質問…ファースト

 前回記事のコメントで、いうたったさんから質問がありました。
 質問内容は、略…マリアの「ファースト」とBKF115の事です。釣友に並べてみせ、「似過ぎやない?」と聞いたら、カラーが違うだけで同じモノという返事でビックリした記憶があります。でも、何か違う所があるのではとずーっと気になってました。
 差し支えなければ、そうなった経緯などから聞かせてもらえないでしょうか?長年の疑問をスッキリさせて下さい。…略。
 
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 お答えします。
 今までにもたまに聞かれたので、良い機会なので書かせて頂きます。
 まず、おことわりしなければならないことがあります。他社のことを一方的に勝手に語るわけにはいかないので、お互いのルアー開発に関わることに限らせて頂きます。
 
 皆さんが疑問に思われた、BKF140、115と、マリアさんのファースト140、115の外観が似ているのは当然で、基本型は同じ物を使っています。ウエイトなど中身の構成と色塗り等は異なります。
 
 その経緯となると、当時の日本の海ルアー事情を抜きには語れません。
 ウッドK-TENで、ある程度の手応えを得た頃、既に大手メーカーからはプラスチック製の海ルアーが数種、販売されていました。
 ただ、その頃のルアーを分解してみると解りますが、根本的に変えないと、構想していた重心移動システムを組み込むには精度的に無理がありました。
 それを解決するためには、途方もない費用が掛かりそうだったのです。
 また、生粋のハンドメイドメーカーだったタックルハウスからすると、いや大手にとってもまだ市場規模の小さい海ルアーに、それだけの費用を掛けるのは冒険だったのです。
 
 そんな時、元々両社長や関係者同士、信頼関係にあったマリアさんの母体の会社と話が進んだのです。K-TENのプラ化を図りたいタックルハウスと、漁具では既に二大メーカーであり、次に来るムーブメントを見据えていたマリアさんと、双方の強い部分で協力することになりました。
 いち設計者の私にしてもやっとプラ化できると燃え、そして歴史ある漁具メーカーのノウハウを勉強させて貰えるのも魅力でした。
 ただ、やはりコスト面での制約は厳しく、最初はリップは後付、ワイヤーは8環、サイズは小さめという案に押されました。数が見込める内湾用市場を無視は出来ないのは判ります。しかし、これには私はゴネたものです。今までの和製ルアーがいまひとつだった原因だし、例のルアーを真似たルアーの失敗を見ていたからです。それにウッド135で全国に漠然とですが多くの仲間がいることを感じていました。
 そうして最終的には我社の社長と、当時のマリアさんの開発責任者のO氏が、私の思う通りにやって良いと言ってくれたのです。そのことは今でも感謝しています。… 
 で、出来たのは大きくて貫通ワイヤーで、かつて無い型代を注ぎ込んだ、今もある140と115です。後のことは皆さんも知るとおり、ルアーの顔つきや細いか太いか、錘を重くするかが変わるだけで基本構造は今もそのままです。
 両ルアーは予想を上回る大ヒットとなり、以後、自然に両会社とも90ミリサイズからそれぞれ別の道を歩むことになりました。
 
 せっかくだから、裏話も少々。
 当初、マリアさんはシンキングのみ、タックルハウスはフローティングのみとする話もありました。それが、精度の高い型がいざ出来てみると、球でなくとも錘が戻ることが実際に判り、両方やりたいと申し出があったのです。
 元々、契約書も見たことがないし、男同士の口約束です。かえって、なまじビジネスライクな付き合いよりもトラブルがありませんでした。ただし、同じ方向を見られる同志に限りますが。
 完成するまでにはマリアさんのスタッフと会うことが多く、彼等の人柄と海に向ける気持ちを信ずるようになっていました。それと、今となっては御愛敬ですが、ひとつだけ私も気になることがあります。K-TENより1グラム錘を重くしたのは誰?(^^)
 
 たまに当時の仲間に会うと、皆さんお元気そうで何よりです。マリアさんは初期から海ルアーの講習会などを頻繁に開催して、黎明期の海ルアーにはたした役割は大きいと思います。
 これからもお互い、良いルアーを作っていきたいですね。
 
 というわけで説明は終わりにします。もしも関係各所から異議があるようなところがあればご指摘よろしくお願いします。
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下写真は当時の房総某所。観光地化して埋め立てられました。 

Posted by nino