BKF、S、SP90…5ミリのホコリ

今はK2Fの出荷も終わり、一息ついているところです。そこで、K-TENファンとモニターさんから、幾つか小型BKFに関連した質問を頂いているので、今回は90について記しておきます。

BKFシリーズは90年までに、140、115、125、リップレス140、リップル140と大き目ばかりを立て続けに発表していました。ウッドシリーズのファンの方も外洋や大河川等の好きなアングラーからも、安価で丈夫なプラスチック化は歓迎されました。 
そして、もっと小さいサイズもぜひにという声が内外からありました。しかし、間をおかず設計していた以前からすると、(誰も気付きませんでしたが)92年に90を発表するまで、かなり月日が空いているのです。
調子が良い時に一気にというのが世のセオリーなのでしょうが、私はここで一歩退いたのです。

理由の全てではないにしろ、当時、外洋についての知見に自信はありましたが、内湾向きルアー作りについての経験に足りない部分があると自覚していたからでした。タックルハウスに関わる以前は、内湾にマッチしたラ◇ラと、スティングシルダ風の自作ジグで事足りて、新たに内湾用ミノーを作る考えは持てずに何年も経過していたこともありました。 再度、ルアー作りの見地から内湾経験を積み直す必要があったのです。…
当時の内湾用ルアーとしては、ラ◇ラのCD7、9、特に9は重宝しました。適度な重さと、それが辿る泳層、安定した釣果。私もこれらから多くの事を教わりました。
以前にも日本のメーカーからラ◇ラそっくりのルアーが数種、発表されたことがありましたが、いずれも本家には敵わず消えてゆきました。和製ルアーはことごとく敗北していたのです。
その経緯を知っていただけに、内湾では重要視されない飛距離だけのアドバンテージでは、これに対抗するのには難しいことは承知していました。
それでもフローティングだけは何の心配もしていませんでした。相手のフローティングタイプは海では?というものでしたし、同じ土俵ではなかったからです。
しばらくフローティングだけで押す予定でしたが、問題は待望されていたシンキングのほうでした。(といってもフック分の重さで沈む程度)

同じ土俵に上がる場合、これは今でもそうですが相手より若干のサイズダウンか、細身にするほうがハズす危険が少ないものです。この誘惑には迷いました。
安全策を採って85ミリにするか、既にあって細身で数釣り実績抜群のトラウト用ウッドK-TENをそのままプラ化するか、あるいは異なる方法論でいくか判断を迫られました。

で、最終的に選んだのは(やはり性格は変わらず)ラ◇ラより5ミリ大きく、貫通ワイヤー(小型プラルアーには不要論がありましたが)を採用する故、細身化は諦め、フック換装に耐え、折れにくいリップを持つものでした。
それが内湾経験を積み直して得られた結論でした。それと、和製ルアーは所詮パクリと言われていた反発からかもしれません。たった5ミリ(表示は同じ90)でも、小さくすることよりは大きくして同じ土俵に上がることが、私のというより和製ルアーとしての誇りだったのです。

そして、90ミリにのみサスペンドタイプを設定したのは、正直に言うと相手の出来が良いので、一定泳層でゆっくり見せるというような相手には不可能な小細工が出来ないと、魚の活性が落ちたときに対抗出来なかったからです。
この選択があの5ミリのせいだけなのかはもう定かではありませんが、シリーズ中唯一サスペンドの設定を加えた理由のひとつだと記憶しています。

いずれにせよ、多くを学ばせてくれたラ◇ラは今も健在です。それは私にとってもとても嬉しいことです。
ラ◇ラはラ◇ラです。そして、出来ればK-TENもK-TENでありたいと思っています。

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追記、今年になっても90ミリで24キロものアカメを上げている方がいます。(あなたの思い出の一匹ー9、イベント等から)あのとき無理をしてでも貫通ワイヤーにして良かったです。

Posted by nino