の群れもよく見掛けますが、小さいながらも船に追い立てられると、なかなかの飛行を見せてくれます。

正確には飛ぶというより、海面ギリギリを滑空しているのですが、見る度に不思議に思います。
太古に鳥でもないのに飛ぼうとする意志が生まれ、いつしか数百メートルを滑空できるようになったのだと思いますが、これは進化の途上にあるのか、この先さらに上空を舞うことがあるのか。
もしかしたら、反対に今我々が見ているのは、着水を待ち構えている執拗な捕食者に諦めて、退化の途上にあるのかもしれません。
あの能力からすれば、その気になれば10メートルは上空に行けるはずなのですが、未だ見たことがありません。

高等生物以外は、無駄なことをしないと言えばそれまでですが、たぶん、他にも海面ギリギリで滑空することが、揚力の関係などから余程都合が良いのだと思われます。
だから風が無く、起伏の無い海面だと、滑空距離が伸びないわけです。

K2Fも海面に近いところを飛ぶのが好きです。ケツからだけど。
山ナリキャストとは相性が悪いです。
低弾道ライナーキャストが基本。失速と同時に着水。
風を味方に、静かに、飛び魚のごとく。

熱帯夜

 今夜0時に(今)気温が25度を下回らないと、熱帯夜日数の(東京)記録更新だそうです。どうやら誰も経験したことない夏になっています。
 
 ただのクソ暑い夏にはしたくなかったので、ちょっと無理をして新しいことを始めたら、いつもの日課に気が回らなくなってしまったのでしょうか。
 その代償として、絶対枯れないはずの庭木が二本枯れ、メダカが数匹、煮魚になってしまいました。いずれもお気に入りだったのに。
 
 気象のほうは、これから必ずと言っていい、揺り戻しが待っているはずなので覚悟はしています。いつからかそういうものだと思い込んでいるのです。
 
 でも心配なのはやはり海の中。
 地上の季節より遅れて推移するのが常ですが、これから迎える本シーズンにどう影響していくのか、じっくり観察していくつもりでいます。 

K2F122…AとBのこと

 K2F122は、ほぼ全国に初回分を発送中です。
 
 
 モニタリングにご協力頂いた皆さんには、例のAとB、どちらが市販されたのか気になるかと思います。
 其処に至る経緯は後に書きますが、今発送中の122は、Aベースという言い方が正確かもしれません。
 決定にあたって、Bを押して頂いた方々の声が響いてきて、それが少なくないものですから躊躇いはありました。
 
 しかし、元より覚悟の上で行った事なので、本当の結果はこれから122がどう働くかによるものと考えています。
 
 
 簡単にAとBとの違いについてまとめると、AはRユニットの負の部分が出ないところまで可動質量を落としたもの。
 BはRユニットの可動部分の重さをその変わり目から、わずか0,2グラム増やしたもの、でした。
 
 以前書いたように、僅か0,2グラムというのは、塗装の誤差分ぐらいしか数値上の違いは無いのですが、私や、使い倒しているテスターが、明確な違いを感じるギリギリの重量差ともいえます。
 
 ルアーの部位によっては、0,2グラムどころか数グラム変えても全く変化の見えないものもあり、122でもRユニット以外のどの部位に、その差を与えてもさっぱり変化は見えません。
 それが回転運動するユニットを変える(あの位置に限るが)と、如実に違いが出てきます。
 
 実際、あれだけのモニタリングを集計すると、釣果にもある傾向があることが確認されました。
 それは、万能のAに対して、条件的にハマルとBが上回るというものでした。だから絶対Bと言う方もいるわけです。
 これ以上は私や会社のノウハウとして大切にしたいので、ご理解頂きたいのですが、もうひとつ。
 ユニットの力を強めると、0,2グラムの差以上に飛距離にも影響が出てしまうことがありました。それは、投げるのにあまりコツを必要としないAに対して、Bのほうは飛行中にユニットが暴れる投げ方をしてしまうと不安定になるのです。
 
 今は皆さんのおかげで、その解消方法についてのアイデアがあるので、いずれB以上に強めた場合も、あらゆる点で不足が無くなるはずですが、今回は万感の思いでAベースに決定したわけです。(市販品は完全にAと同じというわけではありません)
 
 
 モニタリングについてのご意見も多数頂き、その中にもっと違いがはっきり判るものにしたら…とありました。
 しかし、そのような違いならば、私やテスター数人だけで足ります。せっかく多数の皆さんの協力を得られるのなら、もっと高度なことを知りたいと思いました。
 それぞれ別の考え、好み、の向かう先にひとつのルアーがあり、経験を共有することによって、新鮮な何かが見えてくるのです。
 
 
 また、カラーリングを皆さんの好みを無視して単色としたのは、カラーからの影響を除外するためでもありましたが、(塗り直した方もおられました)反面、本当のカラーリングテストにもなったわけです。ある時期、数百人が同じカラーのルアーを投げるなんて、滅多にないですから。
 
 
 スタッフと、私と、皆さんの子供であるK2F122は、無事巣立ちました。どうかこれからも見守り育ててやって下さい。
 
 
 追記…現在の122のT値(テンション)は純海水中で数値を計ると142T1と、ほぼ同じになっています。
 大、中、どちらでも引いた感じは、あまり変わりません。未だ先ですが、122にも次の展開が待っています。 

K2F122 発送開始

 御注文を頂いた全国のタックルハウス取扱店様に、K2F122初回分の発送を始めました。
 本格的なシーズン前としては充分な数量だと思います。
 
 早いところで15日着ということですが、この時期の配送状況を考えると、幾分前後するかもしれません。
 店頭に並ぶのは週明けぐらいかと思われます。ご贔屓のショップさんに、お問い合わせの上、お買い求め頂ければ幸いです。
 
 
 追記…モニタリングの末、122のタイプがどうなったのかを書くつもりでしたが、休みに入ってからアルコールが抜けてくれません。
 次回書きますので、よろしくお願いします。
 
 昨日は、房総の夏ヒラを釣りに来た友人が、帰りに寄ってくれました。
 曰く、「真夏でも海の状況がヒラ的に整えば出るんですね…」 

質問…シイラのこと

 東京のWHさんからの質問です。
 
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…略…ずっとシーバスオンリーだったのですが、去年の夏からシイラを始めました。
 シーバスにもルアーを見切られるという感じはありましたが、シイラには目前でいつも見切られています。まる見えだから悔しいです。(笑)
…略…何かアドバイスをよろしくお願いします。
 
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 お待たせしました。お答えします。
 夏のシイラ、楽しいですよね。
 最近の私は機会があれば、ぐらいにしかやらないのですが、以前は夏になると講習会等のイベントがあり、毎週のようにシイラを追っていました。
 当時から判りやすいポイント、パヤオや大型浮遊物周りに付いたシイラは、叩かれ過ぎでスレていました。
 
 始めて2シーズンぐらいだと、できれば同船しているベテラン達の釣り方を見て学べればよいのですが、それがかなわないときは、シイラに見切られていると感じたら、こちら側も見切って釣りやすい魚を新たに捜したほうが早いかもしれません。
 釣りやすい魚とは、できるだけ、せめて当日にルアーを見ていない、潮目沿いの回遊魚、見付けづらいがマトモな浮遊物周り、鳥山付きのシイラです。
 
 なかなか見つからないときも多いですが、船長任せにせず、自分たちで捜す気合いが欲しいところです。
 
 そうやって、まずはスレていないシイラを相手にして数多くの経験を積むわけです。しばらくするとそのウブなシイラも反応が薄くなっていきますから、それから色々試してみればよいと思います。
 そのうちにシイラとルアーとの間合いの取り方が何となく解ってくるようになります。
 例えば、追ってくるシイラを見て、慌てて喰わせようとルアーを止めてしまう初心者がいますが、むしろ逃げるべきです。自ら食べてくれなんて頼む小魚はいません。
 自分が小魚になったつもりでルアーを動かしてみて下さい。
 
 
 余談になりますが、シーズン初期のシイラを追って関西から相模湾まで、私も週毎に北上していたとき、憶えのある派手なポッパーを頭に付けた大型シイラと、お互い五百キロ移動後に再会したことがあります。
 また別の日に、大きな群れの中に黄色いタグ付きのシイラを二匹、発見して、まさかそのシイラは釣れないだろうとルアーを投げてみたら、なんと、その数多いシイラの中で、追ってきて釣れたのはその二匹だけ、ということがありました。これには考えさせられました。
 
 この夏のシイラ、大いに期待しましょう。 

K2F122…出荷予定日について

 K2F122の発売予定日をお知らせします。
 おかげさまで、このまま滞りなく進めば、8月のお盆明けぐらいに、当社製品取り扱い店様に出荷できそうです。
 正式な仕様や、ルアーの詳しい説明等のご案内は、直前になりますが、ここでは少しフライングして決定済みの事をお知らせします。
 まず、モニターさんから要望の多かった、あるいは強く希望された2色を、新たに加えることになりました。
 ◇Sゴールド×ブラック*オレンジべりー
 ◇クリアHGチャート×オレンジベリー
 (写真は参考テストカラーです。)
 そして、価格は2300円(税別)になりました。
 これから社員一同、気を引き締めて製造に掛かりますので、よろしくお願いします。 

質問…潮色、ニゴリについて

 千葉のUさんから質問です。
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 略…房総でのヒラ、マルスズキにおける潮色やニゴリとの関係や、対処法をラボに…略…
 
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 お待たせしました。お答えします。
 
 
 まず、こうした確定の難しい事は、始めに簡単にお答えしてから先に進めることにしています。
 
 一般には青い潮色は暖かく、緑色は冷たいといわれています。
 我々が岸から(海岸ライン)釣りをするとき、手前と沖側で潮色に差がある場合がほとんどですが、たまに沖の潮の色が手前まで一様になっていることがあります。それは沖の潮が差し込んでいるということですから、磯スズキには良い兆候になります。
 その逆で、はっきり二分されているときは、何かしらのマイナス要因が絡んでいることが多いです。
 
 もちろん例外もあり、その色の付き方が、プランクトンのせいなのか、淡水のせいなのか、ドロのような浮遊物のせいなのか等で、それぞれ別の判断を迫られることになります。
 
 ところで、潮色を表現するときに使われる、青、黒、緑、赤、白、及びニゴリ等は、漠然としていて、常時、海を見ている人でない限り、伝わりにくいでしょう。
 青、なんて最も海らしい色表現でありながら、内湾のヘドロが生んだ溶存酸素量の少ない潮のことも、そう呼ばれています。
 
 さらに元々、ほぼ透明な液体の見かけ上の色は、光の差し具合、つまり天気や太陽の角度で、千変万化します。
 
 これでは何色と言ったところで不毛な答えになってしまいそうです。そこで私がやってきたことで有効と思われたことを書きます。
 
 それは現場で釣れたときの、ニゴリや色を含めた潮の状態を、よく覚えておくことに勝ることはない、ということです。
 そしてたった数度の経験から結論を急がずに、とりあえず判断保留のまま、数を重ねていくことをお勧めします。
 これぐらいアバウトに構えて釣りをしていかないと、稀にみる好機を逃すことになりかねません。
 
 スズキ自体が、内湾の生活排水が入る淀んだ所から、純淡水、外洋まで生息していて、しかも年中釣れることから、かなりの適応力がある魚だと思います。
 事実、房総の河口で台風後の泥ニゴリの中でランカーが出る所もあり(海中に大きな浮遊物が少ないことが条件だが。)反対に、少々のニゴリでも沈黙するポイントがあったりします。また、餌釣りが嫌う澄み潮でもサラシさえあれば、大丈夫といったように、一種類の魚とは思えない多様な姿を見せます。
 
 それは、それぞれの場所の一匹のスズキの生息圏や行動形態が、何を指して常態なのかで、好機もまた変わるということになります。その生息環境に慣れているようなら、少々のニゴリの違いは無視してもいいぐらいです。
 彼等の食欲を左右する他の要素が勝れば良いわけです。
 
 確かにニゴリにもそのポイントでベストなときがあるはずですが、その濃淡のグラフには水温や潮位の上下グラフも重なるのです。
 潮色による判断をするのなら、まずそこへ通い、自身にとっての許容範囲を知ることこそ、より実践的な知識になると思います。
 
 
 追記…私は過去に房総で十五年程、シーバスパーティの世話役をやったことがありますが、変更の効かないその当日の条件は様々。潮色も様々。
 台風や季節風で全てのテントが吹き飛ばされた日も、超ベタ凪の日もありましたが、会としてアブレた日はありませんでした。人数が多かったせいもあるでしょうが、私が絶対無理だろうと判断したときも、誰かが釣って来ました。
 許容範囲は、たいていスズキよりも人間のほうが狭いです。

サラシ…自選エッセイ集【28】―S

 以前書いた文章を載せます。
 1996年十月に(株)週間釣りニュースさんの発行した媒体に掲載されたものです。
 
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   ◇サラシ
 サラシといえば、磯で見掛けるとおり、波が岩を越えたり、ぶつかってできる泡の集まりのことだ。
 当たり前の現象なので、これを興味津々で眺めるのは、磯のルアーマンとメジナ釣り師ぐらいだろうが、ベテランでもサラシの深さや厚さを知っている人は少ない。
 海は荒れ気味で、一見、辺り一面白くサラシているから、海面から底近くまで、あるいは少なくとも2メートルぐらいは泡が入っているように見える。
 ところが、思った程、泡は深くには達していないものだ。
 実際に潜って見ないと、判ることではないので、これを知っているのは、海女さんとサーファーぐらいだろう。
 サーファーは沖へパドリング中、大波を越えきれないと判断したとき、ボードをノーズダイブさせて、波のパワーをやり過ごす。下は静かとということを知っているわけだ。
 泡というか、空気というものは、凄い浮力なので、そうそうは潜れないのだ。
 だからヒラスズキは、サラシの中で小魚を待っているわけではない。その下にいて、必要なときに一瞬だけサラシに突っ込んでくる。
 
 昔、白間津というところで、未熟なヒラスズキが、岩上に取り残されたのを見たことがあるが、彼等にとっても、波やサラシそのものは危険なわけだ。
 サラシは、下から見上げると、白く輝いていて、しかもそれほど眩しくはない。小魚のシルエットは、想像以上に良く見えるのだ。
 
 ただし、ここにミノーを通して釣ろうとすると、サラシの濃度に応じてミノーの深度が浅すぎては発見されない恐れがあり、深すぎては、本体丸出しで見破られやすくなる。
 サラシの中でルアーをリトリーブすると、海水の密度が少ない分、ルアーに受ける抵抗が軽くなり、そこで各ルアー特有の性質が現れてくる。
 静水で、このルアーは何メートル潜るとかいった単純な深度ではないので、ルアーの設計では、随分と苦心した憶えがある。静水、流水、サラシ、塩分濃度、そしてラインの太さや入水角度が違えば、同一のルアーでも潜行深度は変わるものなのだが、その差の大小は、ルアー形状や浮力設定で調節が効く。
 K-TEN系ミノーは、サラシの濃さと厚さで、深度が毎回変化して、サラシに紛れるでもなく、下へ出きってしまうこともない層を泳ぐことができる。 
 また、サラシが覆うどのタイミングで投げて、リトリーブするのかは、奥深く、これも一律ではないところが楽しい。普段から、意識してタイミングを変えてみるのも勉強になるはずだ。後は若干の運と、腕次第である。
 
 人間から近づかなくても、昼間、向こうの方から来てくれる魚は、あまりいないが、ヒラスズキは、サラシという条件付きながら、その珍しいタイプの内のひとつである。
 
 追記。〔一匹、例外があった。サラシも無いのに向こうから近づいてきた魚がいた。
 ボートでシイラを追っているとき、ボートぐらいの巨大なブルーマーリンが斜め後方からやってきて、ギャフの届くところを、一分間ほど、イルカのように併走したことがある。
 大きすぎて何も出来なかったが、その目はボートではなく我々を見ていたように感じた。いったいあれは何だったのだろう。〕  終わり。