ハンデ…自選エッセイ集【27】―S

 以前書いた文章を載せます。
 1996年一月に(株)週間釣りニュースさんの発行した媒体に掲載されたものです。
 
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                ◇ハンデ
 良いところがありますよ。と若手に教えられて、久々に夜のスズキ釣りを楽しんだ。
 十数年前に、ほとんど全てのポイントにルアーを投げ込んだつもりになっていたが、そこは初めてだった。
 干潮になると一部浅い所があって、ウェーダーを着用していれば、深みを避けつつ一キロ以上海の先へ出られる。
 前日は80センチクラスが入れ食いだったと聞く。
 
 当日は早々とリップルポッパーで釣ったものの、本命ポイントではライトを照らした小舟が入ってきて、モリでスズキを突き始めてしまった。それぐらい魚影が濃いのだが、たまに突き損なうものだから、スズキが散ってしまった。
 しかし、よくぞこんな場所を見付けたものだ。最初に入った人は、釣れるかどうかの期待だけで、ルートの限られた暗い海の中を一キロ以上も歩いて行ったと思うと頭が下がる。
 また、そうやってヒットした初めてのスズキが、どんなに嬉しかったか想像もできる。たとえ、それが既に知られていた場所だとしても、自分自身で捜したというところがいい。
 
 このところのルアー熱はたいしたもので、有名ポイントは満杯といった状態だが、情報は片寄りがちで、実はまだまだ隠れた、あるいは忘れられたポイントはある。
 ただ、いずれも条件付きで、ド干潮しか入れないとか、引き過ぎたらダメとか、雨後のみとか、風向き次第とか、晩春のの一時期とかの制約が多い。ヒットが集中するところ程、その傾向がある。
 雑誌等に発表される情報は安全面も考慮して、恒常的なポイントが多いから入り易いが、本当にイイ思いをできることは少ない。
 
 更なる興奮を求めるのなら、やはりいつの時代でもポイント開拓に尽きる。
 元々ルアーフィッシングは、道具立てがシンプルで、そういう釣りにこそ相応しい。コマセ、スカリ、クーラー等が不要で、その気になればルアー数本という身軽さだ。
 その反面、何でも自分たちで判断せねばならず、あえてハンデキャップを設けるようなことになる。
 しかし、我々が魚を獲るのに、爆弾や網を使わないのも、イワシを巻かないのも、余裕と誇りからだけではないだろう。 そこには、どうしたらもっと楽しいかという自然な欲求がある。ハンデの設定は自由だ。とすれば情報のカットも立派なひとつの方法である。
 
 もちろんこの情報に満ちた中で自らの行動力のみに頼ることは、実際の釣果を低下させるかもしれないが、一匹一匹の喜びの総計は、教えられて釣ったそれを必ず上回る。
 少数だが、羨ましい釣りをしている人達がいる。 

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