和歌山県串本沖のアカハタ、オオモンハタゲーム

写真/文 松井謙二

6年前までは大阪で釣り雑誌を編集していた。昭和39年から52年間、月刊誌で発行していた「関西のつり」平成6年から22年間発行した「SW ソルトウォーターゲームフィッシングマガジン 」両雑誌共に今回、取材をお願いした宇井晋介氏には長年の連載をして頂いた。

「関西のつり」では「魚眼レンズのポートレート」というタイトルで魚類学者の宇井氏から一魚種の魚の話しを毎月執筆していただき、計268回の連載で22年間「関西のつり」が休刊するまで続けて頂いた。

「SW」誌では「知っていたからと言って釣れる訳じゃないけど」というタイトルで宇井氏が日常的な色々な問題を捉えて指摘するエッセイを114回の連載で同じく休刊になるまで続けて頂いたのだ。

釣り雑誌の出版をしている頃は串本方面の取材が大変多かった。昭和から平成になった頃は、まだまだ磯釣りブームで多くの釣り人が串本に押しかけた。

そんな釣り人をあてこんでか、大阪・天王寺を真夜中に出発し、串本の先新宮に明け方に到着する夜行列車が走っていた。事実これを多くの釣り人が利用し、この夜行列車は太公望列車などと呼ばれて親しまれていた。中には「いそつり」と名付けられた列車もあった。

当時は潮岬周辺の渡船店も7軒はあって、我先にと、コメツブ、ドウネ、アシカ、オオクラなどの磯へ満杯の釣り客を乗せて向かったのだった。

その後、阪和道の岸和田ー海南間が開通。それでも、車で大阪から串本に行くのに7時間ほどかかった。

今は、その阪和道も隣町のすさみ町まで延びて3時間30分もあれば十分に到着出来る。この30年の間に時の流れはタイムマシンのように私を目的地に近づけた。

そして、私が串本での取材帰りに毎度の事ながら寄って帰るのが宇井氏が勤務している「串本海中公園」だった。いつも宇井氏は私が他の執筆者や友達を連れて行っても笑顔で海中公園の中の水族館を案内してくれた。

宇井氏との初めての取材は「SW」誌の創刊当時 25〜26年ほど前の磯からのヒラスズキの取材で、潮岬の馬の背、牧崎などの断崖絶壁を重いカメラバックを持ってビビリながらポイントに向かったのだった。そして、その日の夜は宇井氏の自宅に泊めていただき、氏が釣り上げたヒラスズキの鍋で夜遅くまで釣りの話が弾んだのも懐かしい思い出だ。

その後も宇井氏には何度も取材で協力して頂いた。また、この仕事を通じて昔からの釣り仲間や宇井氏の取材が出来るのが大変ありがたい。だから、この取材日の連絡が宇井氏から入るのを心待ちにしていたのだった。

7月9日 土曜日 この日は近畿地方北部や中部は大雨に見舞われたが、南紀串本は昨夜の雨も止み、取材は最高の天気に恵まれたのだった。昨日の夜は私達2人の昔からの友であるヒラスズキハンターの大橋究未氏のお店「旬彩 おおはし」で食事をしましょう!と待ち合わせて串本の海の幸を味わい、今回も宇井氏の自宅の離れに泊めていただいた。

午前5時 釣りのタックルと奥さん手製のお弁当を車に積んで氏のボートがある紀伊有田漁港には3分で到着した。

「2人共に普段の行いがいいから最高の天気になりましたね!」と私。

「ここ数日は串本は雨が降らない日が無かったんです。昨日の風も止んで本当に良い日にあたりました。」と宇井氏

氏のボートにロッド数本とタックルケース、クーラー、お弁当を積み込み有田漁港を出港した。

今日の釣りは「タイジグ」を使って水深15〜40メートルの根のまわりでハタ類を狙う。

この取材の件で何度か電話を入れさせてもらったが、宇井氏の口からは、「とにかく近年の温暖化の影響からか、本日のターゲットとなるアカハタとオオモンハタがかなり増えているので、海さえ荒れなければ必ず釣れるでしょう。」の嬉しいお言葉。

まずはボーズは無いので一安心した私。

でも、いったいそれらの魚がどのくらい増えているのか?この目で確認したい気持ちが強かった。

宇井氏のタックルはスピニング、ベイトタックル共にラインがPE 1,0~1,5号でリーダーがフロロカーボン4〜6号を1ヒロ取ってポイントにより太さを使い分けている。

とにかく、串本のハタ類のポイントはサンゴが多いので、ヒットした瞬間に根に入られたり、大型のハタが掛かってラインが岩やサンゴに擦れて切られる事もあるのだ。

出船して10分、東側にある串本の町が見える水深が15〜20メートルのポイントに着いた。

宇井氏はマイボートの釣りを20数年前から楽しんでいる。何時も自分で操船して、一人でポイントを開拓して、そして、潮の流れや風の方向を読んで、その時の状況にあった船の流し方でボートをポイントに入れる。それで、竿を出して思い通りに魚が釣れたら、これ以上うれしい事はない!と宇井氏は言う。

マイボートの釣りはボート本体、GPS、魚群探知機が魚がいるポイントに連れて行ってくれる大切な釣り道具で、それらを使って自分自身でポイントを選び、仕掛けを上手くポイントに入れる事までが釣りの面白さの半分以上を占めていると思う。それが、船を操るテクニックでもあるのだ。マイボートの釣りの面白さはそこにあるのだ。

だから遊漁船の船長は魚をお客さんに絶対釣らさないといけないから、大変な苦労がよくわかります!と宇井氏

一投目から宇井氏のロッドが曲がったが、狙いのハタ類ではなく、美しい模様のエソだった。今回は魚類学者の宇井氏にお願いして、アカハタ、オオモンハタの生態と釣り方を書いて頂いたので是非読んで頂きたい。

それによるとアカハタに比べオオモンハタの遊泳力はかなり強く、宇井氏が先日釣り上げた50センチオーバーのオオモンハタの口からトビウオを吐き出したらしい。まさか、飛んでいる状態のトビウオを捕食する事は出来ないが、着水して水面を泳いでいるトビウオをオオモンハタが水面に上がってきて飲み込んだのだろう。

私も以前、沖縄の西表島でキャストしたポッパーの前のフックに小型のロウニンアジ、後ろのフックにオオモンハタが一本のルアーにダブルヒットして上がってきた事がある。流石に、すごい遊泳力を持つハタなのだ。そんなオオモンハタを宇井氏はスピニングタックルで狙う。

宇井氏のボートはスパンカーが無いので、ポイントの上ではドテラ流しになるが、ハタ類狙いの水深は15〜40メートルまでの浅いポイントが多いのでベイト、スピニングの両タックルで十分対応できる。

まして、オオモンハタは遊泳力が強く平気で中~表層まで泳ぎあがって来るので、縦の動きよりも横の動き、そして、かなり早いリトリーブでもヒットに持ち込むことができるらしい。

オオモンハタ狙いで多用するルアーは「スチールミノー」。CSM18  CSM31  CSM41をその時の水深と潮の速さによって使い分ける。

かなりキャストして、底〜中層をスローから少し早いリトリーブで攻めたり、キャストしてスチールミノーをテンションフォールさせて誘い、底着したら少し早いスピードで巻き上げて再びテンションフォールを繰り返しオオモンハタを狙う。

そして、本日、1匹目のオオモンハタをスチールミノーのキャスティングでヒットに持ち込んだ。

一方、アカハタ狙いはオオモンハタとは逆にルアーを縦の動きで誘うので、ベイトタックルで「タイジグ」のTJ40  TJ60 「タイジグスリム」のTJS30  TJS40  TJS60をやはり水深と潮の速さで使い分ける。フォールでヒラヒラとボトムまで落としてアピールして2〜3メートル上げる。その繰り返しでヒットを誘う。

その後2~3ポイントを変えて10匹ほどのハタがイケスに入った。「海中公園」沖のポイントで丁度潮止まりを迎えた。風も無風でボートが流れないので魚の食いも落ちた。

「ご飯にしましょう!」と宇井氏は奥さんの作ったお弁当を手渡してくれた。

海の上で食べたお弁当は格別に美味しかった。

「奥さんの愛情を感じますね! 私は何時もコンビニ弁当ですよ!」

再び潮が動き初めて、ポイントを西側の30〜40メートルラインに移動した。やはり、アカハタ4  オオモンハタ1の割合で退屈しないほど魚は釣れた。納竿の午後1時30分までに43センチのアカハタを頭に、私のお土産にと10匹の魚をキープして、25センチ以下の魚は釣り上げてすぐに魚の水圧の変化で膨れた浮き袋に注射バリをさしてエアーを抜いてリリースしたのだった。

ハタ類はほとんど水面まで上げてくる時に、浮き袋にエアーがたまり腹側を水面に浮かせて上がってくる。そのままリリースしても水中へ潜れないのだ。釣り上げたハタ類をリリースする時、是非下記の写真のようなエアーの抜き方でリリースして頂きたい。

ただし、眼球が大きく飛び出してしまっているものについては、腹部のエア抜きをしても復活の可能性は低い。無理にリリースするよりも、むしろ持ち帰って食べて頂きたい。

ハタ類のリリース前に