餌の大小から

外部の研究所以外で、自宅で飼育したことのある魚は、金魚、鮒、鯉、タナゴ、イワナ、プラックバス、メジナ、メバル、セイゴ、石鯛、イシガキ等でした。
一時期五つぐらいあった水槽は、その後欲しいという方に譲って、現在は庭で繁殖をほぼ自然サイクルに任せているメダカしかいません。

飼っていたときは餌の調達に苦労したものです。特にバスと岩魚、セイゴは底無しの食欲で、短期間にグングン大きくなりました。 与える量を調節すればよかったのですが、摂食行動を見るのが面白いのと、私が傍に寄るだけで餌欲しさに大暴れするので、つい餌を与え過ぎてしまいました。

餌は人工のものでも食べますが、最初から喜んで食べたのはやはり生き餌でした。近所の川で釣った小魚類で足りない時は金魚やモエビを買って与えていたので、食事代が私より掛かったのです。
そこで試しに釣ってきたシイラなどの大型魚の刺身を与えてみたところ、セイゴはダメでしたがバスと岩魚は慣れてくるとバクバク食べるようになりました。その量たるや一日で人間の一人前ぐらいペロリです。
こうなると動いて逃げ回る小魚には目もくれず、まず刺身に飛びつくようになりました。あっという間にランカーです。

その間に気付いたことがあります。
魚って環境が許せばやはり楽を取るのだということと、餌の種類によって、次に摂餌行動をする時間が変わることでした。
やっと口に入るほど大きな鮒を食べたときは、次に餌を求めるまでの時間が長くなり、同重量の小さな餌か刺身のほうが、明らかに短くなるのです。

生物は腹が空いたときに食べるという原則からして、咀嚼機能の無い魚は、初めから細かく分断された餌や、胃液の沁み込みやすい餌の方が消化が早く済むからだと思われます。 これは生命維持の説明の中にたまに見かける、一回の行動で(エネルギーロス最小で)大きめな食物を取るのが効率的とかいう話の補足になります。
シロナガスクジラを例にあげなくても、同重量の餌なら小さいものを沢山食べたほうが、大きくなるのには有利ということになるのです。

これらのことを実際のルアー釣りに当てはめると、何故シラスに狂う魚がいるのか。何故今日は活性の高い時合が短いのか。少しだけ疑問が解けたような気がしました。

釣りができる環境には潮温とか潮位、溶存酸素量とか多くの環境変化をもたらす要因があって、その上年間計画があるがごとくの産卵行動まで重なるのですから、あまりに単純化するのは賛成できません。しかし確かなこともあるのです。

それでは大きなルアーより、小さなルアーのほうが有利なのか?ここからはそう単純ではありません。
まず小さなルアーが大量にあるということが有り得ません。シラス級の小さな餌を捕っている群れに同サイズのルアーを投げても多くの場合で本物に紛れてしまうことになります。双方にとって適量な場合のみ効果を発揮できることになります。
だからシラス追いで狂っているカツオやスズキ等を狙うときは、適度な大きさのポッパータイプのほうが理に適っています。水面を滑らせて水飛沫を上げることができるので、大量のシラスという現象そのものを演出できるルアータイプだからです。

反対に大き目のコノシロ等を捕食しているときは、それぞれの一匹の時合は短いと覚悟しておくことになります。これに近いルアーサイズだと、本物に紛れることは滅多にありませんから、その点は有利なので常に新たな一匹を求めるような釣りになります。

我々にありがたいというか、都合のよいときは、やはりターゲットが使いたいルアーサイズに似通った小魚を追っているときでしょう。それでも大量に居過ぎるときは苦戦必死なのは経験の示すところです。
何事にも適量が求めるところなのでしょう。

Posted by nino