ガウス加速器を応用したルアー 開発状況

晩夏に発売を予定している新作についての続報です。

前記事へのご質問が複数あったことと、自分自身にプレッシャーを掛けるためにw発売まで折々に開発状況をお知らせします。写真は概略図です。これでルアーに何をさせたいのか、だいたい解ると思います。

目的はもちろんよく釣れるルアーを作ることなので、Rユニットの能力を拡大し、そのデメリット(制約)を打ち消したいと考えました。

Rユニットの効果は確信できるものの構成部品の重さを上げ過ぎると、飛行中にも暴れてしまい失速してしまう場合があります。そこで従来品(TKR130以外)はユニット座面の角度を調整したり、小さ目の部品にしてデメリットを抑えていました。もっと自由に作りたい・・・

 

それがガウス加速器の応用に成功すれば、抑えるばかりでなく重心移動システムに連続性が加わり、また時間差で作動できるスイッチのようなものが手に入ります。Rユニットにもさらに重い球を入れられるし、飛行中は左右重心中央に仮固定できるので暴れません。

 

簡易図とガウス加速器の実験を見れば何となく簡単そうに感じるかもしれません。しかし、物理とルアーをよく知るものからすると全自動でサイクル化するのは極めて困難に思えるのでしょう。幾つかいただいた疑問にもそれが書いてありました。たしかに解決にはたくさんのハードルを乗り越える必要があります。

 

そこで、パテント申請も済んだことだし解説してみようと思います。折しも外出自粛要請でこもりがちなら、暇つぶしの一助にでもなれば幸いです。

まず、こもりついでにさらに深く籠りましょう。少し狭いですが、ルアーの内部に入ってください。そしてご自身が図のA球になったつもりで読んでください。

①Aからルアー頭部の方向を見ると奥に穴が見えます。背後には強力な磁石があってA(自分)はくっ付いて身動きできません。この状態で待機していると・・・

 

②にわかに前方が空を向いたように感じました。(外界では投入前動作をしているところ)

 

③急に背中が押し付けられるような強いGを感じ、磁石方向にめり込みそうになります。同時に磁石の奥のほうでズンッという重い音がしました。(磁着タングステンが移動した。)と思った瞬間、今度は逆に磁石から引き離されそうになりました。前方の穴に落ちてはたまらないので必死に堪えます。(外ではルアーが投げられ空中で反転して尾から飛んでいる状態。短時間に逆方向の力が入れ替る。)

 

④数秒間の短い平穏(飛行中)があって今度はまた自分Aを引き離そうと凄まじいショックが来ました。ここでも離れたら終わりという意識が働いて磁石近くの鉄球にしがみ付きました。(外では水面にルアーが着水して、乱雑な方向から衝撃を受けます。)

 

⑤その直後、磁石を隔てた先のほうからゴロゴロと何かが此方に迫ってくる音がしました。(重心移動システムのメインウエイトが尾部から前部磁石へ)

 

⑥次の瞬間、ガチーンッという音と同時に自分Aは前方の穴に向かって弾き飛ばされました。前の二度の衝撃には耐えられたのに、これには逆らえなかったのです。(ガウス加速器作動)

 

⑦あっという間に通路を過ぎると、穴に落ちる寸前に方向を変えられたようです。何故か左回り(ロマンですw)でグルグル回転させられました。

 

⑧回転が収まりそうになると、今度は部屋自体が左右交互に傾き出して、回転が止まらなくなってしまいます。それどころか時々左右にGが発生して体勢を維持できません。(リトリーブ中)

 

⑨ようやく回転が緩やかになって、気を取り直すと何か覚えのある力が働いてまた穴に落ちてしまいました。気付くと最初にいた場所にいるのでした。(ルアーをピックアップしたところ)

 

これで1サイクルとなります。Aとなって経験していただけたでしょうか?くたびれたのでルアー内部から出ることにしましょうw

 

正直なところ、現時点のプロトタイプでこれが正確に作動するのはまだ70パーセントぐらいです。あと二か月で90パーセントにはしてみせます。

 

問題は飛行を始めてルアーが空中で反転後と着水時は、A球が絶対外れてはならないのに、磁力を高めるだけでは投入時にメインウエイトが外れなくなるところです。磁界の範囲と強度を精査して各球の材質を考えて絶妙のバランスを探ることになります。

バランスが崩れれば全く作動しません。今のところ、メインウエイトには様々な理由で磁着タングステンを採用したときのみ成功しています。磁石とAの間にある球は調整用です。

 

幸いなことにその磁力バランスは、いったん構築すると経年で弱まったり、個別の磁石にバラツキがあっても、単体の磁石ならばAとメインウエイトの磁着の強度関係は崩れないのです。そうでなければとっくに諦めていたでしょう。

強さ、角度、磁界の距離とかを高精度で調整するのには外出自粛要請期間は丁度良いのかもしれません。ヒキコモリ続行しますw

「ガウス加速器を応用したルアー 開発状況」への12件のフィードバック

  1. 二宮さん

    初めまして
    コメント失礼いたします。
    私も、二宮さんのルアーを参考にハンドメイドルアー
    で色々とと試行錯誤しています。

    ガウス加速器を応用したルアー、夢が詰まっていますね
    メインウエイトと固定する磁石のバランスが難しそうです
    ですね、、A球を押し出すには、ネオジウム磁石を使用して
    メインウエイトを引き付ける事が必要と思いますが
    そうするとキャスト時にメインウエイトと固定磁石(ネオジウム)
    が離れない問題が起きそうです。また全てのウエイト、磁石が
    直接触れないとエネルギーが伝わらないといけないので
    その辺も中々難しそうですね

    これを完成させるには微妙なバランスで調整する
    必要がありそうですね。市販されたら必ず買います。
    お値段が少し気に成りますが(笑)

    • isaさん、コメントありがとうございます。
       ハンドメイドであれこれ考えるのは楽しいですよね。今まで作ってきたルアーが参考としてお役に立てるなら私にも励みになります。

       夢を詰めたルアーの現時点での自動サイクル確率は80%ぐらいになりました。ルアーが固定されたものなら簡単と言えるまでにはなったのですが、あらゆる局面での作動となると未だ道中です。ゴールは見えているので頑張ります。

  2. すごい面白いシステムですね。これは、前方の空間にあるウェイトも後方の空間にあるウェイトも重心移動しているというのが特徴でしょうか?

    これは泳ぎにどうのような効果をもたらしますか?

    • shota さん、今作の場合、前部の球は必要なときのみ移動するところが特徴です。
      飛行中や投入時は左右重心中央でジッとしています。

      泳ぎはRユニットの球を重くできたりするので様々な設定ができます。それと、リトリーブを止めて静止させてもほとんどの条件下で微妙に動いています。

    • shotaさん、以前のご質問への答えを訂正させてください。
      あれから最善の道を模索して、泳ぎはTKLM本来のものにしました。
      加速器は泳ぎ出しを助けるために特化し、頭支点のルアーの動きづらさを克服しています。

      普通のミノーの泳ぎの支点が胴近くだとすると、バットの中間ぐらいを持って振り回すことに
      似ています。頭支点ということはバットの端を持って振り回す感じで、止めたり、動かしたりするのに非常に力がいるのです。

  3. 二宮さん初めまして。

    一点質問と言いますか、考えを聞かせていただけないでしょうか。

    写真を見ると、Aを左回りに回転させる為にレール右曲がりになっておりますが、ルアーの頭部の内部構造が左右対称でない事は、泳ぎに悪影響を与えないのでしょうか?

    2nd gen.のRユニットの軸に折り曲げて固定されている針金が、キャスト毎に左右にズレるのに気付いてからずっと疑問に思っておりました。

    既出の質問でしたら申し訳ございません。

    • yさん、質問にお答えします。
      コンピュータ図面(CAD)は便利なもので計算だけでそれぞれの部品の重量が一目瞭然になります。樹脂部分(プラ、ABS)は18、19gとか0,01単位で教えてくれます。
       例えば、今回のRシャフトは0,012gになり、左右差のある曲がり部分はその半分以下で全体からすれば誤差範囲になります。またRユニットの円形レールは薄いプラなので0,1グラム程度の差になりますが、左右どちらにも軽いほうに肉盛りするか、削るかできるのでご安心ください。

       稀に泳ぎ出しのために故意に左右差を付けることもあります。

      • 回答して頂き、ありがとうございます。

        確かに最外周の塗装の方が影響が大きそうですね。

        > 稀に泳ぎ出しのために故意に左右差を付けることもあります。

        何となくミノーは左右対象のイメージが強かったので、眼から鱗です。

        どうせ外で遊べませんし、この度広げて頂いた視野で手持ちのルアーを眺めながら休日を過ごしたいと思います。

  4. 近所のHさん、こんにちは。
    静止している構造体なら点のエリアを直撃できそうなんですが、ルアーはブン投げられたり、叩きつけられたり、噛みつかれたりするので、点が揺れているのです。w

     ナマズと言えば近所のご夫婦が、金魚池に小さなナマズを入れてしまって・・・気絶してました。あんなに小さいのにと。あとはご想像の通りです。

  5. 非常に面白いシステムですね!!

    A球の視点及び、前回の動画(戻りの動作のイメージだったんですね)で動作イメージがつかめました。
    ですが、相当な難産になりそうですね。

    ユーザーとしてはルアーを傾けたりして遊んだり、着水後の戻りでどのような挙動するのか今から楽しみです。

    ※なんとなくのイメージですが…
    「現実世界にドラ○もんのタケコプターがあったら…しかも水中バージョン」

    • ndlsさん、動作イメージを掴んでいただけたとのこと。書いた甲斐がありました。ヒキコモリの身には励みになります。

       手持ち無沙汰のときに、ハンドスピナーとかペンを回して遊ぶことがあるように、これを持って作動させると、特に時間差で振動が伝わってくるところが新鮮な感覚でヤミツキになります。w

  6. 二宮さん こんにちは。
    近所のHです。

    う~んっ!?
    システム安定作動範囲の設定は、非常に狭い限られた“点のエリア”になりそうですね。
    期待して完成を待っています。

    私の最近は、河川のフッコと開幕した?ナマズに癒されております。。。

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