QアンドA…底物の扱い。参考。

 静岡のSさんからの質問です。
 
 …略…沖釣りはスローピッチなる釣り(根魚釣り)が流行ってきております。
確かに釣れるので楽しいですが、回遊魚と違って定着性のある根魚が簡単に釣れてしまいます。
放流してる魚なら未来があると思いますが、引き算で少なくなる魚を釣れる・美味しいからと言って、制限も無く捕獲してしまうと結局は自分達が楽しめなくなるはずなんですが、…略…
(◇◇で根魚の釣りが流行ってるんですが、釣り続けると魚がいなくなってしまい釣り人が釣り人の首を絞めかねないと危惧してるので、何とかルール作りみたいなモノが出来ないかと思案してます。
それには、釣れる魚の生態を知らないと話しにならないと思って調査してるのですが、何分分らなくて困ってるのが実情です)
◆マハタ・ホウキハタ・ウッカリカサゴ・アヤメカサゴ・クエの生態が詳しく判る資料・HP等はありますか?
体長と年齢が判るもの等定着性のある魚の行動範囲ってどれ位なものでしょうか? 成長表は?…略…
◆また、リリース・魚のエアー抜きに関する詳しい文献等参考資料等はありますか?
カサゴやハタ等を釣り揚げてくると口の中から胃袋が出てたり目が飛び出ていたりしますが、そういう魚でもリリースして生存可能なのでしょうか?(胃袋が出てても大丈夫と言う人もいるようで、何が本当なのか不明です)
文献や詳しく調査している研究機関・大学等があったら教えて頂けると嬉しいです。…略……
 
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 ではお答えします。長文になりそうです。
 始めに、質問を頂いた当初、例えばエアー抜きの方法などは一言、こうしてああすれば良い、また、ハタ類の成長具合は文献を調べたことを羅列するつもりでした。
 しかし、ここはラボ。引用だけで済ませるわけにはいかないでしょう。それに私は今回の魚種や現状について、Sさんが期待するほどの知識は持っていません。一緒に調べ、考えてみるという立場を取らせて頂きます。
 
 Sさんもオフショアー経験が長いですから、特に底物といわれる魚種の行く末を心配するのはよくわかります。
 以前のルアーフィッシングは上物が中心で、根掛かりや底物回避のため、いかに素早く着底したジグを上げるかを競うかのようでした。たまに掛かってしまう底物は、その海域の豊かさの象徴でした。 それが最近では漁と見紛う方法で、底物専門に狙うことも増えてきたとの事。予想できた流れとはいえ、回遊魚よりは生息場所が狭いので、長く釣りをしていれば個体数の減少を実感し易いでしょう。 反面、その実感こそが保護への気持ちを芽生えさせるのですから、嘆いてばかりではいられません。
 
 そこで様々な工夫を施すことになります。底物をリリースしたいと思っても、避けられない問題は、深場から上げてくる時の水圧の急変です。出来るだけユックリ上げてくれば良いといっても限度があります。
 浮き袋のエアー抜きは、専門具が市販され、説明書も付いていますが、けっこう難しいです。ネットで「魚のエアー抜き」で検索してみると、一般の釣りに加え、バストーナメントや活魚で必要な技術として紹介されています。
 ネットを巡回してみると、やはり活魚専門漁師の技術が高いようです。シメ魚に比べて2倍の高値になり、日常で処理して結果を見ているわけですから。
 直接教えを請うのなら、そうした漁師の何人かに会うとよいでしょう。
 私も別の問題を確認しようとしたときに、漁師にはお世話になりました。
 そして、出来るだけたくさんの人から聞くことで、総合的に判断するのです。
 
 ただ、リリースに通ずる、活魚の扱いや輸送関係のようなことは、しっかりした業者ほど口渋るか適当にあしらわれるかもしれません。業者にとっては他と差別化でき、お金の絡むノウハウなので、一見ぐらいでは教えてくれない場合がありました。彼等にとっての常識ですら、ネット上では散見できるだけなのです。
 質問にある、マハタ、ホウキハタ、ウッカリカサゴ、アヤメカサゴ、クエについては調べてみましたが、いずれもネット上で「マハタの生態」というぐあいに各魚別々に検索を掛けた記事を上回るようなものは見つかりませんでした。
 各研究期間が公開している資料は、養殖や資源としての視点からのものが多く、需要が少ない魚種の自然条件下での生態を知りたいという方には物足りないかもしれません。 
 立場的にSさんの質問に答えられそうな分野だと「水族館の飼育係」それも採集まで行う方々になると思います。彼等は採取してから生かすことに全力をあげるので参考になります。(記事例、美ら海日記 http://www.gakusosha.com/colum_main.php?colno=22&PHPSESSID=3b7f76d91d4bf6872e79f48eff02d7d9
 また、魚関連のリンクが一ページ内に収まっているページ http://www.mpstpc.pref.mie.jp/SUI/link.htm
をあげておきますので巡回してみて下さい。
 それと、Sさんの静岡県には、水産学部のある大学や教育センターがあります。(東海大学社会教育センター内、記事例  http://www.muse-tokai.jp/publish/umihaku/2004/v34n6p2.html
 ネット以上の知識を得るには、こうしたところで調べたり、聞いたりすることも役に立ちそうです。
 
 ただし、研究者なら全て答えてくれるはず、と過度な期待をするのは無理があります。専門分野以外は詳しくないのが普通です。むしろ思い出して欲しいのですが、漁師や我々釣り人のほうが、自然条件下の魚に直に接している時間が長いとも言えるのです。この場合、釣れない事も知識のひとつと言えるからです。
 産卵場所や生態について等、文献から知識を得るしかないものもありますが、海の中のこと、しかも深海、いずれも証明が困難な上、中には釣り人の目からすると?マークの付く資料もあります。
 だから、研究者や文献、またネットから得られるものと、釣り人が実践的に得たものとから類推することが肝心なのだと思います。
 
 そして、質問に成長表があれば、とありましたが、これは「魚類成長表」をキーワードに検索することで調べられます。 しかしこれも養殖関係の資料は正確ですが、自然では生息海域によって違いがあります。全般に暖かい海域のほうが成長が早いのは知られています。
 需要の少ない底物については、最大サイズに至る成長曲線は、どの魚も似ているので、おおよその事は判るはずです。
 
 Sさん、今回は具体的な数値を明示出来ないで、すみません。
 調べれば調べるほど、今の段階で、何年で何センチ、移動範囲は何キロとか、見てきたように書くのは出来ないと思いました。今後も信頼できる資料を捜していきますので、よろしくお願いします。

Posted by nino