花壇とテーブルヤシ

生き物

中学三年生の頃、しばらく園芸部に在籍していたことがありました。
男子は一人だけ。女子におだてられ、ホイホイ入部してしまったのですが、つまりは穴掘りとかの力仕事要員だったわけです。女の子といえども侮れません。
興味を持ち始めた登山をやろうにも山岳部が無かったので、身体を鍛えるのには丁度良かろうと、そのままスコップを振るうことになりました。

時期的に受験を控え、他のクラブ活動も鈍っていたのですが、それ故に返って意地になっていたのかもしれません。
晩春から荒れた50メートル程の花壇を耕し、片っ端から種や苗や球根を植えていったのです。夏休みに晴天が続けば、水やりに登校したのですが、私は花とは無関係のタイプに見えるらしく、当直の先生に見つかると不審がられたものです。

何となく恥ずかしくて、なるべく人前の作業は避けていたものの、日に日に芽吹いてくるのが楽しみで苦にはなりませんでした。
そして二学期が始まるくらいから、予想以上に花々が咲き乱れました……。

ここで、とてもガッカリしたことを覚えています。
花ひとつ無い花壇から大変化しているのに、毎日傍らを通りながら、ほとんど誰も目を止めないのでした。先生達も顧問も、報告せずに勝手にしたこととはいえ、国語の先生以外に気付いた様子はありません。
「そういうものなのか」これが私の感想でした…。
以来、植物への関心は長い間、高山植物、またそれが身に付ける小さな花々に限られてきました。持ち帰りは絶対不可の植物群です。
それは中年になるまで続きましたが、庭の手入れをするようになり、ようやく普通の植物にもそれなりの関心を持てるようになりました。
とはいっても伸び過ぎたら切るとか、野鳥の糞から成長したケヤキをそのまま育てるとか、部屋の観葉植物に水をやるといった程度なのですが。

◇テーブルヤシ
だから生活習慣のせいばかりではなく、うっかり枯らしてしまった植物もたくさんあります。
部屋には緑が欲しいので、観葉植物では有名どころのポトスやベンジャミン等を置いていましたが、基本的に放っておくのが好きなので、たいてい大きくなり過ぎて、ある日いきなり弱ります。更新のやり方は解っているのですが、なかなか出来ないのが現状です。
そんな私でも枯らしたことがないのがあります。サボテンとテーブルヤシです。 サボテンは二十年間凄まじい生命力を保って毎夏、本体に似合わない巨大な花を咲かせ続けています。
もうひとつのテーブルヤシ(写真上)は最近その素晴らしさに気付きました。これ、室内で氷点下にならなければ一年中鮮やかな緑を維持するし、元々強い光を嫌うので、陽が差さなくても窓際であれば、たまの水やりだけでOKです。
何より年数を経てもほとんど大きくならず、古くなった葉が綺麗に枯れてくれるので手入れの必要が少ないのです。
独身者とか、まるで植物に関心の無い奥様のおられる家庭には最適な観葉植物だと思います。ルアー一個分で買えるしお勧めです。

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追記 2024年、4月。上に書いた風呂場のテーブルヤシがついに枯れてしまいました。春なのに、放置が過ぎたようです、残念。

タックルハウスに関わってからずっと共にしてきたサボテンと、あるお祝いの事後に捨てられるところを引き受けたランはまだ健在です。どちらも水のやり過ぎはダメなので私向きの植物なのでしょう。鉢替えもしてないのに40年、驚くべき生命力です。動物の儚さが身に沁みます。

Posted by nino