さらばK-TEN初号機、海に沈む。

K-TEN

全自動重心移動ルアーの元祖の映像をこの機会に残しておくことにしました。
パテント申請前にプラスチック化を目標に試作したものです。
手作りのシリコン型を使って、サーフボードと同じ製法(FRPとグラスファイバー)による最後の一本。

製造後36年を経て、現在使われているABSより素材の変質が激しく進んでいて割れることも覚悟で投げることにしました。

写真(映像)は、まだ20代の私。
この場所も後年商業施設のために埋め立てられてしまいました。

もう遺物ともいえるルアーですが、構造的には現在より優れている部分もあります。移動ウエイトルームは普通、金型から抜いて成型するため天井を設けるのですが、これは背中から一枚板を差し込んでウエイトを押さえています。このほうが空気体積を大きく取れるのです。
シェルが3分割になるのでコストは上がりますが、突き詰めたルアーを望むときには有用な構造で、いずれは採用したいものです。

それに飛行中は大きなリップを自動でたたみますし、投入時のウエイトショック軽減のために緩衝材としてバネも入れてあります。

後作にバネを使わなくなったのは、飛行中、サミングとかスプールのラインの食い込みとか、わずかな段付きショックが掛かっただけでウエイトが戻ってしまい失速する場合があったからです。また実用化にあたってできるだけ構成部品数を減らして、シンプルにすることが求められていたこともあります。

ようやく梅雨が明け、新作のTKLM140Gのテスト映像を撮るついでに撮影したのですが、数十年ぶりに泳がせたルアーは初心を鮮やかに思い出させてくれました。
あの試行錯誤の毎日と比べれば、少々の難産ぐらいで立ち止まるわけにはいかないのです。

 

Posted by nino