グラントリノ

映画

日曜の朝は余りに風が強く、釣りは断念、海岸から急遽ローカル映画館へ。
選んだのは平日に鑑賞予定だった、クリントイーストウッドの「グラントリノ」
内容はネタバレになるから書きませんが、正真正銘ランカークラスのデキでした。
イーストウッドは齢78。老境に差し掛かってから監督した映画は名作揃いなのですが、どの作品も全体に暗い色調で、淡々と進行するせいなのか、評価の割には客足に恵まれなかったように見えました。
しかし今回は珍しくお客さんがいっぱい入っていました。お気に入りの監督が正当に評価されるのは嬉しい事です。
日本だと先の「おくりびと」のように他国の権威に評価されてから遅れて賛辞や客足が伸びるといったことが、映画に限らず多いのですが、これはそうした心配も無さそうです。

私は今日まで、イーストウッド特有の立ち姿を荒野の用心棒(1964年、東京オリンピック年)から、つまり子供の頃から45年間もスクリーンを通して目にして来たことになります。それは日米合わせた俳優の中でも希有な存在なのです。常に前を歩いている大人という感じです。

今までは良い意味で映画内容やラストシーンに、外さないパターンがあったと思えるのですが、グラントリノでは初めてそれを破っています。半世紀に一回だからこそ格別の重みがありました。
彼の俳優人生の最終段階に、この作品を仕上げたことで、彼がかつて関わった幾多の作品群が壮大なストーリーの断片のようにも見えます。それぞれの作品の結末が別の意味を成し、時を遡り輝きを増すことになりました。ファンには堪らないところでしょう。
次作も期待できる78歳の先人と、ほぼ同時代を生きられたことに感謝です。

今宵は買ったアジのヒラキで濃い目の一杯をいただいています。
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写真は、たぶん初めて自腹で買ったLPレコード。1980円。
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追記…
川◇カ◇リさんの訃報を聞き(7月28日)、公式ブログを30ページ程、遡って見ました。
そこに「グラントリノ」とあり、どうやら彼女が劇場に足を運んで鑑賞した最後の映画らしい。日付を見ると4月29日。ガン治療の副作用に悩まされながら。
まだ若いというのに、私のような年配者に近い感想が述べられています。締めくくりに「いい歌詞が書けそうだ」とあり、先を知る身としては、感無量になるばかり。
生ききった川◇さんの、ご冥福をお祈りします。

Posted by nino