リップレスミノーの経緯〔BKLM140・115〕

BKLM115 84年5月の釣り雑誌にリップレスミノーの記事があります。プロトは、かなり以前から作られていました。元々、重心移動が無い時代に、先行するラパラ、ロングA、レッドフィンに対抗するべく作ったルンゼというリップレスミノーが始まりでした。リップを小さくしていけば飛距離が伸びる。全部取っちゃえ、と始まりは単純でした。

そのうちに、明確に泳がなくても釣れることを知りますが、まだ不足を感じていました。この試行錯誤の頃の記事を読み返すと、出来るだけリアルに(一枚ずつアルミの鱗を千枚近く貼ったこともある)細身に、また、リングをケブラーに換えてサイレントが効くとか書いている自分がいます。今から思えば、私も本格的にスズキを狙って数年、望むことは最近の若い人と同じ、きっと誰もが通る道だったのです。

その後、紆余曲折があり、88年にウッド製を市販したところ、見た目と動きが当時流通していたミノーの概念から離れていたせいもあり、あまり売れなかったのです。ここまでは、今も流行りのシャロー専用設定でした。それでも、一部の河口や干潟をテリトリーとするアングラーから少しずつ支持を受けて、なんとか90年の安価なプラ製の発売まで漕ぎ着けたわけです。ただコストの関係でK-TENのアイディンティーのひとつであるワイヤーの貫通式を採用できなかったことが心残りでした。潜りすぎないようにロッドを立てて、ゆっくり引くと小物を避けてランカーを誘えたので、(小型で細身のルアーを早引きするとフッコのオンパレードになった)干潟最強の声はあったものの、誰もがポイントを大切にするあまり雑誌にはほとんど掲載されず、細々と、サーフや河口用として認知されていきました。 
やがて、その独特の性質であるスライドやダートが、シイラや青物にも効くことが解り、強度と高速対応を迫られるようになります。そこで、若干潜行深度に幅を持たせた現行型BKLM140,115が登場するわけです。(ここでワイヤー貫通式にしました)

K-TENリップレスの暦からすると、シャロー専用から始まり、広い泳層幅をもつタイプ、チューンドで再びシャローと、変遷しています。
こうして書いていると色々思い出します。リップレスをハンドメイドで作ろうとすると、初めのうちは動きや安定を図ることが難しいので、完全にリップレスではなく、リップの代わりになる突起を残したくなります。現在出回っているハンドメイドをルーツとするリップレス系が、何処か似た形になるのは当然かもしれない。私もそうでした。ただし、角度を付けたリップ状のものが僅かでも付いていると、引けば頭が下がるというミノーっぽい性質が必要以上に残ってしまいます。私はこれを何とかしたかった。ボディからリップを引っ込めた完全なリップレスでありながら、僅かな力で泳ぐもの。(BKLM140は苦心の末、左右非対称形にした)

長い時間をかけて、水受け面を本体断面内に収め、求めたアクションを実現することが私のリップレスの歴史でした。だから皆さんが進化したリップレスの形と思っているものと、私の実感とは逆なのかもしれない。後から発売されたものが常に新しいとは思えないのです。
シャロー用リップレスが全盛の現在、広い泳層を探れ、自由度の高いBKLMは、リップレスとしては珍しい部類になりました。貴重なので、しばらくこのまま残しておきます。泳層を意識して、ゆっくり引けば表層を狙え、中速で潜らせて、浮き上がり中に微妙な演出を加えれば、大型魚好みの動きがでます。それに多少の波気をものともしません。
残念ながら、飛距離は最新の物と比べると物足りなく感じるかもしれません。鉄球をタングステンにするだけで更に飛ぶようにはなりますが、実験すると耐久性や大物を誘う力、等、失う物が多過ぎます。現行の型を使う限り、やはりこのままがいいようです。

 

Posted by nino