「海峡はPE0.6号を使ったバランスタックルで攻める!」

野田信也さんの「タイジグ」ゲーム

写真/文 松井謙二

MAX 7ノット、時速 約13キロで流れる明石海峡で育った「明石鯛」はブランドとして全国的に名高い。
関西で旨い鯛と言えば、ここ、明石海峡の「明石鯛」に紀淡海峡の「加太の鯛」、鳴門海峡の「鳴門鯛」とどれも淡路島との三大海峡の魚である。 これらの海峡の魚は川の様な激しい潮流にもまれ豊富な餌を食べて育ち、身は引き締り鰭は長くて美しく、良質な脂がのって大変美味しい。

今回は5月19日 (小潮)に神戸市在住の野田信也さんと一緒に明石のジギング船「東田丸」に乗船して「タイジグ」で明石鯛を狙った。
野田さんはショアの釣りではシーバス、ヒラスズキ、青物、メバル、イカ、イシダイ。
オフショアではジギング、キャスティングでの青物狙いから、タイラバやメタルスッテもこなすマルチアングラーだ。 その彼のタイラバでのホームグラウンドが鳴門海峡、明石海峡で今回は「タイジグ」を使っての初めての釣りになった。

「鳴門によくタイラバで通っている時に、日によってタイラバのラバーの方にはアタリがなく、タイラバの丸い鉛のヘッドにガンッ!と食ってきて歯形がヘッドに付くアタリが多かった。だから、魚はタイラバのヘッドの波動を感じていて、ラバーやスカート無しでも潮をうまく受けて、リトリーブして安定した姿勢で泳ぐジグがあれば、それだけで鯛が釣れると思っていました。」と野田さん。
今回、初めて「タイジグ」を使う彼だが、5月中旬の明石海峡での鯛の餌は小さい物が多く魚は底にいるので、水温が上がった時のイワシ付きの鯛の様にジグにジャークやフォールのアクションをつけて釣るパターンでは無いと判断した。 そして、彼はタイラバのタックルを用意して、タイラバでの釣りの様に「タイジグ」で底を取ってから一定のスピードで巻き上げて鯛を狙う釣りを組み立てた。


メインのタックルはロッドが7.7フィートのヒラメ釣りのもので、ヒラメの生き餌のアジやイワシが弱らない様に竿先がソリッドタイプのものだ。
潮が早いフィールドでは、タイラバ専用の6フィートクラスの短いロッドでは潮がジグやタイラバに当たる抵抗が強いとロッドが曲がりすぎて上手く巻き上げられない事と、魚が掛かっても潮に乗って泳ぐ魚を浮かすパワーがない。
逆に長いロッドは潮がジグに当たる感覚を竿先で感じながら釣りができる。
潮が効いてくると曲がり、緩むとあまり曲がらないし、魚が掛かってもロッドのバットで魚の引きを受け止めて取り込むのも楽なのだ。
そして、リールはデジタルカウンター付きの両軸リールにPE0.6号を200メートル以上巻いている。
リーダーは2.5号のフロロから4号ナイロンを2.5~3ヒロ取る。4号のナイロンは鯛が大きいときや青物が回っている時に使うとの事。
明石のフィールドは特に潮が早く、鯛のポイントの水深も駆け上がりの20メートルから100メートル以上の深場もある。
糸が太いと仕掛けが流されて底取りが難しい。底取りが出来ないと根がかりも増える。
したがって、明石の鯛のポイントに仕掛けを入れるにはPE0.6号が不可欠なのだ。
強度も4キロ以上あるので、タックルのバランスさえ取れていれば80センチの鯛も浮かす事が出来るのだ。
それに加えて、リールはデジタルカウンター付が有利である。
野田さん曰く、「魚はジグやタイラバが上から落ちてきている時に反応して追って来ているので、底着して1~2秒経って巻き上げても魚は見切ってしまう事が多い。 例えば、船長が「水深50メートル」と言えばジグを投入してカウンターが50メートルを示したら、もう4~5メートルで底着すると思い、リールのハンドルに指をかけて、そこに着くや否や仕掛けを巻き上げないといけない」と。
それから、今回メインに使った「タイジグ」80グラムにはタイジグ専用のMサイズのハリをアシストとフロントに2本づつ装着してフロントにはシルバーの小さなブレードを付けてフォールや巻き上げ時に魚にアピールする様にしている。

タイラバのお客さんを私達の他に2名乗せて「東田丸」は午前5時に出船した。
強い霧で霞んで見える明石海峡大橋を西側からくぐり抜けて最初のポイントには約20分で到着した。

明石の鯛釣りは潮の流れが緩い小潮まわりが釣りやすい。当日は小潮まわりで東南東流の始まりが4時53分、そして、潮が止まり今度は逆に流れる潮、西北西流の始まりが11時51分だ。ポイントの水深は75メートル。 私達は船のトモに釣り座をとり、野田さんは「タイジグ」80グラムレッドゴールドを水中に送り出した。 ジグが底着するや否や早めのスピードで底から12~13メートル巻き上げる。
活性の高い鯛だけを狙っている。反応が無ければ底までジグを落とす。その繰り返しだ。
明石の船はスパンカーを張って船を立てる。船長は操縦席の窓から見えるタイラバのお客さんのラインの角度をみてしっかりと船を立ててくれるのだ。
ふた流しめに底から5〜6メートル上げたところでヒット! 野田さんのやり取りを見ていると竿先が鯛特有の叩く引きを見せている。

船長が差し出すタモに収まったのは35〜36センチの美しい明石鯛だ。


その後30分位経って野田さんのロッドが大きく曲がりリールからラインが出た。今度は竿先を叩く様な引きはない。
「青物ですね!」と野田さん。無理のないやり取りで魚を浮かせていく。

強い引きはロッドのバットでしっかりと受け止める。 上がってきた4キロ弱のメジロの上顎、下顎にはタイラバ様の小さなフックがしっかりと4本共掛かっていた。

その後は2枚潮がきつくなりアタリは遠のいたが、東南東の流れが緩みだした11時前に、今度は明石海峡大橋の西側のポイントに入り野田さんは同型の鯛をキャッチしたのだった。 タイラバのお客さんの2人で同型の鯛3枚と小型2枚を釣っていたが、野田さんが「タイジグ」で釣り上げた事に驚いていた。

「タイジグ」は早い潮を受けても泳ぐ姿勢が崩れないジグで本体から出る波動が鯛のバイトを誘うのだろう。また、「タイジグ」のメリットはタイラバとは違い早急にハリ掛りする事。
次回は水温が上がっている鳴門海峡、紀淡海峡でイワシ付きの鯛を「タイジグ」にアクションを加えて狙ってみたい。